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030 人様のおうちでお疲れ様会
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「ほ、本当にいいんですかね?」
「問題ないだろ。なんせ、この街を救ったのはルルドなんだから」
「置手紙もしてあるから、大丈夫だ」
それが一番大丈夫じゃないと思うんだけど。
今頃、ギルドで頭を抱えるザイオンの顔が思い浮かびそうになる。
しかしそんなことなど関係ないというように、テーブルに並べられた食事をみんな勢いよく食べていた。
「いいの、いいの。あとで文句言おうものなら、わたしが言ってあげるわ、ちびちゃん」
ウインクしながら、綺麗なお姉さんはボクにウインクした。
ふわふわしたピンクブロンドの髪を後ろで一つにまとめ、それよりもやや濃い色の瞳がキラキラ輝いて見える。
「あの、シーラさんって、ガルドさんと全然似てないですね」
「あははははは。よく言われる~」
豪快に笑う姿は、どことなくガルドに似ている気はするけれども。
どこをどう見ても、ガルドの妹であり、ザイオンのお嫁さんでもあるシーラは色白美人さんだった。
なぜこんなことになったかと言えば、あの後ランタスがギルドに許可申請の紙だけ提出すれば、リーシャたちを街に入れるのは問題ないと言い出したからだ。
さずがにダメじゃないかなとは思ったんだけど。
ザイオンさんの家なら、絶対に大丈夫だというガルドに押されて、リーシャたちをここまで連れてきてしまった。
そしてガルドが街の病を解決したのがボクだというと、あれよあれよと言う間に、このお疲れ様会になってしまったのである。
「ごはん美味しい?」
「はい、すごく美味しいです」
「それはよかった。猫ちゃんたちのお口にも、合うかしら」
「にゃー」
安定に猫のフリを決め込むリーシャに、ランタスが何度も視線を送る。
うん。
きっと気づいたよね。
あの魔法が空から放たれた時点で。
だけど興味は示しているものの、深く追求してはこない。
申し訳ないが、それがありがたかった。
ボクのことならどれだけでも話せるけど、これはリーシャのことだからね。
ボクの口から説明するわけにはいかないんだ。
「綺麗な猫さんよね。食べ方もそうだし」
うん。
中身獣人だからねー。
「それにしても、いろいろありがとうございます」
「何よう、それはこっちのセリフじゃないの。あれだけ困っていた病を解決してくれたんだもの」
「ボクはただ、原因を見つけただけです」
「それでもすごいわよね? 原因さえわかれば、解決策もあるわけだし」
シーラはニコニコしながら席についた。
ランタスの見立てでは、あの病はヘドロスライムの成分を井戸から摂取したことによる中毒症状だと思われるらしい。
この街には薬師はいないものの、隣町に手配して薬を用意すればよくなっていくようだ。
まだすぐに完全に元の状態には戻れないけど、それでもやっと兆しが見えたと言えるだろう。
早くみんながよくなって、元の街に戻るといいな。
この街の人たちはみんなとても親切だったから。
余計にそう願ってしまう。
「ルルドのおかげだ」
「いえいえ、そんな……でも、本当に良かったです」
「ホント、可愛らしい上に、謙遜しちゃって。なんて出来た子なの?」
テーブル越しに腕を伸ばしてたシーラの手が、ボクの頭をなでた。
姉とかいたら、こんな感じなのかな。
こんな風に褒められたことないから、なんか純粋にうれしい。
「謙遜だなんて。ボクたちが泊まれる宿まで、交渉してもらったみたいですみません」
「いいのよ、そんなこと。お安い御用だわ」
簡単に言ってのけてるけど、結構大変だったと思うんだ。
普通の宿ならペットや、ましてモンスターなんて絶対にダメだろうし。
門番さんだって、中の広間でテントなら許可がって言ってたくらいなのに。
まさか宿をとってくれるなんて。
でもこれで三人で、少しゆっくり出来そうだ。
「本当はうちに泊まらせてあげたかったんだけど、狭い上にアニキまでしばらく泊まるって言うし」
「狭い家で悪かったな」
玄関が開いたかと思うと、どこまでも疲れた顔のザイオンが入ってきた。
ああ、なんかきっと大変だったんだろうな。
さっきの戦闘のあとよりも、ザイオンはかなり疲れ果てている。
「こっちはまだ仕事中だっていうのに」
「あら、あなたに代わってこの街を救ってくれた英雄さんにおもてなししていたところなのよ?」
「ああ、それはありがたいが……」
うん。そこじゃないよね、きっと。
知ってる。
「すみません、あんな置手紙残してしまって」
「いや……いいさ。ルルドが街を救ってくれたことには変わりないし、あれぐらいのお願いなら通そうとは思うからな」
「でも手続き大変でしょう?」
ザイオンは『まあな』と言いながら苦笑いしていた。
実際今ギルドの職員は少ない。
一人でその処理をするのは大変だと思う。
「犯人は捕まえたぞ。もちろん罪も告白した」
「そうなんですね。良かったです」
「痴情のもつれらしい。浮気したのが奥さんにバレて、逆上したんだとさ」
「なにそれー。ひどーい」
「だな。奴はこのまま王都へ輸送し、そのあとで罪が確定するだろう」
きっと罪は軽くないと思う。
