元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

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ヒロインがやって来た

義兄と話を

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 フォーレス侯爵家で生活することになった私。
 義兄は怒っているようで怖いが、両親がいるからなのか、今のところは、口煩くは言ってこない。それが、また怖いのだ。2人になった時にフィル兄様のことで色々言われそうだわー。地獄を見そうだわね。

 本来ならこっちが私の実家になるはずなのに、なぜかアウェー感がハンパない。フィル兄様が寝込みを襲って来たりしなければ、スペンサー家の居心地は最高だったと今なら思えるわ。離れてみて気付くってやつね。そういえば、スペンサー家を離れるってなった時、フィーネが涙を流していたし、メイド長もなぜか涙目になっていたわね。彼女達にはとにかく、お世話になったから、今度何かプレゼントを用意しよう。
 ここでは、気心の知れたアリーが私のメイドをしてくれるということが、唯一の救いだわね。

 明日からは学園だから、図書室で読書でもして、のんびり過ごそうかしら。そう思って、1人図書室で本を物色していると、誰かが図書室に入って来た音がする。振り返ると、……げっ!

「マリー、ここにいたのか!偶然だな。せっかくだから、ここに座って話でもしないか?最近、ゆっくり話す機会が無かったから。…いいよね?」

 ああ、死にませんように。

「勿論ですわ。」

 義兄は、自分の座るソファーの隣を指差す。えー!そこに座るの?もっと離れた斜め前くらいに座りたかったのに!
 少し間を空けて座るが…、義兄は間を詰めて座って来る。おい、近いだろ!と言いたいが、義兄が怒っているのが、何となく分かるので強く出れないビビりな私。

「マリー、フィリップ兄様と付き合ってるって本当?少し前までは、そんな風には見えなかったけど、何があったの?マリーは、フィリップ兄様が好きなの?」

 はぁー。聞かれると思ったわ。フィル兄様に襲われたとか、強引に流されたとかは言えないわね。

「フィル兄様から、思いを伝えられたので、付き合ってみようかと思ったのです。まだ付き合い始めたばかりなので、それくらいしか話せませんわ。」

「そんな説明で納得出来るわけないだろう。義父上から、そのことを聞いた時の俺の気持ちが分かるか?分からないよな。マリーには、俺の気持ちが全く伝わってなかったもんな。」

「そんな風に言われましても。」

 義兄がもし私だったとしても、あの色っぽいフィル兄様の誘惑から逃げるなんて、絶対に出来ないわよ!と言いたい。しかし、口が裂けても言えない。

「フィル兄様は、なんて言うか、愛情を素直に伝えてくれる方でしたので、それが嬉しかったのかも知れませんわ。でも、今はまだお付き合いしているだけですから。この先はどうなるのかは分かりません。フィル兄様は、令嬢方にとても人気のあるお方ですから。」

「はぁ?何言ってるんだ。俺のマリーを傷つけたりしたら、絶対に許さないし、二度と会わせない。義父上もそう言っていたよ。」

 お父様ねぇ。義兄とお父様って、気が合うみたいで、実は仲がいいのよね。お母様よりも、お父様の方が義兄に甘いし。

「そうでしたか。」

「まぁ、まだ付き合い始めたばかりらしいし、婚約したわけでもないから、俺は諦めない。マリー、俺はマリーを妹だなんて思ってない。ずっと昔から好きだった。フィリップ兄様が、もしマリーを裏切るようなことがあったら、遠慮なく奪うから。よろしく。」

 えっ?どういうことよ!

「お兄様は、私を異性として好きなのですか?」

「当たり前だろう?ずっと好きだった。まさかフィリップ兄様が出て来るとは思わなかったよ。あの人はモテる人だけど、誰と付き合っても本気にならない人だって、有名だったのに。しかも、マリーとフィリップ兄様は、本当の兄妹と変わらないと思っていたから。」

「私はお兄様は、シスコンを拗らせていたのかと思ってました。」

「はぁー。シスコンじゃなくて、マリーが好きなだけだよ。どうしたら分かってくれるかな。」

 義兄は私をじっと見つめる。そして、ガバッと私を抱きしめる。えっ、ちょっとー!誰かに見られてたら、ヤバいよね。

「俺の心臓がドキドキしてるの聞こえる?マリーといると、こんな風にドキドキするんだ。それくらいマリーが好きだよ。少しは俺のことを男として意識して欲しい。」

 義兄は私の額や頭にキスをする。
 これは、義兄は私を誘惑してる?うっ、義兄の顔が恥ずかしくて見れない私。

「お兄様、これはちょっと困ります。フィル兄様と付き合っているのに、私に裏切りをさせないでください。」

「困ればいいよ。ふっ。」

 義兄は私を離してくれるが、顔が笑っている。

「マリー、どちらにしてもこれからは一緒に暮らすのだからよろしくね。」

「はい。よろしくお願いします。でも、一応は兄妹なのですから、過度にベタベタはしないでくださいよ。」

「はいはい。でも手は繋ぐからね。」


 次の日。

 今日からまた1週間が始まる。今日からは、義兄と一緒に登校だ。義兄は今まで通りに手を繋いでエスコートしてくれる。

 学園では最近は誰も、私や腹黒達に絡んで来なくなった。売られた喧嘩は買う・倍にして言い返す・時々こっそり魔法でやり返すをやっていたら、面倒な人達だから、絡まない方がよいと認定されたようだ。義兄と手を繋いでいても、何も言われない。前に絡んで来た先輩方は、目が合ったので、微笑んで挨拶したら、「ひっ!」と声を上げて、そそくさと逃げて行った。

「マリー、強くなったな。」

「お兄様がいてくれるからですわ。」

「ああ、俺がマリーを守るよ。」

 義兄は緑の瞳を細めて微笑む。この表情は誰かに似ている気がする。誰かは分からないが、何となく安心するのよね。あっ!お母様に似ているからかしらね。

「頼りになるお兄様は、何だか騎士様みたいですわね。」

「…ああ。もっと頼ってくれると嬉しい。」


 義兄は口煩いが、根は優しい人ではあるのだ。怒ると怖いけど。

「マリー、今日は学園の帰りに、前に行ったカフェにスイーツでも食べに行く?」

「行きます!」

「ふっ!分かった。美味しいものを食べに行こうか。」

「はい。今から楽しみですわ。」


 色々あるけど、仲良く過ごしていけそうだ。


 
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