サブキャラ転生したけどロマンがあればそれでいい

オロシィ

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一章

人影?

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美味しい焼き魚を食べ終わり、喉も腹も満たされたところで、再び人里を探すことにしよう。
この川に沿ってずっと下っていけば水と食料には困らないし、いづれ森を抜けることもできるはずだ。
そう思いながら【感知の術】を発動させると川上の方に小さい子供のようなシルエットが5つ程見えた。
水を汲みに来た子供達だろうか。その場合は川上に村か集落があると信じていいだろう。

たった今川下に向かうと決めたところだったが人影を見つけてしまったら話は別である。
人里を見つけるにはまず人を見つけなければならないのだから。
子供達のシルエットまでの直線上に他の動物がいる様子もないし急に現れたら驚かれて逃げられてしまうかもしれない。
今回は隠密コンボは使わずに近づいてみよう。

【感知の術】を定期的に発動させつつ、ゆっくり近づいていき、もうすぐ姿を捉えられそうなところまで来た。
すると子供達は水を汲み終わったのか川から離れて森の中へ入って行こうとしているようだった。
あまり森の中に入られると厄介なので少しペースを上げて小走りで子供達に近づいていく。

よし、この木を掻き分ければもう目の前に...。

「ねぇ君たちこの近くの村のk....っ!?」

俺の目に飛び込んできたのは、焦茶色の肌に動物の毛皮らしきものを纏い、尖った耳とぎょろぎょろした目を持った異形の者達。
おそらくこれはそう、ゴブリンだ。
ゴブリン達は草木の間から突然現れた俺に驚き、「グギャ!?」や「ギィ!?」など鳴き声をあげている。

あまりにも予想外の出来事を前に俺の頭はパニックを起こし、身体が硬直してしまった。
ゴブリン達は少しずつ正気を取り戻し臨戦体制に入っているようだ。
このまま動かなければ確実に殺られる。
この世界のゴブリンの強さがわからない以上防具の防御力を過信するわけにもいかない。
動け、動け、動け、動け!!!

「あぁぁぁぁ!霞隠れの術!」

なんとか声を振り絞り、【霞隠れの術】を発動させると、瞬時に周囲に霧が立ち込めて俺の姿を隠してくれる。
硬直も解け、足も動くようになってきた。

生贄の山羊スケープゴート!」

ヴァルハラには複合スキルという機能があり、予め自分で設定したキーワードを唱えることで3つのスキルを同時に発動することができた。
この【生贄の山羊スケープゴート】は【分身ドッペルゲンガー】と【透明化インビジブル】、【隠行の術】を掛け合わせた複合スキルである。
俺の分身が現れると同時に俺本体の姿や気配は完全に消える。
狼狽えているゴブリン達を尻目に元来た道を一目散に駆ける。
隠密状態で1人ずつ倒すことも一瞬頭をよぎったが、隠密系のスキルは総じて一度攻撃をすると解除されてしまうため対複数戦には向いていないのだ。

迂闊だった。元の世界とは生態系が違うという時点でこのような可能性を考慮すべきだったのに人に出会いたいがために失念してしまっていた。
慎重に行くと決めていたはずなのに思いの外上手く物事が進んでいたため警戒が緩んでいた。

数秒走り続け、朝魚を取った場所まで戻ることができた。
息を整えながら再び【感知の術】を発動させると、俺の分身に当たらぬ攻撃をし続けているゴブリン達のシルエットが見えたのでなんとか一息つくことができた。

こうして俺はこの世界での初ピンチを乗り越えたのだった。
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