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第1章 始まり
第2話ー④ 辿った道
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空が茜色と紺色に混ざり始める頃、俺は施設内にある食堂にいた。
この保護施設では、食事の時間が決まっており、それは教師である俺も同じことだった。
「ここが食堂か!!」
そこには長机が並べられており、食べるものは部屋の奥のカウンターにバイキング形式で置かれていた。
食欲のそそるいい匂いが食堂に漂う。
昼食時は時間がなくて、来るときに買ってきた菓子パンで済ませていたため、俺は腹ペコだった。
「そっか、センセーは引きこもりだったから、食堂を知らないんだったね!」
後ろにいたいろはが、俺をからかいながら食堂に入ってくる。
「引きこもりって言うなよ! 意外と傷つくんだぞー!」
「あははっ! ごめんって! 冗談、冗談!」
「冗談って……」
俺はやれやれと思いながら、そう答えた。
でもあの過去を聞けば、そう思うのも無理はないのかもしれないな。
いろはがさっきの話をあんまり重く捉えていないみたいで、俺は内心ほっとした。
そして俺がそんなことを思っているうちに、いろはは笑いながら食事の並んでいるカウンターへ向かっていった。
俺が食堂の入り口できょろきょろしていると、食堂から声がした。
「おーい、先生! こっちに席あるぞ!!」
声の方に視線を向けると、先に来ていた剛が、窓側の席で手招きをしながら俺を呼んでいるのが見えた。
どうやら剛は俺の席を取っておいてくれたようだ。
しかし席を取っておくほど席が少ないわけではないのだが、俺はどこにいけばいいかわからなかったため、正直に言えば、剛の優しさを俺はとてもありがたく感じていた。
そして俺は剛の待つ窓側の席にへ行き、そこに腰かける。
「ここのメシ、すごくうまいんだぜ! 好きなものを好きなだけ食べられるんだ!」
剛の言う通り、確かにカウンターに並ぶメニューは豊富で、どの料理も大皿に盛られていた。
生徒たちのストレスを貯めさせないための政府の方針何だろうな。
俺がいた時も食事だけは同じようにしてくれていたらよかったのにと心の中で思ってしまった。
「じゃあ先生、取りに行こうぜ!」
そして俺は剛に連れられて、食べ物の並ぶカウンターへ。
「本当にいろいろあるな!」
主食、副菜、主菜、それからデザート。それぞれは少なくとも5種類ずつは揃っていた。
こんなにたくさんの種類があると、毎日飽きることもなく、食事を楽しめそうだ。
そして俺は大好きなからあげとサラダを取り、ご飯をよそってから席に戻った。
俺たちが席に戻ると、さっきまでは誰も座っていなかった隣の席に結衣とまゆおが座っていた。
「どもです~」
「こんばんは」
まゆおはバランスの摂れた和食中心の食事で、一方の結衣は山盛りのウインナーが皿いっぱいに乗っていた。
「いやぁ。ここのウインナーは最高ですなぁ。外はパリッ、中はジューシー! 本当に飽きませんぞ!」
ウインナーを次々に頬張る、結衣。
「結衣はウインナーが好きなんだな。あんまり幸せそうに食べるから、俺まで食べたくなるよ!」
幸せそうにウインナーを食べていた結衣に俺は本音がこぼれる。
「先生は私がウインナーばかり食べることを怒らないのですか?」
「好きなものを好きなだけ食べられるのが、ここの良いところなんだろう? だったら好きなものを好きなだけ食べている結衣を怒る理由なんかないと思うが……」
結衣は食べる手を止め、驚いた表情をしていた。
「どうした?」
「先生はとっても変わり者なのですね!」
そして微笑みながら、再びウインナーを頬張り始める。
「変わり者って……ははは。でもそうやっておいしそうに食べるって、すごく良いことだよな。作ってくれる人にとってもありがたいと思うぞ」
「ぁたしは知らぬ間に、モグモグ……誰かを幸せにして、モグモグ……ぃたんですな! モグモグ……それはおろこ(喜)ばしいことです! モグモグ……」
「ちょ、結衣! 食べるか、喋るかどっちかにしろよ! ウインナーの汁が飛んでんだよ!!」
