36 / 71
諦めない少女
しおりを挟む
「ロワ!!」
アリアンナが、自分の叫び声に驚いて目を覚ます。
「はあ、今のは……夢?」
背中が熱い。何とも言えない違和感に、ベッドから起き出し鏡を覗いた。
「何、これ?」
ネグリジェを捲った背はほんのりと輝いていた。
「竜が光っている?」
竜を模っている部分が金色に光っているのだ。
「さっきの夢と何か関係があるのかしら?」
やけに鮮明な夢だった。なんとなく忘れてはいけない、そう思ったアリアンナは細かく紙に書いていく事にした。
「どうせ眠れないしね」
翌日。アリアンナが、王太子の執務室で仕事をしていると、執務室の窓が真っ暗になった。
「なんだ?」
王太子とドマニが首を傾げる。アリアンナは既に昨日、この光景を目にしていた。
「ロワだわ」
アリアンナが窓に近づくと、覗き込んできた金色の瞳と目が合った。
「また逃げて来たのか?」
王太子も窓に近づく。
「ジルヴァーノと喧嘩でもしたのでしょうか」
ドマニも寄って来た。
「私、ロワを連れて行くわ」
アリアンナの言葉に王太子が頷いた。
「そうしてやってくれ。このままでは暗くてかなわない」
窓を開けると、当然のように鼻先にアリアンナを乗せる銀の竜。
「今日は一体、何が嫌だったの?」
鼻筋を撫でながらそう言うと、銀の竜は竜舎へと向かった。
竜舎に到着して、すぐに答えは分かった。
事務所と竜舎の扉が大きく開け放たれたそこに、ピアが立っていたのだった。
「あ、ロワが帰って来たわ。ロワー、機嫌直して私と友達になってよー」
一応気を使っているのか、竜舎の中には入って来ない。が、竜たちは皆岩の上にいた。
ロワも地面には降りようとせず、岩の頂に落ち着いた。
「なるほど、ピア様のせいだったのね」
わかった所で、自分ではどうにも出来ない。おまけに地面に降りる気配のない竜たちに当然のように囲まれ身動きも取れない。
仕方がないので皆の鼻先を撫でていると、事務所から大きな声がこちらにまで聞こえた。
「ピア!なんでここにいるんだ!?」
ジルヴァーノだった。
「うふふ。私ね、ロワと友達になる為に休みの間ここに通う事にしたの」
「は!?そんな話、聞いていないぞ。領地に戻ると言っていたじゃないか」
「休みの間って……あと2週間以上あるわ」
アリアンナは竜たちの中で呟く。
「彼女がいる間、あなたたちはここから降りないつもり?」
銀の竜に問いかけると、金の瞳がゆっくり閉じた。あちらではジルヴァーノとピアの会話が続いている。
「休みの間は、ジル様の屋敷でお世話になる事になったから。ふふふ、よろしくね」
「は!?」
「おば様がね、提案してくれたの。勿論、両親にも許可は取ったし。花嫁修業として屋敷のお手伝いもするつもりよ。頑張るわ」
「え?」
鼻先を撫でていたアリアンナの手が止まる。
『花嫁修業?じゃあやっぱりピア様はジルヴァーノ様の……』
正式な手続きはしていないかもしれない。だが、彼の母親がそれを了承するという事はそういう事なのだろう。
胸の中心がギュウッと詰まるような痛みに襲われる。
『なんだ、そうだったんだ』
アリアンナの変化に気付いた銀の竜が、鼻先で頬に触れた。他の竜たちもまるで一緒に落ち込んでいるように首を下げる。
「おーい。皆、食事だぞー」
竜騎士の一人が、こちらに向かって来ながら声を上げる。だが、一頭たりとも下へ降りる事はない。
「皆、ご飯だって。行っておいで」
アリアンナが言うが、誰も動かない。
銀の竜がクウと小さく鳴くと、竜たちはアリアンナを隠すように身を寄せ合った。
「皆……ありがとう」
竜たちの気遣いにアリアンナはお礼を言った。
「おーい。飯だってば」
竜騎士が更に近づく。竜たちのお陰でアリアンナの姿は見えないようだ。
「飯だぞ、食わないのか?」
どんなに言っても降りて来ない竜たちを見て、竜騎士が嘆息する。
