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インタビュー(記者side)

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 ショートプログラム優勝者である椎名楓記者会見ということで会場にはかなりの記者が集まっていた。
あまりの多さに急遽会場を変更し、より広い所へと移動した。




『ただいまより、ロシア杯ショートプログラム女子優勝者である椎名楓さんの記者会見を行いたいと思います。

質問の際は事前に配布されたカードを上げてください。』




 これだけ記者がいれば誰かしらが望む質問をしてくれるだろう。そう思ってか、そんなにカードを上げる記者はいなかった。




『17番の方。』


「優勝おめでとうございます。今の率直な気持ちをお聞かせください。」


『ありがとうございます。

まだフリーがあるので気を抜かずに過ごしたいと思います。』




 英語で返答した。12歳ながらも流暢な英語に驚く。
事前情報で彼女は日本生まれの日本育ちだとあったからだ。




『31番の方。』


「4回転とはいえ5構成、7回のジャンプと少なく感じるのですが、なぜかお答えください。」


『脚に負担がかかるのであまり多くは跳べないんです。フリーでよりよいパフォーマンスができるよう、
ショートはセーブしました。
フリーでの演技、決して失望させないとお約束します。

目指すは歴代最高得点。観客の皆さんには今日以上の
パフォーマンスを見せられるよう、頑張ります。』




 女子の歴代最高得点は166.62で男子だったら224.92だ。女子の方の記録にしろ、少なくとも4回転は4回跳ばなくてはならない。


 【今日以上のパフォーマンス】という言葉に含みを感じたのは気のせいか?4回転を減らすと言っていた。
【今日以上】であるとすれば4回転は5回か6回、
もしくは新技か?


4回転アクセルは男女共に成功者はおらず、世界初の快挙となった。もしかして5回転?




(いや、まさかな……)


『1番の方。』


「デビュー戦にロシア杯を選んだ理由をお聞かせください。」


(おっと、まだ質問は続いていたな。)




 考えるのは後にして、今はこちらに集中しよう。




『ロシアはフィギュアスケートの強豪国で本拠地での開催となれば実力者が多く揃うと思い、参加することを決意しました。

年間の大会参加数に制限がある以上、諦める大会が出ます。よりハイレベルの大会を制し、経験を積みます。』


『59番の方。』


「明後日の早朝に選手の演技構成が発表されますが、
教えていただけないでしょうか?」




 当日の早朝に演技構成が発表されるのは都合上であって規定がある訳ではない。
故に選手がインタビューで話してもいいのだ。
普通の選手ならば当日まで待つのだが、椎名選手は
注目度が大。知りたくなるのも仕方ない。




『予定では3連続のコンビネーションや4を4つは跳ぶつもりです。

後は当日をお楽しみください。』


『以上で会見を終わりたいと思います。』




 一斉にフラッシュがたかれ、退室する様子を写している。




「見出しは【新星現る 謎多きフリーへ】だ!」




 自身の所属するテレビ局にそう電話をした。
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