元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

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マリーベル編〜楽しく長生きしたい私

王都騎士団 1

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 今日は学園がお休みの日で、王都騎士団に治癒魔法の練習にやってきた。レジーナやユーリアなど、剣術の授業で一緒の令嬢6人で来たのだが、レジーナ達は普通に剣術を見てもらえるようだし、かっこいい騎士様に出会えるかもって、楽しみにしてきたようだ。分かるよ。私もかっこいい騎士様には憧れているし、素敵な出会いを求めているしね。
 しかし、従兄妹のかっこいい騎士様に、私は朝から疲れてしまっていた。おば様は、治癒魔法の練習と言うと、頑張って来なさいと送り出してくれたのだが、あの優しいフィル兄様が難色を示したのだ。騎士団は危険だから、今からでも断りなさいと言い出し、無理なら私が団長に話をするからとか言い出して大変だった。
 私から頼んだことや、他の令嬢も一緒だと話をし、更に送り迎えは、お休みのフィル兄様が、馬車で一緒に来ると言うことで、何とか納得してもらえた。しかし、馬車の中でも注意事項を延々と語るという過保護っぷりだ。はぁー、また帰りに迎えに来るのか。正門の所で待ってると言っていたけど、少しでも遅れたら騎士団の中に乗り込んで来そうだから、時間厳守で気をつけよう。

 騎士団の入り口に行くと、すぐに騎士団長を呼んでくれた。この方は今日も元気そうね。
 騎士団長は、私達に指導役の騎士を付けてくれるようだ。何だか実習生ね。しかも、見習い騎士用の制服まで用意してくれていた。私達が学園の制服で来たからかな?一応、剣術の授業用の運動着は持って来たのだけど。ここまでしてくれるなんて、この方は実は親切な人なのかしら。

 レジーナ達は、剣術をやるのでここからは別行動になる。…これはフィル兄様にバレないようにしないと、後が怖いわね。
 騎士団長様から、私の指導役の騎士様を紹介される。ハワード卿と言う20代前半くらいの、騎士というより文官のような、知的で落ち着いた雰囲気の騎士様だった。美形なんだけど、無表情で近寄り難い雰囲気ね。始めが肝心だからちゃんと挨拶しよう。

「マリーベル・フォーレスと申します。ご指導、どうぞよろしくお願い致します。」

「…こちらこそ、よろしくお願いします。」

 何か一瞬、目を見開かれたような。…まぁ、いいか。
 騎士団長から、治癒魔法の練習と言うことを聞いているようで、医務室へ連れて行ってくれる。しかし、そんな頻繁に怪我人が出るわけではなく、結構暇だったりする。
 医務室の掃除でもする?横で事務作業をするハワード卿に、何か雑用があればやりますと言ってみると、特にありませんと言われる。何か冷たいわね。騎士団より、どこか病院の方が良かったかな?もうこの沈黙もキツいから、掃除をさせてもらおう。
 空いた時間に掃除をしたいから、掃除用具の場所を聞くと、えっ?て顔をされるが、せっかくの時間が勿体ないと言って、掃除用具の場所を聞き、掃き掃除と拭き掃除をしていた。途中、軽い怪我の騎士様が何人か来たが、治癒魔法で一瞬で治るレベルだったので、ついでに古傷や他に痛いところがないかを聞き、細かいところまで治療しまくった。そして空いた時間は、また掃除。医務室の床や窓は拭いたから、廊下もやっておこう。こんなに掃除するのは、生まれ変わってから初めてかも。ああ、聖女子学園でやっていたか。シスター達は、掃除に厳しかったからね。でも、無心になれるから、たまには気分転換になるわね!よし、廊下の窓拭きもやろーっと。あっ、外でユーリア達が、剣術をやっているわ。へー、みんなかっこいい騎士様に習っているのね。楽しそうにやってるわ。ふふっ、人間観察しながらの窓拭き最高ね。1人黙々と掃除をする私。すると、

「フォーレス侯爵令嬢!何しているんだ?」

 あっ。騎士団長が来ていたの気付かなかったわね。ん?後ろにいるのは…、うわー!この前の公爵様。

「ちょっとお時間があるようなので、お掃除をさせて頂いてます。」

「侯爵家の御令嬢が掃除なんてしなくていいんだ。」

「申し訳ありません。初等部では当たり前のように、やらされていたので。」

 医務室の沈黙に耐えられなかったとは言えない。掃除の方が楽しいなんて、更に言えない。

「謝らなくていいんだ。それと、君にお客さんだ。」

 王都騎士団長は、背後にいる気不味そうな公爵様を指さす。
 ははっ。関わりたくないし、何も話すことは無いのですけどね。

「ご機嫌よう。」

 ちゃんと自己紹介したわけじゃないから、何と言い掛けたらいいのか分からないわね。

「ああ。この前は手と足を治してくれて、ありがとう。直接、感謝を伝えたかったから、会えてうれしい。」

 わざわざお礼を言いに来たのか。律儀な人なのね。

「いえ、当然のことをしただけでございます。また、何かあればお申し付け下さいませ。」

 敵対はしないからねー。殺さないでねー。という意味をこめて、微笑んでおこう。
 って言うか、まだ窓拭きしている途中だから、雑巾を握っていたわ。話はこれで終わりだよね?

「それでは、まだ掃除が残っておりますので。」

 礼をして下がる私。

「くっ、くっ。フォーレス侯爵令嬢、これでも、こいつは、国内の騎士団で1番偉い公爵閣下だ。くっ、それよりも掃除を優先するなんて…くっ、くっ。そんな令嬢は初めて見た!君は面白いな!」

 何故か、笑っている王都騎士団長。いや、笑えないから。そんな大物と関わりたくないって、空気を読んでよ!

「公爵閣下、失礼致しました。」

「…いや、いいんだ。」

 えっ?特に喋ることがないなら、解放してほしいのだけど。見兼ねた騎士団長が喋る。

「もうすぐ昼食だが、フォーレス侯爵令嬢のランチは私の執務室に用意させるから、昼になったら、執務室に来てくれるか?」

「承知致しました。」

 みんなで、騎士団の食堂に行くのを楽しみにしてたのにー!!何なのよ!

 昼の時間になると、レジーナ達が医務室にランチのお迎えに来てくれた。事情を話して一緒に行けないことを話すと、みんな腹黒い笑みを浮かべる。楽しんでらっしゃいだってー?そこまで心臓に毛が生えてないわ!
 落ち込む私に唯一、気遣う言葉を掛けてくれる人が…。

「フォーレス侯爵令嬢、団長は実は面倒見の良い、優しい騎士なのです。もっと気楽に行ってくるといいと思います。執務室の場所は分かりますか?案内しますが。」

 あっ、ハワード卿はそんな風に気遣いの言葉が話せる方だったのね。寡黙な人かと思っていたわ。

「ご配慮ありがとうございます。執務室の場所は聞いていますので、大丈夫ですわ。」

 一人孤独に負けそうな時、その何気ない言葉は嬉しいわね。

「いえ、慣れない場所でしょうから、案内しましょう。」

 ということで、わざわざ親切に案内してくれた。執務室の前でお礼を伝えて別れる。

 地獄のランチタイムに突入よ!

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