97 / 104
新しい生活
閑話 王太子
しおりを挟む
私は14歳の時に、ある令嬢に一目惚れをした。
それは、その年のデビュタントの夜会での出来事…。
普通の貴族の子女なら、夜会は16歳になる年のデビュタントを迎えてからなのだが、この国の王太子である私は、12歳の頃から国王と王妃である両親と共に、王族主催の夜会に出席するようになっていた。
14歳の私が一目惚れをしたのは、その年にデビュタントを迎えた伯爵家の令嬢だった。
デビュタントを迎えた者は、国王と王妃に1人ずつ挨拶をすることになっている。
王太子として、国王のすぐ隣でその様子を見ていた私は、美しいプラチナブロンドの髪に、大きな紫色の瞳を持つ色白の美少女が挨拶に来た時に、目を奪われてしまった。
優雅な所作で完璧なカーテシーをし、鈴の鳴るような美しい声で挨拶をする令嬢だった。
その後も彼女から目を離せず、彼女がダンスをする姿にも見入ってしまう程だったと思う。
そんな私は、後日、親戚でもあり私の兄のような存在のアンブリッジ公爵子息から、聞きたくない話を聞かされるのである。
「殿下。この前のデビュタントで、私がシャノン伯爵令嬢とダンスを踊っているところを恐ろしい目つきで見ていたが、彼女は私の大切な後輩で、別に婚約者がいるのだから、私に嫉妬しないでくれ。
まさか殿下が年上の令嬢が好きだったとは思わなかったな…。」
この男にバレてしまったのは失敗だった。
それよりも、シャノン伯爵令嬢には婚約者がいるのか…。
こんなにも胸がズキズキするということは、私は彼女に恋をしていたのか?こんな胸の痛みは初めてだ。
王太子という立場の私は、いずれ国の為の婚姻をしなければならないのだから、恋なんてしてはいけないことは知っている。
彼女に婚約者がいるということをこのタイミングで知ることが出来たのは、私は本気の恋をしてはいけないという神からの警告なのかも知れない。
彼女のことは忘れよう。今ならまだ間に合う。
しかし、その後の夜会でも私は、気づくと彼女を目で追っていた。
王太子という立場で育ってきた私は、感情がバレないように表情にはそのことを出していなかったのだが、両親にはしっかりバレていたようだ。
16歳になる年を迎えた私は、貴族学園に入学した。
学園で私は、すぐに生徒会に入ることになったのだが、生徒会には彼女も所属しており、彼女の後輩として過ごしていくことに胸が高鳴る。
先輩として生徒会の仕事を教えてくれたり、仕事の合間にお茶を淹れてくれたり、彼女と一緒に過ごす時間はとても素晴らしいものであった。
気がつくと、彼女への想いはどんどん大きくなり、後戻りが出来ないくらいになっていた。
彼女は、卒業したら私の手の届かない場所へ行ってしまう。私以外の男のモノになってしまうのだ。
だから、今だけは彼女と過ごす時間を大切にしたい。
私が彼女に話しかけることや、ダンスに誘うこと、お茶を淹れてもらうこと…、彼女に関わりを求めることを、今だけはどうか許して欲しい。
私のそんな行動を敏感に察した令嬢が何人かいた。私の妃を狙う、傲慢で権力にしか興味のない女狐どもだ。
彼女に絡んだりする姿を何度か見ているし、放っておくと危害を加えそうだと判断した私は、女狐どもを学園から消すことにした。
元々、評判の良くない令嬢達だったので、女狐どもが爵位が下の者達を虐めていたり、テストで不正をしていた情報などがすぐに集まり、女狐どもは退学して学園から去っていった。
私は彼女に害をなす者を徹底的に排除することに決めた。
そんな日々を送っていた私のところに、政略結婚の話がくる。
相手は小国ながらも、有り余るほどの資源を有すると言われる、大金持ちのモンサンミ国の王女。
小国で資源国でもあり、周りの国から狙われやすいことから、軍事大国である我が国と同盟を結びたいようだ。そのかわり、資源が乏しい我が国に格安で資源を供給してくれるという。
更に、王女は生まれつき体が弱く、出産は難しいので白い結婚にして欲しいことと、側妃を持って良いが、王女のことは家族として大切にして欲しいことをモンサンミ国は希望しているらしい。
軍事大国とはいえ、資源には乏しい我が国としてはかなりの好条件の縁談であり、両親も家臣達もこの結婚にはかなり乗り気のようだ。
私自身も、ずっと好きだった彼女への想いを捨てきれずにいたので、白い結婚でよいなら何の問題もないと考え、この縁談を受けることに決めたのである。
婚約期間中、モンサンミ国の王女、エリザベスとは手紙のやり取りを続けていた。
