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終わりと出会い
暗き夜
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「さて、夕飯にしましょう。といってもそんなにある訳じゃないけれど」
残り少ない食料で明日の朝と昼の分を残し、夕飯を出していく。オーレの実、固いパンにジャーキー水豪華とは言えないが素朴な夕飯を3人は食べ進めていく。
「グレス君足りるかい?足りないなら俺の分あげるよ」
「大丈夫」
「本当かい?あんなに走ったらお腹空いただろう。遠慮しなくてもいいんだぞ、といっても俺が言える立場じゃないんだけどな」
グレスを気にかけながら、ラドは食べ進めていくがその手は遅かった。
「大丈夫?食べないと体が持たないわよ?」
「あぁ大丈夫だ。ただ、少しな」
「そう」
ラドはシオンの問いに対して曖昧に返すがラドの心境を察したシオンは深くは追及せずラドの自由にさせた。
家族を失ってまだ2日目だもの、食が進まないわよね。グレスが居るからまだラドは精神が安定しているけどこの状況が長く続いたら良くないわね。
グレスは男だが身長はそこまでない150cmくらいだろう、常に無表情のため鋭さを感じるが顔は整っている。子供らしさも残っているため、見た目からは子供だということが分かる。ラドの子どもは名前からして女の子だろう。ただ子供を失ったというショックから抜け出せず、体形の似ているグレスに自分子供を重ねているのだ。
グレスはグレス、ラドの子どもではないわ。だけど、ラドの悲しさが和らぐのなら今は仕方ないわね。
しばらく様子を見ることを決めると、自分の食事を終わらせた。シオンが食事を終わらせると続いてグレスが食べ終わったがラドは食が進まないようだ。
「無理して食べる必要はないわ。明日食べればいいわ」
「せっかく用意してもらったのにすまない」
「仕方ないわ」
シオンは優しくラドに伝えると、申し訳なさそうな顔をしながら夕飯をシオンに渡した。
「グレス君何か欲しいものはあるかい?あげるよ」
「それじゃあ、オーレの実をグレスにあげてもいいかしら?グレスの好物みたいなの」
「もちろん。グレス君はオーレの実が好きなのか、俺の娘はイーゴの実が大好きだったんだ」
シオンはグレスにオーレの実を渡し食べ始めると、ラドはその様子を優しくも寂しさを含ませた眼差しでグレスを見る。
「そうなのね。良ければラドの家族のことについて教えてもらえないかしら?」
「あんまり面白くはないぞ?」
「大切な娘さんと奥さんの聞きたいのよ。」
「そうか・・・」
ラドは驚きながら、誰かに話したかったのだろう焚火の前に座り、遠くを見ながらゆっくりと話し始めた。
「俺は、フォルトの街でアクロ商会の使用人をやってたんだ。店での雑用や掃除とか商人がやりたがらないことを俺がしてたんだ。その時取引先の食事処で働いていた俺の奥さん、マリナと出会ったんだ」
「マリナは食事処で配膳係をやっていて、目立つ子では無かったけれど仕事が丁寧で肝が据わっていたんだ。ある時客が食事が不味いとマリナに怒鳴っていたんだが、マリナは凛とした態度で食事が合わなかったのなら結構です。おお代は要らないのでお帰り下さいってその客にビシッと言い切ったんだ」
「それは・・・肝が据わってるわね」
「凄いよな。しかも、客は大柄の男だったんだぜ?もう俺はその姿に惚れちまって、猛アプローチを掛けたんだ。始めは軽くあしらわれてたんだが、マリナが好きな花とか食事とかをに誘ってなんとか振り向いてもらったんだ」
「1年間付き合った後に、フォルトの街の劇場を知ってるかい?マリナはその劇場が好きなんだけど、そこで結婚を申し込んだんだ」
「好きな場所で結婚を申し込むなんて素敵ね」
「かっこよく聞こえるだろ?本当は緊張で結婚を申し込むときの言葉は噛んでしまって、マリナに笑われたんだ」
「あら、それでも素敵よ」
「その時のマリナのセリフが、貴方のそういうところが可愛いから一緒に居させて欲しいわ、だったんだ」
「素敵な言葉ね」
「もう、結婚を受けてくれたことに嬉しすぎて号泣してしまって恥ずかしかったけど、最高な思い出なんだ」
残り少ない食料で明日の朝と昼の分を残し、夕飯を出していく。オーレの実、固いパンにジャーキー水豪華とは言えないが素朴な夕飯を3人は食べ進めていく。
「グレス君足りるかい?足りないなら俺の分あげるよ」
「大丈夫」
「本当かい?あんなに走ったらお腹空いただろう。遠慮しなくてもいいんだぞ、といっても俺が言える立場じゃないんだけどな」
グレスを気にかけながら、ラドは食べ進めていくがその手は遅かった。
「大丈夫?食べないと体が持たないわよ?」
「あぁ大丈夫だ。ただ、少しな」
「そう」
ラドはシオンの問いに対して曖昧に返すがラドの心境を察したシオンは深くは追及せずラドの自由にさせた。
家族を失ってまだ2日目だもの、食が進まないわよね。グレスが居るからまだラドは精神が安定しているけどこの状況が長く続いたら良くないわね。
グレスは男だが身長はそこまでない150cmくらいだろう、常に無表情のため鋭さを感じるが顔は整っている。子供らしさも残っているため、見た目からは子供だということが分かる。ラドの子どもは名前からして女の子だろう。ただ子供を失ったというショックから抜け出せず、体形の似ているグレスに自分子供を重ねているのだ。
グレスはグレス、ラドの子どもではないわ。だけど、ラドの悲しさが和らぐのなら今は仕方ないわね。
しばらく様子を見ることを決めると、自分の食事を終わらせた。シオンが食事を終わらせると続いてグレスが食べ終わったがラドは食が進まないようだ。
「無理して食べる必要はないわ。明日食べればいいわ」
「せっかく用意してもらったのにすまない」
「仕方ないわ」
シオンは優しくラドに伝えると、申し訳なさそうな顔をしながら夕飯をシオンに渡した。
「グレス君何か欲しいものはあるかい?あげるよ」
「それじゃあ、オーレの実をグレスにあげてもいいかしら?グレスの好物みたいなの」
「もちろん。グレス君はオーレの実が好きなのか、俺の娘はイーゴの実が大好きだったんだ」
シオンはグレスにオーレの実を渡し食べ始めると、ラドはその様子を優しくも寂しさを含ませた眼差しでグレスを見る。
「そうなのね。良ければラドの家族のことについて教えてもらえないかしら?」
「あんまり面白くはないぞ?」
「大切な娘さんと奥さんの聞きたいのよ。」
「そうか・・・」
ラドは驚きながら、誰かに話したかったのだろう焚火の前に座り、遠くを見ながらゆっくりと話し始めた。
「俺は、フォルトの街でアクロ商会の使用人をやってたんだ。店での雑用や掃除とか商人がやりたがらないことを俺がしてたんだ。その時取引先の食事処で働いていた俺の奥さん、マリナと出会ったんだ」
「マリナは食事処で配膳係をやっていて、目立つ子では無かったけれど仕事が丁寧で肝が据わっていたんだ。ある時客が食事が不味いとマリナに怒鳴っていたんだが、マリナは凛とした態度で食事が合わなかったのなら結構です。おお代は要らないのでお帰り下さいってその客にビシッと言い切ったんだ」
「それは・・・肝が据わってるわね」
「凄いよな。しかも、客は大柄の男だったんだぜ?もう俺はその姿に惚れちまって、猛アプローチを掛けたんだ。始めは軽くあしらわれてたんだが、マリナが好きな花とか食事とかをに誘ってなんとか振り向いてもらったんだ」
「1年間付き合った後に、フォルトの街の劇場を知ってるかい?マリナはその劇場が好きなんだけど、そこで結婚を申し込んだんだ」
「好きな場所で結婚を申し込むなんて素敵ね」
「かっこよく聞こえるだろ?本当は緊張で結婚を申し込むときの言葉は噛んでしまって、マリナに笑われたんだ」
「あら、それでも素敵よ」
「その時のマリナのセリフが、貴方のそういうところが可愛いから一緒に居させて欲しいわ、だったんだ」
「素敵な言葉ね」
「もう、結婚を受けてくれたことに嬉しすぎて号泣してしまって恥ずかしかったけど、最高な思い出なんだ」
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