40 / 75
039 温かな手
しおりを挟む
どういう状況なの、これ。
ここにいろってことなんだろうけど。
手とか、手とか、手とか……。
男の人と手を繋いだのなんて人生初なんですけど。
そもそも私、これでも一応既婚者なのよ。
いいのかな。
「どうせ分かり切った報告だ。貴女が席を立つことはない」
そう言ったブレイズの顔はどこまでも優しく、恥ずかしくて顔を覆いたくなるほどだった。
「で、ニカ報告を」
「あ、はい。えっと……街道にまたモンスターが現れるようになったのと報告が上がりました。前回同様小型のモノだそうですが、最近頻回しており騎士団の派遣を」
街道沿いに小型モンスターか。
確か前の時にもそんな話があったわね。
馬車や積み荷が襲われたって言ってたっけ。
あの時うちの荷物も一度やられて、父が激怒していたのを覚えてるわ。
まだうちの荷物がやられたって話は聞かないから、もう少しあとかな。
ああ、でもそれならちょうどいいものがあるわ。
「幾度討伐しても、こうも頻回だと頭が痛くなるな」
「それならうってつけのものがありますよ?」
「なに⁉」
ちょうど売り込みたかったから、タイミングバッチリね。
私は自分のバッグから、また薬玉を取り出した。
「これはあの時のか」
「はいそうです。実はこれ、灰色ネズミ以外にも有効なんです」
そう、これが他のモンスターにも有効だと分かったのは偶然だった。
前世の時に、うちの積み荷が襲われた時、使用人の一人が持っていたこれを投げつけたことによるのだ。
投げた積み荷の馬車だけは助かり、他の馬車はモンスターに襲われ逃げることが出来なかった。
あの時は結構な損失だったとはいえ、あとからこの薬玉の話を聞いた父がその分の負債を取り戻せたほど稼いだのだ。
「この中に入っている薬剤が小型のモンスターには嫌がられるようで。殺傷能力はないものの、馬車などが襲われた時に投げれば逃げることは可能です」
「でもそれじゃあ、一時的なもんじゃないか」
一時的でもなんでも、逃げられたらいいだけの話でしょうに、ニカは私の提案に突っかかって来る。
「一時的でも離脱できれば、いくらかは騎士団の仕事は減るかと?」
「まぁそれは確かに……。でも高いんじゃ?」
「今ならこちらお値段は銅貨五枚で」
「五枚かぁ」
銅貨五枚は平民が外食のランチで使う程度の値段だ。
とはいっても、父が言った値段よりは吹っ掛けている。
だってそうしないと私の取り分がないんですもの。
なんとしても、離婚の前にお金を貯めなきゃいけないのよね。
こればっかりはぼったくりだけど仕方ないわ。
「その値段なら貴族の馬車や商人の積み荷などに配備してもらっても安かろう」
「ですよね」
さすがブレイズ。ニカよりも話が分かってるじゃない。
「いくつくらい納品できそうだ」
「お時間さえいただければ、いくつでも可能かと」
「そうか。それなら上にその話を出しておこう」
「ありがとうございます。あ、そうだ。この前の下水掃除の契約もそうですが、全て私名義でお願いします」
ココが重要なのよね。
契約内容を父に知られたら大変だわ。
だいたいこの薬玉の活用方法すらあの人はまだ知らないんだから。
「ああ、わかった。そうしよう」
「一時的にはそれで逃げてもらうとして、根本的な解決はどうしますか騎士団長」
「そうだなぁ」
「ん-。根本的になるかはあれですが、やりようはありますよ」
私の言葉に、二人は食い入るようにこちらを見ていた。
ここにいろってことなんだろうけど。
手とか、手とか、手とか……。
男の人と手を繋いだのなんて人生初なんですけど。
そもそも私、これでも一応既婚者なのよ。
いいのかな。
「どうせ分かり切った報告だ。貴女が席を立つことはない」
そう言ったブレイズの顔はどこまでも優しく、恥ずかしくて顔を覆いたくなるほどだった。
「で、ニカ報告を」
「あ、はい。えっと……街道にまたモンスターが現れるようになったのと報告が上がりました。前回同様小型のモノだそうですが、最近頻回しており騎士団の派遣を」
街道沿いに小型モンスターか。
確か前の時にもそんな話があったわね。
馬車や積み荷が襲われたって言ってたっけ。
