王子と婚約するのは嫌なので、婚約者を探すために男装令嬢になりました

Blue

文字の大きさ
31 / 36

危なかったです

しおりを挟む
 テスタ伯爵の後ろにいた女性が言った。蛇のような目つきで蔑むような目で見てくる。
「あなた、ルディの昔の婚約者ね」
「あらあ、よくわかったじゃない」
「ルディから聞いていましたから」
「ドルフ?ドルフったらやっぱり私が忘れられなかったのね」
「ええ、蛇のような目つきで好きになれなかったって」

パシッ!!
「はあ!?ふざけんじゃないわよ!大体なんなのよ?ルディなんて呼んで」
頬を思いっきり叩かれる。

「やめないか、リンダ」
「は?うるっさいわね。この女、殴らないと気が済まないわ」
「私のお気に入りにこれ以上何かするなら容赦はしないが?」
「!?……わかったわよ。ふん、あんたがこの人になすがままになっている姿をここでじっくり見ていてあげるわ。それをドルフに教えたら……ふふふ」

彼女はそう言うと、扉の近くにあるイスに座った。

「フフ、観客がいるなんてちょっとドキドキしてしまうね。さあ、まずは君の美しい身体を目で堪能しようかな」
そう言って服を脱がそうとする。抵抗しようにも上手く力が入らない。
「イヤッ!!」
それでも動ける所を全て動かして抵抗すると

「動いてはダメだ。じっとしていなさい」
そう言われた途端、抵抗出来なくなってしまった。

「そう、いい子だね。そのままじっとしているんだよ。私が全部脱がせてあげるからね。やはり初めては大人の私が全てリードしてあげなければね」
下卑た笑みを浮かべながら胸のボタンを一つずつ外す。キャミソールが見え胸の谷間が露わになると、ボタンを外すのを止めじっと見る。
「ああ、素晴らしい。全て脱がせてからと思っていたが、我慢できそうにないな」
そう言って息を荒くさせた。

全身に鳥肌が立つ。気持ち悪くてすぐにも逃げ出したいのに、身体を動かすことが出来ない。悔しくて私の頬に涙が伝ったその時、部屋の入口の扉が吹き飛んだ。

「何事だ!?」
テスタ伯爵が声を荒げる。
「アンジェリーナ!!」
私を呼ぶ声と共に入ってきたのは
「ルディ!」
愛しい愛しいルドルフォその人だった。

「お前、何しようとしてる?」
低く猛獣の唸り声のように響いたその声に、呆気に取られていたテスタ伯爵が私から少し後ずさる。
「アンジェリーナ、大丈夫か?」
「はい、大丈夫です。ルディが来てくれたからもう大丈夫……」
最後まで言葉が紡げず、涙があふれた。

そっとルディが私を抱きしめた。
「間に合って良かった。本当に良かった」
震える声で言うルディ。
すると、プンとハッカの匂いが広がった。
「ルディ、ここにいてはダメです!薬を焚かれているわ!」

「ははは、もう遅いよ。少しでも吸い込んでいれば上手く動くことは出来なくなくなるのだから」
いつの間にか数人の男たちを従えて、テスタ伯爵が扉を塞ぐように立っていた。
「さあ、その男には制裁を加えてやらないと。君が私に女にされるのを見ていてもらおうか。お前たち、やれ。命は奪うな。意識は保てるようにいたぶるんだ」

言われた男たちはニヤニヤと下卑た笑みを浮かべながらこちらに近づいてきた。
「ルディ、逃げて」
私を抱きしめた状態のルディの胸を押す。少しでも動けるなら逃げて欲しい。
けれど予想を裏切る返事が返ってきた。

「アンジー、俺がこんなガタイだけの男たちに負けると思っているのか?」
「だってルディ、薬を吸い込んでしまったのよ。動けなくなってしまう」
「俺を心配してくれるその表情も可愛いな。心配するな。一瞬で片付けてやる」
そう言うと、薬など最初から感じていないような動きでスッと立つ。
向かってきた男たちは、予想外の動きにニヤけるのをやめ、真剣な顔で向かって行った。

一斉攻撃にルディは少し身を低くする。私はこの動きを以前見たことがあった。ビッグベアを倒した時だ。低い体制のまま剣を一閃する。そのたった一太刀で5人の男たちが倒れた。その後ろにいた2人の男たちも、驚いた表情のまま切られる。
ほんの一瞬で、7人の男たちを沈めた。しかも絶妙に深すぎず、浅すぎずの傷だ。

その様子を見ていたテスタ伯爵は
「なんでだ……薬を吸い込んでいたはずなのに」
そう呟き、力尽きたように座り込んでしまった。腰が抜けてしまったようだ。
ルディがテスタ伯爵を見下ろすように立つ。

