元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

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ヒロインがやって来た

外堀を埋められた

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 ずっと気になっていたことを聞く私。

「フィル兄様、本当に私自身を見て好きになったのでしょうか?フィル兄様の大好きだったお姉様に似ているから、私が好きなのではないですか?」

「……誰かに何か言われた?」

 真面目な表情になるフィル兄様。

「いえ。」

「確かに始めは、大好きだった姉上そっくりのマリーに興味を持ったことは認めるよ。マリーは、父上と母上が認めるくらいに、姉上そっくりだからね。でも、最近、似てないところを沢山見つけて、そこが可愛くて仕方がないことに気付いてしまったんだよね。」

「似ていないところですか?」

「うん。例えば、私の機嫌をとる為に、腕を絡ませて変な演技したり、売られた喧嘩は絶対に買うし、腹黒いところもあるし。見た目は妖精のようなのに、剣術とか魔術とかやって、魔物を討伐するくらい御転婆なところかな。」

 ボロクソじゃないのよ。どこが、かわいいんだ?

「…あまり嬉しくはない話ですわね。」

「ファーエル公爵令息が、マリーを面白いって言ってたけど、私もマリーといると楽しいんだよね。そう言えば、ファーエル公爵令息に私のことを従兄妹だって言ってたけど、もう次からはちゃんと恋人って言ってね。分かった?」

「恋人って言うのですか?どうして?」

「もう、こんな裸の関係だし、恋人でしょ。遊びでこんなことはしないよね?ただの従兄妹もこんなことしない。恋人じゃないと出来ないよね?マリーも、結局受け入れてくれているし。私もみんなにそう話すからね。分かった?」

 はっ?アナタ、本気にならない、遊びの女の子が過去に何人かいたはずなのに、何言ってんの?

「でも、これは、フィル兄様が強引に。それに私は、まだそこまでの気持ちは…。」

「マリー、愛してるんだ。お願い。」

 そんな目でお願いしないでー!

「フィル兄様、私を裏切ったりしませんか?」

「ああ、誓う。絶対に裏切らない。」

「私を殺したりもしません?」

「マリー、何を言ってるの?どうして、そんなこと?……ああ、そういう事か。まだ苦しんでいるってこと?」

 フィル兄様は泣きそうな表情だ。えー、その表情も反則よ!

「私はマリーを命をかけても守るよ。大切にするって約束する。だから、ずっと一緒にいよう。」

 うっ。ここまで言われたら、さすがに…

「約束してくれるなら。じゃあ、付き合ってみます?でも、あまり束縛はしないでくださいね。フィル兄様も束縛は嫌いですよね?」

「本当?嬉しい。束縛はしないように気をつけるよ。ただ、心配で口は出すと思うけど。」

「でも、婚約の話はまだ別ですからね。私には、まだ早いと思うので。」

「学生のうちは、強引に婚約はしないよ。でも私が、いずれはマリーと婚約して、早く結婚したいって気持ちでいるってことは覚えておいて。それと前にも言ったけど、絶対に私から逃げたりしないでね。分かった?」

 この人からは、簡単に逃げれないような気がする。本能的にそう感じるのだ。

「分かりました。でも、浮気や女遊びは絶対に許しませんからね。」

「ああ。絶対に裏切らない。マリー、ありがとう。大好きだよ。」

 フィル兄様は、私に濃厚なキスをして、いやらしいことを沢山しまくるのであった。何度も何度も執拗に責められ、気付くと、私は気を失っていたようだった。

 そして早朝に、パチっと目覚める私。目の前には、お約束のフィル兄様。私を抱きしめたまま眠っている。フィル兄様は、きちんと婚約するまでは、最後までしないと言っていたが…。割と、スレスレのことをしてくるよね。
 でもこの先、乙女ゲームのシナリオとやらが、どうなるかが分からない今、婚約はしばらく出来ないわね。

 フィル兄様は好きだけど、そこまで決心がつくほど好きかというと、まだそこまでではないと思う。攻略対象者かもしれないと、警戒して過ごしてきた時間が長かったからね。それにかっこ良過ぎて、恋愛というよりは、見て楽しみたいタイプとして位置付けていたし。
 だけど、結局は強引なフィル兄様に負けてしまった。さっぱりしてそうに見えたのに、そんなことは全然なかったわね。私は完全に、フィル兄様のペースに巻き込まれている。

