あなたには届かない 気付かれもしない私の初恋

あろえみかん

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黒いピアスの変な人

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あの日の朝は学校まで来たものの、何だか教室に行く気がしなかった。

校舎から死角になるベンチでサボっていると向こうから気だるそうに歩いてくる人がいる。職員室で見た事があるから多分教員だろう。けれど、この人はバチバチにピアスを開けている。さすがに学校には小さい黒いピアスを一つずつしているだけだけれど、近くで見かけた時に少なくとも右だけでも透明ピアスが三つははめてあった。一体どれだけのピアスを開けているのか。

話しかけるでもなく、じっと耳を凝視する私にその人は声をかけてきた。それもそうだろう。色々と聞きたい事があると言われても、身に覚えがありすぎる。普段は大きな声にすぐびくつく癖に、なぜかこの日は気が大きくなっていた。怒られるかもしれないのに、何なら怒鳴られるかもしれないのに、親に連絡されるかもしれないのに。それならそれでいいやと、妙に諦めがついていた。最近暑いから、思考回路が煙を上げているのかもしれない。

「何してんの?授業中じゃないの?」
「そうだけど、何だか今日は気分じゃない。」
「あっそ、じゃあ俺もここでサボろ。あー、タバコ吸いてえ。」
「先生なんじゃないの?自由すぎでしょ。」
「授業をサボってる奴が何を言おうが、何も響かないねえ。」

そう言うと、ベンチにどかっと座り空を仰いでボーッとしている。本当に怒る気もないし、本気でこの人もサボりにきているようだ。悪い事をしている自覚がある時にその上の存在に出現されると、変に我に返ってしまう。私よりもこの社会人の行く末が気になってしまう始末だ。決して怒られたくてサボっている訳ではないけれど、それが筋なのではないかと無駄に真面目な私の部分がどうにも問いかけてしまう。

「ねえ、何で授業に戻れって言わないの?」
「え?だって気分じゃないんだろ?そんな奴に何言ったって聞かないんじゃない?気が済むまでサボったら?」
「何それ。ねえ、先生なんでそんなにピアス開けてんの?」
「んー。別に意味はねーよ。そうだな。好きな人がピアスバチバチに開けてんだよ。それでいいなって。ただそれだけ。」
「変な人。」

私は結局その後の授業にはまともに出た。確かに気が済むまでやった方が案外解決は早いのかもしれない。普通は諌めたり、諭したり、そんな事をするだろう。でもそれを簡単にしなかった。開けまくったピアスの理由も好きな人だとか言う、そんな適当すぎるその人はあまりにも深く私に食い込んだ。

あの黒いピアスが頭を離れなくなった。なぜ?

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