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第3章 毒リンゴとお姫様
第24話 不穏
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とある議員の個室。
一人の女性がソファでくつろいでいる。
20代前半くらいの見た目をしており、顔には紫色のベールをかけ、まるで占い師のような服装をしていた。
そしてその部屋の扉が開くと、スーツを着た50代くらいの男性が入ってきた。
「あら、遅かったじゃない?」
女はその男にそう告げる。
そしてその男はネクタイを緩めながら、女に近づいた。
女の前に立った男は、50代の男性の姿から20代くらいの男性の姿に変わっていた。
「お役所仕事はいろいろ厄介なんでね。それにしても、俺はいつまでこのおじさんの格好でいなくちゃならないわけ?」
「そんなの私たちの目的が達成するまでに決まっているでしょう? せっかくこの世界に種を蒔いたんだもの。しっかりと摘み取らなくちゃね」
そう言いながら、女は不気味に笑う。
「あーあ。性格の悪い女はこれだから……」
「はあ? 何か言ったかしら?」
そう言いながら、男の胸倉をつかむ女。
「いいえ、何でも」
「そう。ならいいわ。あんたは私の言う通りに動いてくれればそれでいいの」
そして男の胸倉をつかんだ手を離す女。
それから男は寄れた襟を直しながら、女に問う。
「そういえば、最近お気に入りのお姫様はどうなんだい?」
その問いに女は笑いだす。
「……ふふふふ。面白いことを聞いてくれるじゃない」
「どういう意味?」
「あの子はもう私のおもちゃじゃなくなった」
女は無表情に答える。
「は? もしかしてあのチップを破壊されたのか!?」
「ええ。だからあの子は壊れなかった。でも……」
「それってまずいんじゃ……」
「それは問題ないわ。そんなことより……もっと面白いおもちゃを見つけたの。ふふふ……ねえ、ゾクゾクしない?」
そう言って、女は興奮する身体を抑えた。
「今度は何をするつもり?」
「ふふっ。今までとやることは変わらないわ。それに私は必ず彼に会えるもの」
「彼……?」
「そう。必ず彼を手に入れてみせるわ」
そう言いながら、女は窓の外を見つめる。
「うふふ。会える日が楽しみね……」
そして女は不敵な笑みで都会の街を見下ろしていた。
今日のノルマを終えた僕は屋上に来ていた。
そして何かをするわけでもなくぼーっと空を見上げ、雲の流れを眺めている。
すると屋上の扉が開き、僕の目の前に優香がやってきた。
「やっぱりここにいた」
「どうしたの?」
僕は優香にそう聞いたけれど、
「どうしたのって……うーん」
そう言って考え込む優香。
どうやらここに来た理由は特になさそうだった。
それから僕たちは静かに雲を眺めていた。
「ねえキリヤ君。進路は決めたの? もう9月の終わりだし、そろそろ決めたのかなって」
優香は唐突にそんなことを僕に聞いてきた。
「それを聞いてどうするの?」
僕は空を眺めながら、優香に言った。
「どうするわけでもないけど、なんか気になって……」
「そっか」
僕はそう言って俯いてから、ゆっくりと優香に答える。
「……実はまだ決めてないんだ。どうしたいのか。どうするべきなのか」
「じゃ、じゃあさ! ずっとここにいればいいんじゃない? 私もまだあと1年はいるし。それに先生だってここにいるんでしょ? みんな一緒にここで楽しく暮らせばいいんじゃないの?」
優香は笑いながら、僕にそう告げる。
そしてその笑顔には、悲しみが籠っていることにも気が付いた。
「……そういう未来を考えたことだってあるよ」
「なら!!」
「でもそれじゃダメな気がする」
「そんなこと……」
僕がまっすぐ優香の瞳を見つめると、優香は俯いた。
「ありがとう、優香。僕のことを心配してくれているんだね」
「……違う、と思う。たぶん自分の為。キリヤ君から離れたくない私のわがまま」
「優香……」
そして優香は作り笑顔になり、
「ご、ごめんね。困るよね! じゃ、じゃあ私はこれで……」
そう言って、屋上を出て行った。
僕は優香のそばにずっといるって言ったのに……。
「僕はどうしたらいいんだろう」
どんな答えを出すことが正しい未来なのか。
誰も傷つかない選択は……?
