86 / 126
第2章 魔女たちの暗躍編
第6話ー⑥ 訪問者
しおりを挟む
――研究所、廊下にて。
ローレンスの足止めをするために残った剛は、今もなおローレンスと拳を交えていた。
「おらぁ!!」
ローレンスがそう言って振るった拳を、剛は炎を纏わせた手で受け止める。
「ふっ……なかなかやるな、ローレンス!」
「剛もな! お前ほどの能力者には久々にあったぜ!!」
剛たちは互いに顔を見合わせて、ニヤリと笑う。
「サンキューな! でも俺の本気はこんなんじゃないぞ!」
「ははは、そうか! じゃあ、俺もそろそろ本気で行かないとな!!」
ローレンスはそう言って、剛から距離を取った。
いったい、何をするつもりなんだ――? 剛はそう思いながら、ローレンスを静かに見つめた。
「うぐぐぐ……」
ローレンスがそう唸ると、先ほどまで青々としていたローレンスの腕のうろこが、真紅に染まっていった。
「な、なんだ……?」
うろこの色が、変わっている――?
剛はそう思いながら目を見開き、その変化を静かに見つめていた。
「――俺は『ゼンシンノウリョクシャ』にはなれなかったからな。一時的に自分の血液を使って能力と同化することで、能力の底上げができるのさ」
また知らない言葉か……『ゼンシンノウリョクシャ』って何なんだ? それに――
「血液を使ってって……なんでそんなことをするんだよ! そんな、命がけなこと――」
「俺は力がほしかった。弱い自分がずっとずっと許せなかったんだ!!」
ローレンスのその言葉に、かつての自分が重なる剛。
俺も弱い自分が嫌になって、ずっと力を求めていた。もしも俺が先生に会えなかったら、今のローレンスみたいに――?
そんなことを思いながら、剛はローレンスを見つめる。
「そんな俺に、あの人は……魔女様は力をくれた。弱かった俺を、こんなに強くしてくれたんだよっ!! だから俺は魔女様に従うと決めたんだ。それで自分の身を滅ぼすことになっても」
そう言うローレンスの顔には覚悟が現れていた。
弱い自分が嫌だと思う気持ちは、俺にだってわかる。でも、今のままじゃローレンスは――
剛はそう思い、悲しい表情をした。
そしてローレンスの身体が完全に真っ赤なうろこで覆われると、
「さあ続きをやろうぜ、剛」
ローレンスはそう言って、不敵な笑みを浮かべた。
そんなローレンスの表情から、自分の力を絶対的なものだと信じているんだなと剛は思っていた。
「なあ。その力は、本当の強さなのか……?」
剛は小さな声でそう呟いた。そしてかつて暁に言われた言葉が脳裏をよぎる。
『お前の弱さはその強大な力に頼り切っていることだ――』
やっぱり昔の自分とローレンスはよく似ている、と剛は今のローレンスの姿を見てそう感じたのだった。
「そんな上っ面な力があったって、本当の意味では強くなれない。それに気が付かせないと……」
そう呟きながら、剛は両手の拳を握った。
でも俺はローレンスに勝てるのか……? 今の俺は、少しずつ体力が回復していると言ってもまだ全盛期ほどじゃ――
そして剛は首を振る。
自分がここで倒れれば、ローレンスの言う強さが本当の強さになってしまう。だからどうにかして、この戦いに勝たないと――
剛はそう思いながら、顔をゆっくりとローレンスに向けた。
「そう。ローレンスのために――」
「さっきから、ぼそぼそと何言ってやがるっ!」
「こっちの話だ!!」
「ちっ、そうかよ……んじゃ、行くぜ! 剛!!」
そう言って、勢いよく剛に向かって駆け出すローレンス。そして剛は身構え、向かってくるローレンスに備えた。
「守ってるだけじゃ、俺は倒せねえぞ!!」
そう言ってローレンスは走っている勢いのまま握った拳を振り上げた。
そして剛は自身の身体に炎をまとわせ、そのローレンスの拳を両手でガードするための態勢を取る。
しかし先ほどより威力の増したローレンスの拳を剛は防ぎきれず、身体ごと吹っ飛ばされて、床に全身を打ち付けた。
「くっそ――」
そう言いながら両手を使い、ゆっくりと上半身を起こす剛。
痛ってぇ。ローレンスの言っていたことは、本当だったんだな――
そう思いながら、剛は下を向いたままだった。それからローレンスの増幅された力に驚愕しつつ、何か打開策はないかと考えを巡らせる剛。
能力はローレンスの方が上。だったら、まともにやり合っても勝てないだろうな。この状況……いったいどうすれば、いいんだよ――
「その程度か、剛? お前も結局、その程度の力しかないのか??」
ローレンスは冷めきった態度で剛にそう告げた。
「ははっ。お前にとっては、その程度なのかもな。でも……能力に頼るしかないお前なんかに、俺は絶対負けないぞ!」
そう言って剛はよろよろと立ち上がった。
そんな剛を見て、ローレンスは剛へ鋭い視線を送る。
「結局、最後は力あるものが勝つんだ! 俺はそれを見てきた。弱者は強者に従うしかないんだよ!!」
「お前が何を見てきたかは知らないけどな、俺はそう思わない。力で負けても心で負けなければ、必ず勝てる! 俺は先生からそれを教わったんだ!!」
剛はローレンスの顔をまっすぐに見て、そう告げた。
「うるせえ! 本当の強さを俺が証明してやる!!」
そしてローレンスのうろこがさらに真紅色へと染まっていく。
「やめろ! そのままじゃ、本当にどうなるか――」
「この力を得た時から、俺はもう未来を捨てている! もう未来なんてどうでもいいんだよ!」
未来がどうでもいいなんて、そんなわけないだろ――!
