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どいつもこいつもです
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愛馬で屋敷へ向かう。その間も俺の心臓はドクリドクリと嫌な鳴り方をしている。
屋敷へ到着するも、屋敷中が不気味なほど静かだった。
馬から飛び降り、屋敷の扉を開ける。屋敷全体がハッカの匂いで溢れていた。
「アンジェリーナ!!」
大声で呼ぶがなんの応答もない。エントランスから奥へ向かうと、使用人たちが何人も倒れていた。どうやら薬のせいで意識を失っているらしい。
「アンジェリーナ!!」呼び続けながら2階へと上がる。
すると、暗部らしき男たちが倒れていた。駆け寄って一人の男を揺さぶる。
「おい、アンジェリーナはどうした?」
揺さぶり続けると男はなんとか意識を戻した。
「テスタ、薬……アン、ジェリーナ様に、この匂い……辿って、ください」
「この匂いを辿ればいいんだな、わかった。おまえ、もう起きれるか?起きれるなら皆にこれを嗅がせるんだ。解毒薬だ」
「はい、ありが、とうございます……大丈夫、ですから」
「よし、頼んだ、頑張れよ」
「ヴェント、この匂い辿れるか?」
愛馬に聞くと、周辺をキョロキョロする。そしてブルルルと鳴いた。
「よし、その匂いの元へ行け!」
腹を軽く蹴ると、ヴェントは風のように走り出した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ええっと、ひいふう……9人か。ちょっと物足りないが5,4だ」
「団長、ずるいですよ。俺が5でしょ。部下に花を持たせるって知らないんですか?」
「知らない。だから5,4」
「大人げないなあ。じゃあもういいですよ、それで」
そう言い終わると、あっという間に敵の中へ飛び込んだ。
「さ、今のうちに行きましょ、カッシオ」
「……俺は行かない」
「どうしたの?行かないと捕まっちゃうわよ」
「いい。もう母上の嘘に踊らされるのはまっぴらだ」
「はあああ、息子の方が幾分か利口だわね。行かせるわけないでしょ、ホントにバカね」
副団長が立ちふさがる。
「どいてよ。私はここを出たいの」
「いい加減黙らないと、はっ倒すわよ」
「ふん。そんな事言ったって怖くないわ。騎士団は女子供には手をあげないもの」
「あらあ、あいにくそれは男たちのルールよ。アタシはね、心は女なの、残念ね」
そう言うと、母上の頬を思いっきりビンタした。
容赦なくやられた母上は、倒れて転がった。
「いたあ、何するのよ野蛮人!」
「アバズレよりは野蛮人の方がいいわね」
「もう許さない。誰かこいつを殴って」
母上が言うが、何も起こらない。それはそうだ。既に影たちは積み重なっている。
「あらあ、残念ね。ジ・エンドよ」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「う……ん」
目覚めると知らない天井が目に入った。頭が重い。身体もまるで泥の中に埋められてしまったかのような重さで上手く動かない。
「ここ、は」
「おや、お目覚めかな?」
見知らぬ声が聞こえた。なんとか重い頭を動かす。そこにはお父様と同じ歳の頃の男性がいた。その少し後ろにはきつめな感じの綺麗な女性、その向こうに見える扉には2人、ガタイがよく柄の悪そうな男たちがいる。
「気分はどうかな?流石に屋敷全体に効く量だと強かったようだね」
一見すると穏やかそうな顔つきの男性だが、目に狂気を感じた。どこかで見たような気もする。
「あなたは?」
「はは、やはり知らなかったか。王城で一度すれ違った時に目が合ったはずなんだけど。ま、いいか。初めまして、私はテスタ伯爵だよ。よろしくね」
「よろしく?」
テスタ伯爵と名乗った男性は、後ろの二人に何やら告げると二人は部屋から出て行った。
「体調はどうだい?」
「頭も身体も重いです」
