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その時、私は一瞬で過去の前世の記憶を取り戻した。
言葉にすればたったこれ一行だけのことだけれど、死の瞬間の走馬灯のように
それまでの人生を僅か数秒で振り返るように、私は前世の記憶を一瞬にして回想した。
それは一本の映画のようと言えばそうだし、違うと言えば違う。
一瞬のうちに流れてくる誰かの感情に別人を仮体験している不思議な感覚。
もう一人の自分が流れ込んでくるようで、元からあった記憶を取り戻した気持ちでも
あるし、思い出しただけだった気もする。
一言で言い表せはしない感覚で、しかし、どこかその瞬間に”目覚めた”と
告げる私がいた。
一瞬前と今の自分は違う。そう言える何か確かな違いが自分の中にあった。
例えば。
「お前との婚約をこの場で破棄する!」
声高に宣言する自分の婚約者を冷静に眺めていられる自分がいた。
どうしてここで悲嘆にくれずに立っていられるのか不思議でならないが
自分の全て、とまで思っていた彼の言動にも私は素直に受け入れるだけの
気持ちの余裕だけでなく、周囲を見渡せる冷静さまであった。
私は断罪される令嬢。サラサ・ナーゼ。ナーゼ公爵家の長女で
私を苦りきった顔で睨むのは婚約者だった?ロバート・ローゼ王子。
その傍らにいるのが私を姉のように慕うといった男爵令嬢のアリーア嬢。
その周囲にロバートと同じ苦虫でも噛んだような怖い顔で睨む幼馴染でもある
王子の側近の少年たち。
私は知っている、この場面を。
一人の少女を取り囲むこの面々の顔を。
この光景を。
ああ、そうだ。これは。
「無料の乙女ゲーだから、ネタゲーでも暇つぶしでいいやって
やっても後悔したくそげーだ。」
思わず嘆きのあまり無意識に声に出していってしまった私はどっと疲れを感じる。
その私のこの場では意味不明だろう言葉に一人だけ反応したヒロインちゃんなアリーア。
それに気づいてももうどうでも良いと思う、さめた自分。
どうしてくれようこれまでの私の無駄な努力。
王子のためにと頑張った今までの時間に王子へと向けた熱い思慕。
それが一気に萎んだ今、私を包む虚しさ。
王子へと向けていた恋する熱い思いはこの世界を舞台とするゲームを
思い出した瞬間に霧散した。
なんで、どうして、今までこんなゲームの舞台で私は必死に恋していたんだろう。
そのことに疑問を抱かなかった自分に驚くと同時に踊らされていた自分に笑えた。
気づいてしまえば、もう過去には戻れない。
「フフフ…。」
「気でも触れたか、極悪非道の悪役令嬢がっ!」
思わず笑った私に王子が私の動揺ととったのか
投げつけた言葉が更に私の笑いを誘う。
悪役令嬢って、あーたその台詞。
なんて滑稽な台詞だろう。ゲーム上の台詞と思えば脚本にいいたい。
これ少しメタい発言じゃないか?なにをどうして私が悪役と決まっているのか?