どうやらエリザベスには愛する人がいるらしく、〝殿下は別に愛する人とお世継ぎを作って欲しい〟とか〝私の幼馴染を情夫として認めて欲しい〟とか書いてある。
手紙でのやり取りだけであったが、エリザベスは裏表のなさそうな性格のようだ。私が今も彼女を想い続けていることを許されたような気がして、心が軽くなったような気がする。
エリザベスとは国を支えるためのパートナーとして、上手くやっていけそうな気がした。
それは、その年のデビュタントの夜会での出来事…。
普通の貴族の子女なら、夜会は16歳になる年のデビュタントを迎えてからなのだが、この国の王太子である私は、12歳の頃から国王と王妃である両親と共に、王族主催の夜会に出席するようになっていた。
14歳の私が一目惚れをしたのは、その年にデビュタントを迎えた伯爵家の令嬢だった。
デビュタントを迎えた者は、国王と王妃に1人ずつ挨拶をすることになっている。
王太子として、国王のすぐ隣でその様子を見ていた私は、美しいプラチナブロンドの髪に、大きな紫色の瞳を持つ色白の美少女が挨拶に来た時に、目を奪われてしまった。
優雅な所作で完璧なカーテシーをし、鈴の鳴るような美しい声で挨拶をする令嬢だった。
その後も彼女から目を離せず、彼女がダンスをする姿にも見入ってしまう程だったと思う。
そんな私は、後日、親戚でもあり私の兄のような存在のアンブリッジ公爵子息から、聞きたくない話を聞かされるのである。
「殿下。この前のデビュタントで、私がシャノン伯爵令嬢とダンスを踊っているところを恐ろしい目つきで見ていたが、彼女は私の大切な後輩で、別に婚約者がいるのだから、私に嫉妬しないでくれ。
まさか殿下が年上の令嬢が好きだったとは思わなかったな…。」
この男にバレてしまったのは失敗だった。
それよりも、シャノン伯爵令嬢には婚約者がいるのか…。
こんなにも胸がズキズキするということは、私は彼女に恋をしていたのか?こんな胸の痛みは初めてだ。
王太子という立場の私は、いずれ国の為の婚姻をしなければならないのだから、恋なんてしてはいけないことは知っている。
彼女に婚約者がいるということをこのタイミングで知ることが出来たのは、私は本気の恋をしてはいけないという神からの警告なのかも知れない。
彼女のことは忘れよう。今ならまだ間に合う。
しかし、その後の夜会でも私は、気づくと彼女を目で追っていた。
王太子という立場で育ってきた私は、感情がバレないように表情にはそのことを出していなかったのだが、両親にはしっかりバレていたようだ。
16歳になる年を迎えた私は、貴族学園に入学した。
学園で私は、すぐに生徒会に入ることになったのだが、生徒会には彼女も所属しており、彼女の後輩として過ごしていくことに胸が高鳴る。
先輩として生徒会の仕事を教えてくれたり、仕事の合間にお茶を淹れてくれたり、彼女と一緒に過ごす時間はとても素晴らしいものであった。
気がつくと、彼女への想いはどんどん大きくなり、後戻りが出来ないくらいになっていた。
彼女は、卒業したら私の手の届かない場所へ行ってしまう。私以外の男のモノになってしまうのだ。
だから、今だけは彼女と過ごす時間を大切にしたい。
私が彼女に話しかけることや、ダンスに誘うこと、お茶を淹れてもらうこと…、彼女に関わりを求めることを、今だけはどうか許して欲しい。
私のそんな行動を敏感に察した令嬢が何人かいた。私の妃を狙う、傲慢で権力にしか興味のない女狐どもだ。
彼女に絡んだりする姿を何度か見ているし、放っておくと危害を加えそうだと判断した私は、女狐どもを学園から消すことにした。
元々、評判の良くない令嬢達だったので、女狐どもが爵位が下の者達を虐めていたり、テストで不正をしていた情報などがすぐに集まり、女狐どもは退学して学園から去っていった。
私は彼女に害をなす者を徹底的に排除することに決めた。
そんな日々を送っていた私のところに、政略結婚の話がくる。
相手は小国ながらも、有り余るほどの資源を有すると言われる、大金持ちのモンサンミ国の王女。
小国で資源国でもあり、周りの国から狙われやすいことから、軍事大国である我が国と同盟を結びたいようだ。そのかわり、資源が乏しい我が国に格安で資源を供給してくれるという。
更に、王女は生まれつき体が弱く、出産は難しいので白い結婚にして欲しいことと、側妃を持って良いが、王女のことは家族として大切にして欲しいことをモンサンミ国は希望しているらしい。
軍事大国とはいえ、資源には乏しい我が国としてはかなりの好条件の縁談であり、両親も家臣達もこの結婚にはかなり乗り気のようだ。
