元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

文字の大きさ
102 / 161
ヒロインがやって来た

転校生と生徒会長

しおりを挟む
 ピンクの令嬢が謹慎処分になって2週間くらい経つ頃。彼女はやっと謹慎が解かれて、学園に復帰したらしい。本当はAクラスに入って来たいようだが、Aクラスに立入禁止になったようで、入れないらしい。廊下をウロつき、近くの警備騎士に注意され、口論になっている姿をよく見る。ここまで来ると、ただの問題児だわね。顔は可愛いのに、勿体無いわ。

 この前の騒ぎでは、義兄やその友人達からの家門と、学園長から男爵家に抗議したようだ。しかも、義兄や友人達に対しての付き纏いが禁止になったらしい。破ったら、また謹慎だって!ストーカーかよ!
 あの転校して来た1日で、ここまでやるなんて、義兄や友人達の怖さを改めて、知ったわね。でもミッシェルは、他のしつこい令嬢達に対しても、見せしめになっていいんじゃない?と言っていた。

 しかし、ピンクの令嬢は義兄達を諦めてないようで、ランチの時も近くをうろついている。私達は、変な人を観察するというスタンスで、その様子を見て楽しんでいるのだが、他のクラスの令嬢達は許せないらしく、嫌がらせのようなことをするグループも出てきた。
 レストランでランチをしている時に、事件は起こる。

「ちょっと貴女!お目当ての殿方に、声を掛けてもらいたいからと、食事の場をフラフラしないで下さいます?とても、見苦しくてよ。」

「ふふっ。この方は、少し前までは平民だったらしいですわ。男爵と元使用人の子供だとか!だから、食事のマナーも分からないのでしょうね。」

「マナーも勉強も出来ないのに、意中の殿方を射止めることには、一生懸命なのね。さすが、あのウッド男爵家の御令嬢だわ。」

 フルボッコだわね。しかし、あの子はなんか嬉しそう。ドMなのかしら?いや、違う。もしかして、虐められるのを待っていた?まぁ、どちらにしても、変な人だわ。

「そんなぁ。身分で差別するなんてぇ、酷いですぅ。」

 目をウルウルさせるピンク。何となく、義兄達をチラ見してない?もしかして、助けを待ってる?
 しかし義兄達は、ピンクを気にすることなく、男友達数人で楽しそうにランチをしている。完全にスルーしてるわね。しかも、今気付いたけど、義兄のいる円卓のテーブル席は、義兄の友人達で席が埋まっている。席が空いていると、同席されちゃうから、考えたわね!

 その時、違う方向から声が掛かるのだった。

「君たち、やめなさい。食事の場で騒々しい。」

 ピンクに絡んだ先輩の令嬢方は黙る。生徒会長の、ファーエル公爵令息が注意したのだから当然か。しかし、ピンクはここでもやらかす。

「うそっ!カッコいい!もしかしてぇ、アラン様ですかぁ?」

 えっ?義兄の時と一緒だわ。何で、いきなり下の名前を呼んでるの?
 なんか街中で、大好きな芸能人に会った時に、言いたくなるようなセリフだわね。

「元平民の転校生とは聞いていたが、ここまで礼儀がなってないとは…。フォーレス侯爵家やムーア侯爵家、ウィリアムズ伯爵家、デービス伯爵家が揃って抗議するなんて、どれだけ酷いのかと気になっていたのだが、思っていた以上だな。」

 常識人の生徒会長ですら、不快感を隠してないわね。

「アラン様ぁ、このセンパイ達が、虐めるのですぅ。」

 空気が読めないのね。生徒会長から、冷気が漂っているわ。レストランの中もシーンと静まりかえっている。

「確かに令嬢が3人揃って、1人の後輩に、このような場で絡むのはよろしくないが、君も言われても仕方がない行動を取っているだろう。元平民とはいえ、今は男爵令嬢なのだから、それなりの礼儀やマナーが出来てなければ、注意をされてもしょうがない。君は謹慎処分を受けている間、何をして来たのだ?反省して、少しは学んで来なかったのか?何の為の謹慎だったのだ?」

「アラン様ぁ!私はただ皆様と、仲良くなりたいだけなのですぅ。」

「なぜ私が、君に名前で呼ばれなければならないのだ?うちの公爵家も、随分と下に見られたものだ。」

「誤解ですわぁ。それに、私ならアラン様の心を癒して差し上げますわぁ。」

「君は何を言っているのだ?」

 ヤバいわ!あの生徒会長が、青筋を立てている。ピンクはもう黙りなさい!心で叫ぶ私。しかし、当然だが彼女には届かなかった。

「アラン様はぁ、前にアラン様が乗っていた馬車が、女の子を轢いてしまって、亡くなってしまったことで、一部の地区の領民との関係に、ひびが入って悩んでいましたよねぇ。今からでもぉ、亡くなった女の子の両親に謝りに行けば、謝罪は受け入れてもらえますよぉ。亡くなった女の子が憧れていた、ピンクの薔薇の花を持って行って、墓前に手向けたいと言えばいいみたいですよぉ。私が一緒に行きますから大丈夫です!いつ行きましょうかぁ?」

 この子、何で馬車事故を知っているの?でも、女の子は私が助けたはず。それとも、違う事故があったのかしら?いや、ただの妄想?不気味だわ!それよりも、あの生徒会長が殺気立っているわ。終わったわー!

