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34 アンの婚約者
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久しぶりにアンと休みが合った日、マリアはアンと二人でレストランに来ていた。
「アンさんの婚約者はもうすぐ来るんですよね?
どんな人なのか楽しみです!」
「特別カッコいいわけじゃないよ。マリアは公爵家の護衛騎士達をいつも近くで見てるでしょ? そいつらと比べたら残念に感じるかもしれないね。
でも、家族思いの優しいヤツなんだ」
アンは数年付き合っていた恋人と正式に婚約して、半年後に結婚することが決まった。今日はその婚約者をマリアに紹介してくれることになり、二人で彼が来るのを待っているのだ。
「確かに、公爵家の護衛騎士達はみんな美形で整ってますよね……
でも、私は美形の騎士は苦手なんです。優しい人が一番ですよ。アンさんが羨ましいです」
美形の騎士に裏切られた過去のあるマリアは、公爵家の騎士達に対しても警戒してしまう。彼らはエリート集団で平民の女性から人気だと聞くが、マリアは全く惹かれなかった。仕事の合間に積極的に話しかけてきたり、街中で偶然会うとお茶に誘おうとしてきたり、何だか軽く見える。親切にしてくれる時もあるが何か裏がありそうで苦手だった。
「騎士に軽いヤツは多いけど、いいヤツもいるんだけど。そこまで騎士が苦手になるほど、マリアの元恋人はよっぽど酷いヤツだったんだね」
「元恋人のことは、もう吹っ切れているので大丈夫です。
あの時は辛かったですが、いい社会勉強になったと思っています。それに、フラれたことがきっかけでお嬢様に出会い、公爵家で働かせてもらえることになったので、今はそれほど恨んではいません」
「それならいいけど、素敵な人に出会えたら新しい恋をしてもいいと思うよ。せっかく綺麗になったんだ。もっと人生を楽しんだ方がいいよ」
「いい出会いがあれば考えたいと思います」
とは言ったものの、いい出会いなんて滅多にないことをマリアは知っていた。今はこうやってアンと話をしたり一人で出かけたりすることが楽しいから、別にいいやと思っている。
アンと話し込んでいると、婚約者の彼がやってきた。
「マリア、私の婚約者のクリフだ。騎士団の食堂で働いているんだよ」
「クリフです。よろしく!
君がマリアさんだね。アンから可愛い後輩がいるってよく話を聞いていたんだよ」
アンの婚約者はとてもガタイがよく、食堂で働いているというより騎士や傭兵のようだった。でも、ニコニコして愛嬌があり、こんな人と結婚したら家の中が明るくなりそうだと思えるような雰囲気の人だった。
「マリアです。アンさんにはいつもお世話になっております。
ご婚約、おめでとうございます。結婚式が今から楽しみですね」
クリフは話の面白い人で楽しい食事会になった。日が暮れてきたのでそろそろ帰ろうということになり、三人で歩いていると突然声を掛けられる。
「あれ、クリフじゃないか?」
「あー、ヘクターか。今日は休みか?」
会話の内容から、二人は職場の同僚のようだった。二人は親しげに話し込んでいたので、アンとマリアは初対面の彼に挨拶をして先に帰ることにした。
その夜……
「アンさんの婚約者の方は素敵だと思います。
幸せになって下さいね」
「マリアにそう言って貰えて嬉しい。アンタも早く良い人見つけなよー!」
その日は幸せな気分で眠りにつき、翌日からまた仕事を頑張る。仕事に慣れて楽しくなってからは一日が過ぎるのが早い。
そして数日後、また休日がやってきた。その日は、いつものように図書館に行き一人で読書をしていた。最近のマリアは、ドロドロした恋愛小説を読むのにハマっている。
こんな本は田舎じゃ読めないわ。王都は本当に楽しい!
図書館の帰りにお茶をして、店を出て歩いていると……
「マリアさん?」
名前を呼ばれて振り返ると、そこにはクリフの知り合いのヘクターがいた。
しかしヘクターの服装を見たマリアはビクッとしてしまう。なぜなら、ヘクターは王都騎士団の制服を着て仲間の騎士達といたからだ。
「……こんにちは」
「こんにちは。マリアさん、今日はお休みですか?」
クリフさんがヘクターさんを騎士団で働く同僚だって紹介してくれたけど、まさかテッドと同じ王都騎士団だったなんて……
騎士団は王都に沢山あるから、他の騎士団だと思っていたのに。
テッドにフラれた時、王都騎士団の目の前で泣いて大騒ぎをした前科のあるマリアは、王都騎士団の関係者に関わりたくなかった。あの恥ずかしかった自分を見ていた人や、マリアの顔を覚えている人がいるかもしれないから、街中で騎士を見ても近付かず、避けて歩くようにしていたのだ。
笑顔で話しかけてくれたヘクターさんには悪いけど、ここは早く話を切り上げて、急いでここから離れよう。
「今日はお休みで、図書館に行ってきました。
ヘクターさんのお仕事の邪魔になってしまうので私はこれで……」
マリアは笑顔でその場を離れようとするが、ヘクターはお構いなしに話を続ける。
「そうでしたか。最近、若い女性を狙った事件があったので、マリアさんも気を付けて下さいね。美しい人は歩いているだけで目立ちますから。
あ、もうすぐ勤務交代の時間なので、よろしければ僕が公爵家まで送りますよ」
余計なことはしなくていいわよ! でも、アンさんの婚約者の同僚を雑に扱えないし……
「もしかして……、マリアか?」
その時、クリフの後ろにいた騎士達の中から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
その声を聞いたマリアは、最悪な気持ちになるのであった。
「アンさんの婚約者はもうすぐ来るんですよね?
どんな人なのか楽しみです!」
「特別カッコいいわけじゃないよ。マリアは公爵家の護衛騎士達をいつも近くで見てるでしょ? そいつらと比べたら残念に感じるかもしれないね。
でも、家族思いの優しいヤツなんだ」
アンは数年付き合っていた恋人と正式に婚約して、半年後に結婚することが決まった。今日はその婚約者をマリアに紹介してくれることになり、二人で彼が来るのを待っているのだ。
「確かに、公爵家の護衛騎士達はみんな美形で整ってますよね……
でも、私は美形の騎士は苦手なんです。優しい人が一番ですよ。アンさんが羨ましいです」
美形の騎士に裏切られた過去のあるマリアは、公爵家の騎士達に対しても警戒してしまう。彼らはエリート集団で平民の女性から人気だと聞くが、マリアは全く惹かれなかった。仕事の合間に積極的に話しかけてきたり、街中で偶然会うとお茶に誘おうとしてきたり、何だか軽く見える。親切にしてくれる時もあるが何か裏がありそうで苦手だった。
「騎士に軽いヤツは多いけど、いいヤツもいるんだけど。そこまで騎士が苦手になるほど、マリアの元恋人はよっぽど酷いヤツだったんだね」
「元恋人のことは、もう吹っ切れているので大丈夫です。
あの時は辛かったですが、いい社会勉強になったと思っています。それに、フラれたことがきっかけでお嬢様に出会い、公爵家で働かせてもらえることになったので、今はそれほど恨んではいません」
「それならいいけど、素敵な人に出会えたら新しい恋をしてもいいと思うよ。せっかく綺麗になったんだ。もっと人生を楽しんだ方がいいよ」
「いい出会いがあれば考えたいと思います」
とは言ったものの、いい出会いなんて滅多にないことをマリアは知っていた。今はこうやってアンと話をしたり一人で出かけたりすることが楽しいから、別にいいやと思っている。
アンと話し込んでいると、婚約者の彼がやってきた。
「マリア、私の婚約者のクリフだ。騎士団の食堂で働いているんだよ」
「クリフです。よろしく!
君がマリアさんだね。アンから可愛い後輩がいるってよく話を聞いていたんだよ」
アンの婚約者はとてもガタイがよく、食堂で働いているというより騎士や傭兵のようだった。でも、ニコニコして愛嬌があり、こんな人と結婚したら家の中が明るくなりそうだと思えるような雰囲気の人だった。
「マリアです。アンさんにはいつもお世話になっております。
ご婚約、おめでとうございます。結婚式が今から楽しみですね」
クリフは話の面白い人で楽しい食事会になった。日が暮れてきたのでそろそろ帰ろうということになり、三人で歩いていると突然声を掛けられる。
「あれ、クリフじゃないか?」
「あー、ヘクターか。今日は休みか?」
会話の内容から、二人は職場の同僚のようだった。二人は親しげに話し込んでいたので、アンとマリアは初対面の彼に挨拶をして先に帰ることにした。
その夜……
「アンさんの婚約者の方は素敵だと思います。
幸せになって下さいね」
「マリアにそう言って貰えて嬉しい。アンタも早く良い人見つけなよー!」
その日は幸せな気分で眠りにつき、翌日からまた仕事を頑張る。仕事に慣れて楽しくなってからは一日が過ぎるのが早い。
そして数日後、また休日がやってきた。その日は、いつものように図書館に行き一人で読書をしていた。最近のマリアは、ドロドロした恋愛小説を読むのにハマっている。
こんな本は田舎じゃ読めないわ。王都は本当に楽しい!
図書館の帰りにお茶をして、店を出て歩いていると……
「マリアさん?」
名前を呼ばれて振り返ると、そこにはクリフの知り合いのヘクターがいた。
しかしヘクターの服装を見たマリアはビクッとしてしまう。なぜなら、ヘクターは王都騎士団の制服を着て仲間の騎士達といたからだ。
「……こんにちは」
「こんにちは。マリアさん、今日はお休みですか?」
クリフさんがヘクターさんを騎士団で働く同僚だって紹介してくれたけど、まさかテッドと同じ王都騎士団だったなんて……
騎士団は王都に沢山あるから、他の騎士団だと思っていたのに。
テッドにフラれた時、王都騎士団の目の前で泣いて大騒ぎをした前科のあるマリアは、王都騎士団の関係者に関わりたくなかった。あの恥ずかしかった自分を見ていた人や、マリアの顔を覚えている人がいるかもしれないから、街中で騎士を見ても近付かず、避けて歩くようにしていたのだ。
笑顔で話しかけてくれたヘクターさんには悪いけど、ここは早く話を切り上げて、急いでここから離れよう。
「今日はお休みで、図書館に行ってきました。
ヘクターさんのお仕事の邪魔になってしまうので私はこれで……」
マリアは笑顔でその場を離れようとするが、ヘクターはお構いなしに話を続ける。
「そうでしたか。最近、若い女性を狙った事件があったので、マリアさんも気を付けて下さいね。美しい人は歩いているだけで目立ちますから。
あ、もうすぐ勤務交代の時間なので、よろしければ僕が公爵家まで送りますよ」
余計なことはしなくていいわよ! でも、アンさんの婚約者の同僚を雑に扱えないし……
「もしかして……、マリアか?」
その時、クリフの後ろにいた騎士達の中から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
その声を聞いたマリアは、最悪な気持ちになるのであった。
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