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第2章 変動

第13話ー② それぞれが抱えるもの

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 着替えた生徒たちは、グラウンドに集合していた。

「さて、今日はな……3チームに分かれてのチーム戦だ!!」
「3チーム? 鬼ごっこなのにですか?」

 狂司は首をかしげて言った。

「ああ! 赤、青、黄のチームに分かれて、それぞれを捕まえるんだ。赤は青を。青は黄を。そして黄は赤を追う。捕まえられるチームはそれぞれ一つ! 最後まで残ったチームの勝ちだ! 能力の使用は自由。でも危険行為は禁止だ!」

 俺の説明に狂司と優香以外は納得したようで、頷いていた。

「能力の使用は自由って……」
「え!? 能力を使用しても、良いのですか!?」

 俺の言った言葉に驚きを隠せない狂司と優香。

「ああ。こういう外でやるレクリエーションの時は、だいたい能力有りでやっているんだ!」
「でも、それって……」

 そう言って不安そうな表情をする優香。

「無理に使うことはないさ! ただ使ってもいいぞって言うだけの話だよ」

 狂司はまゆおの方を向き、目が合ったのを確認してから口を開いた。

「なるほど。先ほど、まゆお君が言っていたのはこういうことでしたか。……わかりました」

 狂司は納得してくれたようだが、優香は未だに不安そうな顔をしていた。

 確かに『白雪姫症候群スノーホワイト・シンドローム』という力は、悪く捉えている人は少なくない。だから優香が不安に思う気持ちもわからなくはない。

「優香、無理はしなくてもいい。自分の能力が好きじゃない人がいることを俺は知っているから。ただ、なぜレクリエーションで能力の使用を許可しているのかだけは、聞いてくれ」
「はい……」

 優香はしゅんとした顔で俺の方を向き耳を傾ける。

「今の俺はみんなにこの活動を通して、自分の能力と向き合ってほしいと思っている。自分の力は悪いものじゃないって、そう思ってくれたらいいなって」

 俺は優香にそう言い聞かせると、優香も納得したようで小さく頷いた。

 それを見ていた生徒たちは、みんな優しい笑顔をしていた。

「じゃあ、チーム分けはどうするの?」

 キリヤは空気を入れ換えて、俺にそう問いかける。

「今回はな……」

 俺は隠し持っていた割り箸を取り出し、生徒たちの前に差し出す。

「じゃじゃーん! これをみんなに引いてもらって、チームを決める!」
「すごい原始的なやり方だね……」
「王様ゲーム!?」

 あきれた様子のキリヤと割り箸に興味を持つマリア。

 キリヤの反応はさておき、俺は生徒たちに割り箸を引くように勧める。

「さあ、みんな引いてくれ!」

 そして生徒たちはそれぞれ割り箸を引いていく。

 ちなみにチーム分けはこうだ。

 赤チーム・キリヤ、いろは、優香
 青チーム・暁、マリア、狂司
 黄チーム・まゆお、結衣、真一

「じゃあ始める前に作戦会議をしよう! 開始は15分後だ!」

 そしてそれぞれのチームに分かれて、作戦会議を開始した。



 青チームの俺とマリアと狂司は、建物の陰に隠れて作戦会議を始めていた。

 しかし作戦会議をするうえで、俺はとても大事な情報を知らずにいた。

「そういえば、狂司はどんな能力なんだ?」

 俺の問いに狂司は目を丸くして答える。

「資料、見てないんですか?」
「俺は誰かのつくったデータを当てにしたくなくてな。だから生年月日と氏名くらいしか知らないんだ」

 俺はドヤ顔で狂司にそう告げた。

「へえ……そうですか……」

 そう言ってから、狂司は何かに納得するように頷いた。

 それから狂司は俺たちに自分の能力について話してくれた。

「僕の能力は鴉の羽クロウ・フェザーって言って、カラスの羽を自在に使いこなせる力です」
「なんかかっこいい能力名だな!」

 俺がそう言うと、狂司は頬を赤らめて恥ずかしそうに答える。

「僕が決めたわけじゃないですからね! 検査をした人が勝手にそう言って……」
「でもすごい能力なのはわかる。鴉の羽クロウ・フェザーいい!」

 狂司の能力名をマリアはとても気に入っているようだった。

「ちょっと! 恥ずかしいので、やめてください!!」

 いつも大人びている狂司の恥ずかしがる姿が少し新鮮に思えて、俺は思わず「くすっ」と笑っていた。

 それから俺たちは狂司の能力を取り入れた戦略を考案していく。ついでに俺の能力を狂司に伝えると、またいくつかの戦略案を出してくれた。

 そしてその中から一番よさそうな戦略で俺たちは挑むことにしたのだった。



 15分後、再び全員が集まる。

「よし、じゃあ時間だ! 鬼ごっこを始めるぞ! 制限時間は20分だ! 最後まで残った人が多いチームの勝ち! 負けたら、過酷な罰ゲームが待っているからな!」
「え!? 罰ゲーム!?」

 それを聞いたいろはが驚く。

「罰ゲームが嫌なら、勝てばいいさ」

 そんないろはに余裕そうな顔でキリヤが言う。

「じゃあはじめ!」

 そして俺のその掛け声と同時にキリヤは俺に向かって、氷の刃を飛ばした。

「いきなりかよ!」

 そう言いつつ、俺は笑いながら右手でキリヤの氷を粉砕した。

「逃げるぞ、マリア! 狂司!!」

 そして俺は二人と共にキリヤたちの前から立ち去った。

 ――ここまでは予想通り。キリヤは開始と同時に一番厄介な俺に仕掛けてくることはわかっていたから。

「二人とも作戦通りにいこう!」
「うん」「はい!!」

 そして俺たちはその場を全力で走り去ったのだった。
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