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ヒロインがやって来た
ノーマークだった人
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ガタガタと馬車で揺られている。馬車で私は寝てしまったようだ。
えっ?……違う!確か図書館で本を片付けていたら、背後から誰かに襲われたよね?
パチっと目を開ける私。うっ。まだ何か頭が痛くて、スッキリしない。そして、一緒の馬車に乗っていたのは…。
「目が覚めた?まだ顔色が悪いな。薬が強かったようで、丸2日目覚めなかったから心配したんだけど、目覚めて良かった。」
優しく私に言葉をかけるキラキラ系の美形の子息がいた。この人は、確かあの時の人。
「大丈夫?そんな警戒した顔をしないで。君が大人しく、私の言うことを聞いていれば、乱暴なことはしないと約束するからさ。ああ、君のそんな顔を見るのは初めてだけど、不安そうな表情ですら、本当に可愛いね。」
美形の子息は熱の籠った目で私を見つめる。この目は少なくとも、私に好意を持っている?黙って言うことを聞いていれば、娼館に売られたり、今すぐ殺されたりはしないかも。少し怖いけど。まだ体の調子が悪いし、今すぐ逃げるのは難しいから、大人しくしていよう。得意の上目遣いで、可哀想な私を演じてみる?
…いや、そこまで器用な私ではなかった。情けないぜ、私。アンジュ様に言われて、誰かに拐われるのは覚悟をしていたけど、この先どうなるのか分からないから、怖い。
「うっ。うっ。うっ…。」
お母様譲りの、泣き虫な私は泣いてしまった。しかし、私の泣く姿は、美形の子息には、何かが効いたようだった。
「…そんな、泣かないで。ごめんね。確かにこんな風に拐われたら、怖いよね。でも、この先は私が君を大切にするから。だから、少しずつ私を受け入れて欲しい。」
美形の子息は、私の横に座ると、優しく私を抱きしめるのであった。思いっきり抵抗したい気持ちを我慢する。恐らくこの人は、女の子らしくて、泣き虫で、か弱い女の子が好きなのかもしれない。変に反抗して、怒らせるのも怖いから、耐えるしかない。
美形の子息は、涙を流す私の目や額に沢山キスをする。げー、いきなりそこまでするのー?さすが遊び人の巣窟、近衛騎士団の子息。女慣れしてるのね。
「ああ、やっと手に入れた。妃殿下のお茶会に来た君を案内した時に、一目惚れしたのはいいけど、なかなか会う機会もないし、夜会とか茶会では、必ずスペンサー卿か、君の義兄上がベッタリくっついていて、話しかける事も出来なかった。2人がいない時はマディソン卿やファーエル公爵子息とかが一緒にいたり、この前はシールド公爵閣下と近衛騎士団長の子息も近くにいたよね。君の周りは身分が高い人がついているから、普通の貴族令息はなかなか近づけないって、みんなで話していたんだ。でも、もう離さないよ。君は私のものだ。」
ゾゾゾーっと鳥肌が立つ。この人も、もしかしてヤンデレの要素があるのかしら?一目惚れして、拐うとか普通じゃないもんね。もしかして、この世界の男性はヤンデレが多いとか?ブルっと震える私。
「まだ具合が悪いかな?顔色が悪いし、もしかして寒いの?あたためてあげるからね。…怖がらないで。」
また優しく抱きしめてくる、美形の子息。この世界で、優しさとヤンデレは紙一重かもしれない。
「あの…、貴方は誰ですか?」
抱きしめられながら、令息の顔をじっと見つめて、聞いてみる。さすが近衛騎士、間近で見ても綺麗な顔ね。
「初めて話しかけてくれたね。嫌われて、私とは話をしてくれないかと思ったよ。」
何となく嬉しそうにしている。
「私は、オスカー・ロペス。ロペス伯爵家の三男だよ。実は、南国にいる伯母の侯爵家の跡取りが数年前に亡くなってね。私が養子として跡取りになる事になったんだ。養子になってくれるなら、私の望む人との結婚を認めてくれるって言うから、君を連れて行きたいと思って。君は南国で伯母の知り合いの伯爵家に養女として入ってもらうよ。大丈夫!君みたいに美しくて、聡明な令嬢はどこに行ってもやって行けるから。南国は、気候が温暖で過ごしやすいから、きっと君も直ぐに慣れると思うよ。それに…、君の体にもいいはずだから、すぐに元気になれると思うんだ。」
「ロペス伯爵家って、貿易商を営んでいる家門ですか?」
貴族に詳しくない私でも分かるくらい、貿易でボロ儲けしているという、金持ちの家門だったような。
「そうだよ。これから、うちの商船に乗ってこの国を離れるからね。陸路でも行けるけど、船の方が早くて安全だから。君の身分証も作っておいたから、簡単に出国できるよ。君はうちの遠縁の男爵令嬢と言うことになっているからね。君くらいの年齢なんだけど、2年くらい前に平民と駆け落ちして、行方不明になっているんだ。男爵家に大金を積んだら、名前を貸してくれることになったから、安心して。」
ははっ!他国に連れて行かれるって、こういうことだったの。でも、悪役令嬢はこの人に関わっているのかしら?しかも、私はいずれこの人と結婚するの?
