106 / 106
連載
私の食堂
しおりを挟む
お義父様とお義母様に平民街で食堂を開きたいと言ったら、予想はしていたが難色を示された。
「エリーゼのためにオスカーが店を買ったと聞いていたが、それは本当だったのか」
「はい。私が空き店舗を見て可愛い店が好きだと言ったら、お義兄様がすぐに買って下さいました」
「オスカーがリーゼに店をプレゼントしたってことなのね?
あのオスカーが……、信じられないわ」
義両親は、あの偏屈が私に店を買ってくれたことが未だに信じられないようだった。
三人で話し合った結果、公爵家の使用人や騎士を店の店員として置くということと、私が店に出る時は変装をするという条件で店をやっていいと許可がおりた。
お義父様もお義母様も、平民が使う食堂で公爵令嬢が働くということが嫌だったようだ。
その気持ちは痛いほど分かる……。でもあのお店を見てずっと可愛いって思っていたから、偏屈が買ってくれたなら、有効活用したいと思ってしまった。
平民街は治安はいいし、比較的裕福な平民が利用する場所だと説明したら、義両親は許してくれたから良かった。
「リーゼ。怒らないで聞いて欲しいのだけど……」
「何でしょうか?」
お義母様の表情が急に真顔になっている。
「殿下はやめて、オスカーと婚約する?」
「しません!」
つい即答してしまった。淑女としてあるまじき行為だが黙っていられなかったのだ。
「そうよね……。リーゼが余りにもオスカーのあしらいが上手いし、あの癖の強い男に怒ることもしなかったから、つい期待してしまったわ。ごめんなさいね……」
義兄みたいなタイプは怒っても無駄だから黙って耐えて流していただけなのに、お義母様にはそんな風に見えていたのね……
残りの人生、あとどれくらい生きれるのか分からないからこそ結婚相手は慎重に選びたいし、あんな偏屈に振り回されて生きていくのは嫌よ!
結婚願望は強くないけど、どうせ結婚するなら普通に愛と笑顔のある家庭を作りたいわ。
「オスカーはなんだかんだ言ってもエリーゼに甘いようだから、結婚したら割と上手くいくかもしれないぞ」
お義父様までなんてことを!
「お義父様、私は結婚するなら普通に愛のある結婚を望んでおります。それに対して、お義兄様は結婚そのものを否定しておりましたわ。そんな考えの方と結婚しても、性格の不一致でお互いが不幸になるだけです。
大体、私とお義兄様にそう言った感情は存在しておりませんので絶対に有り得ませんわ。
私達はこれからも義兄妹として当たり障りなく、普通に仲良くやっていきたいです」
つい鋭い目つきでお義父様を見つめてしまった。
「そ、そうか……。エリーゼがそう思っているならこの話はもう終わろう」
その後、店の内装やメニューのことなどを考える日々が続く。
テーブルや椅子は店にあったものをそのまま使うとして、外に置く黒板の看板が欲しいかな。日替わりのランチのメニューや値段を書いておいた方がお客さんは入りやすいよね。
ウェイトレスの制服はシンプルなワンピースにエプロンにしよう。小さな店だから無駄に派手にしなくていいや。日本の喫茶店のような雰囲気の店にしたいなぁ。
料理長たちが張り切っているから、メニューは公爵家の料理人達と相談して決めよう。
店の開店準備に夢中になっていると、久しぶりにウォーカー商会の会長さんが会いに来てくれた。
「リーゼ。公爵夫人から話を聞いて来たんだが、身分を隠して平民街に食堂を開くんだって?
私の方から平民街の商店の組合には挨拶をしておいたぞ」
「組合があるのですか?」
「ああいう大きな商店街には組合があるんだ。
貴族がオーナーなら面倒なことは言ってこないが、身分を隠して平民として店を経営するなら、組合が何か面倒なことを言ってくるかもしれない。
昔からそこの商店街で商売をしている古株の者なんかは、新参者を目の敵にするかもしれないし、同業者なんかは競合相手が増えるからと拒む者もいるかもしれないぞ。
だから組合にはリーゼは私の姪だということにして、私が挨拶してきた」
そういうことは何も知らなかったなぁ。
商会長さんは顔が広いからこんな時に助かる。
「何も知りませんでした。ありがとうございます」
「組合長にも姪を頼むと言ってきたし、近くにうちの店があるから店長にもよく伝えてきた。何かあれば店長に頼るといい」
「はい! よろしくお願いします」
商会長さんは私と一緒に店舗に来てくれて、店内のチェックを細かくしてくれた後、店に必要な物を確認してくれる。
「リーゼ。調理器具と食器、グラスなんかは、後でうちの商会から人を送るから、料理人達と一緒に選ぶといい。
テーブルと椅子、カーテン、照明も新しいものに変えてやる」
「ここに置いてあるものをそのまま使おうかと思っていたのですが……」
「新しい物に変えた方がいい。家具を変えると店の雰囲気も変わるからいいぞ。開店祝いにうちの商会から贈ってやるよ。
リーゼのおかげで、高級なイルミネーション用の光る魔石が沢山売れたからな。かなり儲けさせてもらったからそのお礼だ」
商会長さんは今日も太っ腹だった。そのおかげで、開店準備はスムーズに進み、あっという間に開店の日を迎えていた。
「エリーゼのためにオスカーが店を買ったと聞いていたが、それは本当だったのか」
「はい。私が空き店舗を見て可愛い店が好きだと言ったら、お義兄様がすぐに買って下さいました」
「オスカーがリーゼに店をプレゼントしたってことなのね?
あのオスカーが……、信じられないわ」
義両親は、あの偏屈が私に店を買ってくれたことが未だに信じられないようだった。
三人で話し合った結果、公爵家の使用人や騎士を店の店員として置くということと、私が店に出る時は変装をするという条件で店をやっていいと許可がおりた。
お義父様もお義母様も、平民が使う食堂で公爵令嬢が働くということが嫌だったようだ。
その気持ちは痛いほど分かる……。でもあのお店を見てずっと可愛いって思っていたから、偏屈が買ってくれたなら、有効活用したいと思ってしまった。
平民街は治安はいいし、比較的裕福な平民が利用する場所だと説明したら、義両親は許してくれたから良かった。
「リーゼ。怒らないで聞いて欲しいのだけど……」
「何でしょうか?」
お義母様の表情が急に真顔になっている。
「殿下はやめて、オスカーと婚約する?」
「しません!」
つい即答してしまった。淑女としてあるまじき行為だが黙っていられなかったのだ。
「そうよね……。リーゼが余りにもオスカーのあしらいが上手いし、あの癖の強い男に怒ることもしなかったから、つい期待してしまったわ。ごめんなさいね……」
義兄みたいなタイプは怒っても無駄だから黙って耐えて流していただけなのに、お義母様にはそんな風に見えていたのね……
残りの人生、あとどれくらい生きれるのか分からないからこそ結婚相手は慎重に選びたいし、あんな偏屈に振り回されて生きていくのは嫌よ!
結婚願望は強くないけど、どうせ結婚するなら普通に愛と笑顔のある家庭を作りたいわ。
「オスカーはなんだかんだ言ってもエリーゼに甘いようだから、結婚したら割と上手くいくかもしれないぞ」
お義父様までなんてことを!
「お義父様、私は結婚するなら普通に愛のある結婚を望んでおります。それに対して、お義兄様は結婚そのものを否定しておりましたわ。そんな考えの方と結婚しても、性格の不一致でお互いが不幸になるだけです。
大体、私とお義兄様にそう言った感情は存在しておりませんので絶対に有り得ませんわ。
私達はこれからも義兄妹として当たり障りなく、普通に仲良くやっていきたいです」
つい鋭い目つきでお義父様を見つめてしまった。
「そ、そうか……。エリーゼがそう思っているならこの話はもう終わろう」
その後、店の内装やメニューのことなどを考える日々が続く。
テーブルや椅子は店にあったものをそのまま使うとして、外に置く黒板の看板が欲しいかな。日替わりのランチのメニューや値段を書いておいた方がお客さんは入りやすいよね。
ウェイトレスの制服はシンプルなワンピースにエプロンにしよう。小さな店だから無駄に派手にしなくていいや。日本の喫茶店のような雰囲気の店にしたいなぁ。
料理長たちが張り切っているから、メニューは公爵家の料理人達と相談して決めよう。
店の開店準備に夢中になっていると、久しぶりにウォーカー商会の会長さんが会いに来てくれた。
「リーゼ。公爵夫人から話を聞いて来たんだが、身分を隠して平民街に食堂を開くんだって?
私の方から平民街の商店の組合には挨拶をしておいたぞ」
「組合があるのですか?」
「ああいう大きな商店街には組合があるんだ。
貴族がオーナーなら面倒なことは言ってこないが、身分を隠して平民として店を経営するなら、組合が何か面倒なことを言ってくるかもしれない。
昔からそこの商店街で商売をしている古株の者なんかは、新参者を目の敵にするかもしれないし、同業者なんかは競合相手が増えるからと拒む者もいるかもしれないぞ。
だから組合にはリーゼは私の姪だということにして、私が挨拶してきた」
そういうことは何も知らなかったなぁ。
商会長さんは顔が広いからこんな時に助かる。
「何も知りませんでした。ありがとうございます」
「組合長にも姪を頼むと言ってきたし、近くにうちの店があるから店長にもよく伝えてきた。何かあれば店長に頼るといい」
「はい! よろしくお願いします」
商会長さんは私と一緒に店舗に来てくれて、店内のチェックを細かくしてくれた後、店に必要な物を確認してくれる。
「リーゼ。調理器具と食器、グラスなんかは、後でうちの商会から人を送るから、料理人達と一緒に選ぶといい。
テーブルと椅子、カーテン、照明も新しいものに変えてやる」
「ここに置いてあるものをそのまま使おうかと思っていたのですが……」
「新しい物に変えた方がいい。家具を変えると店の雰囲気も変わるからいいぞ。開店祝いにうちの商会から贈ってやるよ。
リーゼのおかげで、高級なイルミネーション用の光る魔石が沢山売れたからな。かなり儲けさせてもらったからそのお礼だ」
商会長さんは今日も太っ腹だった。そのおかげで、開店準備はスムーズに進み、あっという間に開店の日を迎えていた。
155
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。