白雪姫症候群-スノーホワイト・シンドロームー

しらす丼

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第3章 毒リンゴとお姫様

第20話ー③ 動き出す物語

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 食堂に着くと、そこはいつも通りにぎやかだった。

 俺が食堂に入ると生徒たちは俺に視線を向ける。

「センセー! お疲れ! お仕事は終わった??」

 いろはは食べながら、俺に問う。

「ああ、終わったよ! さて俺も腹減ったし、大好物のからあげでも……」

 そう言いながら俺はテーブルに座ると、

「先生、今日はから揚げがないみたい」

 マリアは俺に向かってそう言った。

 マリアのその言葉に驚き、食事の並ぶコーナーを見てみると本当にから揚げがなかった。

「そ、そんな……」

 すると、シロが落胆する俺の近くに来て、

「ハンバーグ、食べる?」

 そう言いながら、お皿に乗ったハンバーグを差し出してくれた。

「シロ、ありがとな!!」

 俺はシロからハンバーグを受け取った。

 悶々とした今日くらいはから揚げを食べたかったな……

 そう思いながら、ハンバーグを頬張った。

 心なしか、ハンバーグの肉汁が心にしみる。

「先生、おいしい?」

 シロは両手を机につき、覗き込むようにしてハンバーグを頬張る俺に尋ねた。

「ああ。シロがくれたからな。すごくおいしいよ」

 俺が笑顔でそう答えると、シロは嬉しそうに笑っていた。

「……シロ、お前! 笑えるようになったのか!!」

 笑うシロを見て嬉しくなった俺は、つい大声を出してしまう。

 そしてその大声に驚き、びくっとなるシロ。

「先生! 大声出したら、シロが怖がるでしょ」

 マリアは両手を腰に当てながら、少々強めの口調でそう言った。

「ごめんなさい……」

 マリアに怒られた俺は落ち込みながら、シロたちにそう言って謝る。

 それから俺たちは食事を楽しんだ。



 夕食後、俺は一人で食堂の片づけをしているとシロが一人で食堂にやってきた。

「あれ、マリアは一緒じゃないのか?」

 疑問に思った俺はシロにそう尋ねる。

 すると、シロはニコッと微笑んでから、

「マリアお姉ちゃんはキリヤ君とお話してるから、邪魔しないように出てきた」

 そう答えたのだった。

「そうなのか」

 俺はシロが自分の考えをもって行動していることに驚いた。

 つい先日までまともに会話もできなかった少女がここまで成長しているなんて、誰が想像しただろうか。

 そんなことを思っているとシロは首をかしげながら、俺に質問をする。

「先生、夢見た?」

 夢……? 夢なら寝ているときによく見ているけれど、シロはいつの夢のことを言っているのだろうか。

「何のことだ?」
「白雪姫の夢」
「え……」

 俺は正直、すごく驚いた。俺が見た夢をなぜシロが知っているのだろうと……。

「なんでそのことを……」
「私が先生に見せた夢だから」

 シロが見せた夢……?

「それがシロの能力なのか?」

 俺はシロへ確認するようにそう聞いた。

 その問いにシロは顎に指を添えながら考えていた。

「うーん。わからない。でも私は人に夢を見せることができるみたい」
「そうなのか……」

 俺はシロのその言葉に驚き、目を見開く。

 そういえば、シロに初めてあった日に俺は変な夢を見た……。

 シロが予知夢を? でもなんであんな夢を見せることができるんだ……。

「あの夢は何なんだ? なんでシロが、あんな夢を……」
「私もわからない。急に誰かの夢が私の中に入ってくるの。そして見せたい相手とその夢を共有できる。どうしてそれをできるのかはわからないけど……」

 シロもわからないのか……。でもこの力はきっと『白雪姫症候群スノーホワイト・シンドローム』に違いないと俺はそう思った。

 普通の人間がそんなことをできるはずがないのだから。

 でもなんで俺なんだ? 俺なんかより、いつも一緒にいるマリアの方がよかったんじゃ……。

「なあシロ、どうして俺を選んだんだ? マリアでもよかったんじゃないか?」

 俺はシロの顔をまっすぐに見つめて、そう告げた。

 そしてシロはそんな俺の問いに優しく微笑みながら、

「……先生なら、どうにかしてくれるって思ったから。私の夢のことも。その夢の持ち主のことも」

 そう答えたのだった。

 俺はそう言ったシロから顔を背けて、

「俺にそんな力なんてないよ」

 力なくシロにそう告げた。

 そう。俺はここで当たり前のような日常を送ることしかできない。

 ましてや誰かを救うことなんてできるはずがないんだ……。

「そんなことないよ。先生と関わった子供たちがみんな笑顔に幸せになる夢を見たの。一人だけじゃなくて、何人もの子供たちが同じように笑顔だった。だから先生なら、できるって私は思ったの」

 俺はシロのその言葉に、はっとする。

「生徒たちが……」

 もし本当にそうだったなら、俺はどれだけ救われるだろうか。

「今の先生は自分に自信がないかもしれないけど、たくさんの積み重ねの中で先生は少しずつ自信を取り戻せるよ。そしてたくさんの子供たちを幸せにするから」

 そう言って、優しく微笑むシロ。

 シロが言うのは夢の話だから本当にそういう未来になるかどうかはわからない。

 それでも俺を元気づけるのに十分な言葉だった。

「ありがとな、シロ。少し自信がついたよ」
「よかった!」

 そう言って俺たちは微笑みあった。

「シロ? どこいったの?」
「マリアお姉ちゃんの声だ!」

 シロはその声を聞き、目を輝かせる。

 本当にシロはマリアのことが好きなんだなと思い、俺はくすっと笑ってしまった。

 それからマリアがシロを探しに食堂へやってきた。

「マリアお姉ちゃん!」

 シロはそう言いながら、マリアのもとに駆け寄った。

「先生とお話していたんだ。楽しくお話できた?」

 マリアは優しくシロに尋ねる。

「うん!」

 そしてシロは笑顔で答えた。

「じゃあ、そろそろ寝よう。明日も早起きしないとね」
「うん! じゃあ先生、おやすみなさい」

 そう言いながら、マリアとシロは食堂を後にした。

 俺はさっきのシロの話を思い出す。

 ……関わった生徒たちが幸せな笑顔になる未来、か。

 今はまだ自信はないけど、少しずつでいいから自信を積み重ねていこう。

 そんなことを思いながら、本当にそんな未来になるといいなと願った。

 それから俺は食堂の片づけを終えて俺は自室に戻った。
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