元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

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ヒロインがやって来た

夜会の後で

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帰りの馬車に乗り込んだ後。

「フィル兄様、あの公爵令嬢のことが、お嫌いでした?そうとは知らずに、ごめんなさい。」

「ああ、昔から大嫌いだった。マリーも余計なことしてくれたね。あの女は、貴族学園の後輩になるんだけど、学生の時から酷かった。公爵令嬢だから、ちやほやされることに慣れ過ぎて、無駄にプライドだけが高くて。なぜか私が好かれて、いつか私と結婚出来ると、思い込んでいたようなところがあって、本当に迷惑していたんだ。それもあって、適当に他の令嬢と付き合ったりもしたんだけどね。身分以外、何の取り柄もない女だよ。あの女を甘やかしていた、前公爵である父親が領地に引っ込んで、兄が公爵になってからは、邸で邪魔者扱いされているらしいとは聞いたけど…。自業自得だね。いい加減、身の程を知って行動して欲しいよ。妃殿下があの女に、面白いことを言ってくれて、スッキリはしたけどね。」

 うっ!やっぱり怒っているわ。相当嫌いなのね!あっ、またあれをやって、ご機嫌取りしよう。
 上目遣いで、腕を絡ませてっと。

「本当に、ごめんなさい。あの公爵令嬢が、フィル兄様が好きなのが分かって、ちょっと面白くなってしまったの。」

「へぇ。マリーも可愛い顔して、腹黒いことするんだね。それと、そうやって腕を絡ませるのは、他の男にはしないって約束できる?」

「えっ?」

「この体勢は、マリーの胸があたるでしょ。誘っているって思われちゃうよ。だから、他の男には絶対ダメね。それと…、責任取ってね。」

「責任?」

「そう。まぁ、今日はマリーには言いたいことが沢山あったから、今夜は眠らせないつもりだったけど。」

「えっ?何を言っ…、んっ、んー…。」

 そのまま、馬車の中で激しくキスされ、押し倒される私。またするのー?

「兄様、はぁ、はぁ。どうして…、あっ、んんっ、はぁん。」

「ふっ!マリーって、ここ弱いよね。妖精のようなんて言われているマリーが、こんなに乱れているなんて、みんなが知ったら、さぞや驚くだろうね。まぁ、私しか知らなくていいんだけど。」

 フィル兄様は馬車の中で、容赦なく、私を攻める。邸に着く頃には、ぐったりしてしまった私。

「マリーが疲れてぐったりしているから、私が運ぶよ。フィーネ、飲み物を部屋に持って来てくれる?」

「かしこまりました。」

 部屋に私を運んだ後、フィル兄様は自分の部屋に戻って行った。ふぅ。良かった。飲み物をいただいて、湯浴みを済ませる。
 明日は休日。ゆっくり寝ていることをフィーネに伝えて、ベッドに入る。ああ、今日も疲れたわね。夜会はしばらくは行きたくないから、お母様に伝えておこう。何だかトラブル続きだから、嫌だわ。そんなことを考えているうちに、ウトウトしてくる私。

「マリー?今日は寝せないって言ったよね?」

 えっ?ウトウトしていて、ボーっとしている私。チュッ、チュッと口や首すじにキスをされる私。

「ふっ。眠そうなマリーも可愛い。」

「フィル兄様?えっ?」

「湯浴みして、戻ってきたよ。あんな女とダンスしたから、嫌な香水の匂いが付いちゃったからね。ああ、マリーの匂い、好き。ずっとこうしていたい。」

 えー!ベッドに入って私を抱きしめるフィル兄様。すっかり目が覚めた私。

「フィル兄様、最近また私に対して、ベタべタし過ぎではないですか?私はフィル兄様を従兄妹だと思ってます。だから、こんな風にするのは困り…んっ。」

 フィル兄様は、キスで私の口を塞いでしまった。

「マリー、私は従兄妹だなんて思ってないよ。愛しているんだ。マリーが私に黙って、寮に帰ってしまったと聞いた時、目の前が真っ暗になったくらいね。どうしたら、この御転婆は私の気持ちを分かってくれるのかな。この際…、孕ませちゃおうか?そしたら、逃げられないし、諦めて私のものになるよね?」

