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二度目の話
また君と
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ああ…。涙が流れてしまったら、次に流れてくるのは…
「ズズっ…、グズっ…」
鼻水ー!!
今、深刻な話をしているのに…
「…シア?大丈夫か?」
少し恥ずかしいけど、元夫の記憶持ちだというこの人に気を遣わなくていいわよね。
タラタラと垂れてくる鼻水を思いっきりかみたくなった私は、トイレに行くことに決めた!
「…ブレア様、少し花摘みに行くことをお許し下さいませんか?グズっ…」
「勿論だ。」
大切な話をしているのに花摘みに行くだなんて、マナー違反と言われても仕方がないのに。
こんな私に温かく微笑んでくれるのは、あの時と変わってないのね…
ブレア公爵令息は、すぐにベルを鳴らしてメイドを呼んでくれた。
「メイド長。コールマン侯爵令嬢を案内してもらえるか?」
「畏まりました。
こちらでございます。」
メイド長という言葉にビクッとしてしまうのだが…、そのメイド長は私の知るメイド長ではなく、初対面の人物だった。
あのメイド長とは、今世では顔を合わせずに済むのかもしれない。
トイレでおもいっきり鼻をかみ、スッキリして気持ちを切り替えた私は、ブレア公爵令息の元に戻る。
「長らくお待たせ致しまして、申し訳ございませんでした。」
「大丈夫だ。…落ち着いたか?」
「はい。お恥ずかしいですわ。」
「気にしなくていい。
ところで、少し庭を歩かないか?」
「分かりました。」
ブレア公爵家自慢の庭園をエスコートされて歩く私。
あの頃、天気の良い休日に、こうやって二人でここを散歩したわね。
短い夫婦生活だったけど、休日は二人で過ごす時間を大切にしてくれる人ではあった。
「シア…、図々しいのは分かっているのだが、私は君を諦められない。もう一度君とやり直したい。」
「……私達はもう無理ですわ。
でも、暗殺者から守って頂けたことには、感謝しております。
凄腕の暗殺者を倒してくれたのもブレア様でしょうか?」
「気づいていたのか…。
君が王太子殿下の婚約者に内定しているという噂話が流れた頃から、君が暗殺者に狙われるのではないかと不安になって、君や護衛の騎士達にバレないように、離れた場所から君を護衛するためにうちの影を付けていた。」
殿下の言う通りだった…
「あの時は本当に助かりました。お陰様でこうやって生きています。
今日はブレア様にお礼を伝えたいと思っていました。
本当にありがとうございました。」
「シアは私と関わらないように生きてきたと言っていたが、私はまた君に逢いたいと願って生きていた。
もう君を死なせたくないし、あんな別れ方はしたくないと…。
だから前の人生で、君に暗殺者を送り込んでいた暗殺者組織を、何年も監視していた。」
本当に殿下の言う通り…。
この方は良いやつかもしれないし、筆頭公爵家の跡取りとして優秀だわ。
「ブレア様。そこまでしてくれたのですか…」
「当たり前だ。君を失った時の、私の絶望を君は知らないだろう?
私は酷い夫だった…。君の気持ちを無視して強引に結婚した上に、君を不幸にしたのだから。
今更だが、バーカー子爵令嬢と私は何の関係もない。私は君だけを愛していた。そのことを君に伝えられなかったことをずっと後悔していた。
君に償いたいと思っても、謝りたいと思っても、逢いたいと願っても…、それは永遠に叶うことがないのだと、毎日悲観しながら生きていくのは、本当に生き地獄だった。」
胸がズキズキしているような気がする…
私こそ、この人のことをよく見ていなかったのかもしれない。
私が知らなかっただけで、この人に愛されていたということなのね…
「その話は、私が死ぬ前に聞きたかったです…
あの時、私なりに公爵夫人として生きていこうとしていたので、私の存在が邪魔だと思われていなかったのなら良かったですわ。」
「シアを邪魔だなんて思うはずがない!
私は君と結婚出来て、本当に嬉しかったのだ。」
その言葉をあの時に言ってくれていたら…
私は……
「シアが今更だと思う気持ちは分かる。
だが私は、君を諦められない。
私に君とやり直す機会をくれないか?
頼む!!」
私は、自分がどうしたいのか分からなくなってしまっていた。
この方とは関わりたくないと強く思っていたはずなのに、心が揺れている…
「ズズっ…、グズっ…」
鼻水ー!!
今、深刻な話をしているのに…
「…シア?大丈夫か?」
少し恥ずかしいけど、元夫の記憶持ちだというこの人に気を遣わなくていいわよね。
タラタラと垂れてくる鼻水を思いっきりかみたくなった私は、トイレに行くことに決めた!
「…ブレア様、少し花摘みに行くことをお許し下さいませんか?グズっ…」
「勿論だ。」
大切な話をしているのに花摘みに行くだなんて、マナー違反と言われても仕方がないのに。
こんな私に温かく微笑んでくれるのは、あの時と変わってないのね…
ブレア公爵令息は、すぐにベルを鳴らしてメイドを呼んでくれた。
「メイド長。コールマン侯爵令嬢を案内してもらえるか?」
「畏まりました。
こちらでございます。」
メイド長という言葉にビクッとしてしまうのだが…、そのメイド長は私の知るメイド長ではなく、初対面の人物だった。
あのメイド長とは、今世では顔を合わせずに済むのかもしれない。
トイレでおもいっきり鼻をかみ、スッキリして気持ちを切り替えた私は、ブレア公爵令息の元に戻る。
「長らくお待たせ致しまして、申し訳ございませんでした。」
「大丈夫だ。…落ち着いたか?」
「はい。お恥ずかしいですわ。」
「気にしなくていい。
ところで、少し庭を歩かないか?」
「分かりました。」
ブレア公爵家自慢の庭園をエスコートされて歩く私。
あの頃、天気の良い休日に、こうやって二人でここを散歩したわね。
短い夫婦生活だったけど、休日は二人で過ごす時間を大切にしてくれる人ではあった。
「シア…、図々しいのは分かっているのだが、私は君を諦められない。もう一度君とやり直したい。」
「……私達はもう無理ですわ。
でも、暗殺者から守って頂けたことには、感謝しております。
凄腕の暗殺者を倒してくれたのもブレア様でしょうか?」
「気づいていたのか…。
君が王太子殿下の婚約者に内定しているという噂話が流れた頃から、君が暗殺者に狙われるのではないかと不安になって、君や護衛の騎士達にバレないように、離れた場所から君を護衛するためにうちの影を付けていた。」
殿下の言う通りだった…
「あの時は本当に助かりました。お陰様でこうやって生きています。
今日はブレア様にお礼を伝えたいと思っていました。
本当にありがとうございました。」
「シアは私と関わらないように生きてきたと言っていたが、私はまた君に逢いたいと願って生きていた。
もう君を死なせたくないし、あんな別れ方はしたくないと…。
だから前の人生で、君に暗殺者を送り込んでいた暗殺者組織を、何年も監視していた。」
本当に殿下の言う通り…。
この方は良いやつかもしれないし、筆頭公爵家の跡取りとして優秀だわ。
「ブレア様。そこまでしてくれたのですか…」
「当たり前だ。君を失った時の、私の絶望を君は知らないだろう?
私は酷い夫だった…。君の気持ちを無視して強引に結婚した上に、君を不幸にしたのだから。
今更だが、バーカー子爵令嬢と私は何の関係もない。私は君だけを愛していた。そのことを君に伝えられなかったことをずっと後悔していた。
君に償いたいと思っても、謝りたいと思っても、逢いたいと願っても…、それは永遠に叶うことがないのだと、毎日悲観しながら生きていくのは、本当に生き地獄だった。」
胸がズキズキしているような気がする…
私こそ、この人のことをよく見ていなかったのかもしれない。
私が知らなかっただけで、この人に愛されていたということなのね…
「その話は、私が死ぬ前に聞きたかったです…
あの時、私なりに公爵夫人として生きていこうとしていたので、私の存在が邪魔だと思われていなかったのなら良かったですわ。」
「シアを邪魔だなんて思うはずがない!
私は君と結婚出来て、本当に嬉しかったのだ。」
その言葉をあの時に言ってくれていたら…
私は……
「シアが今更だと思う気持ちは分かる。
だが私は、君を諦められない。
私に君とやり直す機会をくれないか?
頼む!!」
私は、自分がどうしたいのか分からなくなってしまっていた。
この方とは関わりたくないと強く思っていたはずなのに、心が揺れている…
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