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ヒロインがやって来た
退去
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「フィル兄様は、寝込みを襲って来るし、おば様には体の関係がバレているみたいだし、しかも妊娠してると勘違いされてしまうし。そして同じ邸に住んでいて、恋人だなんて言ったら、清い交際に見てもらえないだろうし、変な噂が立ちそうですよね?ですから、私は学園の寮に戻った方がいいと思うのです。」
「ははっ。そうやって逃げるつもり?」
フィル兄様から冷気が漂っている。少し怖いが、負けるわけにはいかない。頭痛もまだつらいが、今きちんと言っておかないと、知らないうちに話を進められて、後戻りできないところまで行ってしまいそうだ。今は攻略対象者になっている人物とは、絶対に婚約するわけいはいかないのだから。
「フィル兄様は、今までの恋人達にも、付き合ってすぐに、両親に紹介して、相手の家に挨拶まで行って来たのですか?」
「そんな付き合いの恋人はいなかったけど。」
「では、まだ付き合い始めたばかりである私を、そこまで急いで外堀を埋めようとするのは、やめてほしいのです。しかも、裸の関係は恋人だと言ってましたが、今までの令嬢は、どんな付き合いの恋人だったのですか?その令嬢達や、付き合ったばかりの恋人に、外堀を埋められそうになったら、フィル兄嫌は、嫌になりませんか?はぁ、はぁ。」
「大丈夫か?まだ体がつらそうだ。」
「…はい。大丈夫ですわ。」
「マリーは、今まで何となく付き合った令嬢とは違う。それすら、分からない?私が本当に欲しいと思ったのはマリーが初めてだし、ただの恋人ではなくて、真剣に付き合って、いずれは結婚したいから、自分の両親とマリーの両親に交際の許可をもらいたかっただけだよ。まぁ、確かにマリー以外の令嬢に、それを私がされたら腹が立つだろうけどね。外堀を埋めようとしていると感じたなら、それは悪かったよ。そんな事はなくて、両親に打ち明けた結果がこうなってしまっただけだから、許してほしい。だから、寮には行かないで。清い交際に見られるように、ルールは守るようにするから。」
「ルールですか?」
「ああ。確かに、勘違いされたり、変な噂が立つのは困るからね。マリーが嫌な思いをするのも許せないし。とりあえず、この話は終わろう。今日は側に付いているから、休んで。」
フィル兄様は、私の頭を撫でて、額にキスをする。どこまでも、過保護で甘くて、強引な人だと思う。
結局、体がつらいこともあって、フィル兄様に言われたとおりに、その日は横になって休む事になった。
しかし次の日、事態が大きく変わるのであった。
部屋で読書をしていると、急に両親がやって来たと知らされ、応接室に向かう。部屋に入ると、おじ様・おば様・フィル兄様が既にいて、更に私の両親と義兄までいた。みんな勢揃いね。
「マリー、会いたかったよ!」
お父様が空気を読まずに、立ち上がって私のところに来る。最近、お父様が大好きだと再認識した私は、迷わずお父様に抱き付く。それを嬉しそうに抱きしめ返すお父様。ニコニコして見つめ合う私達親子を、ため息を吐いて見ている義兄。そして残念そうに見ているおじ様と、フィル兄様。
「マリー、今日は迎えに来たよ。一緒に帰ろう。」
「えっ!私はフォーレス侯爵家に帰るのですか?」
「マリーと一緒に住めるのは今だけだからね。」
「でも、寮がありますが。」
「卒業試験を受ければ、すぐにでも卒業出来ると聞いているよ。だから、寮ではなくて家に帰ろう。もうアルとも仲直りしたようだし、問題はないよ。寮はもう必要ないよね。それに、マリーとフィルは恋人同士になったって聞いたけど、恋人同士で一緒に住むのはよろしくないよ。婚約してる訳でもないのだから。」
「マリー、お父様が言い出したらもう引かないから、諦めなさい。」
お母様だけは、何となく冷静だ。おば様は、呆れた顔でお父様を見る。
「アレクはマリーが可愛くてしょうがないからって、強引ね。嫌でもいずれは嫁ぐ日が来るのに。マリー、おじ様もおば様も、寂しくなるけど、沢山遊びに来てくれるのを待っているわ。」
