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第8章 猫と娘と生徒たち
第59話ー① 僕の一歩
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謎の三毛猫が施設に訪れ、しばらくが経った頃。研究所で働くキリヤから郵便が届いた。
「あ、キリヤから……まゆお宛?」
珍しいな。まゆおへの連絡ならチャットで済むはずなのに――
そんなことを思いながら、首をかしげる暁。
「でもわざわざ手紙ってことは、チャットじゃできない内容なのか?」
そして暁は研究所で眠っているまゆおの兄のことを思い出す。
目を覚ましたって報告も聞かないし、たぶんまだ眠ったままなんだろうけど――
「もしかしてまゆおの兄さんに何かあった、とか!? でも所長からは特に……と言っても、俺には連絡をくれないのかもしれないけど。うーん。まあとりあえずまゆおに渡しに行くか」
それから暁はその届いた手紙をまゆおの部屋まで持っていくことにした。
「おーい、まゆお! いるか?」
暁がそう言ってまゆおの部屋の扉をノックすると、「はい」と言ってまゆおは部屋から出てきた。
「どうしたんですか?」
突然部屋にやってきた暁に、まゆおは首をかしげる。
「これ、キリヤから」
そう言って暁はキリヤから届いた手紙をまゆおに渡した。
「え、キリヤ君から……? 何なんでしょう」
そう言いながらまゆおは手紙をあけた。
「これ……いろはちゃんからの手紙!?」
まゆおはそう言って目を丸くする。
――ああ、それでまゆお宛だったのか。
そう思いながら、ほっと胸を撫でおろす暁。
「じゃあそれはまゆおが一人でゆっくり読めよ! じゃあな!!」
そう言って暁はまゆおの部屋を後にした。
いろはからの手紙、か。まゆおの能力消失に繋がるといいな――そう思いながら、暁は職員室へと戻っていった。
* * *
まゆおは部屋の中に戻り、机に向かった。そしていろはからの手紙を開いて、一文字一文字大切に読み始める。
『まゆおへ。元気にしてる? アタシはもちろん元気だよ! この間も検査の時に、騒がしい! って怒られちゃってさ!!』
「さすがいろはちゃんだな。どこにいても、変わらず明るく元気でやっているんだね」
まゆおは嬉しそうにクスクスと笑いながら、そう呟く。
『そうそう、そういえばさ! この間は本当に心配したんだからね、お兄さんのこと!! もしまゆおがあのままで能力の暴走なんてことになったら、アタシはもう二度とまゆおに会えないんじゃないかって思って怖かったんだから!』
いろはちゃんはあの時に、そんなことを思ってくれていたんだ――
『家族のことはいろいろとあると思う。でもさ、いつか笑ってその話を聞かせてよ。アタシはまゆおのどんな話も笑顔で聞くからさ!』
「ははは。確かに、いろはちゃんならどんなことも笑い飛ばしてくれそうだ」
そう言って微笑むまゆお。
『いつまた会えるかはわかんないけどさ。でもまた会えるってアタシは信じてるから! だからまゆおも信じて。それまでアタシ、頑張るからね! じゃあちょっと長くなったけど、この辺で……またね、まゆお! いろはより』
まゆおは読み終えたいろはの手紙をじっと見つめる。
「そうだよね。僕はまたいろはちゃんに会いたい。会えるって信じてる! だからまずは、ここから出なくちゃね」
でもその為には、僕の心に引っ掛かっている問題を片付ける必要があるわけだ――まゆおはそう思いながら、顎に手を当てて考えていた。
その問題を解決したら、きっと能力にも変化が起こる気がする。その為に、僕が今やるべきことは――
「うん……こうするしかない、よね!」
それからまゆおは手紙を机に棚にしまうと、自室を飛び出した。
「あ、キリヤから……まゆお宛?」
珍しいな。まゆおへの連絡ならチャットで済むはずなのに――
そんなことを思いながら、首をかしげる暁。
「でもわざわざ手紙ってことは、チャットじゃできない内容なのか?」
そして暁は研究所で眠っているまゆおの兄のことを思い出す。
目を覚ましたって報告も聞かないし、たぶんまだ眠ったままなんだろうけど――
「もしかしてまゆおの兄さんに何かあった、とか!? でも所長からは特に……と言っても、俺には連絡をくれないのかもしれないけど。うーん。まあとりあえずまゆおに渡しに行くか」
それから暁はその届いた手紙をまゆおの部屋まで持っていくことにした。
「おーい、まゆお! いるか?」
暁がそう言ってまゆおの部屋の扉をノックすると、「はい」と言ってまゆおは部屋から出てきた。
「どうしたんですか?」
突然部屋にやってきた暁に、まゆおは首をかしげる。
「これ、キリヤから」
そう言って暁はキリヤから届いた手紙をまゆおに渡した。
「え、キリヤ君から……? 何なんでしょう」
そう言いながらまゆおは手紙をあけた。
「これ……いろはちゃんからの手紙!?」
まゆおはそう言って目を丸くする。
――ああ、それでまゆお宛だったのか。
そう思いながら、ほっと胸を撫でおろす暁。
「じゃあそれはまゆおが一人でゆっくり読めよ! じゃあな!!」
そう言って暁はまゆおの部屋を後にした。
いろはからの手紙、か。まゆおの能力消失に繋がるといいな――そう思いながら、暁は職員室へと戻っていった。
* * *
まゆおは部屋の中に戻り、机に向かった。そしていろはからの手紙を開いて、一文字一文字大切に読み始める。
『まゆおへ。元気にしてる? アタシはもちろん元気だよ! この間も検査の時に、騒がしい! って怒られちゃってさ!!』
「さすがいろはちゃんだな。どこにいても、変わらず明るく元気でやっているんだね」
まゆおは嬉しそうにクスクスと笑いながら、そう呟く。
『そうそう、そういえばさ! この間は本当に心配したんだからね、お兄さんのこと!! もしまゆおがあのままで能力の暴走なんてことになったら、アタシはもう二度とまゆおに会えないんじゃないかって思って怖かったんだから!』
いろはちゃんはあの時に、そんなことを思ってくれていたんだ――
『家族のことはいろいろとあると思う。でもさ、いつか笑ってその話を聞かせてよ。アタシはまゆおのどんな話も笑顔で聞くからさ!』
「ははは。確かに、いろはちゃんならどんなことも笑い飛ばしてくれそうだ」
そう言って微笑むまゆお。
『いつまた会えるかはわかんないけどさ。でもまた会えるってアタシは信じてるから! だからまゆおも信じて。それまでアタシ、頑張るからね! じゃあちょっと長くなったけど、この辺で……またね、まゆお! いろはより』
まゆおは読み終えたいろはの手紙をじっと見つめる。
「そうだよね。僕はまたいろはちゃんに会いたい。会えるって信じてる! だからまずは、ここから出なくちゃね」
でもその為には、僕の心に引っ掛かっている問題を片付ける必要があるわけだ――まゆおはそう思いながら、顎に手を当てて考えていた。
その問題を解決したら、きっと能力にも変化が起こる気がする。その為に、僕が今やるべきことは――
「うん……こうするしかない、よね!」
それからまゆおは手紙を机に棚にしまうと、自室を飛び出した。
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