珈琲ガレット調布店 不器用な神さまたちの戯れ

谷村にじゅうえん

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第4章 疱瘡の乱

7,病の神たち

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 それから2人は疱瘡の神を見つけだすために、病の神を探した。

「病の神は……」

 詩は夜の街に目をこらす。

「うへえ、ウヨウヨいるなあ……」
「えっ、どこ?」
「ほらそこに! 流感りゅうかんの神に、の神に……」

 祓戸が指さした方を見ると、確かにそこに数え切れないほどの小さな神がいる。

「えええっ! ウソ……」
「ウソじゃねーよ」
「そっか、これは感染症が流行るわけだなあ……」

 どうも病の神は祓戸には見えていて、詩では簡単には見えないようだ。
 祓戸が指さすことでようやく姿を現わす。
 というより、意識を向けなければ、人間には見えないものなのかもしれない。
 祓戸や少名毘古那や疱瘡の神は人間の目にも見えるのに、不思議だ。

「あー、あっちに大勢いた! あいつらも個路無の神みたいだな」

 また祓戸の指さす方を見ると、王冠をかぶった子供たちが飲み屋街の入り口にたむろしていた。
 牙を見せて笑う子供たち。危険な香りがぷんぷんする。
 詩は半ば無意識に、自分のマスクの位置を直した。
 そこへ通りから出てきた人がくしゃみをして、新たな神々がぱっと散らばる。

「なんか腹減ったナー、人間にでも取り付いてヤロ!」

 そんな声が聞こえてきて、病の神のひとりが詩の方へ飛んできた。

「わっ!」

 横から祓戸が手を伸ばし、すかさずそれを捕まえる。

「ナンダオマエ!」
「俺は祓戸の神だ、けがれや災いをはらうのが専門。ってことで大人しく祓われろ」
「ヤメロー! 放セェエエ!」

 彼の手の中で、小さな病の神は手足をばたつかせている。

「そうか、祓われたくないか。だったら疱瘡の神の居場所を教えろよ」
「疱瘡サン!?」
「ああ。あいつはどこにいる」

 祓戸が手の中の神を、目の高さまで持ち上げた。

「怖い怖い怖い! 疱瘡サンは怖いヨ」

 どういうわけかその神は、捕まえている祓戸でなく疱瘡の神のことを恐れている。
 祓戸がちらっとこっちを見たけれど、詩にもその理由はわからなかった。

「疱瘡サンを見つけてどうスルノ……? 会ったら死ぬヨ?」

 病の神はガクガクと震えている。

「死ぬってなんだよ、神が死ぬわけないだろう」

 祓戸は疑わしげに彼を眺めた。

「さっきもピカピカの神サマが来て、疱瘡サンに倒されて死んだヨ!」
「ピカピカの神さまって……まさか、少名毘古那さん!?」

 彼の光り輝くオーラが脳裏をよぎる。
 詩が驚く一方で、祓戸はやはり病の神の言葉を信じていないようだ。

「少名毘古那が疱瘡ごときに負けるわけねえって」
「……死んでルヨ、あいつは死んでル……」

 病の神が、飲み屋街になっている薄暗い路地の奥を指さして言った。

「……マジで言ってんのか?」

 祓戸がようやくそっちに目を向ける。
 その瞬間、病の神が彼の手の中からするっと抜け出していってしまった。

「おいこらっ、待て!」
「ごめんネー!」

 声が聞こえた時にはもうその姿はない。

「クソッ、あいつ、逃げるためにウソつきやがったのか」

 祓戸が悔しそうに舌打ちした。

「いや、でも……」

 何かおかしい。“ピカピカの神さま”なんてそんなウソ……。ウソならもっと当たり障りのないことを言うはずだ。
 詩は暗い路地の奥へと目をこらす。

「どうしよう、少名毘古那さんが……」
「少名毘古那がやられるわけ――……って詩?」
「行こう!」

 詩は祓戸の腕を引き寄せ、路地の奥へと走りだした。
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