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第10章 未来へ繋ぐ想い
第84話ー② お父さんとお母さん
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夜の書類仕事を終えた暁は、PCを閉じて自室に戻って来た。
「水蓮、起きてるか~」
そう言ってベッドに目を向けると、水蓮は寝息を立ててスヤスヤと眠っていた。
「最近、なかなか水蓮と話す時間がないような気がするな……」
そう言いながら、暁は自室の椅子に腰かける。
するとミケが暁の前にちょこんと座り、
『まったくその通りだな』
とそう言った。
「ミケさん……」
『口にはしないが、水蓮は寂しがっているぞ。ここには同年代の友人もいないし、遊び相手は会話のできない三毛猫だけだからな』
「そう、か」
俺は自分のことばかりで、水蓮のことを気にしてやれてなかったな――
そう思いながら俯く暁。
『今朝の悪夢のこともあるし、水蓮のことをもっと気にかけてもいいんじゃないか? 手遅れになってからでは、後悔するのは暁本人だぞ』
「ミケさんの言う通りだな」
暁は苦笑いをして、ミケの方を見つめる。
『暁、一つどうしても聞きたいことがある』
「ん? なんだ??」
『水蓮の父親になってやれないのはなんでだ』
「それは――」
暁はそう言ってゆっくりと視線を下に向ける。
『どうせ婚約者のことを気にしているってこともあるんだろう』
「す、鋭いな……」
『まあ結婚して、すぐに母親になることを普通の女性なら気にするだろうと思う気持ちはわかるが……奏多はそんなに心の狭い女性なのか』
「そんなわけないだろ! でも、さ……実際、どう思うかなんて」
奏多だって、いきなり親になってほしいなんて言われたら、困るかもしれない――
『それはたぶん、大丈夫だと思うがな』
「その確証は?」
暁は真剣な顔でそう言って首を傾げる。
『暁が隔離されていた時、水蓮が暴走しそうになったことがあったのは知っているな』
「あ、ああ」
『その時に、奏多はもういろいろと覚悟は決めていたんだと思うぞ』
「?」
覚悟を? 奏多が――?
『まあ本人と話し合ってみればいいさ』
「わかった……」
『じゃあ私は寝る』
それだけ言ってミケはベッドの下に隠れた。
「水蓮を……そうか。そうだな」
そして暁はそう言って頷くとスマホを手に取り、どこかへ電話を掛けるのだった。
――数日後。
「今日は奏多がお泊りに来るぞ!」
「え!? 奏多ちゃんが!!」
嬉しそうに目を輝かせる水蓮。
「おう!」
「わーい! 楽しみだね、ミケさん!!」
「にゃーん」
「じゃあ、今日も勉強を頑張ろうな!」
「はーい!!」
水蓮も奏多に会えることが楽しみなんだ。よかった――
「午後から俺は出かけるけど、ちゃんと勉強するんだぞ? 水蓮は大丈夫だと思うから、剛やローレンスのことをちゃんと見ていてくれるか?」
「りょーかいです☆」
水蓮はそう言って敬礼ポーズをした。
「うん、偉いぞ~」
そう言って暁は水蓮の頭を撫でた。それからいつものように授業が始まり、午後になると暁は研究所へ向かったのだった。
――研究所にて。
「奏多。もう来ていたんだな!」
「ええ。今日は一限しか講義もなかったので、少し早めに来ました。さきほどまで優香さんが居て、お話していたところです」
そう言って微笑む奏多。
「そうか。暇を持て余していなくてよかったよ」
「それで今日は先日の話の事ですか?」
「ああ」
そして電話で話したことを思い返す暁。
――数日前、ミケに水蓮のことを聞いた暁は奏多に連絡を取っていた。
『――水蓮がそんなことを』
「それで、俺は――」
『水蓮の親権を取るって言いたいのでしょう?』
「え……?」
はっとした顔をする暁。
『暁さんのことは何でもお見通しだと言っているでしょう? 私に気を遣って、言い出せなかったんですよね』
「それもあるけど、それだけじゃないんだ」
『それだけじゃない……?』
暁は視線を下に移すと、
「ああ。だって俺が父親になったとして、水蓮は本当の父親のことを忘れていってしまうんじゃないかって思って……もし俺が本当の父親だったら、それって悲しいなって思ってさ」
重い口調でそう言った。
『そう言う事でしたか……』
「ああ」
『えっと。今回私に連絡をしたのは、覚悟が決まったという事でよろしいかったんですよね?』
奏多のその問いに、暁はすぐに返事をすることができなかった。
俺はたぶん、まだ覚悟が決まっていないんだと思う。ミケさんに言われて、とりあえず奏多に電話をして……自分の答えを出すことを先送りにしているような感じだ――
それから暁はゆっくりと口を開く。
「――わからない。でも俺はそれでもいいんじゃないかなって思えるようになったっていうか」
『なんと言うか……しっかりしてください!!』
奏多は語気を強めてそう言った。
「すみません……」
『それに、それでもいいんじゃないかって――水蓮の人生をなんだと思っているんです!!』
「はい……」
『そんな半端な覚悟で、父親になるとか言わないでください』
「そう、だよな……」
奏多の言う通りだ。もっと水蓮のことを考えるべきだった――そんなことを思いながら、暁はしゅんとする。
『でも。水蓮に両親が必要だってことは、私も同意です』
「奏多……」
ミケさんが言っていたのは、こういうことだったんだろうな――
そう思いながら、暁は真剣な表情をする。
『暁さんの覚悟を固めるため、聞きに行きましょう』
「聞くって何を……?」
暁はそう言って首を傾げた。
『水蓮に何があったのか、です。私達は水蓮のことをまだわかっていないでしょう? 両親のことも!』
奏多の言葉にはっとした暁は、
「そう、だな」
頷きながらそう言った。
『それでは今度、研究所へ行き、水蓮が施設に来ることになった経緯と家族関係のことを聞きに行きましょう。そのうえで、水蓮を含めて3人で話し合うのです!!』
やっぱりこういう時に行動力のある奏多は凄いな――そんなことを思いながら、「おう!」と返事をする暁だった。
「水蓮、起きてるか~」
そう言ってベッドに目を向けると、水蓮は寝息を立ててスヤスヤと眠っていた。
「最近、なかなか水蓮と話す時間がないような気がするな……」
そう言いながら、暁は自室の椅子に腰かける。
するとミケが暁の前にちょこんと座り、
『まったくその通りだな』
とそう言った。
「ミケさん……」
『口にはしないが、水蓮は寂しがっているぞ。ここには同年代の友人もいないし、遊び相手は会話のできない三毛猫だけだからな』
「そう、か」
俺は自分のことばかりで、水蓮のことを気にしてやれてなかったな――
そう思いながら俯く暁。
『今朝の悪夢のこともあるし、水蓮のことをもっと気にかけてもいいんじゃないか? 手遅れになってからでは、後悔するのは暁本人だぞ』
「ミケさんの言う通りだな」
暁は苦笑いをして、ミケの方を見つめる。
『暁、一つどうしても聞きたいことがある』
「ん? なんだ??」
『水蓮の父親になってやれないのはなんでだ』
「それは――」
暁はそう言ってゆっくりと視線を下に向ける。
『どうせ婚約者のことを気にしているってこともあるんだろう』
「す、鋭いな……」
『まあ結婚して、すぐに母親になることを普通の女性なら気にするだろうと思う気持ちはわかるが……奏多はそんなに心の狭い女性なのか』
「そんなわけないだろ! でも、さ……実際、どう思うかなんて」
奏多だって、いきなり親になってほしいなんて言われたら、困るかもしれない――
『それはたぶん、大丈夫だと思うがな』
「その確証は?」
暁は真剣な顔でそう言って首を傾げる。
『暁が隔離されていた時、水蓮が暴走しそうになったことがあったのは知っているな』
「あ、ああ」
『その時に、奏多はもういろいろと覚悟は決めていたんだと思うぞ』
「?」
覚悟を? 奏多が――?
『まあ本人と話し合ってみればいいさ』
「わかった……」
『じゃあ私は寝る』
それだけ言ってミケはベッドの下に隠れた。
「水蓮を……そうか。そうだな」
そして暁はそう言って頷くとスマホを手に取り、どこかへ電話を掛けるのだった。
――数日後。
「今日は奏多がお泊りに来るぞ!」
「え!? 奏多ちゃんが!!」
嬉しそうに目を輝かせる水蓮。
「おう!」
「わーい! 楽しみだね、ミケさん!!」
「にゃーん」
「じゃあ、今日も勉強を頑張ろうな!」
「はーい!!」
水蓮も奏多に会えることが楽しみなんだ。よかった――
「午後から俺は出かけるけど、ちゃんと勉強するんだぞ? 水蓮は大丈夫だと思うから、剛やローレンスのことをちゃんと見ていてくれるか?」
「りょーかいです☆」
水蓮はそう言って敬礼ポーズをした。
「うん、偉いぞ~」
そう言って暁は水蓮の頭を撫でた。それからいつものように授業が始まり、午後になると暁は研究所へ向かったのだった。
――研究所にて。
「奏多。もう来ていたんだな!」
「ええ。今日は一限しか講義もなかったので、少し早めに来ました。さきほどまで優香さんが居て、お話していたところです」
そう言って微笑む奏多。
「そうか。暇を持て余していなくてよかったよ」
「それで今日は先日の話の事ですか?」
「ああ」
そして電話で話したことを思い返す暁。
――数日前、ミケに水蓮のことを聞いた暁は奏多に連絡を取っていた。
『――水蓮がそんなことを』
「それで、俺は――」
『水蓮の親権を取るって言いたいのでしょう?』
「え……?」
はっとした顔をする暁。
『暁さんのことは何でもお見通しだと言っているでしょう? 私に気を遣って、言い出せなかったんですよね』
「それもあるけど、それだけじゃないんだ」
『それだけじゃない……?』
暁は視線を下に移すと、
「ああ。だって俺が父親になったとして、水蓮は本当の父親のことを忘れていってしまうんじゃないかって思って……もし俺が本当の父親だったら、それって悲しいなって思ってさ」
重い口調でそう言った。
『そう言う事でしたか……』
「ああ」
『えっと。今回私に連絡をしたのは、覚悟が決まったという事でよろしいかったんですよね?』
奏多のその問いに、暁はすぐに返事をすることができなかった。
俺はたぶん、まだ覚悟が決まっていないんだと思う。ミケさんに言われて、とりあえず奏多に電話をして……自分の答えを出すことを先送りにしているような感じだ――
それから暁はゆっくりと口を開く。
「――わからない。でも俺はそれでもいいんじゃないかなって思えるようになったっていうか」
『なんと言うか……しっかりしてください!!』
奏多は語気を強めてそう言った。
「すみません……」
『それに、それでもいいんじゃないかって――水蓮の人生をなんだと思っているんです!!』
「はい……」
『そんな半端な覚悟で、父親になるとか言わないでください』
「そう、だよな……」
奏多の言う通りだ。もっと水蓮のことを考えるべきだった――そんなことを思いながら、暁はしゅんとする。
『でも。水蓮に両親が必要だってことは、私も同意です』
「奏多……」
ミケさんが言っていたのは、こういうことだったんだろうな――
そう思いながら、暁は真剣な表情をする。
『暁さんの覚悟を固めるため、聞きに行きましょう』
「聞くって何を……?」
暁はそう言って首を傾げた。
『水蓮に何があったのか、です。私達は水蓮のことをまだわかっていないでしょう? 両親のことも!』
奏多の言葉にはっとした暁は、
「そう、だな」
頷きながらそう言った。
『それでは今度、研究所へ行き、水蓮が施設に来ることになった経緯と家族関係のことを聞きに行きましょう。そのうえで、水蓮を含めて3人で話し合うのです!!』
やっぱりこういう時に行動力のある奏多は凄いな――そんなことを思いながら、「おう!」と返事をする暁だった。
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