そして僕のやりたいことって……。
「はあ」
ため息をつき、僕はまた空を眺めた。
僕の未来はどこへつながっているのだろう。
そしてこれから僕たちはどんな道を歩んでいくのかな。
「僕の進む路って……」
一人の女性がソファでくつろいでいる。
20代前半くらいの見た目をしており、顔には紫色のベールをかけ、まるで占い師のような服装をしていた。
そしてその部屋の扉が開くと、スーツを着た50代くらいの男性が入ってきた。
「あら、遅かったじゃない?」
女はその男にそう告げる。
そしてその男はネクタイを緩めながら、女に近づいた。
女の前に立った男は、50代の男性の姿から20代くらいの男性の姿に変わっていた。
「お役所仕事はいろいろ厄介なんでね。それにしても、俺はいつまでこのおじさんの格好でいなくちゃならないわけ?」
「そんなの私たちの目的が達成するまでに決まっているでしょう? せっかくこの世界に種を蒔いたんだもの。しっかりと摘み取らなくちゃね」
そう言いながら、女は不気味に笑う。
「あーあ。性格の悪い女はこれだから……」
「はあ? 何か言ったかしら?」
そう言いながら、男の胸倉をつかむ女。
「いいえ、何でも」
「そう。ならいいわ。あんたは私の言う通りに動いてくれればそれでいいの」
そして男の胸倉をつかんだ手を離す女。
それから男は寄れた襟を直しながら、女に問う。
「そういえば、最近お気に入りのお姫様はどうなんだい?」
その問いに女は笑いだす。
「……ふふふふ。面白いことを聞いてくれるじゃない」
「どういう意味?」
「あの子はもう私のおもちゃじゃなくなった」
女は無表情に答える。
「は? もしかしてあのチップを破壊されたのか!?」
「ええ。だからあの子は壊れなかった。でも……」
「それってまずいんじゃ……」
「それは問題ないわ。そんなことより……もっと面白いおもちゃを見つけたの。ふふふ……ねえ、ゾクゾクしない?」
そう言って、女は興奮する身体を抑えた。
「今度は何をするつもり?」
「ふふっ。今までとやることは変わらないわ。それに私は必ず彼に会えるもの」
「彼……?」
「そう。必ず彼を手に入れてみせるわ」
そう言いながら、女は窓の外を見つめる。
「うふふ。会える日が楽しみね……」
そして女は不敵な笑みで都会の街を見下ろしていた。
今日のノルマを終えた僕は屋上に来ていた。
そして何かをするわけでもなくぼーっと空を見上げ、雲の流れを眺めている。
すると屋上の扉が開き、僕の目の前に優香がやってきた。
「やっぱりここにいた」
「どうしたの?」
僕は優香にそう聞いたけれど、
「どうしたのって……うーん」
そう言って考え込む優香。
どうやらここに来た理由は特になさそうだった。
それから僕たちは静かに雲を眺めていた。
「ねえキリヤ君。進路は決めたの? もう9月の終わりだし、そろそろ決めたのかなって」
優香は唐突にそんなことを僕に聞いてきた。
「それを聞いてどうするの?」
僕は空を眺めながら、優香に言った。
「どうするわけでもないけど、なんか気になって……」
「そっか」
僕はそう言って俯いてから、ゆっくりと優香に答える。
「……実はまだ決めてないんだ。どうしたいのか。どうするべきなのか」
「じゃ、じゃあさ! ずっとここにいればいいんじゃない? 私もまだあと1年はいるし。それに先生だってここにいるんでしょ? みんな一緒にここで楽しく暮らせばいいんじゃないの?」
優香は笑いながら、僕にそう告げる。
そしてその笑顔には、悲しみが籠っていることにも気が付いた。
「……そういう未来を考えたことだってあるよ」
「なら!!」
「でもそれじゃダメな気がする」
「そんなこと……」
僕がまっすぐ優香の瞳を見つめると、優香は俯いた。
「ありがとう、優香。僕のことを心配してくれているんだね」
「……違う、と思う。たぶん自分の為。キリヤ君から離れたくない私のわがまま」
「優香……」
そして優香は作り笑顔になり、
「ご、ごめんね。困るよね! じゃ、じゃあ私はこれで……」
そう言って、屋上を出て行った。
僕は優香のそばにずっといるって言ったのに……。
「僕はどうしたらいいんだろう」
どんな答えを出すことが正しい未来なのか。
誰も傷つかない選択は……?
そして僕のやりたいことって……。
「はあ」
ため息をつき、僕はまた空を眺めた。
僕の未来はどこへつながっているのだろう。
そしてこれから僕たちはどんな道を歩んでいくのかな。
「僕の進む路って……」
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