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記憶を取り戻す前の私 9
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早く公爵家の家臣や使用人たちに慣れて、未来の公爵夫人として認めてもらえるように頑張ろうとしただけなのに、先生はそんな私に厳しい目を向けてくる。
「エリー、公爵家には分家の者や古くから仕えている家臣が沢山出入りしているが、君は無理に親しくなる必要はない。それよりも優先すべきことは沢山あるはずだ。
使用人にも気を遣い過ぎる。過度な気遣いは見くびられるから必要ない」
「……申し訳ありません。気を付けます」
さらに、怪我をした騎士に治癒魔法をかけてあげたことがバレてしまい、先生は目に見えて不機嫌になっていった。
「大事な家臣や分家の貴族たちに近づくことすら禁止するなんて、公爵様はあの婚約者がよほど気に入らないのね」
「貧乏な男爵令嬢なんて、身分差がありすぎるわよ。せいぜい愛人くらいよね」
「婚約破棄したくても、王命では無理よね。公爵様がお気の毒だわ」
一部のメイドたちは、私に聞こえるように陰口を言うようになり、私は公爵邸で笑顔を作れなくなってしまった。
そんな日々の中、学園に行くのは唯一の楽しみだった。
あの公爵令嬢は学園を退学して領地で謹慎生活を送っているらしく、もう学園で会うことはなくなった。
前のように面倒に絡んでくる令嬢や令息もいないし、嫌がらせをする人もいなくなっていて、平和な学園生活を送れるようになる。
友人達とも打ち解けて楽しい時間を過ごせるようになり、学園では笑顔になれた。
しかし、そんな私に先生は更なる追い討ちをかける。
「公爵家の勉強が遅れていると聞いた。
明日からは学園の勉強より公爵家の方を優先してもらう。しばらく学園は行かなくていいから、邸で公爵夫人の勉強をするようにしてくれ」
「学園を休まなくてはならないのですか?」
「公爵家の教育は王太子妃教育の次くらいに難しいと言われている。子供の頃に結ばれた婚約なら数年かけて学べるが、私達は最近婚約したばかりで婚姻までの期間が短い。
幸いなことに、今までの努力の甲斐あって学園の勉強の成績は優秀になった。学園長からは、テストをきちんと受けていれば卒業は出来るとお墨付きをいただいている。
エリー、学園の勉強のように公爵家の勉強も頑張ってくれるね?」
学園に来ることは、今の私にとって一番好きな時間だったから、卒業まで毎日休まずに登校したかった。
でも、今の私の立場で拒否するなんて出来るはずもなく、
「……承知しました」
翌日から邸に籠って公爵夫人に必要な知識やマナーを学ぶ日々が始まる。
先生は毎日忙しく過ごしていて、二人で会話する時間もなく、一緒の邸で生活しているとは思えないくらいだった。
頑張っても努力しても、誰からも認められることもなく、孤独に学ぶ日々……
そんな私を、行儀見習いで働きに来ていた分家の令嬢たちが嘲笑している。
「エリー様ぁ、そんなに陰気にしていては、公爵様に嫌われてしまいますよぁ」
「大丈夫よ。王命ですから、冷遇されても嫌われていても結婚は出来ますわ」
こんな婚約なんて白紙になればいいのに……
いっそのこと、婚約破棄になって修道院にでも行きたい。
しかし、そんな日々を過ごしているうちに時間はどんどん経過し、婚約が取り消されることはなく、学園の卒業式の三日後に結婚することが決まってしまった。
そして結婚式の前日、お父様とお兄様が式に参列するために公爵家に来てくれた。
「エリーは男爵領が大好きだったから、領民の誰かと結婚してずっと側にいてくれるのかと思っていたから、お父様はとても寂しいよ」
「父上、寂しいかもしれませんが、公爵閣下のような素晴らしい方と縁を結んでいただいて、そんなことを口にしてはいけませんよ」
素晴らしい方か……
私も先生と生徒の関係でいた時はそう思っていた。
「エリー、悲しそうな顔をしてお前もマリッジブルーかな? でも、公爵閣下ならきっとエリーを幸せにしてくれる。
実は、公爵閣下は婚約が決まった後から男爵領に沢山の援助をしてくれているんだ」
「えっ? 援助ですか?」
父から言われて、私は援助のことを初めて知った。
「ああ。領民の子供たちが無料で学べる学校を建設して、先生まで派遣してくれた。学校ではお昼にタダで食事を提供してくれるからとても助かると、領民から感謝されている。
それと無料の病院も作ってくれたんだ。入院までできる立派な建物なんだよ。
エリーが治癒魔法で領民を助けたいと言っていたけれど、王都で生活をしていてそれは無理だから病院を建設したいって公爵閣下から申し出てくれた時は、嬉しくて涙が出そうになったよ」
お父様ってば、本当に嬉しそうに話すのね。
「エリー、公爵閣下はうちの特産の絹を高値で取引きしてくれているんだ。おかげで領民の生活が少しずつ豊かになってきている。
領民はみんな公爵閣下に感謝していて、エリーとの結婚もみんな祝福しているんだぞ。
あんな素晴らしい方と妹が結婚するなんて、兄としてこれ以上の幸せはないな」
「そうですね……。私を祝福してくれる人たちのためにも、これからは公爵夫人として頑張りますね」
私の故郷をそこまで大切に考えてくれていたなんて知らなかった。
忙しくてあまり話が出来なかったから、お互い知らないことばかりで誤解が沢山あったのかもしれない。
