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第2章 変動
第11.5話ー① 変化
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奏多が施設を去ってから、数日後。僕は定期検査のため、研究所に来ていた。
「えっと……確かこっちだっけ……? はあ……」
どこまでも続く白い廊下に僕は思わずため息がこぼれる。
僕は剛の部屋に向かっているはずなのに、全く到着する気配がない。そしてそれはきっとこのどこまでも続く白い廊下のせいだと思った。
「もっとわかりやすいつくりにできなかったのかな……どこもかしこも同じような場所に見えるんだけど……」
そんな悪態をついていると、前方から見覚えのある女性がやってきた。
「やあ、キリヤ君。久しぶり! こんなところでどうしたんだい? もしかして、迷子?」
彼女は白銀ゆめかさん。この研究所でカウンセラーのようなことをやっている。前回、僕がここへ来たときに少しお世話になった女性だ。
普段は穏やかな雰囲気だけど、時々ミステリアスなところがあって、少し不思議な人だ。
「迷子と言えば、迷子ですね……剛のお見舞いがしたいんですけど、どこも同じ景色が続いていて、剛の部屋の場所がわからないんですよ」
「ああ。なるほど。じゃあ私が案内するよ! ついてきてくれ」
そして僕はゆめかさんの後ろについていくことにした。
「ここってずっと同じ廊下が続くから、なかなか場所を覚えられないだろう?」
ゆめかさんは笑いながら、僕に言った。
「そうですね……ゆめかさんは1年前にここへ来たんですよね? どうやって、ここの構造を覚えたんですか?」
「覚えたというか……知っていた、かな!」
「知っていた?」
ゆめかさんは振り返り、
「ああ。そうさ」
と不思議な笑顔で僕にそう言った。
そしてゆめかさんは再び前を向き、歩き出した。
知っていたって……。それってどういう意味なんだろう。ここへ来る前から、もともとここの関係者だったとか……?
僕はゆめかさんの後姿を見ながら、ゆめかさんの言葉の意味を考えていた。
でもきっと僕がどれだけ考えたって、ゆめかさんのその言葉の真実には辿りつけないような気がする……。ゆめかさんは僕の考えが及ばないくらい不思議な人だと思うから。
そしてしばらく歩くと、僕たちは剛の部屋についた。
「さあ、ここだよ。もしかしたら、今の君が見るのは少し酷かもしれないけれど」
ゆめかさんにそう言われた僕は、息を飲んでから扉のノブにゆっくりと手を掛けて、その扉を開けた。
その先にはベッドで眠る剛の姿があり、そしてその身体にはたくさんの管が取り付けられていた。
機械に無理やり生かされているように眠る剛。
それは人として生かされているのではなく、実験体として扱われているようにも感じた。
そしてそんな剛を見た僕は、自分も一歩間違えば同じようになっていたのかと思い、少しぞっとする。
「大丈夫かい?」
部屋になかなか入らない僕に、ゆめかさんは心配そうな声でそう告げる。
僕はゆめかさんの言葉にこくんと頷いてから、部屋に足を踏み入れた。
そして僕は剛のそばに行き、近くの椅子に腰かける。
「剛、久しぶり」
僕がそう声を掛けても、剛からの返事はない。
それでも僕はそのまま声を掛け続けた。
「奏多は海外に旅立ったよ。それにもうすぐ新しい人も入ってくるって。施設の中はこれからどんどん変わっていく。……剛は見てみたくない? これから先、僕らの施設でどんなことが起こるのか」
剛からの答えはなく、閑寂とする個室。
「……ねえ剛。僕は剛が必ず戻ってくるって信じているからね。だから自分に負けないでね」
僕はそう告げると、椅子から立ち上がる。
「もういいのかい?」
部屋の外から僕の様子を見ていたゆめかさんが、呆気にとられるようにそう言った。
「はい。話したいことはたくさんあるけど、それは剛が起きてからまた話せばいいって思うので」
僕は笑いながら、ゆめかさんにそう答えた。
それを見たゆめかさんは満足したようで、
