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記憶を取り戻す前の私 1
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私は田舎の男爵令嬢だった。男爵家は貧しく、貴族らしい教育はあまり受けずに育つ。でも田舎暮らしではそんなことはあまり必要としなかったので、何の不便も感じなかった。
家族は父と兄がいてみんな仲良しだ。
父からは、うちは貴族だけど貧乏で持参金を用意するのは難しいから、平民でいい人がいたら結婚して構わないと言われて自由に育つ。その頃の私は政略結婚する予定など全くなかった。
ある日、仲の良かった平民の幼馴染と一緒に森に遊びに行った時、幼馴染は崖下に転落して大怪我を負ってしまった。深い森の中、頼れる人もなく、私に出来たのは幼馴染の手を握りしめて祈りを捧げることだけだった。涙を流しながら「怪我が治ればいいのに……」と強く願ったその時、私の手のひらが優しく光る。その瞬間、幼馴染の怪我は治っていた。私は治癒魔法が使えたらしい。
その後、病気や怪我で苦しむ人たちを無償で治療する活動をしていると、国から貴族学園に特待生での入学を許可するといった内容で手紙が届く。
私はいずれ平民になる予定でいたので、学費の高い貴族学園に入学するつもりなんてなかった。しかし、貴族学園は高度な魔法の勉強をさせてもらえるらしい。更に特待生は学費や寮費など全て無料らしく、治癒魔法を極めたいと思っていた私は、貴族学園に行くことに決めた。
治癒魔法を完璧に使いこなせるようになって、もっと沢山の人を助けたいと思い、希望を持って貴族学園に入学したのに、しばらくすると私に辛い事ばかり起こるのであった。
「エリー、この前は怪我を治してくれてありがとう。
君にお礼がしたいんだが、今日の放課後に時間はあるか? ドレスでも宝石でも君の欲しいものを何でも買ってやろう」
この方は王太子殿下の側近候補の伯爵令息。騎士団長の子息でもあり、剣術の練習後に私のところに来ては、大したことのない擦り傷を見せてくる。そして、この方以外の騎士科の令息たちも、私の治癒魔法を目的に近付いてくるのだ。
こんな傷、男爵領の子供たちなら『大したことないよ』って笑うレベルなのに。そして、『お姉ちゃんの治癒魔法は本当に具合の悪い人に使ってあげて』って言ってくれるのに。あの子たちは、貧しくても人を気遣うことの出来る優しい子たちだった。
男爵領の子供たちに会いたいな……
「いえ、私は当然のことをしただけですからお気になさらず。それと……前にもお願いしたかと思いますが、私のことは家名でお呼びくださいませ。
それでは授業がありますので、これで失礼いたします」
「エリー、待ってくれ!」
少し前にこの方の婚約者のご令嬢から、彼に近づくなと警告をされてしまった。身分の低い私からは話しかけたことすらないのに。
ヒソヒソ……
「見てくださいまし。あの女、婚約者のいる高位貴族の令息とばかり親しくして、なんて見苦しいのかしら」
「ご実家は田舎の貧乏男爵家らしいですわよ。ここで裕福な結婚相手でも探そうとしているらしいわ」
「まあ! なんて図々しいのかしら」
高位貴族のご令嬢たちからは一方的に敵視され、有る事無い事噂される。私の心はボロボロになっていた。
どうやら、令息たちが私のことを名前で親しげに呼んでいたことが良くなかったらしい。私は何度も家名で呼んで欲しいとお願いしていたが、彼らはそれを聞き入れてくれなかった。しかも、彼らと距離を置こうと行動しているのに、なぜか顔を合わせてしまう。目立たぬようにしていても、彼らに見つかってしまうのだ。
私は静かに過ごしたいのに。身分の低い私が目立つなんて絶対にあってはならないのに、どうして……?
