後悔日記

戦国 卵白

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夢か 現実か

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~智也の三日間~  夢か現実か


「智也!大丈夫か!?」
そう言って俺の病室に入ってきたのは、吉田 斗真。 俺の親友だ。
昨日の夜。辺りは真っ暗で、雨も強く降っていた。
そんな中ひとりで歩いて帰っていた俺は運悪く車にはねられた。体が頑丈だったこともあり、右手右足の骨折にとどまったが、次の写真のコンクール用の写真を撮りには行けなさそうだ。今までどんなコンクールにも出品してきたから、ちょっと残念だ。
「ああ、大したことねーよ」
「僕が、送っていけばよかったんだ。あんな暗いのに一人で帰らせたから」
斗真は暗い顔をして、自分を責め続けている。
「なぁに言ってんだ、おめぇはオカンかっての!俺は一人で帰れるわ!ったく帰りながら好きな子のこととか考えるもんじゃねーな。車に突っ込み入れられたわ!」
「ハハッ、智也らしい。でも本当に大丈夫?それに…コンクールもさ」
やはり、斗真はわかっているのだろう。本当にいい友達を持ったものだ。
「ああ、まぁしゃあねぇよ。別にまだコンクールはあるしな。それより、俺の好きな子トークはスルーかよ」
そういって話をそらし、小一時間ほど話したのち、斗真は学校に行くと言って俺の病室を後にした。


そのあと、特に何もすることのないまま時間だけが過ぎていった。
両親は共働きで、二人とも夜には帰ってくるが昼間はあまり家にはいない。
とはいえ、午後六時くらいに二人そろって俺の病室に駆け込んできては身を案じてくれた。
明日、一応脳のCTをとって以上なければ退院ということになるようだ。
心配性が過ぎる両親に半ば監視に近い状態で見守られながら眠った。



「ふぁ~~ぁあ、あ?あんっ!?」
朝起きると、そこは病室ではなく自室。それに昨晩つけていたギプスも取り払われ骨が折れている気配もない。
「一体何が起きてんだ??」
昨日、俺は入院してたんだぞ。父さんと母さんが無理やり俺を連れ帰ったのか?いや、そんなことをするほど馬鹿ではない。いや、親馬鹿ではあるのだが…。

——なんで治っているんだ?


夢…って訳ねぇよな。痛かったし。普通に折れてたし。でも、今なに考えてもなぁ?
俺はいつもの癖で、机に置いてあるスマホを開いた。

――5月10日

俺が入院する前々日だった。
つまり、状況からかんがみて、時間が戻ったと考えるのが普通なのだろうか?
でも時間が巻き戻るだなんて、漫画の世界じゃあるまいし…。

とりあえず、ここで何考えてもしょうがない。
そう思った俺はやけにリアルな夢を見たのだと結論付け、学校に向かった。


最近受けたばかりの授業をまた受けるというのは新鮮なものであった。
授業の理解度がぐんと跳ね上がった気分になったが、一番は、英語の島中先生の個性的な授業に対応できたことが僥倖であった。

昼休みになり、親友の斗真と一緒に弁当を食べる。
斗真は今日も外を見てぼーっとしている。弁当を食べる手は止まっていて、つまらなそうな顔である。
「斗真!またボーーーっと外みてー何考えてんだ?」
はっと思い出したかのように弁当を食べ始め、別に何でもいいだろ。と軽くあしらわれてしまった。
まさか斗真に好きな人が!視線の先にいる女子は…あの子かーあの子はハードル高いと思うけどなー。
いや、斗真ならいけるか?童顔だしもしかしたら気に入られるかも…。
そんなことを言ってみたが、反応すらしてくれなかったので気になることを聞いてみた。
「そういや、斗真。お前なんか変なこと起きてないか?」
「変なこと?例えば?」
そう聞き返されると返答に困ってしまう。なんか時間戻ってね?など言えるはずもない。
「なんかやけにリアルな夢を見るとか?妙にデジャブることが多いとか。」
何かを思い出そうとしたようだが、何もなかったようで
「いや、ないかな」
と答えられてしまった。俺はそうかと返し、このやけにリアルな夢は俺だけが見ているものとした。
「わかった、俺の思い過ごしか…。ありがとう」
残っていた弁当をかっ込み、馬鹿話を続けた。