あの時うちの荷物も一度やられて、父が激怒していたのを覚えてるわ。
まだうちの荷物がやられたって話は聞かないから、もう少しあとかな。
ああ、でもそれならちょうどいいものがあるわ。
「幾度討伐しても、こうも頻回だと頭が痛くなるな」
「それならうってつけのものがありますよ?」
「なに⁉」
ちょうど売り込みたかったから、タイミングバッチリね。
私は自分のバッグから、また薬玉を取り出した。
「これはあの時のか」
「はいそうです。実はこれ、灰色ネズミ以外にも有効なんです」
そう、これが他のモンスターにも有効だと分かったのは偶然だった。
前世の時に、うちの積み荷が襲われた時、使用人の一人が持っていたこれを投げつけたことによるのだ。
投げた積み荷の馬車だけは助かり、他の馬車はモンスターに襲われ逃げることが出来なかった。
あの時は結構な損失だったとはいえ、あとからこの薬玉の話を聞いた父がその分の負債を取り戻せたほど稼いだのだ。
「この中に入っている薬剤が小型のモンスターには嫌がられるようで。殺傷能力はないものの、馬車などが襲われた時に投げれば逃げることは可能です」
「でもそれじゃあ、一時的なもんじゃないか」
一時的でもなんでも、逃げられたらいいだけの話でしょうに、ニカは私の提案に突っかかって来る。
「一時的でも離脱できれば、いくらかは騎士団の仕事は減るかと?」
「まぁそれは確かに……。でも高いんじゃ?」
「今ならこちらお値段は銅貨五枚で」
「五枚かぁ」
銅貨五枚は平民が外食のランチで使う程度の値段だ。
とはいっても、父が言った値段よりは吹っ掛けている。
だってそうしないと私の取り分がないんですもの。
なんとしても、離婚の前にお金を貯めなきゃいけないのよね。
こればっかりはぼったくりだけど仕方ないわ。
「その値段なら貴族の馬車や商人の積み荷などに配備してもらっても安かろう」
「ですよね」
さすがブレイズ。ニカよりも話が分かってるじゃない。
「いくつくらい納品できそうだ」
「お時間さえいただければ、いくつでも可能かと」
「そうか。それなら上にその話を出しておこう」
「ありがとうございます。あ、そうだ。この前の下水掃除の契約もそうですが、全て私名義でお願いします」
ココが重要なのよね。
契約内容を父に知られたら大変だわ。
だいたいこの薬玉の活用方法すらあの人はまだ知らないんだから。
「ああ、わかった。そうしよう」
「一時的にはそれで逃げてもらうとして、根本的な解決はどうしますか騎士団長」
「そうだなぁ」
「ん-。根本的になるかはあれですが、やりようはありますよ」
私の言葉に、二人は食い入るようにこちらを見ていた。
132
あなたにおすすめの小説
結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました
ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。
ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。
王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。
そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。
「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
【3月中ーー完結!!】
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
二十年の裏切りの果て、その事実だけを抱え、離縁状を置いて家を出た。
そこで待っていたのは、凍てつく絶望――。
けれど同時に、それは残酷な運命の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と縋られても、
死の淵を彷徨った私には、裏切ったあなたを許す力など残っていない。
「でも、子供たちの心だけは、
必ず取り戻す」
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔い、歪な愛でもいいと手を伸ばした彼女が辿り着いた先。
