婚約者と義妹に裏切られたので、ざまぁして逃げてみた

せいめ

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04 私の家族と義妹

 淡藤色の髪に水色のぱっちりの瞳。小柄で守ってあげたくなるような雰囲気を持つ美少女。これが、私の義妹のリリアンだ。

 リリアンは、父の再婚相手である元男爵夫人であった義母の連れ子で、私や兄とは血が繋がっていない。
 私の産みの母は、私が十歳の時に病気で亡くなった。母を深く愛していた父は再婚する気はなかったのだが、まだ三十代で資産を沢山持つ伯爵家の当主である父の元には後妻狙いの女性が群がり、面倒になった父は形だけの妻を迎えることにしたらしい。
 義母を迎える前に父から言われた言葉は、今でもはっきりと覚えている。

『私の後妻になろうと夜会で纏わりついてきたり、飲み物に媚薬を盛ったりする女狐が沢山いて困っていたから、妻を迎えることにした。
 その人は元男爵夫人で、女遊びの酷い元夫に捨てられたらしい。貧しい実家に戻されて生活に困っていたようで、自分と娘の生活の保障をしてくれれば形だけの妻になってもいいと言ってくれている。
 私が亡くなった妻だけを愛していることに理解を示してくれているし、真面目で慎ましい性格らしいから、デリック(私の兄)やフローラに害は無いはずだ』と。
 
 後妻としてやってきた義母は、控えめながらも良い人だった。私や兄に辛く当たることはないし、慣れない伯爵家の女夫人としての仕事も必死に覚えてしっかりこなしていたと思う。
 しかし、父と義母の関係は雇用主と従業員のようだった。邸で二人が一緒に過ごすところを見たことはないし、食事で家族が一緒にいる時ですら、最低限の会話だけだった。父は亡くなった母にしか興味を持てない人だったのだ。

 そんな父は、母に似ている私や兄のことを可愛がってくれてはいたが、それは表面的なものだったように思う。そんな父に嫌気がさしたのか、兄は学園を卒業すると爵位を引き継ぐまでは近衛騎士の仕事がしたいと言って、騎士団の寮に引っ越してしまった。
 私だけが邸に取り残されて寂しい気がしたが、義母はそんな私を気遣ってくれたし、亡き母の両親である祖父母や、母の姉である伯母が定期的に会いに来てくれたりしたので、特に困ることはなかった。

 困ったことと言えば、義妹のリリアンのことだった。
 リリアンは私の一つ年下で、男爵家では自由に生活をしていたらしく、なかなか伯爵家に馴染めていないように見えた。
 勉強をサボったり、伯爵令嬢としてのマナーも覚えようとはせず、家庭教師の先生方を困らせていた。義母が言うにはリリアンは実の父である男爵によく似ているらしい。
 そんなリリアンに父は興味すら示さず、怒ることも褒めることもしないで、ただ傍観しているだけだった。

 リリアンは私に対して、初めから敵意を剥き出しにしていた。義母と私が普通に仲良くなったことが面白くなかったのか、私に対して反抗的な態度をとるようになる。
 家族の一人として彼女と仲良くなりたいと思っていたが、私を嫌う態度をとり続けるリリアンとの距離を縮めることは難しく、私は仲良くなることを諦めた。
 そんなリリアンは、学園に入ってからも度々問題を起こして、義母がよく学園から呼び出しを受けていた。


 そして今、私の部屋にはそのリリアンが来ている。
 彼女の方から私の部屋に来たのは、私の記憶が確かなら初めてのことだと思う。

「お姉様。ずっと臥せっていたと聞いたので、心配で来てしまいましたわ。
 ……本当に具合が悪そうですわね。顔色は良くないし、お肌が荒れてますわ。そんな顔になってしまったから、レイモンド様が来られてもお会いにならないのかしら?
 せっかく毎日来て下さっているのに、レイモンド様がお可哀想だわ……」

 リリアンは私が心配で来てくれたのではなく、恋敵である私の偵察に来たようだった。
 しかも、私の前でも遠慮なく〝レイモンド様〟と名前で呼ぶなんて……
 私に対して、こうやって遠慮なく辛辣な態度を取るのがリリアンなのだ。
 しかし、異性の前ではころっと態度を変えて可愛らしく振る舞うから、そんなリリアンに騙される殿方は多いらしく、本性を知る一部の令嬢方からはとても嫌われているらしい。
 だけど、レイ様までこの女に騙されてしまうなんて、本当にショックだった。

「嫌味を言いに来たのなら早く出て行ってくれる? 見ての通り、本当に具合が悪いの」

「酷いわぁ。私はお姉様が心配で来てあげたのに。そんな性格だと、レイモンド様に嫌われてしまいますわよ」

「あら、リリアンはいつ〝レイモンド様〟と名前で呼ぶ許可を得たのかしら?
 貴女のそういうところが淑女としてダメだと言われるのよ。気をつけなさい」

「私のことより、自分のことを心配した方がいいと思いますわ。
 ふふっ……。お義姉様、お大事に」

 私に挑戦的な視線を向け、クスッと笑った後、リリアンは私の部屋から出て行った。
 しかしリリアンからの接触はこれで終わりではなく、私に対して更に節度のない振る舞いをしてくるようになる。
 

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