それでも、こんな私と仲良くしてくれる友人はいた。貴族令嬢としてのマナーを教えてくれたり、苦手な科目を教えてくれたり、貴族の中にも親切な人は沢山いたのだ。しかし、私と一緒にいるだけで立場が悪くなってしまうことがあり、友人達には事情を話して距離を置いてもらうことにした。学園では身分は関係ないと平等を謳っていても、高位貴族の方々の言うことは絶対なのだから。
そんな私が一人で図書館で勉強するのが日課になっていたある日のこと……
「エリー、一人で勉強か?」
私に話しかけてきたのは、学園中のご令嬢が憧れる王太子殿下だった。
「……あっ! 王太子殿下、ご機嫌よう」
ぎこちないカーテシーをする私を見て、殿下は優しくフッと笑う。
「カーテシーが前より美しくなった。努力しているんだな」
殿下はいつもどこからともなくやって来ては、嬉しい言葉をかけてくれるのだ。
「お恥ずかしいですわ。私なんてまだまだです」
「顔が赤くなっているぞ。エリーはすぐに顔に出るから見ていて面白いな。
今日も勉強していたのか……。分からないところはないか?」
殿下は私が勉強していると、分からないところがないか、困っていることはないかなど、色々気遣ってくださるとてもお優しい方。
お優しいだけでなく、美しい金髪に少しだけ緑がかかった青い目を持つ華やかな美形で、高めの身長は学園の制服を素敵に着こなしている。更に、勉学だけでなく剣術や魔法までも完璧にこなされる素晴らしいお方だ。学園中のご令嬢が憧れるのは、恋愛に興味のない私でも理解できた。
「殿下、そろそろお時間です。婚約者殿がお待ちになっておられるかと」
殿下に勉強のアドバイスを受けていると、横で見ていた宰相様の子息からお声が掛かる。
「ああ、そろそろ時間か……」
その瞬間、柔らかかった殿下の表情が険しくなっていた。
殿下は婚約者を嫌がっている……?
いいえ、私は何も見てないわ! 知らんぷりしていよう。こういうことに関わるとこっちが大火傷してしまうんだから。
「エリーの勉強でしたら私が見ておきます。殿下はどうか婚約者殿とのお時間を優先して下さい」
「……分かっている。
エリー、また会おう。あまり無理をするなよ」
殿下は私の頭をポンポンした後に護衛を連れて行ってしまった。そして、この場には私と宰相子息の二人きりになってしまう。
正直なところ、私は宰相子息が苦手だった。殿下と学年首席を競うほど優秀な方なのは知っているが、無表情で何を考えているのか分からないし、近寄り難い雰囲気を出していて、何を話せばいいのかも分からない。
メガネが似合っていて、知的でカッコいいと騒いでいるご令嬢は沢山いるみたいだけど、私はこういう身分の高い別世界の人に興味ないの。
私のような貧乏な田舎者がこのような方の近くにいるのは良くないわ。早くこの場を離れないと。
「……あの、そろそろ寮に戻る時間ですので、失礼させていただきます。ありがとうございました」
「待て! 寮の門限まであと一時間はあるはずだ。せっかくだから私が勉強を見てやる。早くここに座るように」
どうやら、門限の時間がバレていたらしい。
「生徒会の業務がお忙しいと聞いております。私はもう大丈夫ですので……」
この方と二人きりで勉強していたなんて噂にでもなったら大変だわ!
失礼のないように、丁重にお断りをさせていただくが……
「他の令嬢なら、私の都合もお構いなしに勉強を教えてもらいたくて必死に媚を売ってくるのに、エリーは全くそんなことはしないんだな」
……は?
いつもは無表情な宰相子息が私に微笑んでいる。その瞬間、ゾクっと寒気を感じてしまった。
あ、あれは……、宰相子息の婚約者が後ろの本棚の陰から殺気を放っているわ!
ひぃー、目で殺される。
「あ、あのっ! 私、少し気分が悪くて……」
「大丈夫か? 確かに顔色が悪いな。
私が医務室に連れて行ってやる。ほら体を支えてやろう」
そう言って私に手を差し伸べる宰相令息。その瞬間、図書室が一気に氷点下になる。
ああ、宰相子息の婚約者が雪女に変身したわ。私、殺される!
んっ? 雪女って何だっけ?
「エリー! ブルブル震えているぞ。この後、高熱になるのかもしれないな。
うちの侍医の専門は熱病だったはず……うちの侍医に診せた方がいいな。
今すぐうちに連れて行こう!」
そんなことしたら、アナタの婚約者に殺されちゃいますから!
「そ、それは大丈夫です。ただの疲れなので寝れば治ります!