それは、「歪で、完全な幸福」か、それとも――。
これは、"石"に翻弄された者たちの、狂おしい物語。
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
白い結婚なので無効にします。持参金は全額回収いたします
鷹 綾
恋愛
「白い結婚」であることを理由に、夫から離縁を突きつけられた公爵夫人エリシア。
だが彼女は泣かなかった。
なぜなら――その結婚は、最初から“成立していなかった”から。
教会法に基づき婚姻無効を申請。持参金を全額回収し、彼女が選んだ新たな居場所は修道院だった。
それは逃避ではない。
男の支配から離れ、国家の外側に立つという戦略的選択。
やがて彼女は修道院長として、教育制度の整備、女性領主の育成、商業と医療の再編に関わり、王と王妃を外から支える存在となる。
王冠を欲さず、しかし王冠に影響を与える――白の領域。
一方、かつての夫は地位を失い、制度の中で静かに贖罪の道を歩む。
これは、愛を巡る物語ではない。
「選ばなかった未来」を守り続けた一人の女性の物語。
白は弱さではない。
白は、均衡を保つ力。
白い結婚から始まる、静かなリーガル・リベンジと国家再編の物語。
婚約破棄のあと、あなたのことだけ思い出せない
柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢セシリアは、王宮の舞踏会で王太子レイヴンから公開の場で婚約破棄を言い渡され、その場で倒れた。
目覚めた彼女は、礼儀も常識も覚えているのに――ただ一つ、レイヴンだけを思い出せない。
「あなたは、どなたですか?」
その一言に、彼の瞳は壊れた。
けれどレイヴンは何も語らず、セシリアを遠ざける。彼女を守るために、あの日婚約を捨てたのだと告げられないまま。
セシリアは過去を断ち切り、王宮の侍女として新しい生活を始める。
優しく手を差し伸べる護衛騎士アデルと心を通わせていくほど、レイヴンの胸は嫉妬と後悔で焼けていった。
――守るために捨てたはずなのに。忘れられたまま、他の男に笑う彼女を見ていられない。
一方、王宮では“偽聖女”の陰謀と、セシリアの血に眠る秘密が動き出す。
記憶を取り戻せば、彼女は狙われる。取り戻さなければ、二人は永遠に届かない。
これは、忘れてしまった令嬢と、忘れられてなお愛を捨てられない王太子が、もう一度“選び直す”恋の物語。
幼馴染に夢中の夫を捨てた貴婦人は、王太子に熱愛される
Narian
恋愛
アイリスの夫ロイは、新婚の頃から金髪の愛らしい幼馴染・フローラに夢中で、妻には見向きもしなかった。
夫からは蔑ろにされ、夫の両親からは罵られ、フローラからは見下される日々。そしてアイリスは、ついに決意する。
「それほど幼馴染が大切なら、どうぞご自由に。私は出て行って差し上げます」
これは、虐げられた主人公が、過去を断ち切り幸せを掴む物語。
※19話完結。
毎日夜9時ごろに投稿予定です。朝に投稿することも。お気に入り登録していただけたら嬉しいです♪
「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚
きぬがやあきら
恋愛
「私に愛まで望むな。褒賞に王子を求めておいて、強欲が過ぎると言っている」
新婚初夜に訪れた寝室で、レオノールはクラウディオ王子に白い結婚を宣言される。
それもそのはず。
2人の間に愛はないーーどころか、この結婚はレオノールが魔王討伐の褒美にと国王に要求したものだった。
でも、王子を望んだレオノールにもそれなりの理由がある。
美しく気高いクラウディオ王子を欲しいと願った気持ちは本物だ。
だからいくら冷遇されようが、嫌がらせを受けようが心は揺るがない。
どこまでも逞しく、軽薄そうでいて賢い。どこか憎めない魅力を持ったオノールに、やがてクラウディオの心は……。
すれ違い、拗れる2人に愛は生まれるのか?
焦ったい恋と陰謀+バトルのラブファンタジー。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる