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二度目の話
婚約なんてしない
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ある日の夕方。学園から帰ってきたお義兄様とお茶をしていると、お義兄様と一緒にお父様から呼ばれる。
お父様の執務室にはお母様もいた。
…ということは、何か重要な話ね。
「アナ。先程だが、ブレア公爵家の使者が、手紙を届けに来た。」
使者ですって?わざわざ使者が届けるほどの重要な手紙ってことは…
バクバクと嫌な動悸がする。
「ブレア公爵家からアナに婚約を申し込みたいそうだ。」
私…、また毒殺されるの?死にたくないのに!
絶望で体から力が抜けそうになる…
「アナ、顔色が悪い。大丈夫か?」
「お、お義兄様…、大丈夫ですわ。」
隣に座るお義兄様が私の手を握ってくれている。
「義父上。大抵の貴族は、学園に入ってから婚約者を探しますよね?
アナはまだ入学してないですし、14歳です。私の友人の令嬢方も、婚約者が決まっていない人が多いですよ。
婚約の打診が随分と早いと思いますが。」
確かに、この国の結婚適齢期は女性だと20代前半くらいで、10代後半くらいに婚約者を探すのが一般的だ。
王族でもない私が、この年齢で婚約者を決めるのは少し早いと思う。
一度目の時は相手が殿下だったから、15歳で婚約者になり18歳で婚約解消したのよ。
婚約解消した日の夜には、あの男との王命での婚約の話をされて、数日後には婚約を結び、一ヶ月後には婚約式をして、婚約式の三ヶ月後には結婚したんだったわ。
更にその約一ヵ月後には愛人の存在が発覚し、そのまた二ヵ月後には離縁して、毒で死んだのよ。
今考えても本当に波瀾万丈だったわ…
一度目の私、よく頑張ったわね。
今更だけど、王命で結婚させられたブレア公爵令息も被害者といえば被害者…
でも、やはりあの男は許せないわ!また婚約するなんて有り得ない。
ワナワナと怒りが込み上げてきた。
「ブレア公爵家では、アナが来年留学するという噂を聞いて、留学前に婚約しておきたいという考えに至ったらしい。」
学園で関わりたくないからと、わざわざ留学までして海外逃亡することに決めたのに、そのせいで今婚約を申し込んできたの?
あり得ないわ!
「お父様、断って下さい!!」
目の前が真っ暗になりそうになるけど、気をしっかり持たないとダメね。
毒殺されちゃうから、全力で拒否よ。
「ブレア公爵家の使者には、アナでは公爵夫人は務まらないことと、本人も望んでいないということをはっきりと伝えておいた。」
「お父様!ありがとうございます。」
私との約束を守ってくれたのね!
「だが…、ブレア公爵家としては、婚約を断る前に、令息を知って欲しいと言っていた。
まだお互いのことをよく知らないだろうから、二人で交流して、まずは友人になってくれたら嬉しいと言われたよ。」
私をよく知りもしないで婚約を申し込んできたくせに、よく言うわ!
「義父上。二人で交流し、それでも無理だと判断した場合、この縁談は断ってもいいとブレア公爵家が言っているのですか?」
「ああ。その時は仕方がないので諦めるそうだ。」
「しかし、二人で交流していることが他の貴族にバレたら、アナと公爵令息が婚約したと思われてしまうでしょう。
アナが来年留学するとすでに噂になっているくらいですから、留学前に慌てて婚約したのだろうと、要らぬ憶測を呼ぶことになると思います。
それにおっちょこちょいなアナは、ブレア公爵家から簡単に外堀を埋められてしまうでしょうね。
私は二人が交流することには反対です。」
お義兄様は冷静に分析してくれている。
「もし二人で交流したとして、うっかり私が嫌われてしまったら、婚約の話はなかったことになるのでしょうか?」
「アナ!家名に傷をつけることは許さないわよ!」
「お母様、例えばの話ですわよ。」
ブレア公爵家は怒らせたら怖そうだから、変なことが出来ないのは分かっているのよ。
「ブレア公爵令息は、ご令嬢方に人気の令息らしいのに、アナは何が嫌なのかしら?
お母様は、アナが嫌がるならお断りをするのは仕方がないとは思っているのだけど、ブレア公爵令息よりもステキな人は、なかなかいないと思うわよ。」
「お母様。ブレア公爵令息は素敵すぎるからこそ、心配なのですわ。
ああいう方は女性が放っておかないでしょうから、私は浮気や不倫が不安なのです。
器用そうな方ですから、隠れて愛人を囲うかもしれませんわ。
それにブレア公爵令息でしたら、私よりも素敵で完璧な方との縁談が望めるはずです。なぜ私なんかに婚約を申し込むのか、疑問でしかありませんわね。」
みんなあの男の身分と見た目に騙され過ぎよ!
私はあの男にはもう騙されない。
絶対に婚約なんてしない!
お父様の執務室にはお母様もいた。
…ということは、何か重要な話ね。
「アナ。先程だが、ブレア公爵家の使者が、手紙を届けに来た。」
使者ですって?わざわざ使者が届けるほどの重要な手紙ってことは…
バクバクと嫌な動悸がする。
「ブレア公爵家からアナに婚約を申し込みたいそうだ。」
私…、また毒殺されるの?死にたくないのに!
絶望で体から力が抜けそうになる…
「アナ、顔色が悪い。大丈夫か?」
「お、お義兄様…、大丈夫ですわ。」
隣に座るお義兄様が私の手を握ってくれている。
「義父上。大抵の貴族は、学園に入ってから婚約者を探しますよね?
アナはまだ入学してないですし、14歳です。私の友人の令嬢方も、婚約者が決まっていない人が多いですよ。
婚約の打診が随分と早いと思いますが。」
確かに、この国の結婚適齢期は女性だと20代前半くらいで、10代後半くらいに婚約者を探すのが一般的だ。
王族でもない私が、この年齢で婚約者を決めるのは少し早いと思う。
一度目の時は相手が殿下だったから、15歳で婚約者になり18歳で婚約解消したのよ。
婚約解消した日の夜には、あの男との王命での婚約の話をされて、数日後には婚約を結び、一ヶ月後には婚約式をして、婚約式の三ヶ月後には結婚したんだったわ。
更にその約一ヵ月後には愛人の存在が発覚し、そのまた二ヵ月後には離縁して、毒で死んだのよ。
今考えても本当に波瀾万丈だったわ…
一度目の私、よく頑張ったわね。
今更だけど、王命で結婚させられたブレア公爵令息も被害者といえば被害者…
でも、やはりあの男は許せないわ!また婚約するなんて有り得ない。
ワナワナと怒りが込み上げてきた。
「ブレア公爵家では、アナが来年留学するという噂を聞いて、留学前に婚約しておきたいという考えに至ったらしい。」
学園で関わりたくないからと、わざわざ留学までして海外逃亡することに決めたのに、そのせいで今婚約を申し込んできたの?
あり得ないわ!
「お父様、断って下さい!!」
目の前が真っ暗になりそうになるけど、気をしっかり持たないとダメね。
毒殺されちゃうから、全力で拒否よ。
「ブレア公爵家の使者には、アナでは公爵夫人は務まらないことと、本人も望んでいないということをはっきりと伝えておいた。」
「お父様!ありがとうございます。」
私との約束を守ってくれたのね!
「だが…、ブレア公爵家としては、婚約を断る前に、令息を知って欲しいと言っていた。
まだお互いのことをよく知らないだろうから、二人で交流して、まずは友人になってくれたら嬉しいと言われたよ。」
私をよく知りもしないで婚約を申し込んできたくせに、よく言うわ!
「義父上。二人で交流し、それでも無理だと判断した場合、この縁談は断ってもいいとブレア公爵家が言っているのですか?」
「ああ。その時は仕方がないので諦めるそうだ。」
「しかし、二人で交流していることが他の貴族にバレたら、アナと公爵令息が婚約したと思われてしまうでしょう。
アナが来年留学するとすでに噂になっているくらいですから、留学前に慌てて婚約したのだろうと、要らぬ憶測を呼ぶことになると思います。
それにおっちょこちょいなアナは、ブレア公爵家から簡単に外堀を埋められてしまうでしょうね。
私は二人が交流することには反対です。」
お義兄様は冷静に分析してくれている。
「もし二人で交流したとして、うっかり私が嫌われてしまったら、婚約の話はなかったことになるのでしょうか?」
「アナ!家名に傷をつけることは許さないわよ!」
「お母様、例えばの話ですわよ。」
ブレア公爵家は怒らせたら怖そうだから、変なことが出来ないのは分かっているのよ。
「ブレア公爵令息は、ご令嬢方に人気の令息らしいのに、アナは何が嫌なのかしら?
お母様は、アナが嫌がるならお断りをするのは仕方がないとは思っているのだけど、ブレア公爵令息よりもステキな人は、なかなかいないと思うわよ。」
「お母様。ブレア公爵令息は素敵すぎるからこそ、心配なのですわ。
ああいう方は女性が放っておかないでしょうから、私は浮気や不倫が不安なのです。
器用そうな方ですから、隠れて愛人を囲うかもしれませんわ。
それにブレア公爵令息でしたら、私よりも素敵で完璧な方との縁談が望めるはずです。なぜ私なんかに婚約を申し込むのか、疑問でしかありませんわね。」
みんなあの男の身分と見た目に騙され過ぎよ!
私はあの男にはもう騙されない。
絶対に婚約なんてしない!
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