奥さんを殺してしまったこともそうだが、あのスライムによって病を広めてしまったことも罪に問われると思うから。
「問題ないだろ。なんせ、この街を救ったのはルルドなんだから」
「置手紙もしてあるから、大丈夫だ」
それが一番大丈夫じゃないと思うんだけど。
今頃、ギルドで頭を抱えるザイオンの顔が思い浮かびそうになる。
しかしそんなことなど関係ないというように、テーブルに並べられた食事をみんな勢いよく食べていた。
「いいの、いいの。あとで文句言おうものなら、わたしが言ってあげるわ、ちびちゃん」
ウインクしながら、綺麗なお姉さんはボクにウインクした。
ふわふわしたピンクブロンドの髪を後ろで一つにまとめ、それよりもやや濃い色の瞳がキラキラ輝いて見える。
「あの、シーラさんって、ガルドさんと全然似てないですね」
「あははははは。よく言われる~」
豪快に笑う姿は、どことなくガルドに似ている気はするけれども。
どこをどう見ても、ガルドの妹であり、ザイオンのお嫁さんでもあるシーラは色白美人さんだった。
なぜこんなことになったかと言えば、あの後ランタスがギルドに許可申請の紙だけ提出すれば、リーシャたちを街に入れるのは問題ないと言い出したからだ。
さずがにダメじゃないかなとは思ったんだけど。
ザイオンさんの家なら、絶対に大丈夫だというガルドに押されて、リーシャたちをここまで連れてきてしまった。
そしてガルドが街の病を解決したのがボクだというと、あれよあれよと言う間に、このお疲れ様会になってしまったのである。
「ごはん美味しい?」
「はい、すごく美味しいです」
「それはよかった。猫ちゃんたちのお口にも、合うかしら」
「にゃー」
安定に猫のフリを決め込むリーシャに、ランタスが何度も視線を送る。
うん。
きっと気づいたよね。
あの魔法が空から放たれた時点で。
だけど興味は示しているものの、深く追求してはこない。
申し訳ないが、それがありがたかった。
ボクのことならどれだけでも話せるけど、これはリーシャのことだからね。
ボクの口から説明するわけにはいかないんだ。
「綺麗な猫さんよね。食べ方もそうだし」
うん。
中身獣人だからねー。
「それにしても、いろいろありがとうございます」
「何よう、それはこっちのセリフじゃないの。あれだけ困っていた病を解決してくれたんだもの」
「ボクはただ、原因を見つけただけです」
「それでもすごいわよね? 原因さえわかれば、解決策もあるわけだし」
シーラはニコニコしながら席についた。
ランタスの見立てでは、あの病はヘドロスライムの成分を井戸から摂取したことによる中毒症状だと思われるらしい。
この街には薬師はいないものの、隣町に手配して薬を用意すればよくなっていくようだ。
まだすぐに完全に元の状態には戻れないけど、それでもやっと兆しが見えたと言えるだろう。
早くみんながよくなって、元の街に戻るといいな。
この街の人たちはみんなとても親切だったから。
余計にそう願ってしまう。
「ルルドのおかげだ」
「いえいえ、そんな……でも、本当に良かったです」
「ホント、可愛らしい上に、謙遜しちゃって。なんて出来た子なの?」
テーブル越しに腕を伸ばしてたシーラの手が、ボクの頭をなでた。
姉とかいたら、こんな感じなのかな。
こんな風に褒められたことないから、なんか純粋にうれしい。
「謙遜だなんて。ボクたちが泊まれる宿まで、交渉してもらったみたいですみません」
「いいのよ、そんなこと。お安い御用だわ」
簡単に言ってのけてるけど、結構大変だったと思うんだ。
普通の宿ならペットや、ましてモンスターなんて絶対にダメだろうし。
門番さんだって、中の広間でテントなら許可がって言ってたくらいなのに。
まさか宿をとってくれるなんて。
でもこれで三人で、少しゆっくり出来そうだ。
「本当はうちに泊まらせてあげたかったんだけど、狭い上にアニキまでしばらく泊まるって言うし」
「狭い家で悪かったな」
玄関が開いたかと思うと、どこまでも疲れた顔のザイオンが入ってきた。
ああ、なんかきっと大変だったんだろうな。
さっきの戦闘のあとよりも、ザイオンはかなり疲れ果てている。
「こっちはまだ仕事中だっていうのに」
「あら、あなたに代わってこの街を救ってくれた英雄さんにおもてなししていたところなのよ?」
「ああ、それはありがたいが……」
うん。そこじゃないよね、きっと。
知ってる。
「すみません、あんな置手紙残してしまって」
「いや……いいさ。ルルドが街を救ってくれたことには変わりないし、あれぐらいのお願いなら通そうとは思うからな」
「でも手続き大変でしょう?」
ザイオンは『まあな』と言いながら苦笑いしていた。
実際今ギルドの職員は少ない。
一人でその処理をするのは大変だと思う。
「犯人は捕まえたぞ。もちろん罪も告白した」
「そうなんですね。良かったです」
「痴情のもつれらしい。浮気したのが奥さんにバレて、逆上したんだとさ」
「なにそれー。ひどーい」
「だな。奴はこのまま王都へ輸送し、そのあとで罪が確定するだろう」
きっと罪は軽くないと思う。
奥さんを殺してしまったこともそうだが、あのスライムによって病を広めてしまったことも罪に問われると思うから。
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