闘士学園の闘争生活

ぎんぺい

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 桜花は焦った。必ず、己の生徒手帳を見つけなければと決意した。あれがなければ学園には入れぬ。投げるよう、大弥に頼んだのは間違いであった。けれども誰が彼女を責められようか。悪いのは全て桜花である。
 桜花は自転車のペダルを漕ぎ続ける。彼は鬼灯荘を出発し、住宅街を抜け、商店街を抜け、『八尺瓊やさかに通り』を疾走していた。
 八尺瓊通りとは六車線ある車道と、その両脇を歩道で挟んだ目抜き通りの一本である。
 その割に人や車の流れが少ないのは、桜花が街の中心からどんどん離れていってあるかであろう。

「手帳どこだぁぁッ!」

 桜花の叫びと共に、自転車の黄龍がキィキィと悲鳴を上げる。彼は目線をあっちこっちに向けながら、たまに走行している車を抜き去っていく。

「おーい、そこの自転車止まれー」

 そんな彼の背後で、ピーという笛の音と男の声がした。
「げっ」声を聞いた桜花は呻く。即座にキキーと黄龍のブレーキをかけた。
 止まった桜花の脇に一台の自動車が停車する。
 青と白のツートンカラーで塗られた車体の側面には、黒文字で大きく『風紀委員会』と書かれていた。

「ちょうどいいとこで会ったな鬼守。少し面貸せ」

 自動車の前の車窓から顔を出したのは、黒いサングラスをかけた男だった。
 桜花は彼を知っていた。

「すまねえな大門寺だいもんじ、俺は今、急いでるんだ。世間話なら後にしてくれ」

 桜花はサングラスをかけた男――大門寺にそう言うと、ペダルを漕ぎだそうとした。
 すると、「待て」という大門寺の言葉と共に、車窓から長い棒がぬっと飛び出して桜花を遮った。鈍く黒光りするそれは、大門寺が愛用するショットガンであった。

「まあ、そう急ぐな。ちょっとテメーに聴きたいことがあるだけだ。それが済んだらすぐ退散する」
「聴きたいことだ?」

 桜花は先を急ぎたかったが、相手は風紀委員の大門寺である。下手に逆らおうものなら、余計に時間が掛かることを分かっていた。
 風紀委員とは学園による執行機関のひとつ、【風紀委員会】に所属する者の通称である。構成員の殆どが学生であり、彼らは学園の秩序を守るため、学園の内外を問わず、日夜パトロールに励んでいた。

「なんだよ、その聴きたいことってのは?」
「ああ。鬼守、テメー……昨日の夜何してた?」

 桜花は脇目も振らず自転車を発進させた。

「待ちやがれテメェこのブタ野郎ッ!」

 ダァンと大門寺が桜花に向かって発砲する。
 ただし、発射されたのは鉛の弾ではなく、灰色に輝く光りの弾丸であった。
 光の弾丸は真っ直ぐ、桜花の後頭部へと飛んでいく。
 ぞわりと嫌な予感がした桜花は、正面を向いたまま急遽、上半身を横に傾けた。彼の頬の横をブワッと風圧が通りすぎる。
 桜花から外れた光の弾丸は、そのまま車道の脇に並ぶ街路樹へ着弾する。瞬間、木の太い幹がバァンと音を立てて爆ぜた。