「ローレンス!!」
「俺は今、強くありたいんだ! 弱いままじゃダメなんだよ……弱さは悪だ!! だから弱い奴なんている価値はねえ!!」
このままじゃ、ローレンスが暴走しちまう。そうしたら、本当にローレンスの未来は――剛はそう思い、冷や汗をかきながらローレンスを見つめる。
今の自分ではローレンスを止められないと悟った剛は、自分にできることを必死に考え続けた。
そしてそんな剛に向かってくるローレンス。
俺の考えだけじゃ、きっと答えは出ない。じゃあ暁先生なら、こんな時にどうする――?
それからはっとした剛は、突然自分の能力を解いた。
「!?」
剛のその行為に驚いたローレンスは、一瞬だけ静止する。
「能力に頼ることだけが強さじゃないぞ、ローレンス!!」
そう言いながら剛はローレンスの手首を掴み、その身体を自分の方に引き寄せる。そしてその勢いのまま、剛はローレンスの顔面に拳を食らわせた。
「ううう……」
ローレンスはそう言って顔を押さえながら、床に転がったのだった。
ローレンスの足止めをするために残った剛は、今もなおローレンスと拳を交えていた。
「おらぁ!!」
ローレンスがそう言って振るった拳を、剛は炎を纏わせた手で受け止める。
「ふっ……なかなかやるな、ローレンス!」
「剛もな! お前ほどの能力者には久々にあったぜ!!」
剛たちは互いに顔を見合わせて、ニヤリと笑う。
「サンキューな! でも俺の本気はこんなんじゃないぞ!」
「ははは、そうか! じゃあ、俺もそろそろ本気で行かないとな!!」
ローレンスはそう言って、剛から距離を取った。
いったい、何をするつもりなんだ――? 剛はそう思いながら、ローレンスを静かに見つめた。
「うぐぐぐ……」
ローレンスがそう唸ると、先ほどまで青々としていたローレンスの腕のうろこが、真紅に染まっていった。
「な、なんだ……?」
うろこの色が、変わっている――?
剛はそう思いながら目を見開き、その変化を静かに見つめていた。
「――俺は『ゼンシンノウリョクシャ』にはなれなかったからな。一時的に自分の血液を使って能力と同化することで、能力の底上げができるのさ」
また知らない言葉か……『ゼンシンノウリョクシャ』って何なんだ? それに――
「血液を使ってって……なんでそんなことをするんだよ! そんな、命がけなこと――」
「俺は力がほしかった。弱い自分がずっとずっと許せなかったんだ!!」
ローレンスのその言葉に、かつての自分が重なる剛。
俺も弱い自分が嫌になって、ずっと力を求めていた。もしも俺が先生に会えなかったら、今のローレンスみたいに――?
