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咆哮
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ピアの言葉にジルヴァーノの銀色の瞳が陰る。
「そんな事、許可するわけないだろう」
明らかにジルヴァーノの声にイラつきが表れ始めた。それなのにピアは、気にする素振りもない。それどころか更に言い募る。
「私はジル様の許嫁なの。ジル様の妻になるの。だから、ロワにも認めてもらわなくちゃいけないの!」
「はああぁ。私はピアと結婚するつもりはない。そう何度も言っているはずだ」
一体何度言えば納得するのかと、ジルヴァーノが大きく息を吐くがピアは笑う。
「ふふ、そんな風に言っても駄目よ。おじ様とおば様は、お嫁にいらっしゃいって言ってくれたもの。休みの間、屋敷にいてもいいって言ってくれたのもお二人だしね」
平行線のまま交わる事のない会話に、ジルヴァーノのイラつきが増々募って行く。それでも男として、イラつきを女性にぶつける事はしない。特に妹のように思っていたピアに対しては、なんだかんだで甘くなってしまうのも事実だった。
「とにかく、今日はもう帰るんだ。馬車を呼んでやるから」
「しょうがないわね。明日もまた来てもいいでしょ?」
「駄目だ。ピアがどれだけ頑張ってもロワには伝わらない。ピアに触れる事を許しはしないだろう」
ジルヴァーノはそうピアに言いながら、アリアンナの事を考えていた。
『多分、これから先も女性でロワに触れる事が出来るのは彼女だけだろう』
アリアンナが竜たちに囲まれながら楽しそうに微笑んでいる姿を思い出し、自然と胸が温かくなるのを感じている目の前で、ピアが頬を膨らませていた。
「ジル様、どうしてそんな意地悪を言うの?やってみなくちゃわからないじゃない。どんなに反対されても、私は毎日来るから」
何故これほどまでに執着するのか……もう何を言っても無駄だと判断したジルヴァーノは嘆息する。
「とにかく、今日は屋敷に帰るんだ。わかったな」
諭すように言いながらピアの頭に手を乗せれば、嬉しそうにピアが笑った。
「ふふ、わかった。あ、今夜は屋敷で食事をする?」
「ああ」
二人の会話を聞いた、竜騎士たちが茶々を入れた。
「なんすか、今の会話。まるで新婚さんみたいっすね」
「本当ですね。花嫁修業だけじゃなくて、模擬結婚生活もする事になるんじゃないですか?」
「いいじゃないですか、羨ましい」
「嫌だ、恥ずかしい」
竜騎士たちの茶々に、頬を染めながらも嬉しそうにするピア。
片やジルヴァーノの方は、目つきが険しい。銀の瞳の奥が揺らめいているのが竜騎士たちにもわかった。
「あ、冗談ですよ。団長、怒ってます?」
「おまえら……今日の訓練、覚悟しておけ」
威圧的な低い声に、周りの竜騎士たちが震え上がった。
一方、竜たちの中で全てを聞いていたアリアンナ。気が付けば、彼女の頬には涙が流れていた。
『私……やっぱりジルヴァーノ様の事……』
自覚した途端、彼女の瞳からはとめどなく涙が溢れてきた。竜たちが同調するようにキュウキュウと鳴き出す。
「なんだ?竜たちが鳴いている?」
竜たちの異変に気付いたジルヴァーノが、何事かと竜たちの方へ足を向けた。
「ジル様、どうしたの?」
ジルヴァーノが竜舎に入って数歩進んだ時だった。ピアがジルヴァーノを追いかけて来た。
「グウォオオオ!!」
途端に今まで聞いたこともない、恐ろしい咆哮が竜舎中に轟いた。ロワだ。ロワだけではない。つられるように他の竜たちも咆哮を上げる。特別に強化されているはずの竜舎の窓がガタガタ揺れた。
「キャー!」
耳をつんざくような咆哮の嵐に、驚いたピアが耳を塞いでしゃがみ込む。
「ピア!ここから出るんだ!」
ジルヴァーノはピアを立たせ、事務所の方へ押し込む。だが、竜たちの怒りは治まらなかった。
一斉に翼を広げた竜たち。銀の竜が再び咆哮を上げ飛び立つと、連なるように全ての竜たちが飛び立ってしまった。
「えっ!?」
ジルヴァーノは一瞬、目を疑った。銀の竜の手にアリアンナが抱かれているように見えたのだ。確証はない。だが確信はあった。アリアンナがいたからこそ、共鳴するように鳴いたり、咆哮を上げたのだろうと簡単に推測出来たからだ。
「泣いていた?」
見えたのは本当に一瞬だったし、見間違いかもしれない。だが何故かジルヴァーノの瞳には、アリアンナの涙した姿が鮮明に見えた気がした。
「アリアンナ様」
人も竜もいなくなった竜舎で、彼女の名前を呟く。