ブルっ!寒気が。
「あの…?私は貴方と結婚するのですか?」
「…そのつもりだけど。今は考えられないと思うけど、君が私を受け入れてくれるまで待つから。それに南国でも、貴族学園を卒業しないと貴族として認められないようだから、卒業するまでは結婚出来ないし。正式に婚約するのも、18歳にならないとダメみたいだから、18歳になるまでは恋人兼・婚約者候補として過ごしてもらうよ。そして貴族学園を卒業したら、すぐに結婚しよう。よろしくね、私のマリア。」
ロペス伯爵令息は、そう言って私の額にキスをするのであった。
こういう展開だとは。今すぐ命の危険はなさそうだが、この人もイケメンだけどヤバい気がする。うー、涙が出てくる。
「マリア、泣かないで。こんな事言いたくないけど、君はあのまま国にいたら、シナー公爵令嬢に危害を加えられていて、危なかったよ。私は、あの女の従姉弟になるんだけど。あの女は昔からスペンサー卿が大好きでね。スペンサー卿に近づく令嬢は、毒を盛られたり、階段から突き落とされたり、媚薬を飲ませて、分家の令息達に襲わせたりと犯罪を犯しまくっていたんだよ。しかも、スペンサー卿が遠征で不在なのを狙って、君を破落戸に襲わせようと計画していたらしい。だからその前に、君を国外に連れ出したいと思っていたから、間に合って良かった。君がいなくなれば、あの女は危害を加えるのを諦めるだろうから。」
ひぇー!すごいわ!ベストオブ悪役令嬢じゃないの。血の気が引いていく。ショックを受け過ぎた私は、そのまま意識を失うのであった。
えっ?……違う!確か図書館で本を片付けていたら、背後から誰かに襲われたよね?
パチっと目を開ける私。うっ。まだ何か頭が痛くて、スッキリしない。そして、一緒の馬車に乗っていたのは…。
「目が覚めた?まだ顔色が悪いな。薬が強かったようで、丸2日目覚めなかったから心配したんだけど、目覚めて良かった。」
優しく私に言葉をかけるキラキラ系の美形の子息がいた。この人は、確かあの時の人。
「大丈夫?そんな警戒した顔をしないで。君が大人しく、私の言うことを聞いていれば、乱暴なことはしないと約束するからさ。ああ、君のそんな顔を見るのは初めてだけど、不安そうな表情ですら、本当に可愛いね。」
美形の子息は熱の籠った目で私を見つめる。この目は少なくとも、私に好意を持っている?黙って言うことを聞いていれば、娼館に売られたり、今すぐ殺されたりはしないかも。少し怖いけど。まだ体の調子が悪いし、今すぐ逃げるのは難しいから、大人しくしていよう。得意の上目遣いで、可哀想な私を演じてみる?
…いや、そこまで器用な私ではなかった。情けないぜ、私。アンジュ様に言われて、誰かに拐われるのは覚悟をしていたけど、この先どうなるのか分からないから、怖い。
「うっ。うっ。うっ…。」
お母様譲りの、泣き虫な私は泣いてしまった。しかし、私の泣く姿は、美形の子息には、何かが効いたようだった。
「…そんな、泣かないで。ごめんね。確かにこんな風に拐われたら、怖いよね。でも、この先は私が君を大切にするから。だから、少しずつ私を受け入れて欲しい。」
美形の子息は、私の横に座ると、優しく私を抱きしめるのであった。思いっきり抵抗したい気持ちを我慢する。恐らくこの人は、女の子らしくて、泣き虫で、か弱い女の子が好きなのかもしれない。変に反抗して、怒らせるのも怖いから、耐えるしかない。
美形の子息は、涙を流す私の目や額に沢山キスをする。げー、いきなりそこまでするのー?さすが遊び人の巣窟、近衛騎士団の子息。女慣れしてるのね。
「ああ、やっと手に入れた。妃殿下のお茶会に来た君を案内した時に、一目惚れしたのはいいけど、なかなか会う機会もないし、夜会とか茶会では、必ずスペンサー卿か、君の義兄上がベッタリくっついていて、話しかける事も出来なかった。2人がいない時はマディソン卿やファーエル公爵子息とかが一緒にいたり、この前はシールド公爵閣下と近衛騎士団長の子息も近くにいたよね。君の周りは身分が高い人がついているから、普通の貴族令息はなかなか近づけないって、みんなで話していたんだ。でも、もう離さないよ。君は私のものだ。」
ゾゾゾーっと鳥肌が立つ。この人も、もしかしてヤンデレの要素があるのかしら?一目惚れして、拐うとか普通じゃないもんね。もしかして、この世界の男性はヤンデレが多いとか?ブルっと震える私。
「まだ具合が悪いかな?顔色が悪いし、もしかして寒いの?あたためてあげるからね。…怖がらないで。」
また優しく抱きしめてくる、美形の子息。この世界で、優しさとヤンデレは紙一重かもしれない。
「あの…、貴方は誰ですか?」
抱きしめられながら、令息の顔をじっと見つめて、聞いてみる。さすが近衛騎士、間近で見ても綺麗な顔ね。
「初めて話しかけてくれたね。嫌われて、私とは話をしてくれないかと思ったよ。」
何となく嬉しそうにしている。
「私は、オスカー・ロペス。ロペス伯爵家の三男だよ。実は、南国にいる伯母の侯爵家の跡取りが数年前に亡くなってね。私が養子として跡取りになる事になったんだ。養子になってくれるなら、私の望む人との結婚を認めてくれるって言うから、君を連れて行きたいと思って。君は南国で伯母の知り合いの伯爵家に養女として入ってもらうよ。大丈夫!君みたいに美しくて、聡明な令嬢はどこに行ってもやって行けるから。南国は、気候が温暖で過ごしやすいから、きっと君も直ぐに慣れると思うよ。それに…、君の体にもいいはずだから、すぐに元気になれると思うんだ。」
「ロペス伯爵家って、貿易商を営んでいる家門ですか?」
貴族に詳しくない私でも分かるくらい、貿易でボロ儲けしているという、金持ちの家門だったような。
「そうだよ。これから、うちの商船に乗ってこの国を離れるからね。陸路でも行けるけど、船の方が早くて安全だから。君の身分証も作っておいたから、簡単に出国できるよ。君はうちの遠縁の男爵令嬢と言うことになっているからね。君くらいの年齢なんだけど、2年くらい前に平民と駆け落ちして、行方不明になっているんだ。男爵家に大金を積んだら、名前を貸してくれることになったから、安心して。」
ははっ!他国に連れて行かれるって、こういうことだったの。でも、悪役令嬢はこの人に関わっているのかしら?しかも、私はいずれこの人と結婚するの?
ブルっ!寒気が。
「あの…?私は貴方と結婚するのですか?」
「…そのつもりだけど。今は考えられないと思うけど、君が私を受け入れてくれるまで待つから。それに南国でも、貴族学園を卒業しないと貴族として認められないようだから、卒業するまでは結婚出来ないし。正式に婚約するのも、18歳にならないとダメみたいだから、18歳になるまでは恋人兼・婚約者候補として過ごしてもらうよ。そして貴族学園を卒業したら、すぐに結婚しよう。よろしくね、私のマリア。」
ロペス伯爵令息は、そう言って私の額にキスをするのであった。
こういう展開だとは。今すぐ命の危険はなさそうだが、この人もイケメンだけどヤバい気がする。うー、涙が出てくる。
「マリア、泣かないで。こんな事言いたくないけど、君はあのまま国にいたら、シナー公爵令嬢に危害を加えられていて、危なかったよ。私は、あの女の従姉弟になるんだけど。あの女は昔からスペンサー卿が大好きでね。スペンサー卿に近づく令嬢は、毒を盛られたり、階段から突き落とされたり、媚薬を飲ませて、分家の令息達に襲わせたりと犯罪を犯しまくっていたんだよ。しかも、スペンサー卿が遠征で不在なのを狙って、君を破落戸に襲わせようと計画していたらしい。だからその前に、君を国外に連れ出したいと思っていたから、間に合って良かった。君がいなくなれば、あの女は危害を加えるのを諦めるだろうから。」
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