あはははと声を上げて大笑いしそうになるのを
大真面目の周囲に気を使って口元を押さえてこらえた。
ああ、もうだめ。うん、もう無理。
「今更、自分が犯した罪の重さに気づいて振るえでもおきたか。
そうだ、お前は未来の王妃として令嬢の模範となるべきところを
その立場と権力を傘にきて、数々の悪行をこのか弱い少女に犯してきたのだ。」
そう言ったのは宰相の子息のインテリメガネの兄。
「逃げようと思っても無駄だ。」
ここからの逃亡を予防する為に私の後ろに立ったのは肉体系の
短髪に爽やかスポーツタイプのメガネをかけた細マッチョの少年。
「もう君がアリーアにした嫌がらせはすべて分かってるんだ。
最後の悪あがきなんてみっともないから清く認めなよ。」
ふわふわの金髪の髪に青い瞳で一見して人の良さがにじみ出る神官を多く輩出する
現神官長の甥である天使のような柔和な優男が神の代行者のような厳かな
声でメガネをくいっと持ち上げて私を諭す。
その時、私は一瞬で過去の前世の記憶を取り戻した。
言葉にすればたったこれ一行だけのことだけれど、死の瞬間の走馬灯のように
それまでの人生を僅か数秒で振り返るように、私は前世の記憶を一瞬にして回想した。
それは一本の映画のようと言えばそうだし、違うと言えば違う。
一瞬のうちに流れてくる誰かの感情に別人を仮体験している不思議な感覚。
もう一人の自分が流れ込んでくるようで、元からあった記憶を取り戻した気持ちでも
あるし、思い出しただけだった気もする。
一言で言い表せはしない感覚で、しかし、どこかその瞬間に”目覚めた”と
告げる私がいた。
一瞬前と今の自分は違う。そう言える何か確かな違いが自分の中にあった。
例えば。
「お前との婚約をこの場で破棄する!」
声高に宣言する自分の婚約者を冷静に眺めていられる自分がいた。
どうしてここで悲嘆にくれずに立っていられるのか不思議でならないが
自分の全て、とまで思っていた彼の言動にも私は素直に受け入れるだけの
気持ちの余裕だけでなく、周囲を見渡せる冷静さまであった。
私は断罪される令嬢。サラサ・ナーゼ。ナーゼ公爵家の長女で
私を苦りきった顔で睨むのは婚約者だった?ロバート・ローゼ王子。
その傍らにいるのが私を姉のように慕うといった男爵令嬢のアリーア嬢。
その周囲にロバートと同じ苦虫でも噛んだような怖い顔で睨む幼馴染でもある
王子の側近の少年たち。
私は知っている、この場面を。
一人の少女を取り囲むこの面々の顔を。
この光景を。
ああ、そうだ。これは。
「無料の乙女ゲーだから、ネタゲーでも暇つぶしでいいやって
やっても後悔したくそげーだ。」
思わず嘆きのあまり無意識に声に出していってしまった私はどっと疲れを感じる。
その私のこの場では意味不明だろう言葉に一人だけ反応したヒロインちゃんなアリーア。
それに気づいてももうどうでも良いと思う、さめた自分。
どうしてくれようこれまでの私の無駄な努力。
王子のためにと頑張った今までの時間に王子へと向けた熱い思慕。
それが一気に萎んだ今、私を包む虚しさ。
王子へと向けていた恋する熱い思いはこの世界を舞台とするゲームを
思い出した瞬間に霧散した。
なんで、どうして、今までこんなゲームの舞台で私は必死に恋していたんだろう。
そのことに疑問を抱かなかった自分に驚くと同時に踊らされていた自分に笑えた。
気づいてしまえば、もう過去には戻れない。
「フフフ…。」
「気でも触れたか、極悪非道の悪役令嬢がっ!」
思わず笑った私に王子が私の動揺ととったのか
投げつけた言葉が更に私の笑いを誘う。
悪役令嬢って、あーたその台詞。
なんて滑稽な台詞だろう。ゲーム上の台詞と思えば脚本にいいたい。
これ少しメタい発言じゃないか?なにをどうして私が悪役と決まっているのか?
あはははと声を上げて大笑いしそうになるのを
大真面目の周囲に気を使って口元を押さえてこらえた。
ああ、もうだめ。うん、もう無理。
「今更、自分が犯した罪の重さに気づいて振るえでもおきたか。
そうだ、お前は未来の王妃として令嬢の模範となるべきところを
その立場と権力を傘にきて、数々の悪行をこのか弱い少女に犯してきたのだ。」
そう言ったのは宰相の子息のインテリメガネの兄。
「逃げようと思っても無駄だ。」
ここからの逃亡を予防する為に私の後ろに立ったのは肉体系の
短髪に爽やかスポーツタイプのメガネをかけた細マッチョの少年。
「もう君がアリーアにした嫌がらせはすべて分かってるんだ。
最後の悪あがきなんてみっともないから清く認めなよ。」
ふわふわの金髪の髪に青い瞳で一見して人の良さがにじみ出る神官を多く輩出する
現神官長の甥である天使のような柔和な優男が神の代行者のような厳かな
声でメガネをくいっと持ち上げて私を諭す。
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