「団長、竜たちが全く降りてきません。
ジルヴァーノはピアを見た。
「ピア、とにかくおまえは帰れ。竜たちがこれ以上機嫌を損ねないうちに」
「嫌よ。友達になるまで帰らない。これから毎日ここに通わせてもらうから」
ピアがピシャリと言い切った。
アリアンナが、自分の叫び声に驚いて目を覚ます。
「はあ、今のは……夢?」
背中が熱い。何とも言えない違和感に、ベッドから起き出し鏡を覗いた。
「何、これ?」
ネグリジェを捲った背はほんのりと輝いていた。
「竜が光っている?」
竜を模っている部分が金色に光っているのだ。
「さっきの夢と何か関係があるのかしら?」
やけに鮮明な夢だった。なんとなく忘れてはいけない、そう思ったアリアンナは細かく紙に書いていく事にした。
「どうせ眠れないしね」
翌日。アリアンナが、王太子の執務室で仕事をしていると、執務室の窓が真っ暗になった。
「なんだ?」
王太子とドマニが首を傾げる。アリアンナは既に昨日、この光景を目にしていた。
「ロワだわ」
アリアンナが窓に近づくと、覗き込んできた金色の瞳と目が合った。
「また逃げて来たのか?」
王太子も窓に近づく。
「ジルヴァーノと喧嘩でもしたのでしょうか」
ドマニも寄って来た。
「私、ロワを連れて行くわ」
アリアンナの言葉に王太子が頷いた。
「そうしてやってくれ。このままでは暗くてかなわない」
窓を開けると、当然のように鼻先にアリアンナを乗せる銀の竜。
「今日は一体、何が嫌だったの?」
鼻筋を撫でながらそう言うと、銀の竜は竜舎へと向かった。
竜舎に到着して、すぐに答えは分かった。
事務所と竜舎の扉が大きく開け放たれたそこに、ピアが立っていたのだった。
「あ、ロワが帰って来たわ。ロワー、機嫌直して私と友達になってよー」
一応気を使っているのか、竜舎の中には入って来ない。が、竜たちは皆岩の上にいた。
ロワも地面には降りようとせず、岩の頂に落ち着いた。
「なるほど、ピア様のせいだったのね」
わかった所で、自分ではどうにも出来ない。おまけに地面に降りる気配のない竜たちに当然のように囲まれ身動きも取れない。
仕方がないので皆の鼻先を撫でていると、事務所から大きな声がこちらにまで聞こえた。
「ピア!なんでここにいるんだ!?」
ジルヴァーノだった。
「うふふ。私ね、ロワと友達になる為に休みの間ここに通う事にしたの」
「は!?そんな話、聞いていないぞ。領地に戻ると言っていたじゃないか」
「休みの間って……あと2週間以上あるわ」
アリアンナは竜たちの中で呟く。
「彼女がいる間、あなたたちはここから降りないつもり?」
銀の竜に問いかけると、金の瞳がゆっくり閉じた。あちらではジルヴァーノとピアの会話が続いている。
「休みの間は、ジル様の屋敷でお世話になる事になったから。ふふふ、よろしくね」
「は!?」
「おば様がね、提案してくれたの。勿論、両親にも許可は取ったし。花嫁修業として屋敷のお手伝いもするつもりよ。頑張るわ」
「え?」
鼻先を撫でていたアリアンナの手が止まる。
『花嫁修業?じゃあやっぱりピア様はジルヴァーノ様の……』
正式な手続きはしていないかもしれない。だが、彼の母親がそれを了承するという事はそういう事なのだろう。
胸の中心がギュウッと詰まるような痛みに襲われる。
『なんだ、そうだったんだ』
アリアンナの変化に気付いた銀の竜が、鼻先で頬に触れた。他の竜たちもまるで一緒に落ち込んでいるように首を下げる。
「おーい。皆、食事だぞー」
竜騎士の一人が、こちらに向かって来ながら声を上げる。だが、一頭たりとも下へ降りる事はない。
「皆、ご飯だって。行っておいで」
アリアンナが言うが、誰も動かない。
銀の竜がクウと小さく鳴くと、竜たちはアリアンナを隠すように身を寄せ合った。
「皆……ありがとう」
竜たちの気遣いにアリアンナはお礼を言った。
「おーい。飯だってば」