いつもと同じ放課後を過ごし、結局のところ何も解決しないまま謎の現象の真相は俺の中に気持ち悪く残り続けた。

5月11日
スマホの画面で日付を確認し、また異常が起こっていないかをきちんと確認する。
毎日見ている天気予報では降水確率0パーセントだったから傘を持たずに家を出た。


「最悪だ…」
天気予報は外れて、雨が行く手を阻んでいた。
当然濡れて帰るしかないのだが、ここから自分の家は少し距離がある。
雨宿りでもしたほうがいいかと思い、あたりを見渡すと見慣れた人影があった。
「斗真ー、俺も入れてくれよー!」
そういい無理やり斗真の小さい傘に体を滑りこませる。
俺のほうが背が高いから少しアンバランスになってしまった。
「やめろよ、せまいから」
「じゃあ俺に、ずぶぬれで帰れと!家まで二キロくらいあんだぜ」
二人で並んで歩きだしたのはいいが、傘が機能しないくらいに土砂降りになってしまった。
「わりぃ、ちょっとお前んちで雨宿りさせて」
「ちょっとこれはきついよな。走ろう!智也」
斗真の家では、いろいろと世話になり夕飯までいただいてしまった。
いつまでたってもやむ気配のない雨は、俺は憎らしく見ていた。

――なんか、あの夢と一緒だな…

傘を借り、感謝の言葉を述べてから斗真の家を出た。



確かここらへんで…だったかな?
俺は、夢の中で車にはねられた場所まで来ていた。何にもおこらない。
やはり夢だったのかと思っていると、荒い息と走りなれてなさそうな足音が聞こえる。
「智也!!」
振り返るとそこには斗真がいた。
「お前傘も差さずになーにしてんの?」
「あっ」
斗真は自分がどんな状況でここにきているのか改めて確認して、いろいろな感情が入り混じった顔をしている。
「心配で来てくれたのか?そんな必死で!あぁ、俺はいい友を持ったもんだ!」
でも、なんで斗真はこんなことをしたのだろう?斗真は夢には出ていなかったけど…。
「ヤバい!!」
その声と同時に、強い力でうしろにひっぱられる。突然のことで何が何だかといった感じだったが、俺のすぐの後ろをかなりのスピードの車が走り去っていった。
「ちょ、まてやー―!」
俺は立ち上がって文句を言いまくったが止まる気配も、聞こえる気配もなかった。
俺を引っ張ってくれたのは斗真である。今もしりもちをついて安堵の表情である。

――どうして、斗真はここに?なぜ、俺を助けれた?

もともと運動神経がよくないはずの斗真のあの行動はまるで未来がわかっているかのようだった。
「っち!なんだよあの車!だけど…ありがとな斗真!」
親友だけでなく、命の恩人にまでなってくれた斗真に感謝した。


5月12日
斗真にいつもとおんなじ挨拶をして、改めて昨日のことについてお礼を言う。
放課後には、一緒にコンクールに出品するための写真を撮りに行った。

「お前、俺が車にひかれるってもしかして知ってた?」
斗真の顔がこわばる。昔から隠し事をするのがへたくそすぎるんだよな。
「そんなの知ってたわけないだろ。知ってたら寝巻のまま傘も差さずに雨の中走ったりしないだろ。」
「確かにそうだな、いやーびっくりしたよ振り返ったら、髪ぺっちゃんこですげー荒い息してる斗真がいたかんなー」
結局その日は良い写真が撮れずに明日に持ち越すことにして、帰宅することにした。



斗真はなぜあの場にいたのだろうか?あの夢は現実だったのか?
でも、斗真との会話がなければ俺は普通に家に帰っていたはずだ。
あの夢について疑問が多く残したまま、俺は眠りについた。
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