「この野郎、大門寺! そりゃあ実戦闘型じゃねえかッ!」

 桜花は漕ぎながら後ろを振り向き、大門寺に向かって叫んだ。


    ◇


「たりめえだ。下手人に慈悲はいらねえ、それが俺のやり方だ」

 大門寺はサングラスの位置を直しながら言った。
 桜花との距離がはなれると、彼は車の座席に深くもたれかかった。

「おい、車ぁ出せ。ヤツを追うぞ」
「いや、その前に大門寺先輩。流石に実戦闘型はちょっと」

 すると、先程から大門寺の隣に座っていた男が口を開いた。彼は顔を引きつかせながら車のハンドルを握っている。

「せめて非戦闘型にしてもらえると……」
「うるせえなヤス。テメーはさっさと車、走らせねえかッ」
「は、はいィー!」

 額に冷や汗を滲ませながら、ヤスと呼ばれた男はアクセルを思いっきり踏み込み、車を急発進させた。

「待ってろよ鬼守、今日こそテメーに引導を渡してやるからな」

 大門寺の口角が微かに上がった。


    ◇


 一方、大門寺から逃げ出した桜花は、八尺瓊通りから脇道へと入っていた。あのまま同じ通りに居てはマズイと判断したからである。
 高い塀に挟まれた脇道で、桜花は今、なぜ昨日の行動がバレたんだと、その原因を考えていた。
 この時、当初の目的であった生徒手帳の探索は、既に彼の頭の中から消えていた。

(正直、バレるとは思っていたが、なんぼなんでも早すぎる。捜査した風紀委員が優秀だったとしても、昨日の今日で犯人の目星をつけられるとは思えねえ。ということは、だ)

 彼は思考の末、ひとつの結論に達した。
「まさか、河原戯かわらぎの奴が……」と桜花は呟いた。その時である。
 ウゥーというサイレンの音が彼の耳に入ってきた。
 桜花はバッと後ろを振り返った。風紀委員の車が、遠くからどんどんと桜花に迫ってきていた。

『あ、あー、テステス。そこの自転車漕いでる犯人に告ぐ、今すぐ蜂の巣にしてやるから止まるんじゃねえぞ』
『いやっ、止めましょうよそこは』

 車のスピーカーから大門寺とヤスの声が発せられる。

『バカヤロー、大人しく従われちゃあ撃てねえじゃねーか』
『だからそんなバンバン撃っちゃ駄目ですって! また始末書の山に埋もれたいんすか』
『始末書が怖くて犯人撃てるかよ』
『せめて相手が抵抗してからとかにしてください』
『心配すんな。抵抗したって事にしとけば問題無え』
『それ偽装っすよっ!』
『いいから、テメーはもっとスピード出せェ!』

 ダァンと音がした後、車がさらに迫ってきた。
「相変わらず無茶苦茶な奴」タラリ、と桜花の額から汗が流れる。
 あんなんでよく、風紀委員が務まるなと思う。
 しかし、このままでは追いつかれるのも時間の問題だった。まだ距離があるとはいえ、自転車と自動車では流石に分が悪い。
 仕方ねえな、と、桜花は腹を決め、自転車を止めた。
 素直に投降しようとか思ったわけではない。
 彼は自転車を反転させると、また漕ぎ出す。迫りくる自動車に向かって。


    ◇


「だ、大門寺先輩、鬼守のやつ、こっちに走って来るんですけどォ!」
「そうか」
「そうか、じゃないっすよ! 車止めるっよ、良いっすね?」
「バカヤロー、このまま走り続けろ。絶対エンジンを止んじゃねえぞ」
「いやそれだと、って、何やってんすか大門寺先輩」

 ヤスの隣に座る大門寺は、ショットガンを車の天井に構えていた。
 ダァンと、彼はそのまま撃った。
 彼らの乗る自動車が、オープンカーとなった。

「何やってんすかーッ!?」

 大門寺は答えることなく、座席の上に立ち上がった。
 体を外に出すと、激しい風圧に襲われる。しかし、彼はビクともせず、サングラス越しで正面を見た。
 視線の先には、錆びた自転車でこちらに向かってくる、桜花の顔があった。
 大門寺は、ショットガンのハンドグリップをスライドさせる。本来、弾の装填を行うための動作であるが、この銃には実弾が入っていない。ならば意味なくやっているのかと問われれば、そうでもない。
 大門寺は、自身の目線の高さにショットガンを構えると、銃口を桜花に合わせた。
 一連の動作は、彼にとっての儀式であった。集中力を上げるための。
 銃身に灰色の光が帯びる。さきほど撃った光の弾丸と同じ色の光である。これが大門寺の【闘気】の色であった。
 桜花との距離が更に縮まっていく。あとニ秒もすれば激突するだろう。
 その前に決めるがな。
 大門寺の集中力が最大に高まり、銃口から、ついに闘気が放たれる。
 ――はずだったのだが、あるものを見たことにより、その集中力と闘気は一気に四散した。
 彼の視界に入ったのは、桜花より更に後ろ、反対車線からやってくる、一台のバイクであった。