私自身も、ずっと好きだった彼女への想いを捨てきれずにいたので、白い結婚でよいなら何の問題もないと考え、この縁談を受けることに決めたのである。
婚約期間中、モンサンミ国の王女、エリザベスとは手紙のやり取りを続けていた。
どうやらエリザベスには愛する人がいるらしく、〝殿下は別に愛する人とお世継ぎを作って欲しい〟とか〝私の幼馴染を情夫として認めて欲しい〟とか書いてある。
手紙でのやり取りだけであったが、エリザベスは裏表のなさそうな性格のようだ。私が今も彼女を想い続けていることを許されたような気がして、心が軽くなったような気がする。
エリザベスとは国を支えるためのパートナーとして、上手くやっていけそうな気がした。
347
あなたにおすすめの小説
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login
結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください
シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。
国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。
溺愛する女性がいるとの噂も!
それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。
それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから!
そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー
最後まで書きあがっていますので、随時更新します。
表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろう、ベリーズカフェにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
あなたの言うことが、すべて正しかったです
Mag_Mel
恋愛
「私に愛されるなどと勘違いしないでもらいたい。なにせ君は……そうだな。在庫処分間近の見切り品、というやつなのだから」
名ばかりの政略結婚の初夜、リディアは夫ナーシェン・トラヴィスにそう言い放たれた。しかも彼が愛しているのは、まだ十一歳の少女。彼女が成人する五年後には離縁するつもりだと、当然のように言い放たれる。
絶望と屈辱の中、病に倒れたことをきっかけにリディアは目を覚ます。放漫経営で傾いたトラヴィス商会の惨状を知り、持ち前の商才で立て直しに挑んだのだ。執事長ベネディクトの力を借りた彼女はやがて商会を支える柱となる。
そして、運命の五年後。
リディアに離縁を突きつけられたナーシェンは――かつて自らが吐いた「見切り品」という言葉に相応しい、哀れな姿となっていた。
*小説家になろうでも投稿中です
奪われる人生とはお別れします 婚約破棄の後は幸せな日々が待っていました
水空 葵
恋愛
婚約者だった王太子殿下は、最近聖女様にかかりっきりで私には見向きもしない。
それなのに妃教育と称して仕事を押し付けてくる。
しまいには建国パーティーの時に婚約解消を突き付けられてしまった。
王太子殿下、それから私の両親。今まで尽くしてきたのに、裏切るなんて許せません。
でも、これ以上奪われるのは嫌なので、さっさとお別れしましょう。
◇2024/2/5 HOTランキング1位に掲載されました。
◇第17回 恋愛小説大賞で6位&奨励賞を頂きました。
◇レジーナブックスより書籍発売中です!
本当にありがとうございます!
悪女役らしく離婚を迫ろうとしたのに、夫の反応がおかしい
廻り
恋愛
第18回恋愛小説大賞にて奨励賞をいただきました。応援してくださりありがとうございました!
王太子妃シャルロット20歳は、前世の記憶が蘇る。
ここは小説の世界で、シャルロットは王太子とヒロインの恋路を邪魔する『悪女役』。
『断罪される運命』から逃れたいが、夫は離婚に応じる気がない。
ならばと、シャルロットは別居を始める。
『夫が離婚に応じたくなる計画』を思いついたシャルロットは、それを実行することに。
夫がヒロインと出会うまで、タイムリミットは一年。
それまでに離婚に応じさせたいシャルロットと、なぜか様子がおかしい夫の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる