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019 ココだけの流行り病
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「よく来てくれたと言いたいところだが……」
マスクをした大柄の男性がボクたちをギルドで迎えてくれた。
普段なら受け付けは女性であることが多い。
殺伐とした冒険者ギルドで、唯一の癒しともいうべき場所にいるその男性は、受付というにはあまりにもガタイがよい。
一瞬その低い声と、鋭いまでの眼光で泣き出したくなるほどだ。
受付は受付なんだろうけど、絶対何か違う。
異様な雰囲気ともいうべきものなのか。
ギルドの中は人も少なく、活気もなかった。
みんな冒険者たちはどこか疲れたような顔をしながら、チラチラボクたちのやり取りを横目で見ている。
「おいおい、なんでギルド長がそーんなとこ座ってんだよ。怖がるだろ、みんなが」
ガルドはそんな状況など気にすることなく受付カウンターまで足早に向かうと、ガンっという音を立てながら肘をついた。
「仕方ねーだろ。こっちだって状況ってもんがあるんだ」
「にしても、これはなしだな。こんな怖い顔のヤツが受付とか、誰も寄りつかないだろーよ」
「さっきから言わせておけば、ガルド! おれの顔のどこが怖いっつーんだよ」
「馬鹿か。鏡見てから言え! うちのルルドが怖がってるじゃないか」
ガルドは振り向き、ボクを指さす。
なんかよく見ると、二人似ているなぁ。
雰囲気かな。
あー、話し方かな。
息もぴったりだし。
兄弟とかいたら、こんな感じかも。
初めは少し怖いと思ってたのに、二人のやり取りを聞いていたら、そんな感じはしなくなっていた。
「そんなに怖くないだろーよ。なぁ、ボウズ」
「ふふふ。ハイ、大丈夫です」
「ほらな。だいたい、そんなちっこいボウズを連れまわしてるおまえの方が危ないヤツじゃないのか?」
「んだとー? ルルドは仲間だ!」
「こんなにちっこいのに。仲間とか言われてこき使われてるんじゃないのか? 大丈夫か?」
仲間だって。
なんか、嬉しい。
まだほんの数日しか一緒にいないのに。
それでもボクを仲間って認めてくれてるんだ。
それにこのギルド長も、まったくボクのこと知らないのに心配してくれている。
やっぱり旅を始めて良かったな。
「うるさいぞ、二人とも。まったく話が進まないから、そういうのはあとでやってくれ」
「ランタスは安定だな」
「そーなんだよ、こいつはいつも自分のペース崩さないからな」
一番マトモなことを言っているランタスが文句いわれるなんて、なんか変な感じ。
でも、こういうノリは嫌じゃない。
「二人とも、一回攻撃してもいいか?」
「やーめーろーよー。痛いだろ?」
ランタスは確認を取るよりも早く二人に近づき、その頬をつねり上げた。
ハフハフしながら二人は、必死に抵抗している。
「あはははは。なんか、すごい光景」
「こんな大人になったらダメだぞ、ルルド」
ランタスはそう言うけど、案外楽しそうなんだけどな。
いつまで経っても仲間とこういう風に接することが出来るのって。
「楽しそうですけどね。お二人は仲良しなのですね」
「「仲なんて良くない!」」
「あはははは、ほら、息ぴったり」
すごくよく似てると思うんだけどな。
二人とも同時に否定するだなんて。
「この二人は義兄弟なんだ」
「義兄弟? それって……」
「このギルド長であるザイオンは、ガルドの妹の夫なんだ」
「あーーー。へーー。義弟さん。にしても、普通の兄弟と間違うくらいに似てますね」
「ガルドの妹が重度のブラコンでな。よく似ているザイオンに一目ぼれしたってワケだ」
なんかサラっとすごいこと聞いちゃったけど、大丈夫かな。
ある意味こんな個人的なこと、ボクが聞いてもよかったんだろうか。
ランタスに好き勝手言われている二人とも、何とも思ってないみたいだけど。
「おまえは俺に似てるから、あいつ……ジュリアに好かれただけなんだよ」
「なんだ、嫉妬か?」
「んだとー」
ブラコンとか言いながら、きっとガルドも妹さんのことが好きそうだな。
ふふふ。
家族愛かぁ。
ガルドのおうちなら、なんか楽しそうだ。
「そんなことよりも、だ。なんでおまえが受付にいるんだよ」
「ああ、そのことだが。今はこの街に立ち寄るべきではなかったな」
「はぁ? なんだって言うんだよ。俺たちはギルドからの依頼を終わらせてきたとこだぞ」
普通、ギルドからの依頼を完遂した場合、すごく喜ばれるはずなのに。
今の雰囲気はそんなことはない。
むしろ、なぜここに来たのか。
ザイオンの声色が、街の状況を告げているようだった。
「何かあったんですか?」
「……この街で、奇妙な病が流行っているんだ」
「病……。なんだよ、それ。こんな時期に流行り病なんて、なったことなかっただろ」
「なくてもなんでも、流行ってるんだから仕方ないだろう!」
たくさんのマスクをした人々。
街から漂う、変な匂い。
コレも全部病のせいだったんだ。
ボクは周りを見回すと、確かに調子の悪そうな人がいることに気づいた。
マスクをした大柄の男性がボクたちをギルドで迎えてくれた。
普段なら受け付けは女性であることが多い。
殺伐とした冒険者ギルドで、唯一の癒しともいうべき場所にいるその男性は、受付というにはあまりにもガタイがよい。
一瞬その低い声と、鋭いまでの眼光で泣き出したくなるほどだ。
受付は受付なんだろうけど、絶対何か違う。
異様な雰囲気ともいうべきものなのか。
ギルドの中は人も少なく、活気もなかった。
みんな冒険者たちはどこか疲れたような顔をしながら、チラチラボクたちのやり取りを横目で見ている。
「おいおい、なんでギルド長がそーんなとこ座ってんだよ。怖がるだろ、みんなが」
ガルドはそんな状況など気にすることなく受付カウンターまで足早に向かうと、ガンっという音を立てながら肘をついた。
「仕方ねーだろ。こっちだって状況ってもんがあるんだ」
「にしても、これはなしだな。こんな怖い顔のヤツが受付とか、誰も寄りつかないだろーよ」
「さっきから言わせておけば、ガルド! おれの顔のどこが怖いっつーんだよ」
「馬鹿か。鏡見てから言え! うちのルルドが怖がってるじゃないか」
ガルドは振り向き、ボクを指さす。
なんかよく見ると、二人似ているなぁ。
雰囲気かな。
あー、話し方かな。
息もぴったりだし。
兄弟とかいたら、こんな感じかも。
初めは少し怖いと思ってたのに、二人のやり取りを聞いていたら、そんな感じはしなくなっていた。
「そんなに怖くないだろーよ。なぁ、ボウズ」
「ふふふ。ハイ、大丈夫です」
「ほらな。だいたい、そんなちっこいボウズを連れまわしてるおまえの方が危ないヤツじゃないのか?」
「んだとー? ルルドは仲間だ!」
「こんなにちっこいのに。仲間とか言われてこき使われてるんじゃないのか? 大丈夫か?」
仲間だって。
なんか、嬉しい。
まだほんの数日しか一緒にいないのに。
それでもボクを仲間って認めてくれてるんだ。
それにこのギルド長も、まったくボクのこと知らないのに心配してくれている。
やっぱり旅を始めて良かったな。
「うるさいぞ、二人とも。まったく話が進まないから、そういうのはあとでやってくれ」
「ランタスは安定だな」
「そーなんだよ、こいつはいつも自分のペース崩さないからな」
一番マトモなことを言っているランタスが文句いわれるなんて、なんか変な感じ。
でも、こういうノリは嫌じゃない。
「二人とも、一回攻撃してもいいか?」
「やーめーろーよー。痛いだろ?」
ランタスは確認を取るよりも早く二人に近づき、その頬をつねり上げた。
ハフハフしながら二人は、必死に抵抗している。
「あはははは。なんか、すごい光景」
「こんな大人になったらダメだぞ、ルルド」
ランタスはそう言うけど、案外楽しそうなんだけどな。
いつまで経っても仲間とこういう風に接することが出来るのって。
「楽しそうですけどね。お二人は仲良しなのですね」
「「仲なんて良くない!」」
「あはははは、ほら、息ぴったり」
すごくよく似てると思うんだけどな。
二人とも同時に否定するだなんて。
「この二人は義兄弟なんだ」
「義兄弟? それって……」
「このギルド長であるザイオンは、ガルドの妹の夫なんだ」
「あーーー。へーー。義弟さん。にしても、普通の兄弟と間違うくらいに似てますね」
「ガルドの妹が重度のブラコンでな。よく似ているザイオンに一目ぼれしたってワケだ」
なんかサラっとすごいこと聞いちゃったけど、大丈夫かな。
ある意味こんな個人的なこと、ボクが聞いてもよかったんだろうか。
ランタスに好き勝手言われている二人とも、何とも思ってないみたいだけど。
「おまえは俺に似てるから、あいつ……ジュリアに好かれただけなんだよ」
「なんだ、嫉妬か?」
「んだとー」
ブラコンとか言いながら、きっとガルドも妹さんのことが好きそうだな。
ふふふ。
家族愛かぁ。
ガルドのおうちなら、なんか楽しそうだ。
「そんなことよりも、だ。なんでおまえが受付にいるんだよ」
「ああ、そのことだが。今はこの街に立ち寄るべきではなかったな」
「はぁ? なんだって言うんだよ。俺たちはギルドからの依頼を終わらせてきたとこだぞ」
普通、ギルドからの依頼を完遂した場合、すごく喜ばれるはずなのに。
今の雰囲気はそんなことはない。
むしろ、なぜここに来たのか。
ザイオンの声色が、街の状況を告げているようだった。
「何かあったんですか?」
「……この街で、奇妙な病が流行っているんだ」
「病……。なんだよ、それ。こんな時期に流行り病なんて、なったことなかっただろ」
「なくてもなんでも、流行ってるんだから仕方ないだろう!」
たくさんのマスクをした人々。
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ボクは周りを見回すと、確かに調子の悪そうな人がいることに気づいた。
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