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第2章 変動
第14.5話 罰ゲーム
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新学期のレクリエーションで、罰ゲームが決まった僕と真一君と結衣ちゃんは食堂の後片付けをすることになっていた。
夕食後、僕たちは先生の指導の下で食堂の清掃を始める。
「俺が手伝うのは、今日だけだからな! 明日からは3人でうまく分担して進めてくれよ!」
「分担……」
真一君は不満そうな表情をしているのが見てわかった。
「分担したほうがきっと早く終わると思うし、力を合わせて頑張ろう?」
僕はそう真一君に告げたが、特に何も返事はなかった。
真一君は僕のことを嫌っているのだろうか……。
もしそうだとしたら、明日からの1か月間は実に気分が重い。
「はあ」
僕は思わずため息が漏れる。
「まゆお殿、真一殿も。がんばりましょう! これを乗り超えた先に、きっとまだ見ぬ何かが待っているに違いないですぞ!」
重い空気を察知した結衣ちゃんは、盛り上げようと頑張ってくれているようだった。
僕もあまり重い気持ちでいたらだめだよね。結衣ちゃんにも迷惑になっちゃうから、僕はとりあえずいつも通りの僕でいよう。
そして初日の罰ゲームは無事に終わった。
翌日の夕飯後。
僕たちは再び食堂の清掃をする時間となった。
「えっと、分担はどうする?」
僕の問いに耳を傾けることもなく、真一君は掃除を始めた。
僕は結衣ちゃんと目を合わせて、今日は仕方ないと昨日と同じ作業を行なった。
そして翌日も翌々日も同じことが続いた。
その翌日、真一君は今日も自分勝手に掃除を始めた。
そして僕はそんな真一君に、なぜ分担せずに一人で掃除を進めてしまうのかと聞くと、
「だって話し合う時間が無駄じゃん。早くやって、早く終わったほうが効率的でしょ。ちゃんとやれば、問題はないはずだよね。いちいち分担してとか力を合わせてとか、意味わかんないし」
真一君は淡々とそう答えた。
言っていることに間違いはない。
だけど彼のその考え方を僕は理解できなかった。
「真一君は一人で何でもできると思ってるの?」
「まあね。いざというときに自分の人生を決めるのはいつだって自分自身だ。何かあった時、自分一人で選択をしなくちゃならない。人間は結局、孤独な生き物なんだよ。だから誰かに頼りきって、一人で生きていけないなんて、ダサいと思わない?」
真一君は冷めた瞳で僕にそう告げた。
「僕はそう思わない。人と人は支えあって生きていくものだ。誰かと生きていくことはダサくなんかないよ!!」
「ふうん。まゆおはそう思うってだけの話でしょ。自分の価値観を押し付けるのはやめてほしいな。僕は僕の考えを曲げない。だって僕はずっと一人で生きてきたんだから」
そして真一君は掃除に戻った。
それから僕は再び掃除をする真一君を見ながら、
「君がわからないよ……」
そう呟いていた。
掃除の後に僕は悶々とした気持ちのまま、自室に向かった。
真一君の考えが僕にはわからない。
まるで誰も必要としていないような言い方だった。
彼にとって、ここの施設の生徒は仲間ではないのだろうか。
「はあ」
いくら考えても答えは出なかった。
「どうしたんですか、まゆお君?」
「狂司君……」
声が聞こえて、顔を向けると共同スペースのソファに狂司君が座っていた。
「なんだか、お疲れのようですけど……。お掃除をしていて、何かありました?」
「ははは……実はね、ちょっと真一君といろいろあってね」
「そうですか。まあ何があったかは深く追求しないでおきます。でも真一君はミステリアスなところがあって、つかみどころがないといいますか」
「ミステリアス!?」
「違いますか?」
きょとんとした顔をする狂司君。
「ははは! 確かに、そうかも!」
「え……今、笑うところなんてありました?」
「なんかさっきまで真一君のことで悶々としていたんだけど、でもミステリアスって聞いたら、なんだかすごく納得しちゃって!」
狂司君は困った顔をしていたが、それでいいんだ。
真一君を無理に理解しようとしなくてもいいんだ。
彼は彼の考え方があるし、僕は僕の考え方がある。
僕と雰囲気が違う彼なんだから、同じ考えを持つはずがない。
そして真一君はミステリアスなんだ。
だからわからなくても仕方がないことなんだよ。
「ありがとう、狂司君。なんだかスッキリしたよ!」
「よくわからないですけど、気分が晴れたならよかったです!」
「でもなんで何かあったってわかったの?」
僕のその問いに、狂司君は遠くを見つめながら答える。
「僕の兄も何かあると、似たような顔をしていたんですよ」
「そうだったんだね」
それはなんだか悲しそうな表情に見えた。
狂司君だけここへきて、お兄さんと離れ離れだから、やっぱりさみしいんだろうな。
ここにいる間は、僕が狂司君のお兄さん代わりになろう。
そうしたら、狂司君のさみしさが少しでも紛れるんじゃないのかなって僕は思った。
「では、僕はこれで。おやすみなさい」
そして狂司君は自室に戻っていった。
「おやすみ!」
僕は狂司君を見送ってから、自室に戻った。
そして翌日の夕食後。
今日もまた真一君は一人で掃除を進めていた。
だけど、今日の僕はそんな彼でもお構いなしだ。
だって彼は彼の考えがあって行動をしている。
理解をしようとなんてしなくてもいいんんだから。
昨日と違う僕を見た真一君は不思議そうにしていたが、何かを察して、それからは気にしていない様子だった。
今回はわからなくてもいいって結論に至ったけれど、でもいつか真一君の思いや考えがわかるときがきたらいいなと思っている。
そんな日はいつになるのかはわからないけどね!