「そうだよ。私達にとっても、大切な娘なのだから。また泊まりに来るんだよ。」
おじ様が泣きそうな顔をしている。
「おじ様・おば様、ありがとうございました。またすぐに遊びに来ますから。おじ様、泣かないで下さいね。」
「待って下さい。マリーと2人で話をさせてもらってもいいですか?」
「そうね。フィルが1番寂しいだろうから。アレク、2人で話をさせてあげてもいいでしょ?」
「勿論だ。待っているから、2人で話して来なさい。」
「ありがとうございます。マリー、行こうか。」
フィル兄様は、お父様達の前でも、遠慮なく私の腰を抱いて連れ出すのであった。
そのまま、フィル兄様の部屋に連れて行かれる。部屋に入って、ドアを閉めた瞬間、強く抱きしめられられる私。
「マリー、離れて暮らしたくない。このままずっと抱きしめていたいよ。」
フィル兄様は、そのまま私を壁に追い詰める。これは、ちょっとエロい。
「フィル兄様、近くに住んでいるのですから、遊びにきてく…んっ。んーっ、はあっ。」
やらしいキスで口を塞がれてしまった。さらに首筋に顔を埋めてくる。
「ああ。大好きな、マリーの匂いも嗅げなくなるのか。早く結婚して、一緒に暮らしたい。寂しくて、死んじゃうかもしれないから、マリーも時間のある時は、うちに来てね。父上が泣きそうな顔をしていたけど、私も泣きそうだよ。」
フィル兄様は、本当に泣きそうな、顔をしている。そんな顔を見せられたら、私もつらくなるわ。思わず、フィル兄様のサラサラ銀髪を撫でてしまう私。
「フィル兄様、またすぐ会えますから。お仕事、頑張って下さいね。私も兄様や、おじ様・おば様と離れるのは寂しいですが、頑張りますから。」
「うん。叔父上に私のことを認めて貰えるように、頑張るからね。マリー、大好き。愛してるよ。他の男は好きにならないでね。私にはマリーだけだから。約束ね。」
そう言って、指切りをしてくるフィル兄様。なんだか、かわいいわね。元遊び人で、攻略対象者というのが気になるところだが、情が移ってしまったようだ。思わず、フィル兄様をぎゅっとしてしまう。
「マリーから抱きしめられるのは、初めてだよね?すごく嬉しい。私のマリー、絶対に誰にも渡さないからね。」
多分、第三者から見たら、カップルがイチャイチャしているように見えるだろうね。なんだかんだで、フィル兄様の距離感が当たり前になりつつある。あっ、いけない!これも、フィル兄様の策略かもしれないから、しっかりしないと。
「フィル兄様、みんなが待っているので、そろそろ戻りましょうか?」
「うん。少し待って。」
最後に私にキスをして、ぎゅっと抱きしめてくる。ここまでして、フィル兄様が裏で女遊びをしていたら、即座に別れるだろうね。
「マリー、手を繋いで戻ろうか。」
寂しそうに言われたら、嫌とは言えない。この人のこんな表情に弱い私。
「はい。」
2人で手を繋いで戻ると、ぶるっ。ん?義兄から冷気が。怒ってる!シスコン義兄の前で手を繋いだから?ひー!怖いわ。義兄と目を合わせられない私。しかし、
「マリー、一緒に帰ろう。フィリップ兄様、うちのマリーがお世話になりました。あとは、私が面倒を見るので、ご心配なく。」
そう言って、私の手を引く義兄。その様子を楽しそうに見ているお父様と、目を丸くして見ているおじ様・おば様。そして、気にせずお茶を飲むお母様。しかし、フィル兄様も黙ってはいなかった。
馬車まで見送りに来たフィル兄様は、私をぐいっと引っ張ると、みんなの前でぎゅっと抱き締める。
「マリー、愛してるよ。すぐに会いに行くから待っててね。」
そして、額にチュッとキスをしたのだ。げっ!何してんの!親達の目の前で。
しかし、おば様とお母様は、「まあ!」と2人して何故か喜んでいる。この2人、何気に気が合うよね。
帰りの馬車の中で、義兄が怖い笑顔で、私の額をハンカチでゴシゴシしていた。
「マリーは、モテモテね。さすが私の娘だわ!若いうちは沢山恋をして、運命の人を見つけなさい。ふふっ。」
何故か楽しむお母様と、無言のお父様。そして、冷気を放つ、義兄。何だこの雰囲気は?
