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私の心臓、もつかしら?
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卒業式が無事に終了し、今は卒業パーティーの準備の為にドレスを着ている。
せっかくだからと身につける全ての物をルドルフォ副団長に用意されてしまった。銀に輝くドレスに見事なアメジストのネックレス。ドレスの生地がとても軽やかで、動くたびにキラキラ光を反射する。
そんな私を満足そうに眺めるのは、白地に金の刺繍が美しいモーニング姿のルドルフォ副団長。アスコットタイも同じ白地に金糸が織り込まれており、タイピンはサファイア。胸元のチーフはサファイアと同じ青。銀の髪とアメジストに不思議と馴染む色合いで、シュッと佇む彼はもう人の美しさの領域を超えている気がする。見ているだけで私の心臓がどうかしてしまうのではと思う程ドキドキしてしまう。
「卒業おめでとう。良く似合っている」
「ありがとうございます、ルディ。ドレスもネックレスも素敵すぎて、私が負けてしまうのではと不安だったので良かったです」
「何を言ってる。俺の贈ったドレスが霞むほどアンジーの方が美しいというのに」
ぽぽぽっと頬に熱が湧きあがった。この人は無意識に褒める。本当にそう思っていてくれているのだろう。でもそれが、直接刺さるのでいちいち心臓に悪い。きっとこれが、自分の知らない所で女の人たちをたらし込んでいた原因の一つなのだろう。
会場に到着すると、すでにパーティーは始まっていたようで、ダンスをしたり談笑したりと皆、思い思いに楽しんでいるようだ。
「アンジー、せっかくだ。踊ろう」
ルディがダンスフロアへと私を誘う。ルディとの初めてのダンスに少しドキドキしたけれど、エスコートの上手さに驚いてしまった。
周囲からほおっと溜息のような声が漏れ聞こえる。
「ルディ、とっても上手なのですね」
「ああ、これでも公爵の跡取りなんでね。無理矢理仕込まれた。あの当時は嫌で嫌で仕方がなかったが、喜んでもらえたのなら頑張った甲斐があったな」
眩しいほどの笑顔に、再び私の頬に熱がこもる。
「はは、アンジーはすぐに照れて赤くなるのだな。アンジェロの時には想像もつかなかった。可愛らしいな」
ほらまた、息をするように褒める。
「これは……ルディのせいです」
小声になってしまったけれど、言ってやった。
途端に腰に回されていた手に力が入ったと思ったら、ルディと私の間に隙間がなくなった。すぐ上にルディの綺麗な顔がある。吐息がかかるほど近い、まるで抱きしめられているかのような距離で、それでもダンスの足は止めずにルディが言う。
「アンジェリーナ、その言葉はダメだ。俺の理性が切れる。それ以上可愛い事を言うとこの場でキスするぞ」
扇情的なその表情に、腰に電気が走った。今度はこちらがやられてしまう番だったようだ。思わず力が抜けてしまうが、ルディがしっかり腰を抱いているので座り込むことも出来ない。蕩けるような気持ちでルディを見上げると、突然、ルディが私を抱き上げた。
そのまま中庭へ続くテラスへと進む。物凄い勢いで、でも美しい所作のまま中庭のベンチまで進み、私を抱えた状態のまま座る。
訳が分からずなすがままでいると目の前が暗くなった……と思ったら銀に染まった。以前もそんな事があったなと考えていると唇に柔らかなものが当たった。キスされたのだと気付くのに少し時間がかかった。
「すまない、我慢できなかった」
本当にすまなそうに謝るルディに思わず笑ってしまう。
「ふふ、謝らなくていいです。私のせいでルディがそうなったと思うと、すごくドキドキします」
「アンジェリーナ……愛している。一目見たあの時から、いや、今はもうあの時以上に。女神が俺の元に降りてきてくれて、俺は本当に幸せだ」
「ルディ……私も、言葉では言い尽くせないほどに愛しています。それまではずっと人を好きになる気持ちというのがわからなくて、このまま一人で生きて行く事になるかもしれないとまで思っていました。望まぬ婚約にも嫌気が差して、半ばやけになって騎士団に潜入しましたが、そのお陰であなたに会えた。私、男装して本当に良かった」
「そのお陰で俺は随分と振り回されたがな」
「ふふ、ジャンヌ副団長が、あなたがイケない扉を開けてしまいそうって言っていたんですよ」
「はああ、アイツなら言いそうだな」
ルディの手に頬が覆われ、親指でそっと撫でられる。その柔らかな刺激が心地良くて目を瞑ると再びキスが落とされた。優しく啄むように、そして次第に深くなっていく口づけに翻弄されながらも幸せで心が満たされるのを感じた。
どれ程の時が経ったのか、上手く呼吸出来ずに苦しくなってしまった。気付いたルディがキスするのをやめて優しく笑う。
「すまない。加減を誤ってしまったか」
「ううん、大丈夫。とっても素敵」
ぼおっとしながら大きく息を吸い込み言う私に声を上げて笑いながら
「そう言ってくれるのは嬉しいが、その顔のまま会場に戻る訳にはいかないな。もし何もないならば、このまま屋敷まで送ろう」
パーティーはまだ続くが、退出する時間は自由なので問題はない。
「ううん、もう何もないから大丈夫。でも……もう帰ってしまうのですか?」
「まだ踊りたかったか?」
「そうではなくて……まだ一緒にいたかったなって」
「アンジェリーナは俺を試してるのか?」
「試すって何をです?」
「……女性に戻っても俺は振り回されるのか」
「?」
「いい。伊達に騎士団で副団長までなったわけではないからな。精神力を鍛える訓練だと思えばいい。よし、それならもう一度踊ろうか」
