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光?VS無
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カプアート嬢がニッコリと笑った。相変わらず魔力は暴走している。今にも爆発しそうだ。
「皆。もう死ぬんだから」
会場中に膨らんでいた魔力が、私めがけて矢じりのような形状に変化しながら襲ってきた。
「今です!!」
学園長の声が響く。
咄嗟に抜いた刀で矢じりを捉えた私は、そのまま魔力を刀に乗せた。
無属性の魔力を纏った刀は、彼女の魔力とぶつかって、しばらくはバチバチいっていたが、段々と馴染んできたのか、音もなく魔力を吸い取り始めた。彼女の魔力が垂れ流しているかのように刀に吸収されて行く。
『このままでは私の方が持たないかもしれない』
永遠に続くかと思ったその時、急に魔力を吸う感覚が消えた。会場の空気感が明らかに変わる。
「やった、のか」
身体の力が抜け、膝から崩れ落ちてしまう。咄嗟に腕を掴まれた。
「大丈夫か?」
「ヴァレンティーノ殿下」
私の腕を掴んだ殿下は、そのまま私を抱き上げ壇上に設置されていたイスに座らせてくれた。
「ありがとうございます」
私が礼を言うと首を振る。
「礼を言うのはこちらだ。よくやった。エルダのお陰で皆の命が救われた。ありがとう」
優しく笑う殿下に、不覚にもまたドキドキしてしまった。
殿下の視線から逃れるように、会場へと視線を移す。結界のお陰で、子ども達は皆無事だったようだ。カプアート嬢の魔法にかかっていたであろう子供たちは、今目覚めたかのような顔をして、辺りをキョロキョロしている。
友人たちと無事を確かめ合っていた、ヴィヴィアーナ殿下と目が合った。途端に花開くように笑ったヴィヴィアーナ殿下は、壇上へと駆け上がって来た。
「エルダ!」
私に抱きつくヴィヴィアーナ殿下。
「エルダ!エルダのお陰で皆が助かったのよ。ありがとう。本当に凄いわ!私のエルダは」
「ヴィヴィ様は、何処もケガしておりませんか?痛い思いはなさいませんでしたか?」
「ええ、どこもなんともないわ。エルダが守ってくれたんだもの」
にこやかに返事をしてくれるヴィヴィアーナ殿下。
「ヴィヴィ様……ご無事で、本当に良かった」
私はキュッと抱きしめた腕にほんの少しだけ力を入れた。
「カプアート様は……どうなってしまうのかしら?」
元凶の彼女まで心配するヴィヴィアーナ殿下。もう本当に天使過ぎる。
当の本人は、魔力が枯渇したのだろう。気を失っていた。騎士の二人が、魔力封じで手を拘束してソファに寝かせていた。
「彼女はもう、光魔法を使えないでしょうね」
学院長が壇上へ上がってきた。
「エルダ嬢。よく頑張りましたね。ありがとう」
「いえ、学園長の助言があってこそです。それよりも、彼女がもう光魔法を使えないというのは?」
確かに今は、魔力が枯渇していて使えないだろうが、学園長の言っているのは今後ずっと、という意味だ。
「光魔法というのは、魔力の中でもとても繊細なものでね。悪い心を持ってしまうと途端に変化してしまう。彼女の心は光魔法に相応しくなくなってしまった」
寝ている彼女を見て、痛ましそうな顔をする。
「そもそも彼女が光魔法を使えるようになった事が間違いだったのです。残念ながら彼女は相応しい人間ではなかった。だから光は闇へと変貌を遂げてしまった」
「変貌ですか?」
「そうです。元来闇魔法というものはないんですよ。闇魔法の発端は光魔法。光は悪い心では育つことが出来ずに、闇へと変化してしまうのです。残念ながら一度闇になってしまった光は、その持ち主がどんなに改心しようとも戻らない。だから、彼女ではもう無理なのです」
「では、光魔法は消滅してしまったのですね」
私の無属性が吸い取ってしまった。