私の大切な城であった学園の寮は、退去することになり、私はフォーレス侯爵家のタウンハウスで暮らす事になるのであった。
ううっ!気に入っていたのにー。
「ははっ。そうやって逃げるつもり?」
フィル兄様から冷気が漂っている。少し怖いが、負けるわけにはいかない。頭痛もまだつらいが、今きちんと言っておかないと、知らないうちに話を進められて、後戻りできないところまで行ってしまいそうだ。今は攻略対象者になっている人物とは、絶対に婚約するわけいはいかないのだから。
「フィル兄様は、今までの恋人達にも、付き合ってすぐに、両親に紹介して、相手の家に挨拶まで行って来たのですか?」
「そんな付き合いの恋人はいなかったけど。」
「では、まだ付き合い始めたばかりである私を、そこまで急いで外堀を埋めようとするのは、やめてほしいのです。しかも、裸の関係は恋人だと言ってましたが、今までの令嬢は、どんな付き合いの恋人だったのですか?その令嬢達や、付き合ったばかりの恋人に、外堀を埋められそうになったら、フィル兄嫌は、嫌になりませんか?はぁ、はぁ。」
「大丈夫か?まだ体がつらそうだ。」
「…はい。大丈夫ですわ。」
「マリーは、今まで何となく付き合った令嬢とは違う。それすら、分からない?私が本当に欲しいと思ったのはマリーが初めてだし、ただの恋人ではなくて、真剣に付き合って、いずれは結婚したいから、自分の両親とマリーの両親に交際の許可をもらいたかっただけだよ。まぁ、確かにマリー以外の令嬢に、それを私がされたら腹が立つだろうけどね。外堀を埋めようとしていると感じたなら、それは悪かったよ。そんな事はなくて、両親に打ち明けた結果がこうなってしまっただけだから、許してほしい。だから、寮には行かないで。清い交際に見られるように、ルールは守るようにするから。」
「ルールですか?」
「ああ。確かに、勘違いされたり、変な噂が立つのは困るからね。マリーが嫌な思いをするのも許せないし。とりあえず、この話は終わろう。今日は側に付いているから、休んで。」
フィル兄様は、私の頭を撫でて、額にキスをする。どこまでも、過保護で甘くて、強引な人だと思う。
結局、体がつらいこともあって、フィル兄様に言われたとおりに、その日は横になって休む事になった。
しかし次の日、事態が大きく変わるのであった。
部屋で読書をしていると、急に両親がやって来たと知らされ、応接室に向かう。部屋に入ると、おじ様・おば様・フィル兄様が既にいて、更に私の両親と義兄までいた。みんな勢揃いね。
「マリー、会いたかったよ!」
お父様が空気を読まずに、立ち上がって私のところに来る。最近、お父様が大好きだと再認識した私は、迷わずお父様に抱き付く。それを嬉しそうに抱きしめ返すお父様。ニコニコして見つめ合う私達親子を、ため息を吐いて見ている義兄。そして残念そうに見ているおじ様と、フィル兄様。
「マリー、今日は迎えに来たよ。一緒に帰ろう。」
「えっ!私はフォーレス侯爵家に帰るのですか?」
「マリーと一緒に住めるのは今だけだからね。」
「でも、寮がありますが。」
「卒業試験を受ければ、すぐにでも卒業出来ると聞いているよ。だから、寮ではなくて家に帰ろう。もうアルとも仲直りしたようだし、問題はないよ。寮はもう必要ないよね。それに、マリーとフィルは恋人同士になったって聞いたけど、恋人同士で一緒に住むのはよろしくないよ。婚約してる訳でもないのだから。」
「マリー、お父様が言い出したらもう引かないから、諦めなさい。」
お母様だけは、何となく冷静だ。おば様は、呆れた顔でお父様を見る。
「アレクはマリーが可愛くてしょうがないからって、強引ね。嫌でもいずれは嫁ぐ日が来るのに。マリー、おじ様もおば様も、寂しくなるけど、沢山遊びに来てくれるのを待っているわ。」
「そうだよ。私達にとっても、大切な娘なのだから。また泊まりに来るんだよ。」
おじ様が泣きそうな顔をしている。
「おじ様・おば様、ありがとうございました。またすぐに遊びに来ますから。おじ様、泣かないで下さいね。」
「待って下さい。マリーと2人で話をさせてもらってもいいですか?」
「そうね。フィルが1番寂しいだろうから。アレク、2人で話をさせてあげてもいいでしょ?」
「勿論だ。待っているから、2人で話して来なさい。」
「ありがとうございます。マリー、行こうか。」
フィル兄様は、お父様達の前でも、遠慮なく私の腰を抱いて連れ出すのであった。
そのまま、フィル兄様の部屋に連れて行かれる。部屋に入って、ドアを閉めた瞬間、強く抱きしめられられる私。
「マリー、離れて暮らしたくない。このままずっと抱きしめていたいよ。」
フィル兄様は、そのまま私を壁に追い詰める。これは、ちょっとエロい。
「フィル兄様、近くに住んでいるのですから、遊びにきてく…んっ。んーっ、はあっ。」
やらしいキスで口を塞がれてしまった。さらに首筋に顔を埋めてくる。
「ああ。大好きな、マリーの匂いも嗅げなくなるのか。早く結婚して、一緒に暮らしたい。寂しくて、死んじゃうかもしれないから、マリーも時間のある時は、うちに来てね。父上が泣きそうな顔をしていたけど、私も泣きそうだよ。」
フィル兄様は、本当に泣きそうな、顔をしている。そんな顔を見せられたら、私もつらくなるわ。思わず、フィル兄様のサラサラ銀髪を撫でてしまう私。
「フィル兄様、またすぐ会えますから。お仕事、頑張って下さいね。私も兄様や、おじ様・おば様と離れるのは寂しいですが、頑張りますから。」
「うん。叔父上に私のことを認めて貰えるように、頑張るからね。マリー、大好き。愛してるよ。他の男は好きにならないでね。私にはマリーだけだから。約束ね。」
そう言って、指切りをしてくるフィル兄様。なんだか、かわいいわね。元遊び人で、攻略対象者というのが気になるところだが、情が移ってしまったようだ。思わず、フィル兄様をぎゅっとしてしまう。
「マリーから抱きしめられるのは、初めてだよね?すごく嬉しい。私のマリー、絶対に誰にも渡さないからね。」
多分、第三者から見たら、カップルがイチャイチャしているように見えるだろうね。なんだかんだで、フィル兄様の距離感が当たり前になりつつある。あっ、いけない!これも、フィル兄様の策略かもしれないから、しっかりしないと。
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「マリー、手を繋いで戻ろうか。」
寂しそうに言われたら、嫌とは言えない。この人のこんな表情に弱い私。
「はい。」
2人で手を繋いで戻ると、ぶるっ。ん?義兄から冷気が。怒ってる!シスコン義兄の前で手を繋いだから?ひー!怖いわ。義兄と目を合わせられない私。しかし、
「マリー、一緒に帰ろう。フィリップ兄様、うちのマリーがお世話になりました。あとは、私が面倒を見るので、ご心配なく。」
そう言って、私の手を引く義兄。その様子を楽しそうに見ているお父様と、目を丸くして見ているおじ様・おば様。そして、気にせずお茶を飲むお母様。しかし、フィル兄様も黙ってはいなかった。
馬車まで見送りに来たフィル兄様は、私をぐいっと引っ張ると、みんなの前でぎゅっと抱き締める。
「マリー、愛してるよ。すぐに会いに行くから待っててね。」
そして、額にチュッとキスをしたのだ。げっ!何してんの!親達の目の前で。
しかし、おば様とお母様は、「まあ!」と2人して何故か喜んでいる。この2人、何気に気が合うよね。
帰りの馬車の中で、義兄が怖い笑顔で、私の額をハンカチでゴシゴシしていた。
「マリーは、モテモテね。さすが私の娘だわ!若いうちは沢山恋をして、運命の人を見つけなさい。ふふっ。」
何故か楽しむお母様と、無言のお父様。そして、冷気を放つ、義兄。何だこの雰囲気は?
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