「…はぁー。」

「マリー、ため息ついてどうしたの?」

 起きていたのね。

「フィル兄様、そろそろお部屋に戻らないといけませんよ。」

「まだ一緒にいたいよ。こうやって、マリーと裸でくっついてると、すごい幸せなんだ。」

「誰かに見られたら、大変ですから、そろそろ起きてくださ…んっ、んっ。あっ、はぁはぁ。やめて、兄様あっ。」

「恋人になれて、嬉し過ぎて、マリーともっと色々したくなっちゃった。マリー、朝から可愛い。私のものだからね。誰にも渡さない。覚悟して?」

 この人、どんだけ体力あるの?昨夜だって、嬉しいとか言って、結構凄かったのに。愛してくれているのは痛いほど分かるが、体はキツいのよぉ。
 
 結局、またしつこい程、色々なことをされてしまって、意識を失ってしまったようだ。
 気がつくと、いい時間になっていた。昨夜、休みだから、ゆっくり寝ていると言っておいたからか、フィーネは、起こしには来なかったようだ。フィル兄様は、自分の部屋に戻ったようで、居なくなっていた。しかも、私のナイトドレスを着せて行ってくれたらしく、服を着ていた私。脱がせるだけでなく、着せるのも上手いの?どんだけ女慣れしてるんだよ!

 あれっ?何か唇がガサガサなんだけど。しかも喉が少し痛い。声を出し過ぎた?ヤバい、誰かに聞かれてないよね。でも、そんな大きな声は出てなかったとは思うけど。大丈夫だよね?
 とりあえず、喉と唇に治癒魔法をかけておこう。体も洗いたいな。自分の魔法で、シャワーが出来るから、湯浴みしちゃおうか。浴室でナイトドレスを脱いだ私。

「ひっ!何これ?」

 服を脱いで気付いた。体中に沢山のキスマークが。なんか、薔薇の花びらが散ったように、いっぱい付いていた。知らずに、フィーネやメイドに着替えや湯浴みを手伝ってもらっていたら、今頃大変なことになっていたわね。セーフ、危なかったわ。
 こんなに沢山付けなくても…。あの人は何を考えているのかしら?
 キスマークも、治癒魔法で消えるよね?それっ!ああ、良かった。綺麗に消えたわ!全部消しておこう。ついでに疲れた顔のクマを消して、寝不足で艶のない肌も治しておくか。治癒魔法は便利ねー!

 シャワーでスッキリして、部屋に戻ると、ノックされる。

「お嬢様、お目覚めですか?」

 フィーネが来てくれた。着替えを終えて、遅めの朝食を食べにダイニングへ行く。今日は週末でみんな休みなのに、誰もいない。お茶会にでも行ったのかしら?のんびりお茶を飲んでいると、フィーネが朝食を持って来てくれた。

「お嬢様。旦那様と奥様、フィリップ様は先程、お出掛けされました。昼食までには戻るので、一緒に食べようと話されてました。」

「ありがとう。3人一緒に出かけるなんて、珍しいわね。」

「ええ。あの…、これはお嬢様に話して良いものか、分からないのですが…。でも、少し気になってしまいまして。」

「フィーネ?何かあったの?」

「実は朝食前に、フィリップ様が、旦那様と奥様に大事な話があると話されてまして。3人で執務室に話をしに行かれたようなんです。その後、朝食に来られた旦那様と奥様が、その、なんて言うか…、とにかく嬉しそうにしていまして。急いで話をつけて来ないといけないわねと、奥様は張り切ってまして。」

「えっ?何か嬉しいことでもあったのかしら?」

「奥様が、急だけどフォーレス侯爵家に行きましょうと言われまして。急遽、3人で行かれたようです。フォーレス侯爵家は、お嬢様のご実家ですよね?ちょっと気になってしまったので、内緒でお嬢様にお伝えしておこうかと思ったのです。」

「…フィーネ。教えてくれてありがとう。私はフィーネがいてくれて、とても心強いわ。これからも、何かあったら、こっそり教えてね。」

「お嬢様、勿体ないお言葉でごさいます。私もお嬢様の為に、これからも精一杯、務めさせて頂きます。」

 フィル兄様、おじ様とおば様を味方に付けたわね。しかもおば様を使って、うちの両親まで押さえようとしている?まだ始まったばかりの、ただのお付き合いなのに。やっぱり合わないので、お付き合いは無かったことにして、とは言えないじゃない!私が寝ている間に動くなんて!やられた。
 あの人、優しそうな顔してやっぱり腹黒。外堀をさっそく埋めて来たわね。
 こうしてはいられないわ。

「フィーネ、あなたにお願いがあるの。」



 

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