これからは妻としてきちんと夫と向き合っていこう。
翌日、王都で一番大きな教会で私達の結婚式が盛大に行われた。
「エリー、公爵家には分家の者や古くから仕えている家臣が沢山出入りしているが、君は無理に親しくなる必要はない。それよりも優先すべきことは沢山あるはずだ。
使用人にも気を遣い過ぎる。過度な気遣いは見くびられるから必要ない」
「……申し訳ありません。気を付けます」
さらに、怪我をした騎士に治癒魔法をかけてあげたことがバレてしまい、先生は目に見えて不機嫌になっていった。
「大事な家臣や分家の貴族たちに近づくことすら禁止するなんて、公爵様はあの婚約者がよほど気に入らないのね」
「貧乏な男爵令嬢なんて、身分差がありすぎるわよ。せいぜい愛人くらいよね」
「婚約破棄したくても、王命では無理よね。公爵様がお気の毒だわ」
一部のメイドたちは、私に聞こえるように陰口を言うようになり、私は公爵邸で笑顔を作れなくなってしまった。
そんな日々の中、学園に行くのは唯一の楽しみだった。
あの公爵令嬢は学園を退学して領地で謹慎生活を送っているらしく、もう学園で会うことはなくなった。
前のように面倒に絡んでくる令嬢や令息もいないし、嫌がらせをする人もいなくなっていて、平和な学園生活を送れるようになる。
友人達とも打ち解けて楽しい時間を過ごせるようになり、学園では笑顔になれた。
しかし、そんな私に先生は更なる追い討ちをかける。
「公爵家の勉強が遅れていると聞いた。
明日からは学園の勉強より公爵家の方を優先してもらう。しばらく学園は行かなくていいから、邸で公爵夫人の勉強をするようにしてくれ」
「学園を休まなくてはならないのですか?」
「公爵家の教育は王太子妃教育の次くらいに難しいと言われている。子供の頃に結ばれた婚約なら数年かけて学べるが、私達は最近婚約したばかりで婚姻までの期間が短い。
幸いなことに、今までの努力の甲斐あって学園の勉強の成績は優秀になった。学園長からは、テストをきちんと受けていれば卒業は出来るとお墨付きをいただいている。
エリー、学園の勉強のように公爵家の勉強も頑張ってくれるね?」
学園に来ることは、今の私にとって一番好きな時間だったから、卒業まで毎日休まずに登校したかった。
でも、今の私の立場で拒否するなんて出来るはずもなく、
「……承知しました」
翌日から邸に籠って公爵夫人に必要な知識やマナーを学ぶ日々が始まる。
先生は毎日忙しく過ごしていて、二人で会話する時間もなく、一緒の邸で生活しているとは思えないくらいだった。
頑張っても努力しても、誰からも認められることもなく、孤独に学ぶ日々……
そんな私を、行儀見習いで働きに来ていた分家の令嬢たちが嘲笑している。
「エリー様ぁ、そんなに陰気にしていては、公爵様に嫌われてしまいますよぁ」
「大丈夫よ。王命ですから、冷遇されても嫌われていても結婚は出来ますわ」
こんな婚約なんて白紙になればいいのに……
いっそのこと、婚約破棄になって修道院にでも行きたい。
しかし、そんな日々を過ごしているうちに時間はどんどん経過し、婚約が取り消されることはなく、学園の卒業式の三日後に結婚することが決まってしまった。
そして結婚式の前日、お父様とお兄様が式に参列するために公爵家に来てくれた。
「エリーは男爵領が大好きだったから、領民の誰かと結婚してずっと側にいてくれるのかと思っていたから、お父様はとても寂しいよ」
「父上、寂しいかもしれませんが、公爵閣下のような素晴らしい方と縁を結んでいただいて、そんなことを口にしてはいけませんよ」
素晴らしい方か……
私も先生と生徒の関係でいた時はそう思っていた。
「エリー、悲しそうな顔をしてお前もマリッジブルーかな? でも、公爵閣下ならきっとエリーを幸せにしてくれる。
実は、公爵閣下は婚約が決まった後から男爵領に沢山の援助をしてくれているんだ」
「えっ? 援助ですか?」
父から言われて、私は援助のことを初めて知った。
「ああ。領民の子供たちが無料で学べる学校を建設して、先生まで派遣してくれた。学校ではお昼にタダで食事を提供してくれるからとても助かると、領民から感謝されている。
それと無料の病院も作ってくれたんだ。入院までできる立派な建物なんだよ。
エリーが治癒魔法で領民を助けたいと言っていたけれど、王都で生活をしていてそれは無理だから病院を建設したいって公爵閣下から申し出てくれた時は、嬉しくて涙が出そうになったよ」
お父様ってば、本当に嬉しそうに話すのね。
「エリー、公爵閣下はうちの特産の絹を高値で取引きしてくれているんだ。おかげで領民の生活が少しずつ豊かになってきている。
領民はみんな公爵閣下に感謝していて、エリーとの結婚もみんな祝福しているんだぞ。
あんな素晴らしい方と妹が結婚するなんて、兄としてこれ以上の幸せはないな」
「そうですね……。私を祝福してくれる人たちのためにも、これからは公爵夫人として頑張りますね」
私の故郷をそこまで大切に考えてくれていたなんて知らなかった。
忙しくてあまり話が出来なかったから、お互い知らないことばかりで誤解が沢山あったのかもしれない。
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翌日、王都で一番大きな教会で私達の結婚式が盛大に行われた。
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