「解毒薬飲んでるに決まってるだろう。バカばっかり相手にしていたから貴様もバカになったんじゃないのか。本当ならここでお前を切り刻んでやりたい所だが、そうなると公の場で断罪出来なくなるからな。だからこの一発で我慢してやる」
そう言うと、物凄い勢いで顔面を殴った。どこの歯なのか、数本飛ばしながらテスタ伯爵は失神してしまった。

テスタ伯爵が倒れ込んだ所に呆然とした表情の彼女がいた。髪が乱れている。どうやらルディが扉ごと吹っ飛ばしたようだ。

「テスタ夫人。こんな所で何をしていたんです?」
「あ、あ、ドルフ。私は何も……」
「言い逃れは結構。またもや俺にあの薬を飲ませようとしたな。今回は領地に引っ込むだけでは済まないからな」
「ドルフ、私はあなたを愛しているのよ!だから……」
「だから自分の思い通りにしようって考えたか?浅慮だな」
どうにも言い逃れ出来ないと悟ったのか、とうとう彼女は泣き出してしまった。

そんな彼女を無視して私の元へ来るルディ。
「解毒薬があったのですね」
「ああ、前に流行った時に作られていたんだよ。アンジーも飲め」
ピンクの液体が入った小さなビンを渡されたのでそれを飲む。
「よし、これで大丈夫だ」
そうこうしているうちに、階下が騒がしくなった。

「アンジー!」
「ジャンヌ副団長」
ジャンヌ副団長を筆頭に騎士団の人たちが入ってきた。
ベッドに座っている私に、凄い勢いで抱き着いてきたジャンヌ副団長。勢いが強すぎて二人でベッドに転がってしまう。

「アンジー、心配したのよお。大丈夫だった?何もされなかった?」
「はい、ルディに助けてもらいました」
起こしてもらいながら言う。
「本当に良かったわ、変態男の餌食にならなくて。で、肝心の変態男は?」
「そこに転がってるだろう」
ルディが顎で指す。

「……顔、潰れちゃってるわよ」
「一発しか殴ってないぞ」
「最高の一発をくれてやったってわけね。さあ、全員捕縛してとっとと帰りましょう」
気絶した男たちを捕縛して、馬車へ詰め込んで王城へと向かう。
「アンジー、今日はもう帰りなさい。詳しい話は明日聞くことにするから。今日は帰ってゆっくりしなさいね」
そう言って、ジャンヌ副団長は去って行った。

「よし、帰ろう。送る」
ルディが私を馬に乗せ、自分も飛び乗ってから屋敷へと向かう。
「屋敷の皆は大丈夫かしら?」
「暗部の一人に解毒薬を渡しておいたから大丈夫だ」
「そうなのですね。ありがとうございます」

「疲れているだろう。俺にもたれかかっておけ」
「でも……」
ルディはもっと疲れているはずなのに、そんな甘えてしまうのはどうかと思った。
「いいんだ。俺が安心するから」
「では、お言葉に甘えて」
ルディに寄り掛かる。決して小さくない私をすっぽり包めてしまう大きさに安心する。
安心したせいで、いつの間にか眠りについてしまっていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて何故か執着されました

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
皆様の応援のおかげでHOT女性向けランキング第7位獲得しました。 前世病弱だったニーナは転生したら周りから地味でダサいとバカにされる令嬢(もっとも平民)になっていた。「王女様とか公爵令嬢に転生したかった」と祖母に愚痴ったら叱られた。そんなニーナが祖母が死んで冒険者崩れに襲われた時に助けてくれたのが、ウィルと呼ばれる貴公子だった。 恋に落ちたニーナだが、平民の自分が二度と会うことはないだろうと思ったのも、束の間。魔法が使えることがバレて、晴れて貴族がいっぱいいる王立学園に入ることに! しかし、そこにはウィルはいなかったけれど、何故か生徒会長ら高位貴族に絡まれて学園生活を送ることに…… 見た目は地味ダサ、でも、行動力はピカ一の地味ダサ令嬢の巻き起こす波乱万丈学園恋愛物語の始まりです!? 小説家になろうでも公開しています。 第9回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作品

なりゆきで妻になった割に大事にされている……と思ったら溺愛されてた

たぬきち25番
恋愛
男爵家の三女イリスに転生した七海は、貴族の夜会で相手を見つけることができずに女官になった。 女官として認められ、夜会を仕切る部署に配属された。 そして今回、既婚者しか入れない夜会の責任者を任せられた。 夜会当日、伯爵家のリカルドがどうしても公爵に会う必要があるので夜会会場に入れてほしいと懇願された。 だが、会場に入るためには結婚をしている必要があり……? ※本当に申し訳ないです、感想の返信できないかもしれません…… ※他サイト様にも掲載始めました!

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました

春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。 名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。 姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。 ――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。 相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。 40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。 (……なぜ私が?) けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです

大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。 「俺は子どもみたいな女は好きではない」 ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。 ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。 ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。 何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!? 貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。

処理中です...