本当に申し訳ありませんでした。失礼いたします!」
私は逃げるように図書室を飛び出した。これ以上、宰相子息と関わってはいけないと判断したから。
しかし、翌日、私の恐れていたことが起こるのであった。
※ヒロイン本人は無自覚ですが、前世で好きだった人(イケメン)に容姿をバカにされたことがきっかけで引きこもっていたので、転生後も恋愛に積極的になれず、キラキラしたイケメンの攻略対象者たちに対して苦手意識を持っています。
また、ヒロインが攻略対象者を避けようとしてもばったり会ってしまうのは、乙女ゲームの強制力によるものです。
家族は父と兄がいてみんな仲良しだ。
父からは、うちは貴族だけど貧乏で持参金を用意するのは難しいから、平民でいい人がいたら結婚して構わないと言われて自由に育つ。その頃の私は政略結婚する予定など全くなかった。
ある日、仲の良かった平民の幼馴染と一緒に森に遊びに行った時、幼馴染は崖下に転落して大怪我を負ってしまった。深い森の中、頼れる人もなく、私に出来たのは幼馴染の手を握りしめて祈りを捧げることだけだった。涙を流しながら「怪我が治ればいいのに……」と強く願ったその時、私の手のひらが優しく光る。その瞬間、幼馴染の怪我は治っていた。私は治癒魔法が使えたらしい。
その後、病気や怪我で苦しむ人たちを無償で治療する活動をしていると、国から貴族学園に特待生での入学を許可するといった内容で手紙が届く。
私はいずれ平民になる予定でいたので、学費の高い貴族学園に入学するつもりなんてなかった。しかし、貴族学園は高度な魔法の勉強をさせてもらえるらしい。更に特待生は学費や寮費など全て無料らしく、治癒魔法を極めたいと思っていた私は、貴族学園に行くことに決めた。
治癒魔法を完璧に使いこなせるようになって、もっと沢山の人を助けたいと思い、希望を持って貴族学園に入学したのに、しばらくすると私に辛い事ばかり起こるのであった。
「エリー、この前は怪我を治してくれてありがとう。
君にお礼がしたいんだが、今日の放課後に時間はあるか? ドレスでも宝石でも君の欲しいものを何でも買ってやろう」
この方は王太子殿下の側近候補の伯爵令息。騎士団長の子息でもあり、剣術の練習後に私のところに来ては、大したことのない擦り傷を見せてくる。そして、この方以外の騎士科の令息たちも、私の治癒魔法を目的に近付いてくるのだ。
こんな傷、男爵領の子供たちなら『大したことないよ』って笑うレベルなのに。そして、『お姉ちゃんの治癒魔法は本当に具合の悪い人に使ってあげて』って言ってくれるのに。あの子たちは、貧しくても人を気遣うことの出来る優しい子たちだった。
男爵領の子供たちに会いたいな……
「いえ、私は当然のことをしただけですからお気になさらず。それと……前にもお願いしたかと思いますが、私のことは家名でお呼びくださいませ。
それでは授業がありますので、これで失礼いたします」
「エリー、待ってくれ!」
少し前にこの方の婚約者のご令嬢から、彼に近づくなと警告をされてしまった。身分の低い私からは話しかけたことすらないのに。
ヒソヒソ……
「見てくださいまし。あの女、婚約者のいる高位貴族の令息とばかり親しくして、なんて見苦しいのかしら」
「ご実家は田舎の貧乏男爵家らしいですわよ。ここで裕福な結婚相手でも探そうとしているらしいわ」
「まあ! なんて図々しいのかしら」
高位貴族のご令嬢たちからは一方的に敵視され、有る事無い事噂される。私の心はボロボロになっていた。
どうやら、令息たちが私のことを名前で親しげに呼んでいたことが良くなかったらしい。私は何度も家名で呼んで欲しいとお願いしていたが、彼らはそれを聞き入れてくれなかった。しかも、彼らと距離を置こうと行動しているのに、なぜか顔を合わせてしまう。目立たぬようにしていても、彼らに見つかってしまうのだ。
私は静かに過ごしたいのに。身分の低い私が目立つなんて絶対にあってはならないのに、どうして……?