「そうか、やはり強すぎたな。動かすことは出来そうかい?」
「はい、何とかですが」
「そう、それなら良かった」
「何故ここに連れてきたのですか?」
「ここはね、私の父親が愛人と楽しむために建てた家なんだ。まあ、楽しんだのは父親だけではないけれどね」
ウィンクをして言う。
「誰にも知られていない秘密の家だよ。だから、ここで何があろうと誰にも知られることはない」
そう言いながらベッドに腰掛ける。
ゾクっとした。
「はは、怯えた顔も美しいね。私はね、君に一目惚れしてしまったんだ。父親が死んで、私が正式に伯爵位を継いでね。その為の手続きと挨拶のために、王城に来ていた時なのだけれどね。なんせ城へ来るのは初めてだったもので、道に迷ってしまってね。ウロウロしているうちに、小さな中庭に出たんだ。
そうしたらなんと、王太子妃と君が仲良くお茶をしていたのを見た。
姉妹揃って美しかったのだけれど、君の神々しいくらいの美しさに私の心臓は撃ち抜かれたよ」
恍惚とした表情で語る姿に鳥肌が立つ。
「これは是非、あの娘を手に入れなければって思ったのだよ。しかも2度目の再会の時はすれ違いざまに目が合った。けれど、第二王子の婚約者になるかもしれないという噂を聞いてね。流石に王族相手では太刀打ち出来ないと諦めかけたのだが、実際に婚約したのは公爵家の跡取りだった。
これはもう私の愛人になるために神様がそうしてくれたに違いないと思って神様に感謝したよ。でも、困ったことに、第二王子が君の事を諦めずに奪おうと考えているのを知ったんだ。
そこで私は考えた。第二王子を利用してやろうとね。第二王子本人に話を持ち掛けるのはリスキーだったので母親の方へ持ち掛けた。昔からあの女は頭が悪くてね。今回も簡単に乗って来たよ」
穏やかそうな笑顔なのに、目の奥が暗い。フフフと笑う姿が気持ち悪い。
「あと少しで上手くいくところだったのに、あの親子はちょっと早計だったね。でもまあ、結果オーライかな。一番の目的は果たせたし」
「あんたはここで、この人に飼われるのよ。飽きるまでずっとね」
聞いたことのない高い声が聞こえた。
屋敷へ到着するも、屋敷中が不気味なほど静かだった。
馬から飛び降り、屋敷の扉を開ける。屋敷全体がハッカの匂いで溢れていた。
「アンジェリーナ!!」
大声で呼ぶがなんの応答もない。エントランスから奥へ向かうと、使用人たちが何人も倒れていた。どうやら薬のせいで意識を失っているらしい。
「アンジェリーナ!!」呼び続けながら2階へと上がる。
すると、暗部らしき男たちが倒れていた。駆け寄って一人の男を揺さぶる。
「おい、アンジェリーナはどうした?」
揺さぶり続けると男はなんとか意識を戻した。
「テスタ、薬……アン、ジェリーナ様に、この匂い……辿って、ください」
「この匂いを辿ればいいんだな、わかった。おまえ、もう起きれるか?起きれるなら皆にこれを嗅がせるんだ。解毒薬だ」
「はい、ありが、とうございます……大丈夫、ですから」
「よし、頼んだ、頑張れよ」
「ヴェント、この匂い辿れるか?」
愛馬に聞くと、周辺をキョロキョロする。そしてブルルルと鳴いた。
「よし、その匂いの元へ行け!」
腹を軽く蹴ると、ヴェントは風のように走り出した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ええっと、ひいふう……9人か。ちょっと物足りないが5,4だ」
「団長、ずるいですよ。俺が5でしょ。部下に花を持たせるって知らないんですか?」
「知らない。だから5,4」
「大人げないなあ。じゃあもういいですよ、それで」
そう言い終わると、あっという間に敵の中へ飛び込んだ。
「さ、今のうちに行きましょ、カッシオ」
「……俺は行かない」
「どうしたの?行かないと捕まっちゃうわよ」
「いい。もう母上の嘘に踊らされるのはまっぴらだ」
「はあああ、息子の方が幾分か利口だわね。行かせるわけないでしょ、ホントにバカね」
副団長が立ちふさがる。