「え、大門寺先輩?」と、ヤスが声をかけた瞬間。
「ガッ!」大門寺の顔に、自転車のタイヤがめり込む。
 それは操縦者と共に跳躍した、桜花の自転車であった。
 タイヤが退くと、上半身だけが後ろ向きに倒れる。
 顔に縦の一本線を作った大門寺は、ブラブラと鯉のぼりのように体をはためかせた。そして口から「か、河原戯さん」とだけ漏らすと、彼はそのまま気を失った。

「だ、大門寺せんぱーいッ!」

 ヤスの叫びが風に乗ってこだました。


    ◇


 大門寺の顔面を自転車で轢き抜いた桜花は、自動車を乗り越えると、そのまま後ろを振り返ることなく、道路を直進した。
 ヤスの叫びが聞こえたが、あの様子だと直ぐには追ってこまい。
 大門寺をノらせて虚を衝くための突進だったが、ああも上手くいくとは思わなかった。途中、何かに気を取られたように見えたが。

「何はともあれ助かったぜ」

 桜花は自転車の速度を緩めながら、一息つく。
 ふいにパシャッと横から閃光が瞬いた。向くと、隣を一台のバイクが走っていた。黒豹を思わせる車体の上には、黒髪の少女が跨っていた。
 彼女は片手でハンドルを操作し、もう一方の手にはカメラが握られていた。

「おはようございます桜花さん。朝からまた阿呆なことをしてますね」

 レンズがこちらに向けられる。パシャッという音と共に、フラッシュが焚かれた。

河原戯かわらぎ。この野郎、よくもノコノコと現れおったな」
「いえいえ、助けたお礼なんて結構ですよ」

 肩にかかる黒髪を揺らしながら、少女――河原戯は笑顔で言った。

「誰が礼なんぞするかッ。こちとらお前の腹の中なんぞ、とっくにお見通しよ」
「おや、なんの事ですかね?」
「恍けるなッ。河原戯お前、昨日の事を大門寺のやつに話したな」
「ええー、私、喋ってなんかいませんよ」
「本当かぁ?」
「本当ですよ、嫌ですね疑り深い。ただ、メールを送っただけです」
「同じこったろうがッ!」

 桜花が河原戯に向かって腕を伸ばす。しかし河原戯が遠ざかったため、その手は空を切るに終わった。
ちっ、と舌を打つ。
 すると河原戯がこちらに向かって何かを投げてきた。
 つい、条件反射で掴み取ったそれは、見覚えのある学生手帳であった。

「こ、これは……」

 ピーンと桜花は当初の目的を思い出した。そして、自分がすっかり忘れていた事にも気づく。

「ねえ、お礼なんて良いって言ったでしょう?」

 ニンマリと河原戯が笑う。

「くっ、お前いったい、これを何処で」
「いやあ、偶然です偶然。私の家の近くで、たまたま落ちてたのを拾っただけですよ」

 そういえば、と、桜花は更に思い出す。学生手帳が飛んでいった方角は、ちょうど河原戯の家がある方だった事を。

「というか、何故あんなとこに落ちてたのか、私の方が聞きたいんですけど」
「い、色々あったんだ」
「えー、誤魔化さないでくださいよー」
「シャラップ! 俺には守秘義務というものがある。だが、とりあえず礼は言っとく」
「うーん、まあ良いですけど。大体想像できますし。それより桜花さん、こんなとこでウロウロしてて時間、大丈夫なんですか?」
「あん?」

 桜花は時刻を確認するため、生徒手帳を開いた。画面には、八時十三分と表示されていた。
「げぇーッ!?」と顔を歪ませる。

「もう少しで授業が始まりますね。ま、なんにせよ遅刻でしょう。ご愁傷さまです桜花さん――て、あれ?」

 河原戯の言葉を最後まで聞くことなく、既に桜花は、彼女の遥か遠くを走っていた。
 啓明にペダルを漕ぐ。どうしても今日ばかりは、遅刻をするわけにいかなかった。

「補習は嫌だああああぁ!」

 桜花の叫びが風に乗ってこだました。
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