笑い方を忘れた令嬢

Blue

文字の大きさ
24 / 71

竜の住処

しおりを挟む
 20分程経っただろうか。空の旅を終え竜舎に戻って来たアリアンナたち。
先に銀の竜から降りたジルヴァーノは、アリアンナが降りるのを受け止めた。
「はあぁ、本当に楽しかった。ありがとうロワ。皆もありがとう」
銀の竜と、一緒に飛んだ竜たちに礼を言ったアリアンナは、皆の鼻筋を順番に撫でてやっていた。

それからジルヴァーノと向かい合う。
「ジルヴァーノ様も、一緒に乗ってくださってありがとうございます。私だけだったら落ちていたかも、ふふ。とても楽しい時間をありがとうございました」

「いえ。楽しかったのなら良かったです。私も久々に鞍なしで乗って、いい緊張感を得られましたよ」
「ふふふ、ごめんなさい」
「ああ、いや。アリアンナ様が謝る事では……ロワがやった事ですから」
「じゃあ、ロワの分という事で。お願いだから叱らないであげてください」
「わかりました。叱らないでおきます」

アリアンナはニコリと笑みを浮かべジルヴァーノの見上げた。
「また来てもいいですか?」
「ええ、いつでもどうぞ」
そう返したジルヴァーノも自然と微笑んでいた。

 その日の夜。サマンサがアリアンナ自身に見えるようにと鏡を合わせる。
「やっぱり傷跡が変化しているんです。なんとなくですけれど、何かを模っているような気がしますね」

アリアンナも久々に、自分の背中を見て驚いた。見るもおぞましい、そう思っていた傷跡が形を変えていた。
「確かに……何かしら?」
何かが思い出せそうで思い出せない。しかし、気持ちの悪かった傷跡が、途端に嫌なものではなくなった。
「どうしてなのかはわからないけれど、気持ち悪くなくなったからいいとしましょう」



 初めての空の旅から後も2回程空を舞う経験をした。3回目に至っては、自分たちもと騎士の者たちも一緒になって飛んだ。

「鞍なしってのは、なかなかいい訓練になりますね」
「まあ、竜の風を操る力があってこそ出来る技だけどな」
「なんか、鞍がない方が竜の振動がダイレクトに伝わって良かったです」
これには皆が賛同した。

「それは俺も思った。気のせいか知らんが、こちらの意志も伝わりやすかった気がする」
「それ、私も思いました」
「俺も」

皆の意見にジルヴァーノが少しだけ考える。
「もしかしたら、竜たちも鞍がない方が嬉しいのだろうか?」
アリアンナに撫でられている銀の竜を見ると、金の瞳をゆっくり瞬いた。
「やはりそうなのだな。ならばこれからは、鞍を常に着けずに乗るようにしてみよう」

鞍を着ける事を辞めた竜騎士たちは、それぞれが手応えを感じるほど竜との絆が深まった。今まででさえ精鋭部隊と呼ばれていた彼らは、最大限に力を発する事が出来るようになり、向かう所敵なしと恐れられるほど強くなるのはほんの少し未来の話だ。



 王城の舞踏会まで2週間を切った。城内は準備に追われてバタバタしている。そんんな中、王太子の執務室では王太子が頭を抱えていた。
「竜騎士たちの評判がうなぎ上りになるのはいいが、竜を捕獲しようとする輩もうなぎ上りになるのはいただけない」

どうやら隣国が、冒険者を使って竜を生け捕りにしようとしているらしい。自分たちの国でも竜騎士団を結成したいとでも思っているのだろう。竜は何故かほとんどがこのガルテーゼ王国に生息している。

他国にもいるにはいるが、途中からこの国に移り住むという事は日常茶飯事なのだ。だからこそ国境を越えてでも奪おうとしているようだが、他国に生息している竜を例えギルドを通しても、殺す事も生け捕りにする事も犯罪だ。