結局竜たちはその日、日中ずっと行方がわからず夜中になってやっと戻って来たのだった。
「そんな事、許可するわけないだろう」
明らかにジルヴァーノの声にイラつきが表れ始めた。それなのにピアは、気にする素振りもない。それどころか更に言い募る。
「私はジル様の許嫁なの。ジル様の妻になるの。だから、ロワにも認めてもらわなくちゃいけないの!」
「はああぁ。私はピアと結婚するつもりはない。そう何度も言っているはずだ」
一体何度言えば納得するのかと、ジルヴァーノが大きく息を吐くがピアは笑う。
「ふふ、そんな風に言っても駄目よ。おじ様とおば様は、お嫁にいらっしゃいって言ってくれたもの。休みの間、屋敷にいてもいいって言ってくれたのもお二人だしね」
平行線のまま交わる事のない会話に、ジルヴァーノのイラつきが増々募って行く。それでも男として、イラつきを女性にぶつける事はしない。特に妹のように思っていたピアに対しては、なんだかんだで甘くなってしまうのも事実だった。
「とにかく、今日はもう帰るんだ。馬車を呼んでやるから」
「しょうがないわね。明日もまた来てもいいでしょ?」
「駄目だ。ピアがどれだけ頑張ってもロワには伝わらない。ピアに触れる事を許しはしないだろう」
ジルヴァーノはそうピアに言いながら、アリアンナの事を考えていた。
『多分、これから先も女性でロワに触れる事が出来るのは彼女だけだろう』
アリアンナが竜たちに囲まれながら楽しそうに微笑んでいる姿を思い出し、自然と胸が温かくなるのを感じている目の前で、ピアが頬を膨らませていた。
「ジル様、どうしてそんな意地悪を言うの?やってみなくちゃわからないじゃない。どんなに反対されても、私は毎日来るから」
何故これほどまでに執着するのか……もう何を言っても無駄だと判断したジルヴァーノは嘆息する。
「とにかく、今日は屋敷に帰るんだ。わかったな」
諭すように言いながらピアの頭に手を乗せれば、嬉しそうにピアが笑った。
「ふふ、わかった。あ、今夜は屋敷で食事をする?」
「ああ」
二人の会話を聞いた、竜騎士たちが茶々を入れた。
「なんすか、今の会話。まるで新婚さんみたいっすね」
「本当ですね。花嫁修業だけじゃなくて、模擬結婚生活もする事になるんじゃないですか?」
「いいじゃないですか、羨ましい」
「嫌だ、恥ずかしい」
竜騎士たちの茶々に、頬を染めながらも嬉しそうにするピア。
片やジルヴァーノの方は、目つきが険しい。銀の瞳の奥が揺らめいているのが竜騎士たちにもわかった。
「あ、冗談ですよ。団長、怒ってます?」
「おまえら……今日の訓練、覚悟しておけ」
威圧的な低い声に、周りの竜騎士たちが震え上がった。
一方、竜たちの中で全てを聞いていたアリアンナ。気が付けば、彼女の頬には涙が流れていた。
『私……やっぱりジルヴァーノ様の事……』
自覚した途端、彼女の瞳からはとめどなく涙が溢れてきた。竜たちが同調するようにキュウキュウと鳴き出す。
「なんだ?竜たちが鳴いている?」
竜たちの異変に気付いたジルヴァーノが、何事かと竜たちの方へ足を向けた。
「ジル様、どうしたの?」
ジルヴァーノが竜舎に入って数歩進んだ時だった。ピアがジルヴァーノを追いかけて来た。
「グウォオオオ!!」
途端に今まで聞いたこともない、恐ろしい咆哮が竜舎中に轟いた。ロワだ。ロワだけではない。つられるように他の竜たちも咆哮を上げる。特別に強化されているはずの竜舎の窓がガタガタ揺れた。
「キャー!」
耳をつんざくような咆哮の嵐に、驚いたピアが耳を塞いでしゃがみ込む。
「ピア!ここから出るんだ!」
ジルヴァーノはピアを立たせ、事務所の方へ押し込む。だが、竜たちの怒りは治まらなかった。
一斉に翼を広げた竜たち。銀の竜が再び咆哮を上げ飛び立つと、連なるように全ての竜たちが飛び立ってしまった。
「えっ!?」
ジルヴァーノは一瞬、目を疑った。銀の竜の手にアリアンナが抱かれているように見えたのだ。確証はない。だが確信はあった。アリアンナがいたからこそ、共鳴するように鳴いたり、咆哮を上げたのだろうと簡単に推測出来たからだ。
「泣いていた?」
見えたのは本当に一瞬だったし、見間違いかもしれない。だが何故かジルヴァーノの瞳には、アリアンナの涙した姿が鮮明に見えた気がした。
「アリアンナ様」
人も竜もいなくなった竜舎で、彼女の名前を呟く。
結局竜たちはその日、日中ずっと行方がわからず夜中になってやっと戻って来たのだった。
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