竜騎士が更に近づく。竜たちのお陰でアリアンナの姿は見えないようだ。
「飯だぞ、食わないのか?」
どんなに言っても降りて来ない竜たちを見て、竜騎士が嘆息する。
「団長、竜たちが全く降りてきません。
ジルヴァーノはピアを見た。
「ピア、とにかくおまえは帰れ。竜たちがこれ以上機嫌を損ねないうちに」
「嫌よ。友達になるまで帰らない。これから毎日ここに通わせてもらうから」
ピアがピシャリと言い切った。
56
あなたにおすすめの小説
[完結]私を巻き込まないで下さい
シマ
恋愛
私、イリーナ15歳。賊に襲われているのを助けられた8歳の時から、師匠と一緒に暮らしている。
魔力持ちと分かって魔法を教えて貰ったけど、何故か全然発動しなかった。
でも、魔物を倒した時に採れる魔石。石の魔力が無くなると使えなくなるけど、その魔石に魔力を注いで甦らせる事が出来た。
その力を生かして、師匠と装具や魔道具の修理の仕事をしながら、のんびり暮らしていた。
ある日、師匠を訪ねて来た、お客さんから生活が変わっていく。
え?今、話題の勇者様が兄弟子?師匠が王族?ナニそれ私、知らないよ。
平凡で普通の生活がしたいの。
私を巻き込まないで下さい!
恋愛要素は、中盤以降から出てきます
9月28日 本編完結
10月4日 番外編完結
長い間、お付き合い頂きありがとうございました。
妹と人生を入れ替えました〜皇太子さまは溺愛する相手をお間違えのようです〜
鈴宮(すずみや)
恋愛
「俺の妃になって欲しいんだ」
従兄弟として育ってきた憂炎(ゆうえん)からそんなことを打診された名家の令嬢である凛風(りんふぁ)。
実は憂炎は、嫉妬深い皇后の手から逃れるため、後宮から密かに連れ出された現皇帝の実子だった。
自由を愛する凛風にとって、堅苦しい後宮暮らしは到底受け入れられるものではない。けれど憂炎は「妃は凛風に」と頑なで、考えを曲げる様子はなかった。
そんな中、凛風は双子の妹である華凛と入れ替わることを思い付く。華凛はこの提案を快諾し、『凛風』として入内をすることに。
しかし、それから数日後、今度は『華凛(凛風)』に対して、憂炎の補佐として出仕するようお達しが。断りきれず、渋々出仕した華凛(凛風)。すると、憂炎は華凛(凛風)のことを溺愛し、籠妃のように扱い始める。
釈然としない想いを抱えつつ、自分の代わりに入内した華凛の元を訪れる凛風。そこで凛風は、憂炎が入内以降一度も、凛風(華凛)の元に一度も通っていないことを知る。
『だったら最初から『凛風』じゃなくて『華凛』を妃にすれば良かったのに』
憤る凛風に対し、華凛が「三日間だけ元の自分戻りたい」と訴える。妃の任を押し付けた負い目もあって、躊躇いつつも華凛の願いを聞き入れる凛風。しかし、そんな凛風のもとに憂炎が現れて――――。
公爵令嬢 メアリの逆襲 ~魔の森に作った湯船が 王子 で溢れて困ってます~
薄味メロン
恋愛
HOTランキング 1位 (2019.9.18)
お気に入り4000人突破しました。
次世代の王妃と言われていたメアリは、その日、すべての地位を奪われた。
だが、誰も知らなかった。
「荷物よし。魔力よし。決意、よし!」
「出発するわ! 目指すは源泉掛け流し!」
メアリが、追放の準備を整えていたことに。
この婚約は白い結婚に繋がっていたはずですが? 〜深窓の令嬢は赤獅子騎士団長に溺愛される〜
氷雨そら
恋愛
婚約相手のいない婚約式。
通常であれば、この上なく惨めであろうその場所に、辺境伯令嬢ルナシェは、美しいベールをなびかせて、毅然とした姿で立っていた。
ベールから、こぼれ落ちるような髪は白銀にも見える。プラチナブロンドが、日差しに輝いて神々しい。
さすがは、白薔薇姫との呼び名高い辺境伯令嬢だという周囲の感嘆。
けれど、ルナシェの内心は、実はそれどころではなかった。
(まさかのやり直し……?)