「アンナの晴れ舞台の準備をしていると言うのに。余計な仕事を増やさないでもらいたいね」
王太子の愚痴にドマニが返す。
「竜は強いですから。どんなに手練れの冒険者でも、生け捕りにする事はほぼ不可能でしょう。竜たちは賢くもありますしね。うちだって銀の竜がいてこその竜騎士団ですから。銀の竜がいなかったら竜騎士団なんて作れませんでしたからね」

「それは分かっている。だが、そもそも我が国に入り込んでくる事が気に食わないんだ」
「だったら、これを機に戦争でも仕掛けますか?」
「そんな無駄に人が死ぬ様な事はしない。だが、何か解決策を考えなければいけないな」

そう言った王太子は、再び頭を抱えるのだった。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

[完結]私を巻き込まないで下さい

シマ
恋愛
私、イリーナ15歳。賊に襲われているのを助けられた8歳の時から、師匠と一緒に暮らしている。 魔力持ちと分かって魔法を教えて貰ったけど、何故か全然発動しなかった。 でも、魔物を倒した時に採れる魔石。石の魔力が無くなると使えなくなるけど、その魔石に魔力を注いで甦らせる事が出来た。 その力を生かして、師匠と装具や魔道具の修理の仕事をしながら、のんびり暮らしていた。 ある日、師匠を訪ねて来た、お客さんから生活が変わっていく。 え?今、話題の勇者様が兄弟子?師匠が王族?ナニそれ私、知らないよ。 平凡で普通の生活がしたいの。 私を巻き込まないで下さい! 恋愛要素は、中盤以降から出てきます 9月28日 本編完結 10月4日 番外編完結 長い間、お付き合い頂きありがとうございました。

妹と人生を入れ替えました〜皇太子さまは溺愛する相手をお間違えのようです〜

鈴宮(すずみや)
恋愛
「俺の妃になって欲しいんだ」  従兄弟として育ってきた憂炎(ゆうえん)からそんなことを打診された名家の令嬢である凛風(りんふぁ)。  実は憂炎は、嫉妬深い皇后の手から逃れるため、後宮から密かに連れ出された現皇帝の実子だった。  自由を愛する凛風にとって、堅苦しい後宮暮らしは到底受け入れられるものではない。けれど憂炎は「妃は凛風に」と頑なで、考えを曲げる様子はなかった。  そんな中、凛風は双子の妹である華凛と入れ替わることを思い付く。華凛はこの提案を快諾し、『凛風』として入内をすることに。  しかし、それから数日後、今度は『華凛(凛風)』に対して、憂炎の補佐として出仕するようお達しが。断りきれず、渋々出仕した華凛(凛風)。すると、憂炎は華凛(凛風)のことを溺愛し、籠妃のように扱い始める。  釈然としない想いを抱えつつ、自分の代わりに入内した華凛の元を訪れる凛風。そこで凛風は、憂炎が入内以降一度も、凛風(華凛)の元に一度も通っていないことを知る。 『だったら最初から『凛風』じゃなくて『華凛』を妃にすれば良かったのに』  憤る凛風に対し、華凛が「三日間だけ元の自分戻りたい」と訴える。妃の任を押し付けた負い目もあって、躊躇いつつも華凛の願いを聞き入れる凛風。しかし、そんな凛風のもとに憂炎が現れて――――。

公爵令嬢 メアリの逆襲 ~魔の森に作った湯船が 王子 で溢れて困ってます~

薄味メロン
恋愛
 HOTランキング 1位 (2019.9.18)  お気に入り4000人突破しました。  次世代の王妃と言われていたメアリは、その日、すべての地位を奪われた。  だが、誰も知らなかった。 「荷物よし。魔力よし。決意、よし!」 「出発するわ! 目指すは源泉掛け流し!」  メアリが、追放の準備を整えていたことに。