そんなことを思いながら、剛はローレンスを見つめる。
「そんな俺に、あの人は……魔女様は力をくれた。弱かった俺を、こんなに強くしてくれたんだよっ!! だから俺は魔女様に従うと決めたんだ。それで自分の身を滅ぼすことになっても」
そう言うローレンスの顔には覚悟が現れていた。
弱い自分が嫌だと思う気持ちは、俺にだってわかる。でも、今のままじゃローレンスは――
剛はそう思い、悲しい表情をした。
そしてローレンスの身体が完全に真っ赤なうろこで覆われると、
「さあ続きをやろうぜ、剛」
ローレンスはそう言って、不敵な笑みを浮かべた。
そんなローレンスの表情から、自分の力を絶対的なものだと信じているんだなと剛は思っていた。
「なあ。その力は、本当の強さなのか……?」
剛は小さな声でそう呟いた。そしてかつて暁に言われた言葉が脳裏をよぎる。
『お前の弱さはその強大な力に頼り切っていることだ――』
やっぱり昔の自分とローレンスはよく似ている、と剛は今のローレンスの姿を見てそう感じたのだった。
「そんな上っ面な力があったって、本当の意味では強くなれない。それに気が付かせないと……」
そう呟きながら、剛は両手の拳を握った。
でも俺はローレンスに勝てるのか……? 今の俺は、少しずつ体力が回復していると言ってもまだ全盛期ほどじゃ――
そして剛は首を振る。
自分がここで倒れれば、ローレンスの言う強さが本当の強さになってしまう。だからどうにかして、この戦いに勝たないと――
剛はそう思いながら、顔をゆっくりとローレンスに向けた。
「そう。ローレンスのために――」
「さっきから、ぼそぼそと何言ってやがるっ!」
「こっちの話だ!!」
「ちっ、そうかよ……んじゃ、行くぜ! 剛!!」
そう言って、勢いよく剛に向かって駆け出すローレンス。そして剛は身構え、向かってくるローレンスに備えた。
「守ってるだけじゃ、俺は倒せねえぞ!!」
そう言ってローレンスは走っている勢いのまま握った拳を振り上げた。
そして剛は自身の身体に炎をまとわせ、そのローレンスの拳を両手でガードするための態勢を取る。
しかし先ほどより威力の増したローレンスの拳を剛は防ぎきれず、身体ごと吹っ飛ばされて、床に全身を打ち付けた。
「くっそ――」
そう言いながら両手を使い、ゆっくりと上半身を起こす剛。
痛ってぇ。ローレンスの言っていたことは、本当だったんだな――
そう思いながら、剛は下を向いたままだった。それからローレンスの増幅された力に驚愕しつつ、何か打開策はないかと考えを巡らせる剛。
能力はローレンスの方が上。だったら、まともにやり合っても勝てないだろうな。この状況……いったいどうすれば、いいんだよ――
「その程度か、剛? お前も結局、その程度の力しかないのか??」
ローレンスは冷めきった態度で剛にそう告げた。
「ははっ。お前にとっては、その程度なのかもな。でも……能力に頼るしかないお前なんかに、俺は絶対負けないぞ!」
そう言って剛はよろよろと立ち上がった。
そんな剛を見て、ローレンスは剛へ鋭い視線を送る。
「結局、最後は力あるものが勝つんだ! 俺はそれを見てきた。弱者は強者に従うしかないんだよ!!」
「お前が何を見てきたかは知らないけどな、俺はそう思わない。力で負けても心で負けなければ、必ず勝てる! 俺は先生からそれを教わったんだ!!」
剛はローレンスの顔をまっすぐに見て、そう告げた。
「うるせえ! 本当の強さを俺が証明してやる!!」
そしてローレンスのうろこがさらに真紅色へと染まっていく。
「やめろ! そのままじゃ、本当にどうなるか――」
「この力を得た時から、俺はもう未来を捨てている! もう未来なんてどうでもいいんだよ!」
未来がどうでもいいなんて、そんなわけないだろ――!
「ローレンス!!」
「俺は今、強くありたいんだ! 弱いままじゃダメなんだよ……弱さは悪だ!! だから弱い奴なんている価値はねえ!!」
このままじゃ、ローレンスが暴走しちまう。そうしたら、本当にローレンスの未来は――剛はそう思い、冷や汗をかきながらローレンスを見つめる。
今の自分ではローレンスを止められないと悟った剛は、自分にできることを必死に考え続けた。
そしてそんな剛に向かってくるローレンス。
俺の考えだけじゃ、きっと答えは出ない。じゃあ暁先生なら、こんな時にどうする――?
それからはっとした剛は、突然自分の能力を解いた。
「!?」
剛のその行為に驚いたローレンスは、一瞬だけ静止する。
「能力に頼ることだけが強さじゃないぞ、ローレンス!!」
そう言いながら剛はローレンスの手首を掴み、その身体を自分の方に引き寄せる。そしてその勢いのまま、剛はローレンスの顔面に拳を食らわせた。
「ううう……」
ローレンスはそう言って顔を押さえながら、床に転がったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる