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新しい生活
会いたくなかった
教会に提出されていた死亡届が取り消されて、亡くなったと考えられていた元旦那様ことブライアン・バーネット卿が、生きていたと正式に世間に発表された。
元妻である私は今、噂の渦中の人物になってしまっているようだ。
結婚生活中は仲睦まじい夫婦を演じ、亡くなった後は、愛する夫を亡くした可哀想な妻を演じたことが、ここにきて裏目に出るなんて…。
『シャノン様、バーネット卿にはお会い出来ましたか?』
『きっとシャノン様にお会いしたら、バーネット卿は記憶を取り戻すかもしれませんわ。』
『愛し合う夫婦を、神様はお助けしてくださったのでしょうね。』
『私はシャノン様を応援していますから!』
王宮で働くメイド達や女性の文官達にこのような言葉をかけられることが多い。
どのお方も目をキラキラさせているのを見ると、純粋な気持ちで声を掛けてくれているのが分かる。
ロマンス小説の読み過ぎよ……。
私達はそんな関係ではなかったのに。
モヤモヤした気持ちで日々を過ごしていると、ブライアン様の弟で、現バーネット伯爵であるアドルフ様から手紙が届く。
手紙は元妻である私に、ブライアン様を発見した経緯を報告する内容が書いてあった。
ブライアン様は、言葉や知識、剣術など今まで学んできたことは問題はないが、自分自身のことや家族や友人など人間関係の記憶を失っていたらしい。
剣の腕を買われて、他国の裕福な商家の護衛騎士として働いている時に、商家が王都に新しく店を出店することになり、一緒に王都に来ることになったようだ。
その時に街で偶然、騎士団長をしていた時の部下達に鉢合わせして声を掛けられたらしい。
体の傷跡や黒子などを見て、弟のアドルフ様とその両親が、ブライアン様本人であると判断したようである。
今はバーネット伯爵家で生活をしているらしい。
最近は騎士団の元上司や元部下、伯爵家の親族と交流したりして毎日を過ごし、いずれは、騎士団に復帰し、バーネット伯爵家で持っている子爵位を引き継ぐ予定でいると書いてある。
私のことも忘れてしまっているが、結婚指輪を大切に持っていたらしく、ブライアン様本人も自分は結婚していたのではと思っていたようだ。
そんなブライアン様に両親が、元妻の私に会いたくないかと聞いたら、会ってみたいと話していたとか。
しかし、新しく生活を歩み始めた私の邪魔になるから、無理に会うことは出来ないとアドルフ様から話をしてくれたらしい。
もしも私が会いたいと思うのであれば、いつでも知らせて欲しいと書いてあった。
アドルフ様がいてくれて良かったわ…
アドルフ様には、元妻である私を気遣ってくれ、経緯報告してくれたことを感謝していることと、ブライアン様が記憶喪失でも生きていてくれて嬉しかったこと、お互い別々の人生を歩み始めているので、会うことは遠慮したいということを手紙に書いて返信した。
今は色々噂されて辛いけど、そのうち忘れられるだろうから、その日を静かに待とう…。
そこから1週間後には、別の噂話が王宮内に広まっていた。
ワイラー侯爵令嬢が、側妃候補を辞退して身分違いの恋を選んだという噂話だ。
プライドの高くて傲慢なワイラー侯爵令嬢が、身分違いの恋をするなんて凄いと、みんなが話している。
このタイミングでこの噂話が広がるなんて…。
誰かが噂話を操作しているのかと疑ってしまう。
でも…、新しい噂話に私は助けられたわね。
いつもの仕事終わりに、王宮を出て寮に向かって歩いていると、声を掛けられる。
「シャノン伯爵令嬢!」
振り向いた先にいたのは、元旦那様の部下であった副団長だった。
どうしてここに…?嫌な予感がするわ。
「副団長様、ご無沙汰しております。」
「お久しぶりですね。お元気そうで何よりです。
ところで、今、少し時間を頂けませんか?」
「も、申し訳ありません。直ぐに戻らなければならないのです。」
「仕事は終わりましたよね?少しでいいのです。お願いします!」
仕事終わりの文官達にジロジロ見られている…。
また嫌な噂が立ったらどうしようかしら。
仕方がないわね…。
「分かりました。それでは少しだけ……」
副団長の表情が一瞬で明るくなるのが分かった。
副団長に連れられて行ったのは、王宮のすぐ側にある公園だった。
日が暮れかかって、夕焼けに照らされる公園の中を歩いていると、公園のベンチに誰かが座っているのが見える。
あの方は……
「今日は急に申し訳ありませんでした。
団長はシャノン伯爵令嬢に会いたがっていたのですが、王宮に面会を申し込んでも、家族以外は面会出来ないと断られてしまうし、団長の弟殿には会うことを禁止されてしまうし…。
王宮で働く知り合いの近衛騎士に、あの時間にシャノン伯爵令嬢が寮に戻ると聞いて、何とか会えないかと待っていたのです。
団長と話をしてあげて下さい。