この婚約は白い結婚に繋がっていたはずですが? 〜深窓の令嬢は赤獅子騎士団長に溺愛される〜

氷雨そら
恋愛
 婚約相手のいない婚約式。  通常であれば、この上なく惨めであろうその場所に、辺境伯令嬢ルナシェは、美しいベールをなびかせて、毅然とした姿で立っていた。  ベールから、こぼれ落ちるような髪は白銀にも見える。プラチナブロンドが、日差しに輝いて神々しい。  さすがは、白薔薇姫との呼び名高い辺境伯令嬢だという周囲の感嘆。  けれど、ルナシェの内心は、実はそれどころではなかった。 (まさかのやり直し……?)  先ほど確かに、ルナシェは断頭台に露と消えたのだ。しかし、この場所は確かに、あの日経験した、たった一人の婚約式だった。  ルナシェは、人生を変えるため、婚約式に現れなかった婚約者に、婚約破棄を告げるため、激戦の地へと足を向けるのだった。 小説家になろう様にも投稿しています。

【完結】夫が私に魅了魔法をかけていたらしい

綺咲 潔
恋愛
公爵令嬢のエリーゼと公爵のラディリアスは2年前に結婚して以降、まるで絵に描いたように幸せな結婚生活を送っている。 そのはずなのだが……最近、何だかラディリアスの様子がおかしい。 気になったエリーゼがその原因を探ってみると、そこには女の影が――? そんな折、エリーゼはラディリアスに呼び出され、思いもよらぬ告白をされる。 「君が僕を好いてくれているのは、魅了魔法の効果だ。つまり……本当の君は僕のことを好きじゃない」   私が夫を愛するこの気持ちは偽り? それとも……。 *全17話で完結予定。

殿下、毒殺はお断りいたします

石里 唯
恋愛
公爵令嬢エリザベスは、王太子エドワードから幼いころから熱烈に求婚され続けているが、頑なに断り続けている。 彼女には、前世、心から愛した相手と結ばれ、毒殺された記憶があり、今生の目標は、ただ穏やかな結婚と人生を全うすることなのだ。 容姿端麗、文武両道、加えて王太子という立場で国中の令嬢たちの憧れであるエドワードと結婚するなどとんでもない選択なのだ。 彼女の拒絶を全く意に介しない王太子、彼女を溺愛し生涯手元に置くと公言する兄を振り切って彼女は人生の目標を達成できるのだろうか。 「小説家になろう」サイトで完結済みです。大まかな流れに変更はありません。 「小説家になろう」サイトで番外編を投稿しています。

【完結】 婚約破棄間近の婚約者が、記憶をなくしました

瀬里@SMARTOON8/31公開予定
恋愛
 その日、砂漠の国マレから留学に来ていた第13皇女バステトは、とうとうやらかしてしまった。  婚約者である王子ルークが好意を寄せているという子爵令嬢を、池に突き落とそうとしたのだ。  しかし、池には彼女をかばった王子が落ちることになってしまい、更に王子は、頭に怪我を負ってしまった。  ――そして、ケイリッヒ王国の第一王子にして王太子、国民に絶大な人気を誇る、朱金の髪と浅葱色の瞳を持つ美貌の王子ルークは、あろうことか記憶喪失になってしまったのである。(第一部)  ケイリッヒで王子ルークに甘やかされながら平穏な学生生活を送るバステト。  しかし、祖国マレではクーデターが起こり、バステトの周囲には争乱の嵐が吹き荒れようとしていた。  今、為すべき事は何か?バステトは、ルークは、それぞれの想いを胸に、嵐に立ち向かう!(第二部) 全33話+番外編です  小説家になろうで600ブックマーク、総合評価5000ptほどいただいた作品です。 拍子挿絵を描いてくださったのは、ゆゆの様です。 挿絵の拡大は、第8話にあります。 https://www.pixiv.net/users/30628019 https://skima.jp/profile?id=90999

病弱令嬢ですが愛されなくとも生き抜きます〜そう思ってたのに甘い日々?〜

白川
恋愛
病弱に生まれてきたことで数多くのことを諦めてきたアイリスは、無慈悲と噂される騎士イザークの元に政略結婚で嫁ぐこととなる。 たとえ私のことを愛してくださらなくても、この世に生まれたのだから生き抜くのよ────。 そう意気込んで嫁いだが、果たして本当のイザークは…? 傷ついた不器用な二人がすれ違いながらも恋をして、溺愛されるまでのお話。

処理中です...