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二度目の話
マカロン
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フルーツタルトもチーズケーキもマカロンも私が好きなスイーツだ。
その中でもマカロンは色々な種類があるのに、私が一番好きなチョコレートのマカロンを選ぶなんて…
あえてそのスイーツを選んでくれているということは、ブレア公爵令息は、自分が一度目の記憶を持っていることを隠すつもりはないということ。
そして、私がそのことに気付くのかを確かめようとしている…?
「ありがとうございます。
どのスイーツも私の好きな物ばかりですわ。」
ブレア公爵令息は、取り分けてくれたスイーツを私が好きだと伝えるとホッとしたように笑う。
「それは良かった。うちの料理人達は、スイーツを作るのが得意なんだ。ぜひ食べてみてくれ。」
一度目の時の婚約期間中にも、そんなことを言われたことを思い出した。
『シア。うちの料理人達は、スイーツを作るのが得意なんだ。
君が好きなスイーツがあれば、何でも作りたいと今から張り切っているよ。』
ここに来ると余計なことを沢山思い出してしまう。
…違う!今日は辛い過去を思い出すためだけにここに来たのではないのよ。
おっちょこちょいだけど、今だけはしっかりしないと!
「コールマン侯爵令嬢…?」
無言でスイーツを見つめる私を、不思議そうに見るブレア公爵令息。
「申し訳ありません。
やはりここでの食べ物は、体が受け付けてくれないようです。
ブレア様…、その意味が分かりますよね…?」
「………。」
私のその言葉に、ブレア公爵令息から一瞬にして表情が無くなる。
一瞬の沈黙の後、ブレア公爵令息は近くに控えていたメイド達に合図を送り、メイド達を下がらせてしまった。
どうやら人払いするらしい。
「シア…。やはり君は記憶があるのだな?」
「はい。」
「ずっと君に逢いたかった…。
君に記憶があろうと無かろうと、私は君に逢いたくて仕方がなかった。」
ブレア公爵令息が潤ませた目で私を見つめる。まるで何かを懇望するかのような目…
普段は全く感情の読めないブレア公爵令息が、こんな表情をすることに驚く私。
「今更私に逢いたいなど、ブレア様の目的は何なのでしょうか…?」
「今更…か。
愛する人に逢いたいと思うのは当然だろう?」
愛する人…?
この方は一体誰のことを言っているのかしら。
「君は、私が何を言っているのか分からないと言ったような顔をしているな。
私は……、あの時からずっとシアを愛していた。
殿下と君が婚約する前から、私はずっと君だけを見ていた。
君とあんな別れ方をした後もずっと…。時間が巻き戻った後も、シアを忘れたことなんてなかった。」
愛していた…?
ますます意味が分からない。
「それを信じろと…?
あの時、王太子殿下に婚約解消された私を、貴方は王命によって押し付けられて結婚しただけでしたわ。」
「それは違う!」
何が違うというの…?
殿下の元婚約者の私を早く片付けたいからと、私達の気持ちなどお構いなしに、あんな風に急いで結婚させられたのに。
「だから今世では、絶対に殿下と婚約しないようにと決めました。ブレア様とも関わらないようにと気をつけて生活してきました。
もうあの時のような不幸な結婚はしたくないという強い思いで、何とかここまでやってきましたのよ。
色々ありましたが、殿下の婚約候補を辞退することが出来ましたし、これでやっと私は、一度目とは違った人生を送れるのだと安心していたところなのです。
それなのに、ブレア様は私に関わろうとする…。
貴方の目的は何なのでしょうか?」
私はここまで冷たい声が出るのね…
今更何を伝えられても遅い。
あの時の私は、貴方への気持ちも…、私自身も全て死んだのだから。
「……シア。私は君をずっと愛していた。
殿下と君が婚約解消されると聞いて、シアと婚約させて欲しいと私から頼んだ。そんな私に気を利かせてくれた陛下が、王命ということにしてくれただけなんだ。
他の誰にも君を奪われたくなくて、早く君を自分のものにしたいと考えた私は、君との結婚も早く進めた。
私があの時に、シアに自分の気持ちを正直に伝えなかったから悪い。
ただ、王命によって押し付けられて結婚したのではなく、私がシアを強く望んで結婚したということは分かって欲しいのだ。」
「今更そんなことを言われても遅いのです。
私はあの時に死んだのですから…」
「私が悪かった。
君を幸せにしたいと思っていたのに、結果的に君を不幸にしてしまった。
シア…、すまない。」
頬を涙が伝ってくるのが分かった…
その中でもマカロンは色々な種類があるのに、私が一番好きなチョコレートのマカロンを選ぶなんて…
あえてそのスイーツを選んでくれているということは、ブレア公爵令息は、自分が一度目の記憶を持っていることを隠すつもりはないということ。
そして、私がそのことに気付くのかを確かめようとしている…?
「ありがとうございます。
どのスイーツも私の好きな物ばかりですわ。」
ブレア公爵令息は、取り分けてくれたスイーツを私が好きだと伝えるとホッとしたように笑う。
「それは良かった。うちの料理人達は、スイーツを作るのが得意なんだ。ぜひ食べてみてくれ。」
一度目の時の婚約期間中にも、そんなことを言われたことを思い出した。
『シア。うちの料理人達は、スイーツを作るのが得意なんだ。
君が好きなスイーツがあれば、何でも作りたいと今から張り切っているよ。』
ここに来ると余計なことを沢山思い出してしまう。
…違う!今日は辛い過去を思い出すためだけにここに来たのではないのよ。
おっちょこちょいだけど、今だけはしっかりしないと!
「コールマン侯爵令嬢…?」
無言でスイーツを見つめる私を、不思議そうに見るブレア公爵令息。
「申し訳ありません。
やはりここでの食べ物は、体が受け付けてくれないようです。
ブレア様…、その意味が分かりますよね…?」
「………。」
私のその言葉に、ブレア公爵令息から一瞬にして表情が無くなる。
一瞬の沈黙の後、ブレア公爵令息は近くに控えていたメイド達に合図を送り、メイド達を下がらせてしまった。
どうやら人払いするらしい。
「シア…。やはり君は記憶があるのだな?」
「はい。」
「ずっと君に逢いたかった…。
君に記憶があろうと無かろうと、私は君に逢いたくて仕方がなかった。」
ブレア公爵令息が潤ませた目で私を見つめる。まるで何かを懇望するかのような目…
普段は全く感情の読めないブレア公爵令息が、こんな表情をすることに驚く私。
「今更私に逢いたいなど、ブレア様の目的は何なのでしょうか…?」
「今更…か。
愛する人に逢いたいと思うのは当然だろう?」
愛する人…?
この方は一体誰のことを言っているのかしら。
「君は、私が何を言っているのか分からないと言ったような顔をしているな。
私は……、あの時からずっとシアを愛していた。
殿下と君が婚約する前から、私はずっと君だけを見ていた。
君とあんな別れ方をした後もずっと…。時間が巻き戻った後も、シアを忘れたことなんてなかった。」
愛していた…?
ますます意味が分からない。
「それを信じろと…?
あの時、王太子殿下に婚約解消された私を、貴方は王命によって押し付けられて結婚しただけでしたわ。」
「それは違う!」
何が違うというの…?
殿下の元婚約者の私を早く片付けたいからと、私達の気持ちなどお構いなしに、あんな風に急いで結婚させられたのに。
「だから今世では、絶対に殿下と婚約しないようにと決めました。ブレア様とも関わらないようにと気をつけて生活してきました。
もうあの時のような不幸な結婚はしたくないという強い思いで、何とかここまでやってきましたのよ。
色々ありましたが、殿下の婚約候補を辞退することが出来ましたし、これでやっと私は、一度目とは違った人生を送れるのだと安心していたところなのです。
それなのに、ブレア様は私に関わろうとする…。
貴方の目的は何なのでしょうか?」
私はここまで冷たい声が出るのね…
今更何を伝えられても遅い。
あの時の私は、貴方への気持ちも…、私自身も全て死んだのだから。
「……シア。私は君をずっと愛していた。
殿下と君が婚約解消されると聞いて、シアと婚約させて欲しいと私から頼んだ。そんな私に気を利かせてくれた陛下が、王命ということにしてくれただけなんだ。
他の誰にも君を奪われたくなくて、早く君を自分のものにしたいと考えた私は、君との結婚も早く進めた。
私があの時に、シアに自分の気持ちを正直に伝えなかったから悪い。
ただ、王命によって押し付けられて結婚したのではなく、私がシアを強く望んで結婚したということは分かって欲しいのだ。」
「今更そんなことを言われても遅いのです。
私はあの時に死んだのですから…」
「私が悪かった。
君を幸せにしたいと思っていたのに、結果的に君を不幸にしてしまった。
シア…、すまない。」
頬を涙が伝ってくるのが分かった…
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