「ふふっ……そうか」
そう言って優しく微笑むと、それから僕を検査室まで送り届けてくれた。
「えっと……確かこっちだっけ……? はあ……」
どこまでも続く白い廊下に僕は思わずため息がこぼれる。
僕は剛の部屋に向かっているはずなのに、全く到着する気配がない。そしてそれはきっとこのどこまでも続く白い廊下のせいだと思った。
「もっとわかりやすいつくりにできなかったのかな……どこもかしこも同じような場所に見えるんだけど……」
そんな悪態をついていると、前方から見覚えのある女性がやってきた。
「やあ、キリヤ君。久しぶり! こんなところでどうしたんだい? もしかして、迷子?」
彼女は白銀ゆめかさん。この研究所でカウンセラーのようなことをやっている。前回、僕がここへ来たときに少しお世話になった女性だ。
普段は穏やかな雰囲気だけど、時々ミステリアスなところがあって、少し不思議な人だ。
「迷子と言えば、迷子ですね……剛のお見舞いがしたいんですけど、どこも同じ景色が続いていて、剛の部屋の場所がわからないんですよ」
「ああ。なるほど。じゃあ私が案内するよ! ついてきてくれ」
そして僕はゆめかさんの後ろについていくことにした。
「ここってずっと同じ廊下が続くから、なかなか場所を覚えられないだろう?」
ゆめかさんは笑いながら、僕に言った。
「そうですね……ゆめかさんは1年前にここへ来たんですよね? どうやって、ここの構造を覚えたんですか?」
「覚えたというか……知っていた、かな!」
「知っていた?」
ゆめかさんは振り返り、
「ああ。そうさ」
と不思議な笑顔で僕にそう言った。
そしてゆめかさんは再び前を向き、歩き出した。
知っていたって……。それってどういう意味なんだろう。ここへ来る前から、もともとここの関係者だったとか……?
僕はゆめかさんの後姿を見ながら、ゆめかさんの言葉の意味を考えていた。
でもきっと僕がどれだけ考えたって、ゆめかさんのその言葉の真実には辿りつけないような気がする……。ゆめかさんは僕の考えが及ばないくらい不思議な人だと思うから。
そしてしばらく歩くと、僕たちは剛の部屋についた。
「さあ、ここだよ。もしかしたら、今の君が見るのは少し酷かもしれないけれど」
ゆめかさんにそう言われた僕は、息を飲んでから扉のノブにゆっくりと手を掛けて、その扉を開けた。
その先にはベッドで眠る剛の姿があり、そしてその身体にはたくさんの管が取り付けられていた。
機械に無理やり生かされているように眠る剛。
それは人として生かされているのではなく、実験体として扱われているようにも感じた。
そしてそんな剛を見た僕は、自分も一歩間違えば同じようになっていたのかと思い、少しぞっとする。
「大丈夫かい?」
部屋になかなか入らない僕に、ゆめかさんは心配そうな声でそう告げる。
僕はゆめかさんの言葉にこくんと頷いてから、部屋に足を踏み入れた。
そして僕は剛のそばに行き、近くの椅子に腰かける。
「剛、久しぶり」
僕がそう声を掛けても、剛からの返事はない。
それでも僕はそのまま声を掛け続けた。
「奏多は海外に旅立ったよ。それにもうすぐ新しい人も入ってくるって。施設の中はこれからどんどん変わっていく。……剛は見てみたくない? これから先、僕らの施設でどんなことが起こるのか」
剛からの答えはなく、閑寂とする個室。
「……ねえ剛。僕は剛が必ず戻ってくるって信じているからね。だから自分に負けないでね」
僕はそう告げると、椅子から立ち上がる。
「もういいのかい?」
部屋の外から僕の様子を見ていたゆめかさんが、呆気にとられるようにそう言った。
「はい。話したいことはたくさんあるけど、それは剛が起きてからまた話せばいいって思うので」
僕は笑いながら、ゆめかさんにそう答えた。
それを見たゆめかさんは満足したようで、
「ふふっ……そうか」
そう言って優しく微笑むと、それから僕を検査室まで送り届けてくれた。
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