先ほど確かに、ルナシェは断頭台に露と消えたのだ。しかし、この場所は確かに、あの日経験した、たった一人の婚約式だった。
ルナシェは、人生を変えるため、婚約式に現れなかった婚約者に、婚約破棄を告げるため、激戦の地へと足を向けるのだった。
小説家になろう様にも投稿しています。
【完結】夫が私に魅了魔法をかけていたらしい
綺咲 潔
恋愛
公爵令嬢のエリーゼと公爵のラディリアスは2年前に結婚して以降、まるで絵に描いたように幸せな結婚生活を送っている。
そのはずなのだが……最近、何だかラディリアスの様子がおかしい。
気になったエリーゼがその原因を探ってみると、そこには女の影が――?
そんな折、エリーゼはラディリアスに呼び出され、思いもよらぬ告白をされる。
「君が僕を好いてくれているのは、魅了魔法の効果だ。つまり……本当の君は僕のことを好きじゃない」
私が夫を愛するこの気持ちは偽り?
それとも……。
*全17話で完結予定。
殿下、毒殺はお断りいたします
石里 唯
恋愛
公爵令嬢エリザベスは、王太子エドワードから幼いころから熱烈に求婚され続けているが、頑なに断り続けている。
彼女には、前世、心から愛した相手と結ばれ、毒殺された記憶があり、今生の目標は、ただ穏やかな結婚と人生を全うすることなのだ。
容姿端麗、文武両道、加えて王太子という立場で国中の令嬢たちの憧れであるエドワードと結婚するなどとんでもない選択なのだ。
彼女の拒絶を全く意に介しない王太子、彼女を溺愛し生涯手元に置くと公言する兄を振り切って彼女は人生の目標を達成できるのだろうか。
「小説家になろう」サイトで完結済みです。大まかな流れに変更はありません。
「小説家になろう」サイトで番外編を投稿しています。
【完結】 婚約破棄間近の婚約者が、記憶をなくしました
瀬里@SMARTOON8/31公開予定
恋愛
その日、砂漠の国マレから留学に来ていた第13皇女バステトは、とうとうやらかしてしまった。
婚約者である王子ルークが好意を寄せているという子爵令嬢を、池に突き落とそうとしたのだ。
しかし、池には彼女をかばった王子が落ちることになってしまい、更に王子は、頭に怪我を負ってしまった。
――そして、ケイリッヒ王国の第一王子にして王太子、国民に絶大な人気を誇る、朱金の髪と浅葱色の瞳を持つ美貌の王子ルークは、あろうことか記憶喪失になってしまったのである。(第一部)
ケイリッヒで王子ルークに甘やかされながら平穏な学生生活を送るバステト。
しかし、祖国マレではクーデターが起こり、バステトの周囲には争乱の嵐が吹き荒れようとしていた。
今、為すべき事は何か?バステトは、ルークは、それぞれの想いを胸に、嵐に立ち向かう!(第二部)
全33話+番外編です
小説家になろうで600ブックマーク、総合評価5000ptほどいただいた作品です。
拍子挿絵を描いてくださったのは、ゆゆの様です。 挿絵の拡大は、第8話にあります。
https://www.pixiv.net/users/30628019
https://skima.jp/profile?id=90999
病弱令嬢ですが愛されなくとも生き抜きます〜そう思ってたのに甘い日々?〜
白川
恋愛
病弱に生まれてきたことで数多くのことを諦めてきたアイリスは、無慈悲と噂される騎士イザークの元に政略結婚で嫁ぐこととなる。
たとえ私のことを愛してくださらなくても、この世に生まれたのだから生き抜くのよ────。
そう意気込んで嫁いだが、果たして本当のイザークは…?
傷ついた不器用な二人がすれ違いながらも恋をして、溺愛されるまでのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる