空っぽ少年と色深き者たち ~世界を彩る物語~

和吉

文字の大きさ
35 / 86
終わりと出会い

暗き夜

しおりを挟む
「さて、夕飯にしましょう。といってもそんなにある訳じゃないけれど」

残り少ない食料で明日の朝と昼の分を残し、夕飯を出していく。オーレの実、固いパンにジャーキー水豪華とは言えないが素朴な夕飯を3人は食べ進めていく。

「グレス君足りるかい?足りないなら俺の分あげるよ」
「大丈夫」
「本当かい?あんなに走ったらお腹空いただろう。遠慮しなくてもいいんだぞ、といっても俺が言える立場じゃないんだけどな」

グレスを気にかけながら、ラドは食べ進めていくがその手は遅かった。

「大丈夫?食べないと体が持たないわよ?」
「あぁ大丈夫だ。ただ、少しな」
「そう」

ラドはシオンの問いに対して曖昧に返すがラドの心境を察したシオンは深くは追及せずラドの自由にさせた。

家族を失ってまだ2日目だもの、食が進まないわよね。グレスが居るからまだラドは精神が安定しているけどこの状況が長く続いたら良くないわね。

グレスは男だが身長はそこまでない150cmくらいだろう、常に無表情のため鋭さを感じるが顔は整っている。子供らしさも残っているため、見た目からは子供だということが分かる。ラドの子どもは名前からして女の子だろう。ただ子供を失ったというショックから抜け出せず、体形の似ているグレスに自分子供を重ねているのだ。

グレスはグレス、ラドの子どもではないわ。だけど、ラドの悲しさが和らぐのなら今は仕方ないわね。

しばらく様子を見ることを決めると、自分の食事を終わらせた。シオンが食事を終わらせると続いてグレスが食べ終わったがラドは食が進まないようだ。

「無理して食べる必要はないわ。明日食べればいいわ」
「せっかく用意してもらったのにすまない」
「仕方ないわ」

シオンは優しくラドに伝えると、申し訳なさそうな顔をしながら夕飯をシオンに渡した。

「グレス君何か欲しいものはあるかい?あげるよ」
「それじゃあ、オーレの実をグレスにあげてもいいかしら?グレスの好物みたいなの」
「もちろん。グレス君はオーレの実が好きなのか、俺の娘はイーゴの実が大好きだったんだ」

シオンはグレスにオーレの実を渡し食べ始めると、ラドはその様子を優しくも寂しさを含ませた眼差しでグレスを見る。

「そうなのね。良ければラドの家族のことについて教えてもらえないかしら?」
「あんまり面白くはないぞ?」
「大切な娘さんと奥さんの聞きたいのよ。」
「そうか・・・」

ラドは驚きながら、誰かに話したかったのだろう焚火の前に座り、遠くを見ながらゆっくりと話し始めた。

「俺は、フォルトの街でアクロ商会の使用人をやってたんだ。店での雑用や掃除とか商人がやりたがらないことを俺がしてたんだ。その時取引先の食事処で働いていた俺の奥さん、マリナと出会ったんだ」
「マリナは食事処で配膳係をやっていて、目立つ子では無かったけれど仕事が丁寧で肝が据わっていたんだ。ある時客が食事が不味いとマリナに怒鳴っていたんだが、マリナは凛とした態度で食事が合わなかったのなら結構です。おお代は要らないのでお帰り下さいってその客にビシッと言い切ったんだ」
「それは・・・肝が据わってるわね」
「凄いよな。しかも、客は大柄の男だったんだぜ?もう俺はその姿に惚れちまって、猛アプローチを掛けたんだ。始めは軽くあしらわれてたんだが、マリナが好きな花とか食事とかをに誘ってなんとか振り向いてもらったんだ」
「1年間付き合った後に、フォルトの街の劇場を知ってるかい?マリナはその劇場が好きなんだけど、そこで結婚を申し込んだんだ」
「好きな場所で結婚を申し込むなんて素敵ね」
「かっこよく聞こえるだろ?本当は緊張で結婚を申し込むときの言葉は噛んでしまって、マリナに笑われたんだ」
「あら、それでも素敵よ」
「その時のマリナのセリフが、貴方のそういうところが可愛いから一緒に居させて欲しいわ、だったんだ」
「素敵な言葉ね」
「もう、結婚を受けてくれたことに嬉しすぎて号泣してしまって恥ずかしかったけど、最高な思い出なんだ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

酔っぱらったせいで、勇者パーティーを洗脳してしまった

透けてるブランディシュカ
ファンタジー
悪友のせいで酔ったら。(※重複投稿しています)仲仁へび

処理中です...