剛の鋭いツッコミが入った。
「あああ、かたじけないでござるな。モグモグ……」
「ってまたあ!! お前、全然反省してねぇじゃねぇか!!」
「モグモグモグ……」
そして剛と結衣がそんなやり取りをしている間に、まゆおは箸を置き、手を合わせて食事を済ませていた。
そのまゆおの皿を見ると、米粒一つ残すことなく綺麗に完食していた。
「まゆおはすごく行儀よくご飯を食べるんだな」
俺がそう言うと、まゆおは驚いたのか肩がびくっと動き、おどおどと答えた。
「え!? そ、そうでしょうか」
「そんなに驚くなよ! それ、どこで覚えたんだ?」
「……父が教えてくれたんです」
「そうか。いいお父さんなんだな」
まゆおは俯きながら、俺に答える。
「……そ、そうです、ね。じゃあ僕はこれで……」
「あ、ああ」
そしてまゆおは急ぎ足で食堂を出ていった。
なんだか悪いことを言ってしまったのかな。
能力者は親子関係が影響して、目覚めることが多い。
もしかしたら、まゆおもお父さんと何かあったのかもしれない……
そんなことを思いつつ、俺は大好きなからあげを平らげたのだった。
夕飯後、俺は職員室へ戻り、机にあるPCで報告書を入力する。
これも政府との約束事だ。
毎日行った授業内容と起きた出来事を事細かに入力するという作業。
「よしっと。これでおしまいだ」
送信ボタンを押した俺は、PCの電源を落としてから、椅子から立ち上がった。
それから俺は職員室の奥にある、教員専用の個室へ向かう。
職員室からはなんと1秒という好立地の住まいである。
ちなみにもともとは夜勤用の宿直室として使っていた部屋だそう。
部屋の広さは6畳ほどで、もともと支給されているベッドや机もあり、とても住み心地のよさそうな場所である。
「ここがこれから俺の寝泊まりする場所なんだな」
俺は部屋を見つめながら、そう呟いた。
そしてその後、俺は布団にもぐり、今日一日を振り返った。
「俺が教師、か。なんだかまだ信じられないな」
これからどんなことが待っているかはわからないけど、でも俺らしくやっていこう。せっかく掴んだチャンスなんだから。
俺の頑張りが能力で悩む子供たちの光になるかもしれないから。
そして俺は眠りについた。
この保護施設では、食事の時間が決まっており、それは教師である俺も同じことだった。
「ここが食堂か!!」
そこには長机が並べられており、食べるものは部屋の奥のカウンターにバイキング形式で置かれていた。
食欲のそそるいい匂いが食堂に漂う。
昼食時は時間がなくて、来るときに買ってきた菓子パンで済ませていたため、俺は腹ペコだった。
「そっか、センセーは引きこもりだったから、食堂を知らないんだったね!」
後ろにいたいろはが、俺をからかいながら食堂に入ってくる。
「引きこもりって言うなよ! 意外と傷つくんだぞー!」
「あははっ! ごめんって! 冗談、冗談!」
「冗談って……」
俺はやれやれと思いながら、そう答えた。
でもあの過去を聞けば、そう思うのも無理はないのかもしれないな。
いろはがさっきの話をあんまり重く捉えていないみたいで、俺は内心ほっとした。
そして俺がそんなことを思っているうちに、いろはは笑いながら食事の並んでいるカウンターへ向かっていった。
俺が食堂の入り口できょろきょろしていると、食堂から声がした。
「おーい、先生! こっちに席あるぞ!!」
声の方に視線を向けると、先に来ていた剛が、窓側の席で手招きをしながら俺を呼んでいるのが見えた。
どうやら剛は俺の席を取っておいてくれたようだ。
しかし席を取っておくほど席が少ないわけではないのだが、俺はどこにいけばいいかわからなかったため、正直に言えば、剛の優しさを俺はとてもありがたく感じていた。
そして俺は剛の待つ窓側の席にへ行き、そこに腰かける。
「ここのメシ、すごくうまいんだぜ! 好きなものを好きなだけ食べられるんだ!」
剛の言う通り、確かにカウンターに並ぶメニューは豊富で、どの料理も大皿に盛られていた。
生徒たちのストレスを貯めさせないための政府の方針何だろうな。
俺がいた時も食事だけは同じようにしてくれていたらよかったのにと心の中で思ってしまった。
「じゃあ先生、取りに行こうぜ!」
