断罪される令嬢は、悪魔の顔を持った天使だった

Blue

文字の大きさ
4 / 27

ランザ・マラガーニ1

しおりを挟む
『やったわ、Aクラスよ』
王立学園入学の日、クラス分け表を見れば私の名前はAクラスにしっかりあった。

小さい頃から本が好きで、ジャンルを問わず本を読み漁っていた。小柄でミルクティー色の髪にペリドット色の瞳の私は、小動物のようだとよく弟に可愛いがられていた。

幼く見えてしまう私だが、これでも侯爵の娘なのでいくつか婚約の話は来ていたのだが、本を読むほうが大事な私にとっては迷惑でしかなかった。

このままでは結婚することが出来ないのでは?そう心配した両親は婚約者を探そうとしたが、私の事を大好きな弟が全てを阻止してくれた。

それでもこのままではいけないと思った私は、仕事をする道を選ぼうと王立学園に通う事に決めた。

『王城にある図書館の司書とかいいかも』
王城の図書館には他国の歴史書は勿論、他国で発行されている物語や絵本などもある。そうそう行ける所ではないので、司書になるのはとてもいい案かもしれない。

そうして勉強を頑張り、無事にAクラスを勝ち取ったのである。

「Aクラスってどの位いるのかしら?」
独り言を零しながら教室へ向かう。すると、なにやら騒がしい。一体何かと思いながら進んで行くと目指していたAクラスの前に人だかりが出来ていた。

『Aクラス多くない?』
思っていた以上に人がいることに驚いていると、どうやら皆Aクラスの人間ではないらしい。しきりに扉の向こうを見ているようだ。

『何?何か凄い物があるの?』
恐る恐る教室へと入ってみると、目を向けた先に天使がいた。

「天使がいる……」
どうやら外で見ている人たちはあの天使を見に来たようだ。一緒にいる令嬢は見た事がある。確か同じ侯爵家だったはず。

私の意志とは関係なく、まるで引き寄せられるようにフラフラと二人の方へ向かう。
「ごきげんよう。あの、えっと、こんなことをいきなり聞くのは失礼だと思うのですが、天使様がなぜこんな場所に?」

聞いた二人はキョトンとしてしまった。
『キョトン顔も綺麗だわ。さすが天使』
そう思っていた私の思考は、二人の笑い声によって霧散した。

「ふふふ、アリー様、聞かれていますわよ」
侯爵家の令嬢が笑いながら天使様に話を振る。

「ですから、私は天使ではなく人間です。初めまして。アリアンナ・ヴォルテーラと申します」
ハープが奏でられたかのような、美しい声で挨拶した令嬢の名前で納得する。

「神を呼ぶ聖なる声……やはり天使様なのでは?」
「ごめんなさい、人間です」
天使様に謝られてしまった。

「あ、いえ、あの……謝って頂くなんて恐れ多いというか、あの、えっと、こちらこそすみません。ご挨拶が遅れました。ランザ・マラガーニと申します。どうぞランザとお呼びください」

「はい、ランザ様。アリアンナ・ヴォルテーラです。私の事はどうぞアリーと」
「アリー様……」
「はい」
「本当に天使様ではない?」
「はい」
「では、お友達になって頂けますか?」
「ふふ、はい。喜んで」
「はうっ」
アリー様の微笑みに、心臓を撃ち抜かれた気がした。

「私はフランカ・ベラヴィーアです。私ともお友達になってくださいますか?」
「あ、はい。喜んで」

こうして、私たち三人は友達として仲良くなることが出来たのだった。

「それにしても、クラスの外は凄い人だかりが出来てますよ」
「そうなのですか?このクラスに何かあるのでしょうか?」
周囲を観察しながら、小首を傾げるアリー様。ヤバい可愛い。見た目は綺麗という言葉がピッタリなのだが、実際に接してみると可愛らしいという言葉の方が合っている。

「皆、アリー様を見にいらっしゃったんだと思いますが」
「私ですか?見ても何も出ませんのに?」
「アリー様の美しさを確認しに来ているのだと思いますわよ。婚約者であるダヴィデ殿下がここにいないのなら、誰にもとがめられませんもの」

予想外の言葉が聞こえた気がする。

「ダヴィデ殿下はこのクラスではないのですか?」
「ええ、そうなのですって。驚きますわよね。しかもなんとDクラス。きっと王族始まって以来の珍事件になるのではないかしら?」

どうやら愚かな王子という噂は本当だったらしい。それにしてもDクラスとは酷い。

「何というか、アリー様、苦労しますわね」
「私は……いいのです」
悲しそうに微笑むアリー様を見て、私はわかってしまった。彼女は全く望んでいない婚約なのだろう。

他人事ながらアリー様のお心を考えると、胸がギュッと苦しくなってしまう。軽く頭を振って気持ちを切り替える。

「それなら婚約者を気にすることなく、学園生活を楽しめますね」
思いっきり笑顔で言うと、アリー様もフラン様も吹き出した。
「あら?私、何かおかしなこと言いました?」

「違うわ。ふふふ、全然おかしなことなんて。ただ、私もアリー様に同じことを言ったばかりなのよ。ふふふ」
「イヤだ。被ってしまいましたか?」
その言葉で再び笑う二人に釣られて、私も一緒に笑ってしまうのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

訳ありヒロインは、前世が悪役令嬢だった。王妃教育を終了していた私は皆に認められる存在に。でも復讐はするわよ?