「いいえ。その素晴らしい刀を、鞘から抜いてみてください」
言われた通り、刀を鞘から抜き出す。
「なんだ、これは?」
「皆。もう死ぬんだから」
会場中に膨らんでいた魔力が、私めがけて矢じりのような形状に変化しながら襲ってきた。
「今です!!」
学園長の声が響く。
咄嗟に抜いた刀で矢じりを捉えた私は、そのまま魔力を刀に乗せた。
無属性の魔力を纏った刀は、彼女の魔力とぶつかって、しばらくはバチバチいっていたが、段々と馴染んできたのか、音もなく魔力を吸い取り始めた。彼女の魔力が垂れ流しているかのように刀に吸収されて行く。
『このままでは私の方が持たないかもしれない』
永遠に続くかと思ったその時、急に魔力を吸う感覚が消えた。会場の空気感が明らかに変わる。
「やった、のか」
身体の力が抜け、膝から崩れ落ちてしまう。咄嗟に腕を掴まれた。
「大丈夫か?」
「ヴァレンティーノ殿下」
私の腕を掴んだ殿下は、そのまま私を抱き上げ壇上に設置されていたイスに座らせてくれた。
「ありがとうございます」
私が礼を言うと首を振る。
「礼を言うのはこちらだ。よくやった。エルダのお陰で皆の命が救われた。ありがとう」
優しく笑う殿下に、不覚にもまたドキドキしてしまった。
殿下の視線から逃れるように、会場へと視線を移す。結界のお陰で、子ども達は皆無事だったようだ。カプアート嬢の魔法にかかっていたであろう子供たちは、今目覚めたかのような顔をして、辺りをキョロキョロしている。
友人たちと無事を確かめ合っていた、ヴィヴィアーナ殿下と目が合った。途端に花開くように笑ったヴィヴィアーナ殿下は、壇上へと駆け上がって来た。
「エルダ!」
私に抱きつくヴィヴィアーナ殿下。
「エルダ!エルダのお陰で皆が助かったのよ。ありがとう。本当に凄いわ!私のエルダは」
「ヴィヴィ様は、何処もケガしておりませんか?痛い思いはなさいませんでしたか?」
「ええ、どこもなんともないわ。エルダが守ってくれたんだもの」
にこやかに返事をしてくれるヴィヴィアーナ殿下。
「ヴィヴィ様……ご無事で、本当に良かった」
私はキュッと抱きしめた腕にほんの少しだけ力を入れた。
「カプアート様は……どうなってしまうのかしら?」
元凶の彼女まで心配するヴィヴィアーナ殿下。もう本当に天使過ぎる。
当の本人は、魔力が枯渇したのだろう。気を失っていた。騎士の二人が、魔力封じで手を拘束してソファに寝かせていた。
「彼女はもう、光魔法を使えないでしょうね」
学院長が壇上へ上がってきた。
「エルダ嬢。よく頑張りましたね。ありがとう」
「いえ、学園長の助言があってこそです。それよりも、彼女がもう光魔法を使えないというのは?」
確かに今は、魔力が枯渇していて使えないだろうが、学園長の言っているのは今後ずっと、という意味だ。
「光魔法というのは、魔力の中でもとても繊細なものでね。悪い心を持ってしまうと途端に変化してしまう。彼女の心は光魔法に相応しくなくなってしまった」
寝ている彼女を見て、痛ましそうな顔をする。
「そもそも彼女が光魔法を使えるようになった事が間違いだったのです。残念ながら彼女は相応しい人間ではなかった。だから光は闇へと変貌を遂げてしまった」
「変貌ですか?」
「そうです。元来闇魔法というものはないんですよ。闇魔法の発端は光魔法。光は悪い心では育つことが出来ずに、闇へと変化してしまうのです。残念ながら一度闇になってしまった光は、その持ち主がどんなに改心しようとも戻らない。だから、彼女ではもう無理なのです」
「では、光魔法は消滅してしまったのですね」
私の無属性が吸い取ってしまった。
「いいえ。その素晴らしい刀を、鞘から抜いてみてください」
言われた通り、刀を鞘から抜き出す。
「なんだ、これは?」
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