「君は何かの病気なのか?これは、私が注意してどうにかなるレベルではないな。ファーエル公爵家からも、正式に抗議させてもらう。男爵家ごときに、ここまでバカにされるとは。不愉快極まりない。」

 ここまで言われて、やっと自分のヤバさに気づいたピンクは、顔色が悪くなる。

「えっ。どうして怒るの?アラン様ルートは、馬車事故が鍵だったよね?」

 ぶつぶつ言うピンクは、また警備騎士に連行されて行ってしまった。

 今、アラン様ルートって言ってた?もしかして、あの子は転生者?そして、ここはやっぱり乙女ゲーム?ひぇー!う、うっ。呼吸が苦しい。ハァ、ハァ。

「マリー?どうしたの?顔色が悪いわ!」

「大丈夫?呼吸がおかしいわ!」

「マリー!大丈夫?誰か、医務官を呼んで下さいませ!」

「マリー?医務室まで私が運ぶ!」

 義兄がすぐ来てくれたようだ。
 やっぱり、私は死ぬの?ああ、呼吸が苦しい。

「マリー、大丈夫か?もうすぐ医務室に着くからな。」

 義兄が泣きそうな顔で、私をお姫様抱っこしている。気分が悪すぎて、何も言えない。
 そのまま、私は意識を失うのであった。


 パチっと目が覚めると、医務室らしい。そして、義兄がいた。

「マリー、大丈夫か?過呼吸を起こしたらしいが…。医務官の先生は、恐怖とか不安とかを受けると過呼吸は起こりやすいと言っていたが。あの意味の分からない女が原因か?」

 うっ!無駄に鋭いわ!

「お兄様、心配掛けてごめんなさい。私も原因は分かりませんけど、もう大丈夫ですわ。」

「…そうか。今日は、心配だから一緒にフォーレス家に帰ろう?スペンサー家には、連絡を入れるから。」

「そうですね。たまにはお兄様と一緒に帰るのも悪くはないですね。」

 この人は、私を守りたいと言ってくれたから、安心だわね。

「兄様と一緒に帰りたいって言って欲しかったけど。まあ、いいか!」

 久しぶりに、義兄と一緒にフォーレス侯爵家に帰ることにした私。フォーレス侯爵家でゆっくり過ごして、次の日の学園はお休みさせられた。

 私が過呼吸で倒れたと知った、おじ様とフィル兄様が、落ち着かなくて大変だったと、おば様から後日、聞かされるのであった。あの2人も過保護だからね。


 ピンクの令嬢は、今度は一か月の謹慎処分になったようだ。公爵家の力は恐ろしいわね。生徒会長も怒らせないように気を付けよう。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

何年も相手にしてくれなかったのに…今更迫られても困ります

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢のアンジュは、子供の頃から大好きだった幼馴染のデイビッドに5度目の婚約を申し込むものの、断られてしまう。さすがに5度目という事もあり、父親からも諦める様言われてしまった。 自分でも分かっている、もう潮時なのだと。そんな中父親から、留学の話を持ち掛けられた。環境を変えれば、気持ちも落ち着くのではないかと。 彼のいない場所に行けば、彼を忘れられるかもしれない。でも、王都から出た事のない自分が、誰も知らない異国でうまくやっていけるのか…そんな不安から、返事をする事が出来なかった。 そんな中、侯爵令嬢のラミネスから、自分とデイビッドは愛し合っている。彼が騎士団長になる事が決まった暁には、自分と婚約をする事が決まっていると聞かされたのだ。 大きなショックを受けたアンジュは、ついに留学をする事を決意。専属メイドのカリアを連れ、1人留学の先のミラージュ王国に向かったのだが…

嘘つくつもりはなかったんです!お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。

季邑 えり
恋愛
異世界転生した記憶をもつリアリム伯爵令嬢は、自他ともに認めるイザベラ公爵令嬢の腰ぎんちゃく。  今日もイザベラ嬢をよいしょするつもりが、うっかりして「王子様は理想的な結婚相手だ」と言ってしまった。それを偶然に聞いた王子は、早速リアリムを婚約者候補に入れてしまう。  王子様狙いのイザベラ嬢に睨まれたらたまらない。何とかして婚約者になることから逃れたいリアリムと、そんなリアリムにロックオンして何とかして婚約者にしたい王子。  婚約者候補から逃れるために、偽りの恋人役を知り合いの騎士にお願いすることにしたのだけど…なんとこの騎士も一筋縄ではいかなかった!  おとぼけ転生娘と、麗しい王子様の恋愛ラブコメディー…のはず。  イラストはベアしゅう様に描いていただきました。

笑い方を忘れた令嬢

Blue
恋愛
 お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ

⚪︎
恋愛
 公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。  待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。  ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……

病めるときも健やかなるときも、お前だけは絶対許さないからなマジで

あだち
恋愛
ペルラ伯爵家の跡取り娘・フェリータの婚約者が、王女様に横取りされた。どうやら、伯爵家の天敵たるカヴァリエリ家の当主にして王女の側近・ロレンツィオが、裏で糸を引いたという。 怒り狂うフェリータは、大事な婚約者を取り返したい一心で、祝祭の日に捨て身の行動に出た。 ……それが結果的に、にっくきロレンツィオ本人と結婚することに結びつくとも知らず。 *** 『……いやホントに許せん。今更言えるか、実は前から好きだったなんて』  

「結婚しよう」

まひる
恋愛
私はメルシャ。16歳。黒茶髪、赤茶の瞳。153㎝。マヌサワの貧乏農村出身。朝から夜まで食事処で働いていた特別特徴も特長もない女の子です。でもある日、無駄に見目の良い男性に求婚されました。何でしょうか、これ。 一人の男性との出会いを切っ掛けに、彼女を取り巻く世界が動き出します。様々な体験を経て、彼女達は何処へ辿り着くのでしょうか。

処理中です...