笑い方を忘れた令嬢

Blue

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諦めない少女

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「ロワ!!」
アリアンナが、自分の叫び声に驚いて目を覚ます。
「はあ、今のは……夢?」
背中が熱い。何とも言えない違和感に、ベッドから起き出し鏡を覗いた。

「何、これ?」
ネグリジェを捲った背はほんのりと輝いていた。
「竜が光っている?」
竜を模っている部分が金色に光っているのだ。

「さっきの夢と何か関係があるのかしら?」
やけに鮮明な夢だった。なんとなく忘れてはいけない、そう思ったアリアンナは細かく紙に書いていく事にした。
「どうせ眠れないしね」



 翌日。アリアンナが、王太子の執務室で仕事をしていると、執務室の窓が真っ暗になった。
「なんだ?」
王太子とドマニが首を傾げる。アリアンナは既に昨日、この光景を目にしていた。
「ロワだわ」

アリアンナが窓に近づくと、覗き込んできた金色の瞳と目が合った。
「また逃げて来たのか?」
王太子も窓に近づく。
「ジルヴァーノと喧嘩でもしたのでしょうか」
ドマニも寄って来た。

「私、ロワを連れて行くわ」
アリアンナの言葉に王太子が頷いた。
「そうしてやってくれ。このままでは暗くてかなわない」

窓を開けると、当然のように鼻先にアリアンナを乗せる銀の竜。
「今日は一体、何が嫌だったの?」
鼻筋を撫でながらそう言うと、銀の竜は竜舎へと向かった。

 竜舎に到着して、すぐに答えは分かった。
事務所と竜舎の扉が大きく開け放たれたそこに、ピアが立っていたのだった。
「あ、ロワが帰って来たわ。ロワー、機嫌直して私と友達になってよー」
一応気を使っているのか、竜舎の中には入って来ない。が、竜たちは皆岩の上にいた。

ロワも地面には降りようとせず、岩の頂に落ち着いた。
「なるほど、ピア様のせいだったのね」
わかった所で、自分ではどうにも出来ない。おまけに地面に降りる気配のない竜たちに当然のように囲まれ身動きも取れない。

仕方がないので皆の鼻先を撫でていると、事務所から大きな声がこちらにまで聞こえた。
「ピア!なんでここにいるんだ!?」
ジルヴァーノだった。
「うふふ。私ね、ロワと友達になる為に休みの間ここに通う事にしたの」
「は!?そんな話、聞いていないぞ。領地に戻ると言っていたじゃないか」

「休みの間って……あと2週間以上あるわ」
アリアンナは竜たちの中で呟く。
「彼女がいる間、あなたたちはここから降りないつもり?」
銀の竜に問いかけると、金の瞳がゆっくり閉じた。あちらではジルヴァーノとピアの会話が続いている。

「休みの間は、ジル様の屋敷でお世話になる事になったから。ふふふ、よろしくね」
「は!?」
「おば様がね、提案してくれたの。勿論、両親にも許可は取ったし。花嫁修業として屋敷のお手伝いもするつもりよ。頑張るわ」

「え?」
鼻先を撫でていたアリアンナの手が止まる。
『花嫁修業?じゃあやっぱりピア様はジルヴァーノ様の……』
正式な手続きはしていないかもしれない。だが、彼の母親がそれを了承するという事はそういう事なのだろう。

胸の中心がギュウッと詰まるような痛みに襲われる。
『なんだ、そうだったんだ』
アリアンナの変化に気付いた銀の竜が、鼻先で頬に触れた。他の竜たちもまるで一緒に落ち込んでいるように首を下げる。

「おーい。皆、食事だぞー」
竜騎士の一人が、こちらに向かって来ながら声を上げる。だが、一頭たりとも下へ降りる事はない。
「皆、ご飯だって。行っておいで」
アリアンナが言うが、誰も動かない。

銀の竜がクウと小さく鳴くと、竜たちはアリアンナを隠すように身を寄せ合った。
「皆……ありがとう」
竜たちの気遣いにアリアンナはお礼を言った。

「おーい。飯だってば」
竜騎士が更に近づく。竜たちのお陰でアリアンナの姿は見えないようだ。
「飯だぞ、食わないのか?」
どんなに言っても降りて来ない竜たちを見て、竜騎士が嘆息する。
「団長、竜たちが全く降りてきません。

ジルヴァーノはピアを見た。
「ピア、とにかくおまえは帰れ。竜たちがこれ以上機嫌を損ねないうちに」
「嫌よ。友達になるまで帰らない。これから毎日ここに通わせてもらうから」
ピアがピシャリと言い切った。
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