王子と婚約するのは嫌なので、婚約者を探すために男装令嬢になりました

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王子と王女

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「全く。フィエロ殿下の執務室に行ったきり帰って来ないとは」
ルイージ団長を迎えに行くために、フィエロ殿下の執務室へと続く廊下を足早に進む。
「ジャンも遠征でいないっていうのに……全ての仕事を押し付けたまま油を売っているなんて」
独り言を言っていると、面倒な者たちに会ってしまう。

「あら、ルドルフォ副団長。こんな所でお会いできるなんて」
サーラ王女の侍女たちだ。
「ルドルフォ副団長、先日のお茶会、お誘いしましたのに、いらっしゃっていただけなかったですわね。寂しかったですわ。どうしてですの?」
「そうですわ。私たち、ずっとお待ちしておりましたのよ」
「仕事が忙しいんだ」

「ああ、そういえばジャン副団長が遠征でご不在だとか……それはお忙しいですわね」
「あら、それは大変。遅くまでお仕事していらっしゃるのではないですか?それなら私、お夜食でもお持ちしますわ」
「まあ、抜け駆けはずるいですわ。それならば私は癒しに行って差し上げますわ」
そう言って、俺の腕に自分の腕を絡ませる。

「結構だ。騎士団棟はそんなに簡単に女性が入り込むべき所ではない」
「ふふ、相変わらずつれない方ですのね……そこがいいのですけれど」
「本当に。私、ルドルフォ副団長にならどんなに冷たい言葉を浴びせられても構いませんのよ」
絡めていた腕の力を強くして上目遣いで見てくる。
初心な男なら、押し付けられた弾力にくらっとするのだろうが、好きでもない女にこんなことをされたところでなんとも感じない。

そういえば昔、婚約者だった女にも不感症とか言われたな、などとどうでもいい事を思い出す。
「ねえ、ルドルフォ副団長。次のお茶会は必ずいらして」
媚びたような話し方にうんざりする。

「私は忙しい。誰か他の者を誘った方がいい」
そう言った所で、諦めるような女たちではないのだが。

彼女たちは伯爵家や子爵家の次女、三女といった貴族たちだ。
サーラ王女の侍女をするくらいだから、仕事はそれなりに出来るのだろう。しかし、婿探しを兼ねて、だ。
その標的にされているのはわかっているので、いつも彼女たちの誘いを躱し続けている。これだけ避けられれば、脈なしと受け取るのが普通だろうに、彼女たちはわかっていないのか全くめげない。これ以上ここに留まるのも得策ではないので話を終わらせる。

「すまないが、団長を迎えに来たのでこれで失礼する」
そう言って、腕に絡まっていた手をそっとはがす。
「あん、次回のお茶会ではもっとゆっくり、ね」
ねっとりとした視線や仕草に鳥肌が立つ。
「時間があれば」
そう言って、とっととこの場を離れた。

「ふう、面倒くさい。これも団長のせいだ」
そう愚痴りながらフィエロ殿下の執務室の扉の前にいる護衛騎士に目通りを願うと、すぐに扉が開けられる。

「失礼します。ルイージ団長を迎えに参りました」
礼の状態で要件を伝え、頭を上げる……と、そこには女神がいた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

ルドルフォ副団長が到着する少し前。
みんなで、ゆったりとお茶を飲んでいると、扉をノックする音がして執務室の大きな扉が開けられた。そして、小さな男の子と更に小さな女の子がパタパタと入ってきた。

私を見つけるなり
「アンジー!」
そう言って二人の小さな天使たちが駆けてくる。
「ニコロ、サーラ、元気だった?」
床に膝をつき、しっかりと二人を迎え入れる。

「アンジー、アンジー、僕ね、お魚食べられるようになったんだよ」
得意げに私に報告する姿が可愛らしい。
「ホント!?凄いじゃない。流石ニコロね」

「アンジー、これ、読んで」
お気に入りの絵本を私に渡そうとするサーラをニコロが止める。
「待って、まだ僕の話終わってないよ」
絵本を受け取りながらもニコロの話を聞く。
「なあに?ニコロ」
「僕、お魚食べられるようになったから、これからどんどん大きくなるんだ。だからアンジーと結婚出来るよ」

ライ兄様がニヤニヤ顔でニコロに話しかける。
「ニコロ、アンジーと結婚したいのか?」
「うん、そうだよ。でも僕、まだ小さいからお魚食べて早く大きくなるんだ」
「そうか。あっちの王子ならこっちの王子の方がいいなあ、俺は」
私を見ながら言うライ兄様。もうそのにやけ顔、むかつくからやめて欲しい。

そこへ冷静な声が入ってくる。
「そもそも叔母と甥では結婚できー」
言い終わる前にライ兄様がジル兄様の口を塞いだ。
「ジル兄はもうちょっと空気読もうな」

そんな中、サーラが私の袖をくいくいと引っぱった。
「ねえ、ご本まだ?」

「ああ、そうよね。じゃあ、ご本読みましょう」
そう言うと、サーラは私の膝に乗る。ニコロも私に寄り添うように座った。
「じゃあ、いい?それは昔のお話ですー」
読みだすと、二人とも目をキラキラさせて真剣に聞いてくれる。
その姿が可愛くて、こちらも読むのに熱が入る。なので、人が入ってきたことに全く気付かなかった。
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