「どいてよ。私はここを出たいの」
「いい加減黙らないと、はっ倒すわよ」
「ふん。そんな事言ったって怖くないわ。騎士団は女子供には手をあげないもの」
「あらあ、あいにくそれは男たちのルールよ。アタシはね、心は女なの、残念ね」
そう言うと、母上の頬を思いっきりビンタした。
容赦なくやられた母上は、倒れて転がった。
「いたあ、何するのよ野蛮人!」
「アバズレよりは野蛮人の方がいいわね」
「もう許さない。誰かこいつを殴って」
母上が言うが、何も起こらない。それはそうだ。既に影たちは積み重なっている。
「あらあ、残念ね。ジ・エンドよ」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「う……ん」
目覚めると知らない天井が目に入った。頭が重い。身体もまるで泥の中に埋められてしまったかのような重さで上手く動かない。
「ここ、は」
「おや、お目覚めかな?」
見知らぬ声が聞こえた。なんとか重い頭を動かす。そこにはお父様と同じ歳の頃の男性がいた。その少し後ろにはきつめな感じの綺麗な女性、その向こうに見える扉には2人、ガタイがよく柄の悪そうな男たちがいる。
「気分はどうかな?流石に屋敷全体に効く量だと強かったようだね」
一見すると穏やかそうな顔つきの男性だが、目に狂気を感じた。どこかで見たような気もする。
「あなたは?」
「はは、やはり知らなかったか。王城で一度すれ違った時に目が合ったはずなんだけど。ま、いいか。初めまして、私はテスタ伯爵だよ。よろしくね」
「よろしく?」
テスタ伯爵と名乗った男性は、後ろの二人に何やら告げると二人は部屋から出て行った。
「体調はどうだい?」
「頭も身体も重いです」
「そうか、やはり強すぎたな。動かすことは出来そうかい?」
「はい、何とかですが」
「そう、それなら良かった」
「何故ここに連れてきたのですか?」
「ここはね、私の父親が愛人と楽しむために建てた家なんだ。まあ、楽しんだのは父親だけではないけれどね」
ウィンクをして言う。
「誰にも知られていない秘密の家だよ。だから、ここで何があろうと誰にも知られることはない」
そう言いながらベッドに腰掛ける。
ゾクっとした。
「はは、怯えた顔も美しいね。私はね、君に一目惚れしてしまったんだ。父親が死んで、私が正式に伯爵位を継いでね。その為の手続きと挨拶のために、王城に来ていた時なのだけれどね。なんせ城へ来るのは初めてだったもので、道に迷ってしまってね。ウロウロしているうちに、小さな中庭に出たんだ。
そうしたらなんと、王太子妃と君が仲良くお茶をしていたのを見た。
姉妹揃って美しかったのだけれど、君の神々しいくらいの美しさに私の心臓は撃ち抜かれたよ」
恍惚とした表情で語る姿に鳥肌が立つ。
「これは是非、あの娘を手に入れなければって思ったのだよ。しかも2度目の再会の時はすれ違いざまに目が合った。けれど、第二王子の婚約者になるかもしれないという噂を聞いてね。流石に王族相手では太刀打ち出来ないと諦めかけたのだが、実際に婚約したのは公爵家の跡取りだった。
これはもう私の愛人になるために神様がそうしてくれたに違いないと思って神様に感謝したよ。でも、困ったことに、第二王子が君の事を諦めずに奪おうと考えているのを知ったんだ。
そこで私は考えた。第二王子を利用してやろうとね。第二王子本人に話を持ち掛けるのはリスキーだったので母親の方へ持ち掛けた。昔からあの女は頭が悪くてね。今回も簡単に乗って来たよ」
穏やかそうな笑顔なのに、目の奥が暗い。フフフと笑う姿が気持ち悪い。
「あと少しで上手くいくところだったのに、あの親子はちょっと早計だったね。でもまあ、結果オーライかな。一番の目的は果たせたし」
「あんたはここで、この人に飼われるのよ。飽きるまでずっとね」
聞いたことのない高い声が聞こえた。
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