私は離れた場所で待っていますので。」
本当に迷惑な人達だわ…
私は会いたくなかったのに。
元妻である私は今、噂の渦中の人物になってしまっているようだ。
結婚生活中は仲睦まじい夫婦を演じ、亡くなった後は、愛する夫を亡くした可哀想な妻を演じたことが、ここにきて裏目に出るなんて…。
『シャノン様、バーネット卿にはお会い出来ましたか?』
『きっとシャノン様にお会いしたら、バーネット卿は記憶を取り戻すかもしれませんわ。』
『愛し合う夫婦を、神様はお助けしてくださったのでしょうね。』
『私はシャノン様を応援していますから!』
王宮で働くメイド達や女性の文官達にこのような言葉をかけられることが多い。
どのお方も目をキラキラさせているのを見ると、純粋な気持ちで声を掛けてくれているのが分かる。
ロマンス小説の読み過ぎよ……。
私達はそんな関係ではなかったのに。
モヤモヤした気持ちで日々を過ごしていると、ブライアン様の弟で、現バーネット伯爵であるアドルフ様から手紙が届く。
手紙は元妻である私に、ブライアン様を発見した経緯を報告する内容が書いてあった。
ブライアン様は、言葉や知識、剣術など今まで学んできたことは問題はないが、自分自身のことや家族や友人など人間関係の記憶を失っていたらしい。
剣の腕を買われて、他国の裕福な商家の護衛騎士として働いている時に、商家が王都に新しく店を出店することになり、一緒に王都に来ることになったようだ。
その時に街で偶然、騎士団長をしていた時の部下達に鉢合わせして声を掛けられたらしい。
体の傷跡や黒子などを見て、弟のアドルフ様とその両親が、ブライアン様本人であると判断したようである。
今はバーネット伯爵家で生活をしているらしい。
最近は騎士団の元上司や元部下、伯爵家の親族と交流したりして毎日を過ごし、いずれは、騎士団に復帰し、バーネット伯爵家で持っている子爵位を引き継ぐ予定でいると書いてある。
私のことも忘れてしまっているが、結婚指輪を大切に持っていたらしく、ブライアン様本人も自分は結婚していたのではと思っていたようだ。
そんなブライアン様に両親が、元妻の私に会いたくないかと聞いたら、会ってみたいと話していたとか。
しかし、新しく生活を歩み始めた私の邪魔になるから、無理に会うことは出来ないとアドルフ様から話をしてくれたらしい。
もしも私が会いたいと思うのであれば、いつでも知らせて欲しいと書いてあった。
アドルフ様がいてくれて良かったわ…
アドルフ様には、元妻である私を気遣ってくれ、経緯報告してくれたことを感謝していることと、ブライアン様が記憶喪失でも生きていてくれて嬉しかったこと、お互い別々の人生を歩み始めているので、会うことは遠慮したいということを手紙に書いて返信した。
今は色々噂されて辛いけど、そのうち忘れられるだろうから、その日を静かに待とう…。
そこから1週間後には、別の噂話が王宮内に広まっていた。
ワイラー侯爵令嬢が、側妃候補を辞退して身分違いの恋を選んだという噂話だ。
プライドの高くて傲慢なワイラー侯爵令嬢が、身分違いの恋をするなんて凄いと、みんなが話している。
このタイミングでこの噂話が広がるなんて…。
誰かが噂話を操作しているのかと疑ってしまう。
でも…、新しい噂話に私は助けられたわね。
いつもの仕事終わりに、王宮を出て寮に向かって歩いていると、声を掛けられる。
「シャノン伯爵令嬢!」
振り向いた先にいたのは、元旦那様の部下であった副団長だった。
どうしてここに…?嫌な予感がするわ。
「副団長様、ご無沙汰しております。」
「お久しぶりですね。お元気そうで何よりです。
ところで、今、少し時間を頂けませんか?」
「も、申し訳ありません。直ぐに戻らなければならないのです。」
「仕事は終わりましたよね?少しでいいのです。お願いします!」
仕事終わりの文官達にジロジロ見られている…。
また嫌な噂が立ったらどうしようかしら。
仕方がないわね…。
「分かりました。それでは少しだけ……」
副団長の表情が一瞬で明るくなるのが分かった。
副団長に連れられて行ったのは、王宮のすぐ側にある公園だった。
日が暮れかかって、夕焼けに照らされる公園の中を歩いていると、公園のベンチに誰かが座っているのが見える。
あの方は……
「今日は急に申し訳ありませんでした。
団長はシャノン伯爵令嬢に会いたがっていたのですが、王宮に面会を申し込んでも、家族以外は面会出来ないと断られてしまうし、団長の弟殿には会うことを禁止されてしまうし…。
王宮で働く知り合いの近衛騎士に、あの時間にシャノン伯爵令嬢が寮に戻ると聞いて、何とか会えないかと待っていたのです。
団長と話をしてあげて下さい。
私は離れた場所で待っていますので。」
本当に迷惑な人達だわ…
私は会いたくなかったのに。
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