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第1章 始まり
第7話ー① 始まりの終わり
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俺がこの施設にやってきて、7か月が経っていた。
時間の経過とともに季節は流れ、施設にある木々が真紅や黄金色に染まっていた。
「紅葉か……。俺が来たときは、桜が咲いていたのにな」
俺は窓から覗く秋色に染まった木々を見ながら、施設に来たばかりの日のことを思い出していた。
俺が初めてここへやってきたときはまさか生徒たちと打ち解けられるようになるなんて想像もしていなかった。
今日までいろんなことがたくさんあったけれど、今が楽しいと思えるのは、ここで出会った生徒たちのおかげかなと思う。
「ここの教師になれて、本当に良かったな」
俺は窓の外を見ながら、しみじみと思った。
そしてそんなことを思う今日は、生徒たち主催のレクリエーションが行われるということになっている。
初めて会ったときは、俺に対していい印象を持っていなかった生徒たちが、今は自発的に俺と楽しむイベントを開催しようなんて……。
俺はそんな生徒たちの心の変化を直に感じることができて、とても嬉しく思った。
「レクリエーションって何をやるつもりなんだろう。それに俺はいつまでここにいればいいんだ?」
生徒たちが何をしてくれるのだろうかとワクワクしていると、この待ち時間がとても長く感じられる。
奏多からはレクリエーションを始めるまで教室に待機していてほしいと言われていた。
ここで待つこと、はや30分――
「長い……」
せめて話し相手の一人ぐらいは残してくれてもよかったんじゃないのか!?
そんなことを思いつつ、俺はうずうずとしていた。
「そろそろ準備もできた頃かな……」
そう言いながら、俺は教室の扉に手をかける。
しかし俺はハッとして、手を引く。
「もう少しだ、頑張れ俺」
うずうずして教室から出たい気持ちになるが、ここで約束を破るわけにはいかないと、俺は自分に言い聞かせた。
そしてようやく奏多が教室へやってくる。
「先生、お待たせいたしました……って扉の前で何をしているんです?」
「いや、それは……その」
まさか教室から出ようとしていたなんて言えず、俺の目は泳いでいた。
「まあそんなことはどうでもいいことですね。さあレクリエーションを始めましょうか!」
「あ、ああ! ……でも始めるって、他の生徒たちはどこにいったんだ?」
「ふふふ。今日のレクリエーションは……施設全体を使ったクイズ大会です! 私たちから先生へクイズを出題いたしますので、先生はそのクイズに答えて行ってください」
「クイズ、か……わかった!」
もっとみんなで盛り上がる感じのことを想像していたので、クイズだと聞いたとき、俺は少し驚いた。
そして奏多は俺に一枚のメモを渡す。
「こちらに問題が書いてありますので、このクイズを解いて目的地へ向かってください!」
「わかった」
俺はさっそく渡されたメモに目を通し、その内容を読み上げる。
「えっと、何々……昼間でもずっと暗闇の場所はどこ?これってクイズっていうよりもなぞなぞに近いような……」
「では、先生! 行ってらっしゃい! 正解の場所には、誰かがおりますので。そこでまた新しいクイズをもらえますからね」
俺の言葉を遮るように、奏多は俺を送り出す。
「わ、わかった。いってくる!」
そして俺はクイズの答えを探し始めた。
「昼間でもずっと暗闇の場所か……」
昼間でもずっとってことは、常に真っ暗なところってことだろう。
でも施設にそんなところあったか?
「うーん」
俺は悩みながら、歩いていていた。
「ぼーっと歩いていると、また結衣に躓きそうだな」
そんなことをつぶやき、俺はこのクイズの答えに気が付いた。
「……そうか!! あそこしかない!!」
そして俺は思いついたあの場所へ走り出す。
俺が走って向かった場所、そこは……。
「俺の予想が正しければ、このクイズの答えはここのはず……」
俺はシアタールームの扉の前に立っていた。
そして扉を開けると、そこには結衣と剛の姿があった。
「お! 先生、大正解!! もっと時間がかかるかと思ってたぜ!」
「アニメ鑑賞会のこと、覚えていてくださったのですね! 私は嬉しいのですよ!!」
そう、俺はこの答えを考えているときに結衣とのやりとりを思い出し、あの時のアニメ鑑賞会のことに気が付いた。
そしてクイズの答えはここだとわかったわけだ。
「正直、結衣のことを思い出さなきゃ、わからなかったかもしれないな。だから、結衣には感謝だ! ありがとう!!」
「いえいえ。しかし先生? まだまだクイズは始まったばかりですぞ!! ここからはもっと難題が待っておりますので!」
「ああ大丈夫だ! 任せておけ!!」
結衣の言葉に、俺は意気揚々と答える。
そして次のクイズのメモを剛から受け取った。
「えっと……どこまでも広く、風を感じる場所。ってこれだけ!? もはやクイズじゃなくて、想像ゲームじゃないか!?」
「大体がこんな感じの形式になっているので、どんどん進めて行ってください! 最後には素敵なご褒美が待っていますぞ!」
「ちょ、結衣! それは!!」
剛は結衣の失言に焦った様子だった。
ご褒美か……何が待っているのだろう。それを考えると俺は少し楽しみになった。
「とりあえず、すべての問題を答えた先に何かが待っているってことだな!」
「そ、それはどうですかねー」
結衣はごまかすように言っていたが、もう遅い。
「じゃあ俺は行くよ! 二人とも、ありがとな!!」
そして俺はご褒美とやらを楽しみに次の目的地へと向かった。
シアタールームから勢いよく駆け出した俺だったが、このクイズの答えが全くわからず、完全に行き詰っていた。
俺は廊下を歩きながら、クイズの内容と答えについて考えていた。
「どこまでも広く、風を感じる場所、か」
風を感じるってことはそこで待つのはおそらく真一だろうと予想はできる。
しかし真一の思う、風の感じる場所ってどこだろう……
「俺、真一のことを何にも知らないんだな……」
他の生徒たちとはかなり打ち解けてきたと思うけれど、真一だけはいまだによくわかっていない。
二人で話をしたことがあるわけでもないし、どんな趣味があるのかすらわからない。
そういえば、キリヤが前に言っていたな。真一はクールに見えて、趣味では意外な一面をみせるんだとか……。
それって一体どんな趣味なんだろう。すごく気になるところだな……。
「……今はそんなことより! この場所がどこかを考えるんだ……」
どこまでも広くってことは、まあ……広い場所なんだろうけど……
風を感じるってことは、多分建物の外なんだろう。
外で広いところといえば……!
「あそこかな!」
俺は次の目的地へ急いだ。
時間の経過とともに季節は流れ、施設にある木々が真紅や黄金色に染まっていた。
「紅葉か……。俺が来たときは、桜が咲いていたのにな」
俺は窓から覗く秋色に染まった木々を見ながら、施設に来たばかりの日のことを思い出していた。
俺が初めてここへやってきたときはまさか生徒たちと打ち解けられるようになるなんて想像もしていなかった。
今日までいろんなことがたくさんあったけれど、今が楽しいと思えるのは、ここで出会った生徒たちのおかげかなと思う。
「ここの教師になれて、本当に良かったな」
俺は窓の外を見ながら、しみじみと思った。
そしてそんなことを思う今日は、生徒たち主催のレクリエーションが行われるということになっている。
初めて会ったときは、俺に対していい印象を持っていなかった生徒たちが、今は自発的に俺と楽しむイベントを開催しようなんて……。
俺はそんな生徒たちの心の変化を直に感じることができて、とても嬉しく思った。
「レクリエーションって何をやるつもりなんだろう。それに俺はいつまでここにいればいいんだ?」
生徒たちが何をしてくれるのだろうかとワクワクしていると、この待ち時間がとても長く感じられる。
奏多からはレクリエーションを始めるまで教室に待機していてほしいと言われていた。
ここで待つこと、はや30分――
「長い……」
せめて話し相手の一人ぐらいは残してくれてもよかったんじゃないのか!?
そんなことを思いつつ、俺はうずうずとしていた。
「そろそろ準備もできた頃かな……」
そう言いながら、俺は教室の扉に手をかける。
しかし俺はハッとして、手を引く。
「もう少しだ、頑張れ俺」
うずうずして教室から出たい気持ちになるが、ここで約束を破るわけにはいかないと、俺は自分に言い聞かせた。
そしてようやく奏多が教室へやってくる。
「先生、お待たせいたしました……って扉の前で何をしているんです?」
「いや、それは……その」
まさか教室から出ようとしていたなんて言えず、俺の目は泳いでいた。
「まあそんなことはどうでもいいことですね。さあレクリエーションを始めましょうか!」
「あ、ああ! ……でも始めるって、他の生徒たちはどこにいったんだ?」
「ふふふ。今日のレクリエーションは……施設全体を使ったクイズ大会です! 私たちから先生へクイズを出題いたしますので、先生はそのクイズに答えて行ってください」
「クイズ、か……わかった!」
もっとみんなで盛り上がる感じのことを想像していたので、クイズだと聞いたとき、俺は少し驚いた。
そして奏多は俺に一枚のメモを渡す。
「こちらに問題が書いてありますので、このクイズを解いて目的地へ向かってください!」
「わかった」
俺はさっそく渡されたメモに目を通し、その内容を読み上げる。
「えっと、何々……昼間でもずっと暗闇の場所はどこ?これってクイズっていうよりもなぞなぞに近いような……」
「では、先生! 行ってらっしゃい! 正解の場所には、誰かがおりますので。そこでまた新しいクイズをもらえますからね」
俺の言葉を遮るように、奏多は俺を送り出す。
「わ、わかった。いってくる!」
そして俺はクイズの答えを探し始めた。
「昼間でもずっと暗闇の場所か……」
昼間でもずっとってことは、常に真っ暗なところってことだろう。
でも施設にそんなところあったか?
「うーん」
俺は悩みながら、歩いていていた。
「ぼーっと歩いていると、また結衣に躓きそうだな」
そんなことをつぶやき、俺はこのクイズの答えに気が付いた。
「……そうか!! あそこしかない!!」
そして俺は思いついたあの場所へ走り出す。
俺が走って向かった場所、そこは……。
「俺の予想が正しければ、このクイズの答えはここのはず……」
俺はシアタールームの扉の前に立っていた。
そして扉を開けると、そこには結衣と剛の姿があった。
「お! 先生、大正解!! もっと時間がかかるかと思ってたぜ!」
「アニメ鑑賞会のこと、覚えていてくださったのですね! 私は嬉しいのですよ!!」
そう、俺はこの答えを考えているときに結衣とのやりとりを思い出し、あの時のアニメ鑑賞会のことに気が付いた。
そしてクイズの答えはここだとわかったわけだ。
「正直、結衣のことを思い出さなきゃ、わからなかったかもしれないな。だから、結衣には感謝だ! ありがとう!!」
「いえいえ。しかし先生? まだまだクイズは始まったばかりですぞ!! ここからはもっと難題が待っておりますので!」
「ああ大丈夫だ! 任せておけ!!」
結衣の言葉に、俺は意気揚々と答える。
そして次のクイズのメモを剛から受け取った。
「えっと……どこまでも広く、風を感じる場所。ってこれだけ!? もはやクイズじゃなくて、想像ゲームじゃないか!?」
「大体がこんな感じの形式になっているので、どんどん進めて行ってください! 最後には素敵なご褒美が待っていますぞ!」
「ちょ、結衣! それは!!」
剛は結衣の失言に焦った様子だった。
ご褒美か……何が待っているのだろう。それを考えると俺は少し楽しみになった。
「とりあえず、すべての問題を答えた先に何かが待っているってことだな!」
「そ、それはどうですかねー」
結衣はごまかすように言っていたが、もう遅い。
「じゃあ俺は行くよ! 二人とも、ありがとな!!」
そして俺はご褒美とやらを楽しみに次の目的地へと向かった。
シアタールームから勢いよく駆け出した俺だったが、このクイズの答えが全くわからず、完全に行き詰っていた。
俺は廊下を歩きながら、クイズの内容と答えについて考えていた。
「どこまでも広く、風を感じる場所、か」
風を感じるってことはそこで待つのはおそらく真一だろうと予想はできる。
しかし真一の思う、風の感じる場所ってどこだろう……
「俺、真一のことを何にも知らないんだな……」
他の生徒たちとはかなり打ち解けてきたと思うけれど、真一だけはいまだによくわかっていない。
二人で話をしたことがあるわけでもないし、どんな趣味があるのかすらわからない。
そういえば、キリヤが前に言っていたな。真一はクールに見えて、趣味では意外な一面をみせるんだとか……。
それって一体どんな趣味なんだろう。すごく気になるところだな……。
「……今はそんなことより! この場所がどこかを考えるんだ……」
どこまでも広くってことは、まあ……広い場所なんだろうけど……
風を感じるってことは、多分建物の外なんだろう。
外で広いところといえば……!
「あそこかな!」
俺は次の目的地へ急いだ。
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