白雪姫症候群-スノーホワイト・シンドロームー

しらす丼

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第9章 新たな希望と変わる世界

第68話ー⑤ 黒翼の復帰

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 暁は催眠にかかっている剛と対峙していた。

「剛! お前、それでいいのか? 自分の意思で戦わなくていいのかよ!」
「……」

 剛は無言で暁に拳を振るっていた。

 狂司が元反政府組織の人間だという事は知っていた暁だったが、まさか仲間である剛に自身の能力を使ってくるとは思いもしなかった。

 やっぱり狂司は、狂司のままなのか――

 そんな不安を抱く暁。

 でも俺の無効化を使えば、剛の催眠も――

 そう思った暁は、剛の拳を受け止める。

「剛、元に戻ったか……?」
「……」

 しかし剛の催眠は未だ解けていないようだった。

 そして剛は暁の手を振り払い、距離を取る。

 無効化が効いていない……? もしかして俺の無効化が消失したのか――

 暁はそう思いながら、自身の手を見つめていた。

「なるほど、やっぱりそういうことですか」

 暁は凛子の方を見てそう言った。

「え? そういうことってどういうことだ、凛子?」
「ふふふ。元天才子役の目は欺けませんよ、剛君? そんな演技じゃ、穴だらけですっ!!」

 そう言って、剛に指を差す凛子。

「は!? え、演技!?」

 暁は驚きながら、剛の方を見た。

「……くっそ。なんでわかった!!」

 剛はそう言って顔を上げた。

「そんなの僕でもわかりますよ。なんで先生に触れられたとき、催眠が解けた演技をしなかったんですか!! 馬鹿ですか、あなたは!!」
「しまったあああ! そういう事かあああ!!」

 そう言って膝から崩れ落ちる剛。

「なんだ、演技だったのか……」

 そうだよな。俺の能力はもう――

 暁はほっとしたような、残念だったような気持ちになった。

「まったく……本当に催眠にかかった人間はこういう動きをするんですよ」

 狂司はそう言って右手を前に出すと、遠くから戦いを見ていた織姫がふらふらと歩いてやってきた。

「まさか、織姫に……?」
「ええ。隙を見て僕に攻撃を仕掛けるつもりだったんですよね? そのために遠くから見守らせていた。それが仇になりましたね、先生?」
「う……」

 織姫の能力は『流星群』。その為、離れた位置からでも広範囲の攻撃が可能だった。そんなその織姫の力で狂司を足止めして、暁は凛子と共に剛を戦闘不能に……と言う作戦を立てていた暁たち。

 俺たちの作戦は、全部読まれていたわけか――

 狂司を見ながら、そう思う暁。

「じゃあお願いします」

 狂司がそう言うと、織姫は右手を高くつき上げた。そしてその周辺から隕石を生成すると、それを暁たち目掛けて飛ばした。

 暁は凛子の前に立ち、その隕石を全て無効化で消していく。

 しかし連続して生成されるその隕石に、暁たちは動けずにいた。

「もしこれで横から奇襲があったら、私達はどうにもできませんね☆」
「凛子は悠長だな、あはは。だけど俺たちでもこれだけ動けないんだ、きっと狂司たちも同じだよ」
「そうだといいですがね」

 今は耐えるとき――暁はそう思いながら、織姫からの攻撃を無効化していった。

 そして隕石の雨が止み、暁はその場に膝をつく。

「先生、大丈夫ですかあ?」
「あ、ああ。凛子こそ、怪我はないか??」
「ええ、私は――」

 そう言って動かなくなる凛子。

「凛子……?」

 そして黙ったまま、狂司たちの方へ歩いていく。

「まさか――」
「ふふふ。これで2人は捕まえましたよ。あとは先生だけですね?」

 狂司はそう言って、ニヤリと笑った。

「……さすがだな、狂司」
「お褒めにあずかり光栄です。これでもたくさん修羅場をくぐってきていますので」
「修羅場、か……」

 狂司は『アンチドーテ』でどんなことを経験してきたのだろうか――そう思いながら、狂司を見つめる暁。
 
「じゃあ最後は剛君、頼みましたよ? 君じゃなくちゃ、先生は捕まえられませんから」
「ああ! 狂司がチャンスを作ってくれたおかげだぜ! 先生、俺は一切手を抜かないからな!!」
「それは、楽しみだな」

 暁はそう言いながら立ち上がる。

 そして剛は暁に向かって拳を振るった。


 * * *


 作戦会議時のこと――

 向かい合って座る剛と狂司。

「暁先生が無効化を使えないタイミングっていつだと思いますか?」
「え……寝てるとき、とか?」
「はあああ」

 狂司は可哀そうだと言わんばかりの視線を剛に送る。

「そ、そんな顔するなよ!!」
「いいですか? 先生が無効化を使えない時は、自身が別の能力を発動しているときです」

 狂司がそう言うと、剛はポンと手を打ち、

「そうか。『獣人化ビースト』を使っているときは、無効化していないってことだもんな!」

 笑顔でそう言った。

「ええ。だからその時を狙って、君の炎の鉄拳を打ち込んでください」
「ああ!」
「それと……これは君にしかできないことです。僕は君の力を買って、この作戦を立てているんですからね? その意味をちゃんと理解してくださいよ」

 狂司は剛の顔をまっすぐ見て、そう言った。

「――おう! 任せとけって!!」

 剛はそう言って歯を見せて笑った。

「まったく……調子にだけは乗らないように」

 ため息交じりにそう言う狂司。

「はいはい。でも意外だな! 狂司は俺のことなんて、信用してくれないかと思ったからさ」

 そう言って笑う剛。

「まあ信用はしますよ。今回は同じチームの仲間なんですから。でも信頼しているかどうかはまた別問題です」
「信用はしているけど、信頼はしていない――? ん? それってどういうことだ?」

 剛はそう言いながら、頭をひねった。

「つまり僕からの信頼がほしければ、今回のレクリエーションで絶対に勝つことが最重要事項と言う事です」
「なるほど! それはわかりやすい……じゃあ、必ず勝とうな!!」


 * * *


 ――グラウンドにて。

 対峙する剛と暁。

「俺は狂司と約束したんですよ、一緒に勝つってね。だから先生が相手でも俺は手を抜かない!!」

 そう言って剛は何の能力も込めない拳を暁に向けて放つ。

「お前たちが仲良くなってくれたなら、本望だよ! でも俺にだって大人のプライドがあるからな!!」

 そして暁は『獣人化ビースト』を発動し、剛の拳を受け止めた。

 今だ――!!

 そして剛はありったけの火力を反対側の腕に込めて、その拳を『獣人化ビースト』が発動している暁の腕に打ち込んだ。

「ぐっ……」

 その拳の勢いに飛ばされる暁。

「よっしゃあ!! 狂司!!」
「ええ。わかっています」

 そう言って狂司は暁の身体に手を触れて、

「これで僕たちの勝ちですね?」

 そう言って微笑んだ。
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