王子と婚約するのは嫌なので、婚約者を探すために男装令嬢になりました

Blue

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天使と女神?

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 すぐそこに、女神がいた。
小さい王女を自分の膝の上に、王子を大事そうに傍に置き、美しい声で本を読んでいる。ローレライの妖精の歌声とはきっと、このような美しい声なのだろう。そんな妄想まで抱いてしまう。

まっすぐ伸びた美しい金の髪、俯いていてもわかる綺麗に通った鼻筋。瞳は伏し目がちになっているのではっきりは分からないが、青だろうか。

ページをめくった拍子に、肩にかかっていた髪がサラッと垂れた。それだけなのに俺は心臓がギュッと締め付けられてしまうのを感じた。彼女の周りだけキラキラして見える。

一体どうしたというのだろう。生まれて初めての感覚に戸惑いを隠せずにいると、俺に気付いたルイージ団長が声を掛けてきた。
「おう、ドルフ。迎えに来たのか。つい話し込んでしまっていたようだ」
そう言って席を立つ。

「では、当日にでもまた伺いますよ」
フィエロ殿下にそう言うと、この場を後にしようと歩き出す。こちらへ向かう途中ルイージ団長は、女神に近づいて声を掛けた。
「アンジー、またな」
一言だけそう言って、女神の頭を一撫でした。

「楽しみにしてますね」
アンジーと呼ばれた女神が顔を上げた。

金の髪がサラリと揺れ、極上のサファイアブルーの瞳がキラキラしていたその美しい微笑みに、再び俺の心臓が締め付けられた。
だが、そのサファイアブルーの瞳はこちらを見る事もなく、再び本へと沈んでしまった事に、今度はどういう訳か言いようのない寂しさを感じてしまう。

そんなよくわからない気持ちで彼女を見ていると、すぐ目の前に団長が来ていた。
「待たせたな、行こう」
肩を叩かれ、後ろ髪を引かれる思いで執務室をあとにする。

そうして騎士団棟へと戻る道すがら、さり気なく団長に聞いてみた。
「団長、先程のアンジーと呼んでいた令嬢は一体どちらの?」

「彼女か?ガルヴァーニ家の末娘だ。どうした?おまえが女性の事を気にするなんて珍しいな。まさか惚れたか?わかるぞ。美しい娘だもんな。俺だってあと20歳くらい若かったらアタックしていたな。だが彼女はダメだぞ。家格は釣り合っていても、お前のような常に女に囲まれるようなたらしには勿体ない位いい娘だからな」

「なっ!?別に俺は女たらしなどでは……」
「はは、わかってるって、冗談だ。でもおまえにその気はなくでも、女たちは目の色変えてお前に集まってくる。まあ、男から見ても男前だってわかるほどのイケメンだもんな。しかも剣の腕は一番。更に公爵家の跡取りなんて超優良物件、年頃の令嬢方がほっておくわけがない」

「優良物件って、人を屋敷か何かのように」
「そう言うなって。でもおまえ、もうすぐ二十五になるんだったよな。いい加減、大昔の失恋だか何だか引きずってないで本気で誰か見つけないと、いつか女どもで大乱闘が起こるぞ」

「失恋じゃありません。それに別にたらし込んでるつもりもないです。そもそも俺の方から声なんてかけるわけがないでしょう。あっちが勝手に近寄って来るんです。逃げれば逃げる程追ってくる。まるで猛獣の群れですよ」

「ははは、猛獣って……ま、俺たちは勿論わかっているが、世間一般からはそう見えるってことだ。いい加減、本気になれる相手を探せ。だからってアンジーはダメだぞ……ん?待てよ。あれ?いいのか?ええっと……まああれだ。今、あの子はちょっと面倒なことになっているんだよ。それを解決することに集中させてやりたいからな」

「面倒なこと?」
「ああ、内容は秘密だがな」
そう言って笑った団長はそれ以上この話をするつもりはないようで、全く違う話をしてきた。

「そういやあ、ジャンはいつ戻るんだったか?」
「あと五日ほどで戻る予定です」
「そうか、ちょうどその辺りに一人、新入りが入ることになると思うからよろしくな」
「こんな半端な時期にですか?」
「ああ、まだ学生なんだが腕がいい。まあ、短期間にはなると思うが、他の若い騎士どもにはいい刺激になるだろうよ……色々とな」
最後はクックと笑いながら言う。

「なんかやけに上機嫌ですね、団長」
「そうか?まあそうだな。新入りは俺の親戚だ。言っておくが見た目で判断するなよ」
「なるほど、秘蔵っ子ですか?」
「ハハハ、そうだな、可愛い奴だ。だけど実力は保証する。多分、騎士団で十本の指に入るだろう」
「そんなにですか。それは確かに若い奴らの刺激になりそうですね」
「だろ、だから色々と頼むな……惚れるなよ」
「はあ?男相手に惚れるも何も。俺はノーマルです」
「そうか?ハハハハハ」

それから騎士団棟へ到着するまで、団長は笑い続けていたのだった。
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