「はい」
私はルディの優しいエスコートで再びダンスを楽しむのだった。
そんな私たちを悔しそうに見つめる視線に気付かずに。
せっかくだからと身につける全ての物をルドルフォ副団長に用意されてしまった。銀に輝くドレスに見事なアメジストのネックレス。ドレスの生地がとても軽やかで、動くたびにキラキラ光を反射する。
そんな私を満足そうに眺めるのは、白地に金の刺繍が美しいモーニング姿のルドルフォ副団長。アスコットタイも同じ白地に金糸が織り込まれており、タイピンはサファイア。胸元のチーフはサファイアと同じ青。銀の髪とアメジストに不思議と馴染む色合いで、シュッと佇む彼はもう人の美しさの領域を超えている気がする。見ているだけで私の心臓がどうかしてしまうのではと思う程ドキドキしてしまう。
「卒業おめでとう。良く似合っている」
「ありがとうございます、ルディ。ドレスもネックレスも素敵すぎて、私が負けてしまうのではと不安だったので良かったです」
「何を言ってる。俺の贈ったドレスが霞むほどアンジーの方が美しいというのに」
ぽぽぽっと頬に熱が湧きあがった。この人は無意識に褒める。本当にそう思っていてくれているのだろう。でもそれが、直接刺さるのでいちいち心臓に悪い。きっとこれが、自分の知らない所で女の人たちをたらし込んでいた原因の一つなのだろう。
会場に到着すると、すでにパーティーは始まっていたようで、ダンスをしたり談笑したりと皆、思い思いに楽しんでいるようだ。
「アンジー、せっかくだ。踊ろう」
ルディがダンスフロアへと私を誘う。ルディとの初めてのダンスに少しドキドキしたけれど、エスコートの上手さに驚いてしまった。
周囲からほおっと溜息のような声が漏れ聞こえる。
「ルディ、とっても上手なのですね」
「ああ、これでも公爵の跡取りなんでね。無理矢理仕込まれた。あの当時は嫌で嫌で仕方がなかったが、喜んでもらえたのなら頑張った甲斐があったな」
眩しいほどの笑顔に、再び私の頬に熱がこもる。
「はは、アンジーはすぐに照れて赤くなるのだな。アンジェロの時には想像もつかなかった。可愛らしいな」
ほらまた、息をするように褒める。
「これは……ルディのせいです」
小声になってしまったけれど、言ってやった。
途端に腰に回されていた手に力が入ったと思ったら、ルディと私の間に隙間がなくなった。すぐ上にルディの綺麗な顔がある。吐息がかかるほど近い、まるで抱きしめられているかのような距離で、それでもダンスの足は止めずにルディが言う。
「アンジェリーナ、その言葉はダメだ。俺の理性が切れる。それ以上可愛い事を言うとこの場でキスするぞ」
扇情的なその表情に、腰に電気が走った。今度はこちらがやられてしまう番だったようだ。思わず力が抜けてしまうが、ルディがしっかり腰を抱いているので座り込むことも出来ない。蕩けるような気持ちでルディを見上げると、突然、ルディが私を抱き上げた。
そのまま中庭へ続くテラスへと進む。物凄い勢いで、でも美しい所作のまま中庭のベンチまで進み、私を抱えた状態のまま座る。
訳が分からずなすがままでいると目の前が暗くなった……と思ったら銀に染まった。以前もそんな事があったなと考えていると唇に柔らかなものが当たった。キスされたのだと気付くのに少し時間がかかった。
「すまない、我慢できなかった」
本当にすまなそうに謝るルディに思わず笑ってしまう。
「ふふ、謝らなくていいです。私のせいでルディがそうなったと思うと、すごくドキドキします」
「アンジェリーナ……愛している。一目見たあの時から、いや、今はもうあの時以上に。女神が俺の元に降りてきてくれて、俺は本当に幸せだ」
「ルディ……私も、言葉では言い尽くせないほどに愛しています。それまではずっと人を好きになる気持ちというのがわからなくて、このまま一人で生きて行く事になるかもしれないとまで思っていました。望まぬ婚約にも嫌気が差して、半ばやけになって騎士団に潜入しましたが、そのお陰であなたに会えた。私、男装して本当に良かった」
「そのお陰で俺は随分と振り回されたがな」
「ふふ、ジャンヌ副団長が、あなたがイケない扉を開けてしまいそうって言っていたんですよ」
「はああ、アイツなら言いそうだな」
ルディの手に頬が覆われ、親指でそっと撫でられる。その柔らかな刺激が心地良くて目を瞑ると再びキスが落とされた。優しく啄むように、そして次第に深くなっていく口づけに翻弄されながらも幸せで心が満たされるのを感じた。
どれ程の時が経ったのか、上手く呼吸出来ずに苦しくなってしまった。気付いたルディがキスするのをやめて優しく笑う。
「すまない。加減を誤ってしまったか」
「ううん、大丈夫。とっても素敵」
ぼおっとしながら大きく息を吸い込み言う私に声を上げて笑いながら
「そう言ってくれるのは嬉しいが、その顔のまま会場に戻る訳にはいかないな。もし何もないならば、このまま屋敷まで送ろう」
パーティーはまだ続くが、退出する時間は自由なので問題はない。
「ううん、もう何もないから大丈夫。でも……もう帰ってしまうのですか?」
「まだ踊りたかったか?」
「そうではなくて……まだ一緒にいたかったなって」
「アンジェリーナは俺を試してるのか?」
「試すって何をです?」
「……女性に戻っても俺は振り回されるのか」
「?」
「いい。伊達に騎士団で副団長までなったわけではないからな。精神力を鍛える訓練だと思えばいい。よし、それならもう一度踊ろうか」
「はい」
私はルディの優しいエスコートで再びダンスを楽しむのだった。
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