naturalsoft
恋愛
私の前世は公爵令嬢であり、王太子殿下の婚約者だった。しかし、光魔法の使える男爵令嬢に汚名を着せられて、婚約破棄された挙げ句、処刑された。 私は最後の瞬間に一族の秘術を使い過去に戻る事に成功した。 しかし、イレギュラーが起きた。 何故か宿敵である男爵令嬢として過去に戻ってしまっていたのだ。

能ある妃は身分を隠す

赤羽夕夜
恋愛
セラス・フィーは異国で勉学に励む為に、学園に通っていた。――がその卒業パーティーの日のことだった。 言われもない罪でコンペーニュ王国第三王子、アレッシオから婚約破棄を大体的に告げられる。 全てにおいて「身に覚えのない」セラスは、反論をするが、大衆を前に恥を掻かせ、利益を得ようとしか思っていないアレッシオにどうするべきかと、考えているとセラスの前に現れたのは――。

自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~

浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。 本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。 ※2024.8.5 番外編を2話追加しました!

妻の私は旦那様の愛人の一人だった

アズやっこ
恋愛
政略結婚は家と家との繋がり、そこに愛は必要ない。 そんな事、分かっているわ。私も貴族、恋愛結婚ばかりじゃない事くらい分かってる…。 貴方は酷い人よ。 羊の皮を被った狼。優しい人だと、誠実な人だと、婚約中の貴方は例え政略でも私と向き合ってくれた。 私は生きる屍。 貴方は悪魔よ! 一人の女性を護る為だけに私と結婚したなんて…。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 設定ゆるいです。

【完結】公爵子息は私のことをずっと好いていたようです

果実果音
恋愛
私はしがない伯爵令嬢だけれど、両親同士が仲が良いということもあって、公爵子息であるラディネリアン・コールズ様と婚約関係にある。 幸い、小さい頃から話があったので、意地悪な元婚約者がいるわけでもなく、普通に婚約関係を続けている。それに、ラディネリアン様の両親はどちらも私を可愛がってくださっているし、幸せな方であると思う。 ただ、どうも好かれているということは無さそうだ。 月に数回ある顔合わせの時でさえ、仏頂面だ。 パーティではなんの関係もない令嬢にだって笑顔を作るのに.....。 これでは、結婚した後は別居かしら。 お父様とお母様はとても仲が良くて、憧れていた。もちろん、ラディネリアン様の両親も。 だから、ちょっと、別居になるのは悲しいかな。なんて、私のわがままかしらね。

[完結]聖女?いいえ容赦のない鬼だそうなので、クズな父と婚約者をまとめてヤっちゃっていいですか? 、、、そして私は王妃になります。

masato
恋愛
エスト五家シリーズ、侯爵家編です。 アリア・エストラージュはエスト王国の筆頭侯爵家の一人娘である。 エストラージュ家は、建国に携わった五家の一つで、エストの名を冠する名家である。 元々母の実家であり、母もまた一人娘だったために父が婿養子となった。 美しく優秀な女性だったが、今から3年前アリアが11歳の時に亡くなった。 父は結婚時の約束で後妻を迎える事を禁じられているので、今も独り身である。 禁じたのは前公爵である祖父で、万が一娘が亡くなり後妻が来たことにより孫が虐げられるのを防ぐためだ。 何故かエストラージュ家には女児しか生まれない為、過去にそういった問題が度々起きていたから。 そしてアリアにも婚約者がいた。 13歳の時に、父が決めたクレヴィス伯爵家の三男、ライオネルである。 父が熱望したそうだが、はっきり言ってクズだ。 なんだかんだと突っかかってきて鬱陶しい、、、と思っていたら、なぜか王太子殿下が庇ってくれる様になった。 彼もまた苦労人の様で、、、。 エスト王国五家物語第3話となります。 第2話のエストロジア編はサイラス君のお話です。 宜しかったら見てみて下さいね。

下級兵士は断罪された追放令嬢を護送する。

やすぴこ
恋愛
「ジョセフィーヌ!! 貴様を断罪する!!」  王立学園で行われたプロムナード開催式の場で、公爵令嬢ジョセフィーヌは婚約者から婚約破棄と共に数々の罪を断罪される。  愛していた者からの慈悲無き宣告、親しかった者からの嫌悪、信じていた者からの侮蔑。  弁解の機会も与えられず、その場で悪名高い国外れの修道院送りが決定した。  このお話はそんな事情で王都を追放された悪役令嬢の素性を知らぬまま、修道院まで護送する下級兵士の恋物語である。 この度なろう、アルファ、カクヨムで同時完結しました。 (なろう版だけ諸事情で18話と19話が一本となっておりますが、内容は同じです)

これって私の断罪じゃなくて公開プロポーズですか!?

桃瀬ももな
恋愛
「カタリーナ・フォン・シュバルツ! 貴様との婚約を破棄し、国外追放に処す!」 卒業パーティーの最中、第一王子アルフォンスから非情な宣告を突きつけられた公爵令嬢カタリーナ。 生まれつきの鋭い目つきと、緊張すると顔が強張る不器用さゆえに「悪役令嬢」として孤立していた彼女は、ついに訪れた「お決まりの断罪劇」に絶望……するかと思いきや。 (……あれ? 殿下、いま小さく「よっしゃあ!」ってガッツポーズしませんでした!?)

処理中です...