 サーっと血の気が引く。真顔でそんなことを言うなんて。
 そんなことを言いながら、フィル兄様は、私のナイトドレスを脱がしていく。

「フィル兄様は、真面目に私を愛しているのですか?」

「愛してるよ。こんな気持ちになったのは、マリーが初めてだ。信じて。」

 フィル兄様は、真っ直ぐに私を見つめる。このサファイアのような、綺麗な目でじっと見つめられることに弱い私。

「…マリー、どうかした?」

「フィル兄様の、サファイアのような綺麗な目でじっと見つめられると、私は弱いのです。」

「……。」

 フィル兄様は、私をぎゅっと抱きしめる。

「やっぱり、私にはマリーしかいない。愛している。誰にも渡さない。マリーは、まだ学生だから急いで婚約なんて嫌だよね。私も学生の時は、考えられなかったし。だから、まずは恋人になろうか。少しずつでいいから、私に恋をして。そしてマリーが卒業したら、正式に婚約して、その1年後くらいに結婚しようか。」

 何でそこまで話が進むの?

「フィル兄様、それは強引過ぎます。私の気持ちは、考えてくれないのですか?」

「マリーは私のことが嫌いなの?」

 フィル兄様は、悲しそうな顔で私を見つめる。だから、そんな目で見つめられるのに弱いんだって!もう、ズルい!フィル兄様も腹黒だよね。

「口煩いところは嫌だけど、いつも優しくて、カッコいいフィル兄様は好きですよ。嫌いになる訳ないです。ああ、でも、こうやって強引にやらしいことするのは、困りますけど。」

「ふっ!じゃあ、問題ない。」

 フィル兄様はまた色々な所にキスをする。うっ、私、いつもこの人に流されている。というか、この人は優しいようで、絶対に引かない。悪役令嬢にはあんなに無表情で、冷たくて、他人に執着しなさそうに見えたのに。私は、執着されているような気がする。

「マリー、若いうちは素敵な出会いとか、恋とかに憧れるよね?でも好きになった人とさ、必ず結婚出来るわけではないのは分かるよね。」

「それは、分かっています。」

「もしも、恋愛が上手くいって、好きな人と結婚できたとする。しかし好きな人の親や、兄弟とは上手くいくとは限らないよね。結婚は本人達だけでなくて、家同士の問題があるから。」

「はい。」

「でもマリーが私を選んだら、そんな心配ないね。うちの両親は、私よりマリーを溺愛してるし、使用人達もマリーを慕っている。私もマリーだけを愛しているでしょ。うちは生活には困ってないし、借金もない。領地も落ち着いているから、問題もないし。結婚を考えたら、私はマリーにとって、最高の条件の相手だと思わないかな?」

 うっ。まさに、婚活アラサーから見たら、最高の条件の相手だわ。でも、元遊び人というのがなぁ。

「でも、遊び人のイメージがあって。近衛騎士って、遊び人ばかりだっていうじゃないですか?」

「そんなに信用出来ない?私も同僚達も、好きになった人には一途だよ。」

「私は、浮気や愛人とかは絶対に認められないのです。フィル兄様は、カッコいいから、女性が沢山寄って来ますよね。私は、色々と心配になってしまうと思うのです。」

「マリー、私のことが心配になるくらいには、意識してくれているってことだよね。心配しないで、私はマリーだけだから。」

 フィル兄様はパァーっと、嬉しそうな表情になる。何となくかわいいと思ってしまうが、でも前から気になっていることを聞かないとね。

「フィル兄様、本当に私自身を見て好きになったのでしょうか?フィル兄様の大好きだったお姉様に似ているから、私が好きなのではないですか?」


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