あなたには届かない 気付かれもしない私の初恋

あろえみかん

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冷やした痛みか、針の痛みか、それともそれ以外か

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昼休みにぐるっと教室を見渡してみる。

この学校は基本的に身なりに関しての校則はあってないようなものだ。もちろんピアスも染髪もOK。それもあって、クラスメートの半分はピアスを開けている。さすがにあの人ほどバチバチに開けている人は少ないにしても、片耳に二つ、三つ開けている子ならちらほら見かけたりもする。今までそれを見ても何とも思わなかったのに、一度気になると妙に目に付くものだ。

手当たり次第に何で開けたのか聞いてみると「かっこいいから」「可愛いから」だとか理由はそんな感じ。皆似たようなものだった。あの人とさほど理由は変わらないのに、彼らの返しは全く刺さらない。だけど、やはりピアス一つで何かがわかる気がして、その手がかりを手にする為に、学校帰りにピアッサーを買いに行った。身をもって知ってみるのが一番早そうだ。何か変わるかもしれない。まあ多分何も変わりはしない。それでもよかった。ほんの少しだけ、隙間からでもそちら側を覗いてみたくなったのだ。

とは言え、実物を目にすると怯む。友達とワイワイ買えば問題ないのかもしれない。もしくは二個目の穴なら多分私もこんなに躊躇しないだろう。好奇心と恐怖心とが入り混じって、そのパッケージに伸ばす手がなかなかそれに届かない。本来体に穴を開けるなんてありえないのに、なぜだかピアスだと言えばおしゃれの一つになる。そうでなければただの傷だ。理由を並べていけばいく程に、どうして?が募る。

これで自分で開ける?しかも何個も?好きな人がしてるからってだけで?

わからない。

でも、わかりたい。

1人悶々と悩んでいたから、背後に人が立った事に気が付かなかった。実際、私のように買いにきても決心が揺らぐもの、ファーストピアスをどの色にしようかと純粋に悩むもの、それぞれそこそこいるだろう。病院で開けるよりは安いにしても、学生の財布残高を考えたら悩むに決まっている。そんな調子だったから、あの人が後ろにいるだなんて全く予想もしなかった。

「あれ?お前この前の。さっさと家に帰れよ。」
「あ、あの時のピアスバチバチ教員。」
「なんかさ、呼び方。何、ピアス開けんの?うちの学校問題ないもんな。青春だな。」
「好きな人の影響でそんだけ開ける人に青春とか言われたくない。ねえ、どれがいいの?」
「え?あ、マジなの?うーん。どれも一緒じゃね。じゃあ、これ。」
「本当に適当だな。まあいいや、じゃあこれにしよ。」
「ちゃんと消毒しろよ~。それとさっさと家に帰れ。じゃあな。」

面倒そうに、明らかに適当に選ばれたはずのそのファーストピアスには夏の空のような水色の石がはまっていた。意味がある訳はないけれど、あの人と出会った日に見上げた空はこんな澄んだ青色だった。

風呂上がり。保冷剤で冷やして感覚が鈍くなった耳たぶにピアスを突き刺さすのは難しい事ではなかった。バチン!と鳴ったその音が今までの世界に穴を開けた。文字通り、物理的にも精神的にも。冷えてジンジンするのか、開いた穴の純粋な痛みなのか、刺さった太いピアスの違和感なのか。それでも赤くなった耳を鏡で見ると気持ちが踊った。あんなに開ける気はない。それでもほんのほんの少しだけ、開いた穴の径くらいは近づけた気がした。さすれど、開いた穴は数ミリにも満たない。

些細な事だとわかってはいる。けれど、それでも、やはりほんの少しそっち側を覗いてみたいと思ってしまうのだ。

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