そして僕たち3人は、無事に罰ゲーム期間を終えたのだった。
夕食後、僕たちは先生の指導の下で食堂の清掃を始める。
「俺が手伝うのは、今日だけだからな! 明日からは3人でうまく分担して進めてくれよ!」
「分担……」
真一君は不満そうな表情をしているのが見てわかった。
「分担したほうがきっと早く終わると思うし、力を合わせて頑張ろう?」
僕はそう真一君に告げたが、特に何も返事はなかった。
真一君は僕のことを嫌っているのだろうか……。
もしそうだとしたら、明日からの1か月間は実に気分が重い。
「はあ」
僕は思わずため息が漏れる。
「まゆお殿、真一殿も。がんばりましょう! これを乗り超えた先に、きっとまだ見ぬ何かが待っているに違いないですぞ!」
重い空気を察知した結衣ちゃんは、盛り上げようと頑張ってくれているようだった。
僕もあまり重い気持ちでいたらだめだよね。結衣ちゃんにも迷惑になっちゃうから、僕はとりあえずいつも通りの僕でいよう。
そして初日の罰ゲームは無事に終わった。
翌日の夕飯後。
僕たちは再び食堂の清掃をする時間となった。
「えっと、分担はどうする?」
僕の問いに耳を傾けることもなく、真一君は掃除を始めた。
僕は結衣ちゃんと目を合わせて、今日は仕方ないと昨日と同じ作業を行なった。
そして翌日も翌々日も同じことが続いた。
その翌日、真一君は今日も自分勝手に掃除を始めた。
そして僕はそんな真一君に、なぜ分担せずに一人で掃除を進めてしまうのかと聞くと、
「だって話し合う時間が無駄じゃん。早くやって、早く終わったほうが効率的でしょ。ちゃんとやれば、問題はないはずだよね。いちいち分担してとか力を合わせてとか、意味わかんないし」
真一君は淡々とそう答えた。
言っていることに間違いはない。
だけど彼のその考え方を僕は理解できなかった。
「真一君は一人で何でもできると思ってるの?」
「まあね。いざというときに自分の人生を決めるのはいつだって自分自身だ。何かあった時、自分一人で選択をしなくちゃならない。人間は結局、孤独な生き物なんだよ。だから誰かに頼りきって、一人で生きていけないなんて、ダサいと思わない?」
真一君は冷めた瞳で僕にそう告げた。
「僕はそう思わない。人と人は支えあって生きていくものだ。誰かと生きていくことはダサくなんかないよ!!」
「ふうん。まゆおはそう思うってだけの話でしょ。自分の価値観を押し付けるのはやめてほしいな。僕は僕の考えを曲げない。だって僕はずっと一人で生きてきたんだから」
そして真一君は掃除に戻った。
それから僕は再び掃除をする真一君を見ながら、
「君がわからないよ……」
そう呟いていた。
掃除の後に僕は悶々とした気持ちのまま、自室に向かった。
真一君の考えが僕にはわからない。
まるで誰も必要としていないような言い方だった。
彼にとって、ここの施設の生徒は仲間ではないのだろうか。
「はあ」
いくら考えても答えは出なかった。
「どうしたんですか、まゆお君?」
「狂司君……」
声が聞こえて、顔を向けると共同スペースのソファに狂司君が座っていた。
「なんだか、お疲れのようですけど……。お掃除をしていて、何かありました?」
「ははは……実はね、ちょっと真一君といろいろあってね」
「そうですか。まあ何があったかは深く追求しないでおきます。でも真一君はミステリアスなところがあって、つかみどころがないといいますか」
「ミステリアス!?」
「違いますか?」
きょとんとした顔をする狂司君。
「ははは! 確かに、そうかも!」
「え……今、笑うところなんてありました?」
「なんかさっきまで真一君のことで悶々としていたんだけど、でもミステリアスって聞いたら、なんだかすごく納得しちゃって!」
狂司君は困った顔をしていたが、それでいいんだ。
真一君を無理に理解しようとしなくてもいいんだ。
彼は彼の考え方があるし、僕は僕の考え方がある。
僕と雰囲気が違う彼なんだから、同じ考えを持つはずがない。
そして真一君はミステリアスなんだ。
だからわからなくても仕方がないことなんだよ。
「ありがとう、狂司君。なんだかスッキリしたよ!」
「よくわからないですけど、気分が晴れたならよかったです!」
「でもなんで何かあったってわかったの?」
僕のその問いに、狂司君は遠くを見つめながら答える。
「僕の兄も何かあると、似たような顔をしていたんですよ」
「そうだったんだね」
それはなんだか悲しそうな表情に見えた。
狂司君だけここへきて、お兄さんと離れ離れだから、やっぱりさみしいんだろうな。
ここにいる間は、僕が狂司君のお兄さん代わりになろう。
そうしたら、狂司君のさみしさが少しでも紛れるんじゃないのかなって僕は思った。
「では、僕はこれで。おやすみなさい」
そして狂司君は自室に戻っていった。
「おやすみ!」
僕は狂司君を見送ってから、自室に戻った。
そして翌日の夕食後。
今日もまた真一君は一人で掃除を進めていた。
だけど、今日の僕はそんな彼でもお構いなしだ。
だって彼は彼の考えがあって行動をしている。
理解をしようとなんてしなくてもいいんんだから。
昨日と違う僕を見た真一君は不思議そうにしていたが、何かを察して、それからは気にしていない様子だった。
今回はわからなくてもいいって結論に至ったけれど、でもいつか真一君の思いや考えがわかるときがきたらいいなと思っている。
そんな日はいつになるのかはわからないけどね!
そして僕たち3人は、無事に罰ゲーム期間を終えたのだった。
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