そして俺は剛に連れられて、食べ物の並ぶカウンターへ。
「本当にいろいろあるな!」
主食、副菜、主菜、それからデザート。それぞれは少なくとも5種類ずつは揃っていた。
こんなにたくさんの種類があると、毎日飽きることもなく、食事を楽しめそうだ。
そして俺は大好きなからあげとサラダを取り、ご飯をよそってから席に戻った。
俺たちが席に戻ると、さっきまでは誰も座っていなかった隣の席に結衣とまゆおが座っていた。
「どもです~」
「こんばんは」
まゆおはバランスの摂れた和食中心の食事で、一方の結衣は山盛りのウインナーが皿いっぱいに乗っていた。
「いやぁ。ここのウインナーは最高ですなぁ。外はパリッ、中はジューシー! 本当に飽きませんぞ!」
ウインナーを次々に頬張る、結衣。
「結衣はウインナーが好きなんだな。あんまり幸せそうに食べるから、俺まで食べたくなるよ!」
幸せそうにウインナーを食べていた結衣に俺は本音がこぼれる。
「先生は私がウインナーばかり食べることを怒らないのですか?」
「好きなものを好きなだけ食べられるのが、ここの良いところなんだろう? だったら好きなものを好きなだけ食べている結衣を怒る理由なんかないと思うが……」
結衣は食べる手を止め、驚いた表情をしていた。
「どうした?」
「先生はとっても変わり者なのですね!」
そして微笑みながら、再びウインナーを頬張り始める。
「変わり者って……ははは。でもそうやっておいしそうに食べるって、すごく良いことだよな。作ってくれる人にとってもありがたいと思うぞ」
「ぁたしは知らぬ間に、モグモグ……誰かを幸せにして、モグモグ……ぃたんですな! モグモグ……それはおろこ(喜)ばしいことです! モグモグ……」
「ちょ、結衣! 食べるか、喋るかどっちかにしろよ! ウインナーの汁が飛んでんだよ!!」
剛の鋭いツッコミが入った。
「あああ、かたじけないでござるな。モグモグ……」
「ってまたあ!! お前、全然反省してねぇじゃねぇか!!」
「モグモグモグ……」
そして剛と結衣がそんなやり取りをしている間に、まゆおは箸を置き、手を合わせて食事を済ませていた。
そのまゆおの皿を見ると、米粒一つ残すことなく綺麗に完食していた。
「まゆおはすごく行儀よくご飯を食べるんだな」
俺がそう言うと、まゆおは驚いたのか肩がびくっと動き、おどおどと答えた。
「え!? そ、そうでしょうか」
「そんなに驚くなよ! それ、どこで覚えたんだ?」
「……父が教えてくれたんです」
「そうか。いいお父さんなんだな」
まゆおは俯きながら、俺に答える。
「……そ、そうです、ね。じゃあ僕はこれで……」
「あ、ああ」
そしてまゆおは急ぎ足で食堂を出ていった。
なんだか悪いことを言ってしまったのかな。
能力者は親子関係が影響して、目覚めることが多い。
もしかしたら、まゆおもお父さんと何かあったのかもしれない……
そんなことを思いつつ、俺は大好きなからあげを平らげたのだった。
夕飯後、俺は職員室へ戻り、机にあるPCで報告書を入力する。
これも政府との約束事だ。
毎日行った授業内容と起きた出来事を事細かに入力するという作業。
「よしっと。これでおしまいだ」
送信ボタンを押した俺は、PCの電源を落としてから、椅子から立ち上がった。
それから俺は職員室の奥にある、教員専用の個室へ向かう。
職員室からはなんと1秒という好立地の住まいである。
ちなみにもともとは夜勤用の宿直室として使っていた部屋だそう。
部屋の広さは6畳ほどで、もともと支給されているベッドや机もあり、とても住み心地のよさそうな場所である。
「ここがこれから俺の寝泊まりする場所なんだな」
俺は部屋を見つめながら、そう呟いた。
そしてその後、俺は布団にもぐり、今日一日を振り返った。
「俺が教師、か。なんだかまだ信じられないな」
これからどんなことが待っているかはわからないけど、でも俺らしくやっていこう。せっかく掴んだチャンスなんだから。
俺の頑張りが能力で悩む子供たちの光になるかもしれないから。
そして俺は眠りについた。
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