それでも、こんな私と仲良くしてくれる友人はいた。貴族令嬢としてのマナーを教えてくれたり、苦手な科目を教えてくれたり、貴族の中にも親切な人は沢山いたのだ。しかし、私と一緒にいるだけで立場が悪くなってしまうことがあり、友人達には事情を話して距離を置いてもらうことにした。学園では身分は関係ないと平等を謳っていても、高位貴族の方々の言うことは絶対なのだから。
そんな私が一人で図書館で勉強するのが日課になっていたある日のこと……
「エリー、一人で勉強か?」
私に話しかけてきたのは、学園中のご令嬢が憧れる王太子殿下だった。
「……あっ! 王太子殿下、ご機嫌よう」
ぎこちないカーテシーをする私を見て、殿下は優しくフッと笑う。
「カーテシーが前より美しくなった。努力しているんだな」
殿下はいつもどこからともなくやって来ては、嬉しい言葉をかけてくれるのだ。
「お恥ずかしいですわ。私なんてまだまだです」
「顔が赤くなっているぞ。エリーはすぐに顔に出るから見ていて面白いな。
今日も勉強していたのか……。分からないところはないか?」
殿下は私が勉強していると、分からないところがないか、困っていることはないかなど、色々気遣ってくださるとてもお優しい方。
お優しいだけでなく、美しい金髪に少しだけ緑がかかった青い目を持つ華やかな美形で、高めの身長は学園の制服を素敵に着こなしている。更に、勉学だけでなく剣術や魔法までも完璧にこなされる素晴らしいお方だ。学園中のご令嬢が憧れるのは、恋愛に興味のない私でも理解できた。
「殿下、そろそろお時間です。婚約者殿がお待ちになっておられるかと」
殿下に勉強のアドバイスを受けていると、横で見ていた宰相様の子息からお声が掛かる。
「ああ、そろそろ時間か……」
その瞬間、柔らかかった殿下の表情が険しくなっていた。
殿下は婚約者を嫌がっている……?
いいえ、私は何も見てないわ! 知らんぷりしていよう。こういうことに関わるとこっちが大火傷してしまうんだから。
「エリーの勉強でしたら私が見ておきます。殿下はどうか婚約者殿とのお時間を優先して下さい」
「……分かっている。
エリー、また会おう。あまり無理をするなよ」
殿下は私の頭をポンポンした後に護衛を連れて行ってしまった。そして、この場には私と宰相子息の二人きりになってしまう。
正直なところ、私は宰相子息が苦手だった。殿下と学年首席を競うほど優秀な方なのは知っているが、無表情で何を考えているのか分からないし、近寄り難い雰囲気を出していて、何を話せばいいのかも分からない。
メガネが似合っていて、知的でカッコいいと騒いでいるご令嬢は沢山いるみたいだけど、私はこういう身分の高い別世界の人に興味ないの。
私のような貧乏な田舎者がこのような方の近くにいるのは良くないわ。早くこの場を離れないと。
「……あの、そろそろ寮に戻る時間ですので、失礼させていただきます。ありがとうございました」
「待て! 寮の門限まであと一時間はあるはずだ。せっかくだから私が勉強を見てやる。早くここに座るように」
どうやら、門限の時間がバレていたらしい。
「生徒会の業務がお忙しいと聞いております。私はもう大丈夫ですので……」
この方と二人きりで勉強していたなんて噂にでもなったら大変だわ!
失礼のないように、丁重にお断りをさせていただくが……
「他の令嬢なら、私の都合もお構いなしに勉強を教えてもらいたくて必死に媚を売ってくるのに、エリーは全くそんなことはしないんだな」
……は?
いつもは無表情な宰相子息が私に微笑んでいる。その瞬間、ゾクっと寒気を感じてしまった。
あ、あれは……、宰相子息の婚約者が後ろの本棚の陰から殺気を放っているわ!
ひぃー、目で殺される。
「あ、あのっ! 私、少し気分が悪くて……」
「大丈夫か? 確かに顔色が悪いな。
私が医務室に連れて行ってやる。ほら体を支えてやろう」
そう言って私に手を差し伸べる宰相令息。その瞬間、図書室が一気に氷点下になる。
ああ、宰相子息の婚約者が雪女に変身したわ。私、殺される!
んっ? 雪女って何だっけ?
「エリー! ブルブル震えているぞ。この後、高熱になるのかもしれないな。
うちの侍医の専門は熱病だったはず……うちの侍医に診せた方がいいな。
今すぐうちに連れて行こう!」
そんなことしたら、アナタの婚約者に殺されちゃいますから!
「そ、それは大丈夫です。ただの疲れなので寝れば治ります!
本当に申し訳ありませんでした。失礼いたします!」
私は逃げるように図書室を飛び出した。これ以上、宰相子息と関わってはいけないと判断したから。
しかし、翌日、私の恐れていたことが起こるのであった。
※ヒロイン本人は無自覚ですが、前世で好きだった人(イケメン)に容姿をバカにされたことがきっかけで引きこもっていたので、転生後も恋愛に積極的になれず、キラキラしたイケメンの攻略対象者たちに対して苦手意識を持っています。
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